◆−Solar a Country(テラ)8〜10話−桜井 ゆかり(6/5-21:38)No.6698 ┗Solar a Country(テラ)11〜13話−桜井 ゆかり(6/6-18:47)No.6707 ┗Solar a Country(テラ)14〜16話−桜井 ゆかり(6/6-20:13)No.6708 ┗Solar a Country(テラ)17〜19話−桜井 ゆかり(6/9-00:07)No.6718 ┗Solar a Country(テラ)20〜19話−桜井 ゆかり(6/10-23:23)No.6751
6698 | Solar a Country(テラ)8〜10話 | 桜井 ゆかり | 6/5-21:38 |
こんばんわ。桜井 ゆかりです。 本編に行く前に少しテラの世界に触れてもらいましょう。 テラというのは世界の名前でもあり、最高権力者の住む城、及び城下町のことを指す。 この世界は丸くなく、平面でスレイヤーズ世界と裏にある平行世界となっています。 人間にとっては、神に縛られている立場となってしまっている。 運命の女神という運命を操る存在に縛られ、いつも運命に捕らわれている。 だけど、今の世の中には運命の女神は1人も存在しない。ずっと昔に魔族を離反した魔竜王ガーブがヴァルという竜を魔族にして女神を殺し、運命という文字を壊した。そして、竜族に対抗する力を手に入れた。 何時か、1人のエルフに魔王が封印され魔族の力は衰えた。そのせいで互角だった両者の力は竜族の方が強くなってしまった。 そして、これを気に始まったのが上でも言った魔竜王ガーブの離反。 自らの運命を変えたくてやった事がかえって仇となり、魔族の王に滅ぼされる。 今まで争いのなかった世界に争いが生まれ始め、エルフと協力し、平和を脅かす魔族を地底に封印する事になった。 そして、その後がこの物語。 (長い)よくここまでオリジナルで考えたもんだなー。あたしも。(殆どTRYを使ってるくせによく言う) さぁて、8、9、10です。 まだ、最後まで出来上がってないけど、最後は決まってる!そこまで辿り着けばそこが終りっっっ!!(当たり前だって) 頑張ろうぞ。我。 [8] 出てきたのは魔族。 「魔族、地底の守護者として君臨する冥府の王。 すべての母が世界を3つに統一し、戦争をなくしたとされる」 黒い眼鏡を掛け、本を開いてテラの王女リナに聞こえるように声に出して読み上げる。 流石に知識の賢者と言われているマティリナスでもすべて覚えているわけではない。伝承などにはいろいろな説があり、全部を覚えているわけではないので辞書を引く事もしばしば。 「すべての母?」 殆ど政治などを姉のルナに任せていた為に全然歴史とかの勉強をしていないリナは分からずにおオム返しのように聞いた。 「金色の魔王、ロード・オブ・ナイトメアの2つ名を持っている魔族、竜族、人間の母」 下を向いたまま、リナの座っているイスの後ろまで歩いてくる。それから、背凭れに肘をついて、リナの顔を見る。 「続けますよ。3つに統一したというのは、天空、地上、地底。 天空は竜族──神族のこと──の住処。 地上はエルフの住処。だけど、私達人間が制圧し、エルフは絶滅してしまった。(ラーク、リネアごめん) そして、魔族はさっき言った通りです」 「でも、魔族は人間の住む世界に出てくるから封印したってわけ、か・・・・・・」 こくり。マティリナスが肘を背凭れから離して頷いた。 「どぉ?行ってみませんか?」 「何処に?」 「封印した張本人達の1人に」 「1人?何人かが封印を施したの?」 「全員で5人。赤法師レゾ、竜族の巫女、神族の運命の女神。死神、主君スイフィード」 指を1つ1つ折りながら数えていく。だが、封印したのは120年前。普通の人間がそうそう生きられるわけない。それに、神族、竜族が生きていたとしても、人間は天空にはいけない為に会えない。 リナが真剣な顔付きで悩んでいるのをみて、くすりと笑った。 「生きていますよ。私の大切な師、赤法師レゾは」 「赤法師・・・・・・レゾ?あの、有名な賢者のこと?」 ここにも賢者はいますよ。しかも、有名じゃなくて悪かったですね! という感情がこもっているのだろう。ムッとした顔がリナの頭に残る。 「そうです!生きているんです。 で、行きます?レゾ様の所へ」 「そうね。行ってみましょ」 怒り口調のマティリナスの方を向いて、一回ため息を吐いてから少し笑いながらリナは答えた。 [9] 滅ぼされた村。 アルトリ。ルークとミリーナの故郷であり、魔族が封印されている地域に一番近い場所。いつもならば花を摘み、水をあげ、畑仕事に勤しむ人を見る事が出来る村なのに・・・・何もない。 家も畑も、村のみんなが大事にしていた花壇も・・・・・・。なに1つ残っていない。 一面焼け野原。そこに、代表的な魔族、レッサー・デーモンがウジャウジャしていた。 「そ、そんな・・・・オヤジ・・・・おふくろ・・・・・。リディア・・・・・」 ガックリ・・・・・涙も出ず、なにもかも失い気力がなくなり立つ事が出来ないルーク。 だが、ミリーナは立ったまま魔族を睨んでいた。 魔族を倒しても、村の人達は帰って来ないと分かっているのに・・・・・・なにかをやらねばこの気持ちは到底おさまらない。 ゴォォォォォ──────! 「魔結球(フリーズ・レイン)!」 フッと空に大きな青い光りの球を投げると、そこから氷柱が無限に出てくる。 これは、自分にも制御できないが、レッサー・デーモンが放ってくる炎の矢(フレアー・アロー)を消す事が出来る。それだけの為に唱えたもの。 本番はここから。 「烈閃槍(エルメキア・ランス)!」 数十本の光の槍がレッサー・デーモンに向って放たれる。その殆どは命中して、レッサー・デーモンは消えていく。が、逃してしまったものもいて炎の矢を同時に放ってくる。このタイミングじゃ避ける事も魔法で防御する事もできない。 「空断壁(エア・ヴァルム)」 放ったのルーク。気力を無くしていた筈のルークは何時の間にか立ち直り、ミリーナを援護した。 ミリーナはフッと笑い、親指を立てて合図を送り、呪文を唱えはじめた。 「もう一回烈閃槍!」 毎度お馴染みの魔法教室〜(←登場シーン変わる) 魔結球(フリーズ・レイン)・・・永続的に氷柱を出し続ける術。但し、制御は不可能。消す時は球を破壊すればOK。 烈閃槍(エルメキア・ランス)・・・これは、スレイヤースの中ならお馴染みの呪文ですね。精神にダメージを与える光の槍を生み出す術です。 空断壁(エア・ヴァルム)・・・自分の周りにいる人達も結界の中に包み込む術。実践には使える術なので、皆さん覚えましょう!(出来ないって!(笑)) 今回はエンディングなし〜(只、めんどくさくなっただけ) ミリーナの術はレッサー・デーモンを全部倒し、ついでに氷柱を出し続けていた球までも破壊する。 「ごめんな。ミリーナ。俺、自分を見失っていたんみてーだ。だがよ、俺にはミリーナが居るってわかってな、意識をしっかりと保ったぜ」 「別にずっと放心していてもよかったんですよ」 すごく冷たい言葉を返すミリーナ。ルークは飛びつき、ミリーナの名前を叫び続ける。 「寄らないで下さい!」 「ミリーナ・・・・・・冷たい・・・・・」 「冷たいという問題ではありません!テラへ向いましょう。ルーク。 魔族が封印を破って出てきたのならば、王族も対応を始めたでしょう。私達もそれに参加しましょう。ね、ルーク」 「・・・・分かった。なら、行くか。テラへ」 テラの方向を見ながら2人はしばらくの間そこに立っていた。自分達の親や身内、友達もすべて消し去られてしまったのだ。少しは感情に浸ってもいいだろうと。 「さぁ!俺達のラブラブの旅は続くぜ!!」 「ラブラブじゃありません」 [10] なんなのよ!この塔はっっ!? 「ねぇ、扉開いてないけど、本当にあの赤法師レゾが住んでる所なの?」 「・・・・・死んでいなければこの中にいます」 「し、死んでなければって・・・・・・あ、そっか。120歳以上だもんねー」 魔族の封印が施されたのは120年前。今、生きているとすれば120歳以上なのは当たり前である。 この世界も延命は可能だが、余程大きな魔力と精神力が無いと100年そこらしか延命する事は出来ない。 「わたしが、この塔を出たのは5年前。あの時と変わらぬままならば・・・・この塔には2人住んでいる人がいる筈」 「2人?赤法師レゾともう一人いるって事?」 「ゼルガディス=グレイワーズって言うレゾ様の血縁」 「・・・・ゼルガディス・・・・」 『どうした?そんな顔するなどお前らしくない』 ふと、頭を過ぎる鮮明な声。これは、一体誰だ。 分からないけど、聞き覚えがある。今ではない何処かで・・・・・ 「どうかしました?リナ様」 マティリナスに声を掛けられて、何処かに飛んでいた意識が戻ってくる。 「・・・・会った事なんて・・・ない筈なのに・・・・・なんとなくだけど、分かるの」 「前世かなにかに一緒だったのかもしれません。じゃあ、中に入りましょうか」 「中にって扉が閉まっているのにどうやって!?」 「ちゃんと仕掛けがあるんです。ここの塔の持ち主のレゾ様っていうのはお茶目な方ですから」 ニッコリと笑うと、扉の近くまで歩いていって壁を押した。すると一箇所だけ凹み、扉はゆっくりと開いていく。 「へー。からくり式なのね。とすると、やっぱりお茶目な奴ね。赤法師レゾは・・・・・・・」 この世界テラではからくり式の家を作る奴はお茶目だと唄われている。 どこからそんなモノが誕生したかは分からないが、子供のオモチャみたいなモノだからそう言われたのかもしれない。 「さてと、早く中に入って下さい。扉を閉めますから」 「分かったわ」 リナが扉を通り中にはいると、レンガで建てられていることを知った。そして、外とは基本的には同じ構造をしている事と、からくりに使われる機材が殆どない事を知った。 マティリナスは珍しげに見ているリナを気にしないでレバーをおもいっきり下に降ろした。すると、今まで開いていた扉は閉じ、今まで通りの姿を外に晒す。 「さて、行きましょうか。レゾ様はこの塔の最上階にいますから」 こくりと頷いてリナは一歩踏み出すと、床が抜けた。 「わぁぁぁぁぁぁっっっっ!!なんで抜けるのォォォォォォオ!!!?」 「あ。言い忘れましたが、あの方はこういう原始的な罠が好きなので注意してください。って、遅いみたいですね」 「おぉぉそぉぉぉいぃぃぃわぁぁぁぁぁぁ!!!」 穴の中に落ちていくリナからの悲鳴のような声を聞きながら、マティリナスは心の中で合掌をしたのは、リナには秘密。 結局、翔封界(レイ・ウイング)で上がってきて大事には至らなかったものの、リナは何度も何度も引っ掛かり、上へはそんなに早くは着かなかった。 「あぁぁぁぁ!!もー嫌ッッッ!!」 最後の一言でさえ、落とし穴にひっかっかりながら言い放ったもの。 ───────────────────────────── お茶目なお爺さんの襲来はもう少し先。 ではではここで、少しオリキャラの説明を入れましょう。 シャーリック=イルード=マティリナスさん。(愛称ティス) 緋色──別名知識の──の賢者と呼ばれる女の子。年齢は12歳。 膨大な知識量は自分の義理の父親──賢者ね──と赤法師レゾに教わったものばかり。緋色の髪の毛は耳の下で切り揃えられ、同色の瞳により明るい感じより暗いイメージを持たせる。 背は高く、とても12歳とは思えないぐらい。 服装は神官服だが手は出さず、下は足が少し出るくらいの長いスカート。マントは切れ目が入っているもので走ればヒラヒラと片方ずつ靡く。 だけど、完璧すぎるように見える彼女にも弱点が数多く存在する。 まず1つめは大の犬嫌い。2つめは家庭全般──食事を作ったり、掃除をしたり──がまるっきり駄目。それに偏食で食べれるものが少ない。体力もない(運動神経は抜群) 殆ど表情の変化もなく、言う言葉はいちいち理論的だがそれが彼女の美点の1つでもある。 本当の父親は死んでしまっているが、妹は存在する。物語の中に出る予定。 ティス;別に弱点まで出さなくてもいいでしょう?(↑を見ながら) いいじゃない。一応は。 ティス;書き殴り大辞典に載せてもらえばいいと思うのですが? あ、えっと・・・・・・その・・・・・・てへ。めんどくさい。(←本音) ほら、別にそれが嫌だって言ってるわけじゃないんだよっっ!いっぱいキャラクターが居るし、説明となると文章が長くなるじゃないっ!だから、ね。 ティス;焦っていっているのがバレバレですが?どうせ、そこまでいく接続料が勿体無い。と思っていらっしゃるんでしょう? ぎくぎく ティス:大当たりですね。こんな人に創られた私というのも凄く悲しいモノです。誰か新しい主にでもなってもらえないでしょうか? だぁぁぁぁ!!やめぃ!私のオリキャラが減るぅぅぅっっっ!! だから残れ。絶対に残れ。いいから残れ。 ティス:じゃあ。(手を出す) なに?この手。 ティス;お手当て下さい。危険な目にいっぱい合うのですから。 いやじゃぁぁぁぁぁぁ!(怒) |
6707 | Solar a Country(テラ)11〜13話 | 桜井 ゆかり | 6/6-18:47 |
記事番号6698へのコメント テラの力が弱まる時、空高く舞い上がる島。 それと同時に違う国が見えるようになる。 たった1つしかないテラ。壊れる時にすべての記憶は復活する。主君、スイフィードに封印された記憶は。 こんにちわーー!ゆかりですわ〜〜〜〜vvv 今日はすごく、すっごくご機嫌です。 理由は怒りが溜まったからです。その怒りを無理矢理喜びに変えたのです。だから本当は、かなりご機嫌ななめだったりして。 ではでは、手早く進めましょう。11〜13です。初めてガウリイ登場です! [11] まさか。トリック解明。 「たぁ─────っ!」 「おわぁぁぁぁあぁ!!」 「ひやっほい!」 3人はそれぞれ別の言葉を口から吐き出しながら大空から落ちてくる。 先ほど空中で魔王竜(ディモス・ドラゴン)を消し、浮いているものがなくなったので、3人は空中から落ちてきている。 片羽根をもぎ取られていた筈のレイだが・・・・・何時の間にか羽根は生えていて、ぴんぴんしている。 「お、お前等!どうして、落ちているのにそんなに楽しそうにしていられる!!」 「どうしてって・・・・・・私達半分は竜なんだよ。いざとなったら『飛ぶ』っていうのも手段のうちに入っているんだから」 兄である──背は低いけど・・・・──レイは羽根が生えているが、マリーには羽根は生えていない。それなのに飛ぶ? 悩みながらレイとマリーを交互に見ているゼルガディスを見て、マリーは笑いながら答えた。 「ああ。羽根?あたしは人間の血筋の方が濃いから。羽根なんてないよ。 でも、その代わり羽根がなくても飛べるんだ」 ブンッと近付いてくる地上からマリーだけ離れていく。本当に飛んでいるのだ。魔法もなにも使わないで。こう見ていると風の精霊のように見えるのだが、じーっと見ているわけにもいかない。 ゼルガディスは必死に呪文を唱えはじめる。 「たく。ンな呪文じゃぶつかるぞ。ほら」 ぐぃっとレイがゼルガディスの袖を掴んで羽根を羽ばたかせて、地面に降りた。 降りた場所はテラの中心部の街の筈だが・・・・暗い。いや、正確に言えばこの辺りの雰囲気が暗い。 人は一人もいなく、動物達も姿を消している。只、噴水の水音が静かに耳に入ってくる。 「何時か決着つけないといけないと思ってたけど・・・・・こんなに早く決着の時がやってくるなんて・・・・・!一体運命の女神はなにをしているの!!?」 スッと地面に降りてくる彼女の顔にはいつものようなにこやかで気楽な雰囲気が消えていて、真剣な眼差しで空の彼方を見上げていた。 「覇王グラウ・・・・・・あたしがこの手で・・・・・」 「魔族か?封印されていたと言われる魔族の事か?」 「ああ。俺様達はついこの前まで肉体に受けたダメージを回復させる為に眠っていたんだ。ちょうど、200年程な。 ダメージの原因は魔族との戦いにあった。俺様はそんなに深いダメージを負ったわけじゃない。だが、マリーは覇王グラウと戦って相打ちに終って力尽き、眠りにつかせた」 淡々と話していくわりには言葉の重みが伝わってくる。だが、昔にもこんなことがあった気がする。昔といっても今の記憶ではない時に・・・・・・。 「どった?」 「あ、いや。なんでもない」 小さな疑問を心に抱きながらもゼルガディスは話を逸らした。 「それよりだ、この状況で誰もいないのならば魔族に全員殺されたのか?」 「違うみたいだよ。血の匂いは全然しないし、城の人達は何人かいるみたいだし」 「なにか実験でもしたのか?魔族達は」 レイの言葉にマリーがピクリと反応する。なにか思い付いたように徐に口を開いた。 「まさか───!」 「・・・・・・封印を逃れた魔族がいたってことを言いたいのか?マリー」 「それも一つだけど、あの結界は”人間ならば通れる”結界なんだよ!大量の人間達の間に中級の魔族を紛れ込ませておくとどうなるか!!」 「それは、通れる可能性があるという事か?」 拭い切れない気持ちを殺し、冷静な口調で言ったつもりなのだろうが何処となく重い。 「可能性なんてもんじゃない!人間の気配に紛れてしまったら魔族の気配なんて感じない。それが、テラの国の人々のように多い人数だったら・・・・」 そこまで言って顔が青くなりそれ以上は口が動かないらしい。 2人は頭の中でマリーの言いたい事を理解した。 本当に封印されていない魔族がいたとして、そいつがテラの人達を攫っていき結界を自分共々潜らせ、結界の元を破壊した。結界の元は外からも中からも開けらぬるように結界の中側に配置されている為に魔族ではこの方法以外では辿り着く事が出来ない。 「行くか?真意を確かめに。あの結界の張ってあった入り口に」 「そだね。いこっか。行ってみよう!!」 いつもの明るさを急に取り戻したマリーに2人はビックリして目を丸くした。 [12] やっとのことで最上階。 「おや?マティリナスですか?」 「そう。私。お久しぶりです。レゾ様」 師と弟子のの3年ぶりの再会。の筈だが、何処となく暗い雰囲気が辺りを支配する。 「お兄ちゃんは何処にいるの?」 重苦しい雰囲気の中、マティリナスはそれだけ口にした。リナが罠に引っかかっている時に昔の自分の部屋に戻り、置き忘れたものなどを回収した。 義理の兄であるゼルガディスの部屋に入ったもののそこはもぬけのから。いつも持っていたマスコットが消えている事からしても、この塔のなかにはいないと判断できた。 そして、原因がこの人にあるのではないかと思って口を開いていた。 ゼルガディスとマティリナス。この2人はある事件がきっかけでレゾの事が好きではなくなった。 「どうやら、旅に出てしまったようです」 「そうみたいだよ。あたしがここの塔に来た時には既にいなかったんだから」 レゾの意見を尊重する者が、スゥッと横から現れる。服装は黒一色の死神、アリア。 マティリナスとリナ。両方ともしらないニューフェイス。 「あ。あたしの名前はアリア=フリード。死神アリアちゃんとでも呼んでおいて♪」 「死神!?レゾ様の魂を狩りに来たのですか?」 「そうだけど・・・・なにか問題でもあるの?」 「全然!ささっ、どーぞ、おもいっきり狩っていちゃって下さいっっっ!」 相当恨みを持たれているのがここだけでもよく分かる。 マティリナスはレゾをさり気なくアリアの方に持っていく。 「あ、でもね、一回狩らないって約束したから今は狩らない。あたしはね、特殊な死神でね、元は人間だったの。だから、少しだけ死ぬのを伸ばしてくらいの約束ならするんだ」 「それより、マティリナス。なにかあってここに戻ってきたわけじゃないのですか?」 ぴくぴくとこめかみを引きつらせて聞いてくるレゾはマティリナスにとっては恐怖の極致。震え上がり、リナの後ろに隠れた。 「魔族のことを教えてもらいたいの。あたしの名前はリナ=インバース=テラ。テラ王国の王族です」 「・・・あれ?テラの王家の名前って・・・・・インバースだった・・・?セイルーンじゃなかったっけ?」 横からのアリアの声に少しビックリしたが、すぐにあたしは言い返した。 「なに言ってるのよ。テラの王家はインバースよ。あたしのねーちゃんとその前はあたし達のかーちゃん。その前は・・・・・その前は・・・あれ?出てこない・・・・・」 何故だか記憶がそこで途切れているのがハッキリと分かった。出て来ない。 その前は誰だった?おばーちゃん?あれ?名前は?分かんない・・・・ 「だ、大丈夫?ごめんね。なんだか、120年前の記憶ではセイルーンだった気がしたから・・・・・」 「120年?魔族が封印された時に生きてたの?」 「なに言ってるの?封印したのは人間、主君、巫女、女神、死神。 その死神って言うのはあたしの事だよ。言っとくけど」 『なっ!』 3人は一斉に反応した。こんな所で封印した人物に・・・・・そのうちの2人に会えるなどは珍しい事だからだ。 レゾはそれ以上に驚いていた。一緒に封印を施した筈の仲間の声も気配すらも覚えていなかったのだから。そして、魔術を教え込もうとしていたのだから。 本当に運命というのは意地悪なものだ。 [13] ガウリイの旅立ち 「きゃあッ!」 「シルフィ−ル!大丈夫か?」 「ええ。大丈夫です。ガウリイ様」 神聖都市フラウ。巫女や神官が集っている都市が今、魔族に狙われている。 その中で抵抗する人間が2人。長い金髪の髪を持った男性と、黒く長い髪の女性神官。 「まだ抵抗する気?あんたらではあたしには勝てないよ」 茶色の短い髪に黒い瞳のやや表情がキツメの可愛い女の子。彼女(?)は海王将軍(ジェネラル)ダール。 「そんなのは分からないだろう?」 ガウリイと呼ばれた男性が、なにを考えたのかゴトン・・・・と重い刃を地面に突き刺し、剣を柄だけにしてしまう。 「そんなのでなにをしようと?」 「こうするのさ。光よ!!」 いきなり現れた光の短刀でザクッと簡単にダールの左腕を斬り落とした。 左腕は地面に落ちる前に黒い瘴気に還える。そして、ダールの顔に驚きが映ると同時に恐ろしい声を上げた。 「ぐっ───!」 けして女の子とは思えないような声をあげるダール。ここで、やはり魔族なのだと思い知らせれる。 「烈光の剣・・・・・・・・っ!烈光の剣(ゴルン・ノヴァ)が何故人間の手にっ!!? 同族が同族を狩るなど・・・・・!」 易々と斬り落とされてしまった左の腕の部分を抑えながら驚いたように声を上げ、少し足が後ろへと動く。 「烈光の剣?俺の剣の名前は光の剣だぞ」 「アンタはなにも知らないんだね。その剣の事を。 まぁ、教える気はないし、結構ダメージを食らったし、帰る。でも、絶対に許さないからな。このあたしにダメージを与えた事を!首を洗って待っていなさい」 負け犬の遠吠え。そんな言葉を言葉を言ってからダールは闇の中に消えるように精神世界(アストラル・サイド)へと逃げ去った。 「もう行かれるのですか?ガウリイ殿・・・」 フラウの神官長、そして、シルフィ−ルの父親であるエルクがゆっくりと聞いてみた。別にこの都市にガウリイの意志に関係なく留めておこうとは思っていないが、この言葉以外は頭の中から出てこなかった。 「そうですよ。もう少しここに居たっていいじゃありませんか」 シルフィ−ルはまだここに居て欲しいという気持ちが強く、ガウリイを留めようとする。 「いや、魔族が現れたのならば、他のところでもオレの力が必要だろう。だから、ここから旅立つ」 「じゃあ、わたくしも・・・・・・!」 スッとロッドを召喚して、両手で強く握った。 付いていきたい。役に立ちたい。 その思いが強くなり強めの口調でガウリイの瞳をジッと見ながら言った。 「シルフィ−ルがいなくなってしまったらここの人達は悲しむだろう? それに、神官長の娘なんだ。ここの人達の生活が大変になるだろう?」 「そ、それは・・・・・・」 シルフィ−ルはこの都市の白魔法の教え手。それがいなくなったら復活(リザレクション)が使えるものがいなくなる。 魔法教室1 復活(リザレクション)・・・周りの生命から少しずつ気を分けてもらい、それをエネルギー源として怪我を治す術。 魔族が封印されてから120年間、魔法はこれぽっちも発達していない。それよりか、退化していっている。魔法を使えるものは少なくなり、魔道士協会も50以上あったはずだが、今では20ぐらいまで減ってしまっている。 「まぁ、また来るさ」 春の陽射しのような笑顔を向けガウリイは都市の外へ向って歩き出した。ゆっくりと・・・ゆっくりと歩いていく。 シルフィ−ルは数歩前に踏み出すものの、それ以上は体が動かず、声を掛ける事も出来ない。只、歩いていくガウリイを見ている事以外出来なかった。 引き止めることも別れの挨拶を送ることも出来なかった。 わー。無事に(?)13まで。順調ではないけど来てしまった。 短い文章で何人もの人で分けてるからここまで早いんだけど。 では、オリキャラ紹介。第弐弾! マリー=カーティスさん 真紅の短い髪に同色の強い意志を持った瞳の女性。姿は16歳ぐらいの人間だが、推定年齢は560歳。(起きていた時の年齢に照らし合わせると26歳) そして、今の時代より200年前に眠りにつき起こされたばかりの半竜族。仕えているのは地竜王で、火竜王の者とは犬猿の仲。 マリー=シャイエという名前とマリホンゴット=スターウォンという2つの名前も持っており、それぞれに異名も持っている。 真紅の悪魔、破壊神。棒術の天才児などなど。 明るい性格をしている彼女だが、暗い過去を引き摺っている。彼女は一度ある村を破壊し、魔族に近い存在とされ竜族から嫌われている存在なのである。 好きな事はとりあえず兄(レイ=カーティス)をいじめる事。 嫌いな事は人の死を見る事。 何故だか分からないが、2度と・・・・いや絶対に悲劇を起こさせないと胸に誓っている。それも、どんな悲劇かも分からないのに。 マリー:はぁ〜い。今ご紹介に出てきましたマリーでございます。 いつも何処からか出てくるね。みんな。 マリー:こっちにも秘密ってものがあるんだよ。って、それよりも、聞きたい事ってないの? じゃあねー、どうして村を破壊したの?(絶対に聞いてはいけない質問) マリー:聞かないでよっっっ!!()内では説明をいれてるのにぃぃ!!バカバカッ!ゆかりなんて火竜王よりも嫌いだぁぁぁ!! 火竜王よりって・・・・そんなに嫌いなの?火竜王様。 マリー:あんなのに“様”なんてつけないでくれる?寒気がするから。それに、地竜王様の敵。ならばあたしの敵でしょ!? じゃあ、そこにいるマティリナスちゃんは?(指差し) マリー:アイツも嫌いッ!いっつも気取ってばかりいて。 年上が年下に言う言葉かな?それ・・・・ マリー:いいじゃない。アイツは賢者なんだから。 賢者となにか御関係が?言葉と。 マリー:いや。なんとなく。 (マティリナスちゃん、怒りのあまり近付いてくる) 〜〜〜〜〜〜恐いよーーー!この2人の状況! 私は逃げに走るわ! 多分、これから魔法合戦になるから皆さんも早く逃げた方がいいですよ。 ではっ! |
6708 | Solar a Country(テラ)14〜16話 | 桜井 ゆかり E-mail | 6/6-20:13 |
記事番号6707へのコメント 2つの赤い光が一瞬だけ現れる。テラではない何処かで。 大きく光ることなくすぐに消えてしまう。 だけど、封印は何時まで持つかは分からない。 封印を掛けた者も、封印を掛けられた者も。全員封印が解ける時などしらない。 だけど、何時かは絶対に解けるもの。ここ1000年は解けていないが。 表の人間がどれだけ精神力が強くても目覚める時は目覚める。運命という言葉を借りれば。 前振りはこれだけ。 続きいきます! [14] なんてことするんですッッッ!生ゴミ魔族! 私はどっちと対峙しているのだろう。 魔族のゼロスさん?それとも、竜族のフィリアさん? 魔族は人間と竜族の敵。竜族は人間の敵ではないが、私の記憶を封じ、周りの状況まで変えてしまった私の敵。 アメリアはゼロスとフィリアから一定の距離を取って、ファイティング・ポーズをとった。 本気を出しても、魔族と竜族に勝てる訳がない。だけど、なにもしないよりは… 「アメリアさん!?」 「なにを為さるつもりですか!?アメリアさん!」 竜族と魔族。殆ど反対の存在が同じ反応を示す。 自分のやっていることがどれほど愚かなことかちゃんと分かっている。 「なにって決まっています……。まず、魔族は人間の敵ですから。 そして、竜族。私の記憶とともに世界を変えてしまったのは許せません!! だから、私は……戦います」 人間としての記憶すべてを取り戻したアメリアには何を言っても、頭の中にはこれ以外の言葉はないだろう。『目の前の2人は敵』 小さく呪文を唱えて牽制するように放つ。 「雷花滅撃吼(ラザ・クロウヴァ)」 無数の光の粒がブリザードのようにゼロスとフィリアに降り注ぐ。ゼロスは精神世界(アストラル・サイド)に逃げ込み、フィリアは閃光の吐息(レーザー・ブレス)を放ち相殺してしまう。 「アメリアさん!!落ち着いて下さい!」 興奮気味のアメリアに向ってフィリアが叫ぶもののアメリアは呪文を止めようとしない。 ゼロスはアメリアの後ろに出現して、動きを止めた。そして、呪文をこれ以上唱えられないように口付けして止めた。 「ぜ、ゼロスゥゥゥゥッッッ!!あ、アアアアアメリアさんになにしてるんですかぁぁぁぁぁ!!!!」 いきなりの事態に竜族の独特の発音で呪文を唱えていくものの、にこやかな顔のままアメリアを盾にするように前に出した。 「くっ!卑怯極まりない!!」 「おや。僕は魔族ですよ。これが普通なんですよ。僕としては」 フィリアはスッと左足を地面について、右足に付いていたモーニング・スターを右手に持った。 「離してください!ゼロスさんッ!!」 「嫌ですよ」 ゼロスの腕の中でもがくアメリア。だけど、一向に離れる気配がない。 「この生ゴミ!!」 ひくくぅっっっ! 一瞬震えるゼロスにアメリアは隙を見出して足ばらいをし、一本背負いで投げ飛ばす。 フィリアは同時にモーニング・スターをヌンチャク型にしてゼロスに向って振り下ろした。刺々したところがゼロスに刺さる。 シュンっと刺さったと同時にゼロスの姿が掻き消え、そして、出てこなくなった。 どうやら、精神ダメージと肉体的ダメージ(あるのか?魔族に)が多すぎて回復に専念しているのだろう。それか、いじけているのか。 フッとフィリアは勝利の笑みを浮かべるが、アメリアはまだ緊張の糸を切ってはいない。殺気めいたものを放ってフィリアを睨んでいた。 「止めて下さいっ!!私には貴方と戦う理由がありません!!」 それに気付いたフィリアが悲鳴に近い声でアメリアに向って叫ぶ。 「私にはあります。人間として、この世界を束ねる王族として!」 今の王族はインバース。だけど、それは運命の女神が天空から1人残らず消えてしまった為に簡単に運命が変えられるようになってしまった結果。 アメリアを探している人間がいなくなるように王国のデータを上書きした。セイルーン家の者ではなくインバース家の者に。 それを……すべてを思い出してしまった。悲しい現実を。書き換えられてしまう前の記憶すべてを。 手の甲で口を拭い、小さく呪文を唱えはじめる。 「父さん、母さん、姉さん、クリス叔父様、アル、ランディオーネ叔父様、お爺様……」 自分の親族の名前を言っていく。声は弱々しく、大きな瞳からは涙が溢れている。もう2度と会えない親族達。 「炎の祝福(フレイム・ブレス)!!」 物理的なダメージを与える呪文。本来ならば人間には扱えない筈の呪文だが、悲しみで自分を見失い言葉が出てきたのだろう。女神だった頃に使っていた神聖魔法の力ある言葉(カオスワーズ)が。 グワァァァン!! 爆発音が聞こえ、森に炎が燃え移る。 だが、あまり気にしないで周りを見渡すがフィリアの姿は何処にもなかった。 「浄結水(アクア・クリエイト)」 バシャァァン! 水が召喚され、森を焼き尽くすほどの炎が消え去った。 魔法教室 雷花滅撃吼(ラザ・クロウヴァ)・・・小さな無数の光の粒がブリザードのように吹き付ける。命中した相手の精神と肉体の両方にダメージを与える。 炎の祝福(フレイム・ブレス)・・・神聖魔法では数少ない火竜王の力を借りて物理破壊効果をもたらす攻撃呪文。目標を火炎フィールドで包み込み焼き尽くす。 浄結水(アクア・クリエイト)・・・全く水分がない場所でも水を召喚する魔法。サバイバル向きの魔法の1つ。 これから一体どうすればいいのだろうか? 何故だか虚無感を感じ立とうとすら思わない。 ここから出ていっても誰も自分を知るものは居ない。自分の親族ももう居ない。 いや、でも、インバース家の人に会ってみたい。この世界を預けても、任せても良い者なのか自分の目で確認したい。 それだけに…私は……それだけの為にこの森から、生き延びる。 自分の体重よりも何故か重たい自分の体を引きずりながら森を出て一番近いリアーヌに向っていった。 [15] バッタリと遭遇。 「もう、そっちに行っても何もないぞ」 ぴたり。黒髪の青年、ルークと銀髪の少女、ミリーナはゼルガディスの言葉を聞いて足を止めた。 「なんだと?」 「ガラが悪い奴。言っとくけどね、城下町の人間は全滅。城には用はない筈でしょ?」 マリーの言葉にルークがかちんととなって、心底嫌なような声になった。 「誰がガラが悪いって?」 「おめーだ。このツンツン頭」 マリーのバックアップをするようにルークにとげのある言葉を言う。 それが元でルークとレイは喧嘩を始めるが、マリーもミリーナも一向に止めようとしない。それどころか、2人を除いて話をはじめてしまう。 「詳しく教えては貰えませんか?城下町の状況を」 「魔族が封印を破ってテラに現れた事は知ってる?」 「ええ。何度か低級の魔族には会ってましたし…」 「魔族がここを襲ったらしく、誰も居なくなっている。だが、城の人間は無事だ」 ズバッと言い切りゼルガディス。ミリーナはだが眉を顰めるだけでそれ以上は反応しない。 「ん?」 「どうした?」 「あ……なんでもない……気にしないで話を進めてて」 『なんですか?竜王様』 他の人には聞こえない声。竜族同士が使えるテレパシーで自分を呼んだ主に向って言った。 『分かりましたよ。迎えに行けばいいんでしょ?迎えに行けば』 自分の主に向って投げやりに答えてからゼルガディス達の方を向いた。 「ちょっと用事が出来たから、レイ。アンタ付いていって。目印になるから。 魔竜吠(グ・ル・ドゥーガ)」 グガァァァァ────ッ!! すぐさま用件だけを伝えて、印を軽く結び、召喚呪文を唱えて淡い光を生み出して空へと投げると、不気味な吠え声を上げて出てくる真っ黒い竜。 「なっ!魔王竜(ディモス・ドラゴン)!?」 ハッとジャンプし、素早く魔王竜の背中に乗っかるマリー。 「あ。名前まだだったね。あたしはマリー=カーティス。そこのレイ=カーティスの妹。そして、竜神の力を受け継ぐもの。覚えといてね」 バサバサバサ……… 魔王竜の大きな羽根が動き出し大空へ舞い上がり、東へと向っていった。 「あーあ。行っちまった」 「変な奴だなアイツは」 「変じゃねぇ!」 「んだと!?お前も同じようなもんだろう?」 ルークとレイは何処か反発するものがあるのだろうか。また喧嘩を始めてしまう。 「どうする?このあほ達」 「このままにしておくのも嫌ね。何処かにでも埋めておこうかしら?」 不敵な笑みを浮かべるミリーナ。ゼルガディスは数歩下がって、声を掛けない方が良かったのかもしれない…と少し後悔を覚えた。 が、こうなってしまった以上どうしようもないなと思って諦めた。 [16] 推測なんだけど……。 「魔族を封印するのにはどうしても魔の力が必要だったんだ。 だから、冥王(ヘルマスター)に忠実そして自由に動けるあたしに白羽の矢が立ったわけ」 アリアはレゾに出されたイスに座りながらまず、自分がどうして封印にたずさったかというのを簡単にリナとマティリナス、レゾの3人に説明をした。 昔は人だった為に普通の死神よりは自由に動けるところに目を付けられたらしい。 「それで、魔族はどうして封印されたの? 王族の記録にはプロテクトが掛かってて、おかしな事に誰も解けないのよ」 そのプロテクトを掛けたのはインバース家ではないのだから解ける筈がない。だが、その点を理解していない為にどう頑張っても解けない。 「魔族を封印した理由は、すべての母が3つに統一した世界を侵食したのです。ですから、竜族の主君スイフィードが先頭に立ち封印したわけですよ」 手が空いたマティリナスが入れた紅茶を飲みながらゆっくりと話していくレゾ。 殆どの自己紹介も世間話も終って和やかな雰囲気で話を進めていた。 「でも、ちょっと待ってよ!あたし達人間だってエルフ族という地上を護る者を絶滅させてしまった筈。何故あたし達はここに居る事が出来るの!?」 「それはヒトにも、魔の者にも分かりませんよ」 「竜族か神族が知っている筈だけど、そんな知り合いなんていないしねぇ」 普通に考えれば、人間を生き続けさせるのになにか利点があったのではないだろーか。 例えば、なにかをさせる為……とか。 「エルフ族の代わり、ではないですか?」 スッと口を挟んだのは、何時の間にかここに戻ってきて手短にあったイスに座りながら紅茶を飲んでいたマティリナスだった。 「例えば、3つの1つが欠ければ世界は欠落する。というのがあるとしましょう。そうしたら、エルフ族は地上から消えれば世界は滅んでしまうが、人間はエルフを狩るのを止めない。だったら、人間を地上の守り人にしてしまえばいいのではないか。と、こういう具合に」 ここで一息ついて紅茶を飲む。 ここでなにか意見が出ると思ったのだろうが、いくら待っても意見が出なかったので先を続けた。 「幸いにもこの時は運命の女神が天空から姿を消したということでしたし、運命を自らの手で変えられるようになったのですから、やろうと思えば出来なくはないでしょう」 流石は知識の賢者。ここまで考えてしまうなどとは思ってもいなかった。 ここまで来てしまえば師であるレゾすら越えてしまっているのだろう。知識の点だけでは。 「成る程ねぇ。でも、どうしてそう思う訳?」 「例えば。と言った筈です。世界が欠落するのであれば、世界を護る為に生きている竜族や神族がなにも手を加えない場合の可能性はゼロに等しいでしょう? それに、人間を全員排除してもエルフが絶滅するのは目に見えていた筈です。だったら、『エルフ』ではなく『人間』を守り人にしてしまえばなんの意識をすることなく、その場にさえ居てくれれば十分守り人としての条件は満たす訳です」 「でも、仮にそうだとしても竜族とか神族とかがそういうことする? 一応はカミサマって部類に入る訳でしょ?」 カミサマ。その言葉で自分を指差しているのが1人。無論、死神アリア。彼女も一応は下級のカミサマの部類に入っているのである。一応ね。 だが、3人は全然気付かないようで話を進めてしまう。 「ですが、一時期同族を狩ったという伝承まで残っているのです。そういう心を持ってたとしてもおかしくはないでしょうねぇ…」 少し顔を顰めながら答えるレゾ。そして、マティリナスに顔を向けた。 「どうです?マティリナス。マティリナス?」 「あ……ご、ごめんなさい。レゾ様。ちょっとだけ行ってきてもいいですか?」 「ええ。良いですが。いいですか?くれぐれも無理はしないよう」 あえて、どうしてか。というのをレゾは聞かなかった。レゾにも分かったからだ。マティリナスがなにをしようとしているかが。 「分かっています」 ちゃんと答えを返した後、窓から飛び降りる。リナはなにがなんだかよく分からないといった表情でレゾに問い掛けた。 「魔族が来ただけですよ。リナ王女様は座ってゆっくりとお茶でも飲んでいて下さい」 「で、でも…!ティスだけじゃ殺られちゃうわよっっ!!」 「マティリナスは高度な魔術すら操ることが可能。まぁ、危ないのは魔族の方ですねぇ」 ニコリ。笑ったように見えたのは、あたしの気のせいだろうか? オリキャラ(マリーさん)の紹介こっちでやればよかったかもしれない。 まぁいいか。 とりあえず、オリキャラ紹介はなしにして、テラの文明説明。 恐ろしく計画的に創られたテラ。文明の進歩は殆どないに等しい。 何千年という歴史が続いているテラは普通ならば文明の進化があっていい筈となのだが、一向にない。反対に衰えていっている。 竜破斬(ドラグ・スレイブ)を使える魔道士は今のテラでは数人やっと使えるぐらいのもの。 そして、魔族に対する知識も少なくなってきている。 その為に近くで現れても怯えるものは少ない。それよりも魔族だと言われてピンッとくる人達も何百人か居ればいい方。 しかも主君は石だし、魔族で魔竜王は滅びてるし、魔王の欠片は封印されてるし。こんな知識などは全てが王宮の図書室の本棚に並べられているが、プロテクトが掛かっていて今のところ読める人物はただ1人、アメリアのみ。 という訳です。 ではまた今度。 |
6718 | Solar a Country(テラ)17〜19話 | 桜井 ゆかり E-mail | 6/9-00:07 |
記事番号6708へのコメント 西から昇ったお日様が東へ向ってって歌ありましたよね?天才バカボンで。中学校までその歌のせいでどっちからお日様が昇ってくるか分からなかった……(汗) あほですね。私。 それでは17〜19です。 何処かで外伝でもかこーっと♪ [17] 海王神官ミルグラン。 スッと風の魔法を使ってマティリナスは軽やかに塔の入り口の前に降り立った。 「魔族がこの塔に何のご用です?」 「あらら?なんで分かちゃったよー。つまんないよー」 「こ、子供!?」 ガサゴソと茂みの中から姿を現わしたのはオレンジの髪の魔族。海王神官ミルグランだった。 「なによ。いけないって言いたいよ?」 「いえ。只、貴方の上司様って……ロリコン?」 「きーーー!!ダルフ様はロリコンじゃないよー!!只、可愛いものが好きなだけだよ────っっ!!」 ジタバタジタバタと手足を動かしその場で大暴れするミルグラン。それを制するように声を掛けた。 「そんな暴れかたをする為だけにこんな所まで来たのですか?」 「ぶー。違うよッ!!ここに住んでいるものを殺しに来たのよっっっ!!」 叫ぶと同時に黒い閃光が放たれるも簡単に避けきる。そして、避ける動作とともに呪文を放つ。 「まずはこれからです。海王滅殺斬(ダルフ・ゾーク)!」 側にあった沼から水が溢れ出し、鋭利な刃と化してミルグランに次々と襲い掛かるが、ミルグランがスッと右手を出すと四散してしまう。 「あたちはダルフィン様の部下ミルグランよ!そんなものが効くわけないよッッッ!!」 海王から作り出されたものには海王の呪文は効くかどうか。試したかっただけ。 結果はご覧の通り。これでは他の腹心の呪文も効きそうにありませんね…… 「まぁ、効く筈はないとはおもいましたけど確認です。じゃあ、本気を出しましょうか」 いつもは洋服で隠れてしまって見えない手を、裾を肘が出るくらいまで捲り上げる。腕は白く、細く、なにかをやったらすぐにでも折れてしまいそうな腕だった。手首には対になっている緋色の呪符(タリスマン)。 魔王様がゼロスという魔族に与えた呪符と同じ物。だけど、魔力増幅器ではない。只の制御装置。 「なっ!魔力増幅の呪符よ!!?」 「後は、この指輪を抜いて……。言っておきましょうか? 私の魔力は桁外れです。この指輪が封印の役割をしていたのです。 さて、これを取ったらどうなるかお分かりですね?」 普通の人間の魔力の5倍ぐらいを体に秘め、バラバラになりそうな痛みも何度も経験していた。そして、最後は封印という手段をとったのだ。指輪に封印の魔法を掛けて。 「黄昏よりも昏きもの 血の流れより紅きもの……」 「竜破斬(ドラグ・スレイブ)?あたちにはそんな生半可な呪文効かないよ」 「残念。不正解」 ニヤ。マティリナスの口元にだけ笑みが浮かび、反対にミルグランに動揺の色がが走る。 あまり世の中には知られていない呪文。そして、人間が使える最高の術竜破斬と力の源を同じとする呪文。 「魔王剣(ルビーアイ・ブレード)!」 パァァァ───! 呪符が輝き、手に赤黒い剣が生まれる。驚いている間に刃は振り下ろされ、肩から2つに両断されていた。 「くぅ!キャァァァァ────ッッッ!!」 ──ダ…ルフ…さ…ま…ァァァァッ!! 声に為らぬ声はダルフィンに届く。だが、ここにいない彼女の上司にはなす術はなく、ミルグランは静かに消滅した。 そして、刃を消すとマティリナスは指輪をはめてその場に座り込んだ。 魔法教室♪ 海王滅殺斬(ダルフ・ゾーク)・・・大量の水がないと発動しない海王ダルフィンの力を借りた呪文。その為に海王神官であるミルグランには効かなかった。 緋色の呪符(タリスマン)・・・魔法ではないけど、魔法の道具(マジック・アイテム)。彼女(マティリナス)専用の呪符。魔力の暴走を抑える働きをしている。両手首の呪符と指輪で形成されている。 竜破斬(ドラグ・スレイブ)・・・唱えられはしなかったが、リナの必殺技(笑)人が使える最高の呪文。力の源は赤眼の魔王(ルビーアイ)=シャブラニグドゥ 魔王剣(ルビーアイ・ブレード)・・・同じく魔王(ルビーアイ)=シャブラニグドゥを力の源とする呪文。だけど、竜破斬の魔力を両手の中に凝縮して作りだす剣な為に光の剣と同等の威力を持つ剣が出来上がる。マティリナス&ルークの隠れ必殺呪文。(長いなー。今回…) 「ミルグラン!?」 「どうしたんだい?ダル」 「ミルグランが…人間に滅ぼされましたわ…」 「あの子が、かい?」 「でも、再生は可能ですわ。ミルグラン。貴方だけ再生が可能。だからちょっとだけ待っていて。絶対に再生させてあげますわ!」 そう。絶対に復活させてみせますわ。 手に持った1つの石を固く握り締めながら心の中で強く誓った。 [18] 少しばかりの希望の光。 リアーヌの宿屋の2階。アメリアは部屋にこもりっきりで、まだ街の見学や高いところ巡りもしていなかった。 「まだ、外に出る気に為らないの?」 ベットに腰掛けていた真紅の髪の女性、マリーが──何度目かは分からないが──重い口調で聞いてみた。 3時間ぐらい前にマリーはここを訪れた。竜王様の命令とあらば何処まででも行き、確実に任務もこなしていく。それが、半竜として、人間の血の方が濃い者として、それくらいしか出来ることがないからだ。 「言っといてあげようか?あたしだけは貴方を知っている。竜族の呪法なんかそんなに効かないし、眠ってから別件だったんでしょ。ここ100年は眠っている筈だったんだから」 彼女はあと100年以上は目覚める筈がなかった。だけど、なにか強い干渉を受けて目が覚めてしまったのだ。すべての傷が癒える前に。 「アメリア=ウィル=テラ=セイルーン。このテラの王族の名前。まぁ、竜族が殆どの人の記憶を入れ替えるなんて大それた事をするなんてよっぽど大切な存在なんだろうね」 自分の名前にアメリアはピクリと反応した。 記憶が消されてしまったこの世界。ただ一人だけ私の名前を知っていてくれる人物。 「大丈夫ですよ。私はすぐに死にますから」 「なんで?」 「父さんも母さんも姉さんももういないんです。だから………!」 パシィィィ────ンッッ!! すぐさまマリーが手を上げた。アメリアがキッとマリーのことを睨んでなにかを言おうとする前にマリーが先に口を開いた。 「どうしてそういう暗い考えしか出来ないの!!?いーい?一度しか言わないからね。残して逝く者よりも残されて生きていく方が強いんだよ。 ま、少しでも頭に叩き込んでおくことだね」 「生きていく者のほうが強い……?」 オウム返しに聞いてくるアメリア。だが、マリーは無言を決込んでしまって答えを返してくれない。だけど、すぐに分かった。 「ふふっ……。こんなことを知ってるなんて、一度大切な人を亡くしてるんですね」 「ンなわけないでしょ。あたしは竜よ。半竜だけどね」 「人間としての部分があるんなら、大切な人いたんですね」 クスクスと笑いながら言い切ってしまうアメリアにマリーは沈んだ顔になってしまう。そして、小さな声で言った。 「確かに居た。もう2度と会えないけどね」 悲しい過去。そして、人間として過していた一番幸せだった時。だけど、もう戻れない時。 「だから、前を向いて生きていこうって決めたの。死んだ者の為にも」 「強いんですね」 「強くない。なんだったら聞いてみる?あたしの小さな小さな物語を……」 何故あたしはこんなことを言っているの? 言った自分が心の中で焦っていた。理由は分からない。だけど、口から勝手に言葉が紡ぎだされた。当たり前のように。 「じゃあ、教えて下さい。その物語を」 もうどっちが慰められている立場か分かったものではない。でも、何故だかそれが当たり前のように感じてしまうのは一体何故だろう。 その謎を解こうとしないのも当たり前に感じていて。すべて前にもあったように感じて。 [19] 昔話。 テラの端に位置する小さな村。テラから丁度西へ行ったところにある魚介類で有名な村。只、500年前に何故か滅んでしまった村。 その原因は分かってはいない。だが、マリーだけは知っていた。ここで生まれ、竜だと知る前は人間として暮らしていた村だったのだから。 「今日も凄いねー。魚の数……」 長い髪の色が真紅、そして瞳の色が赤の女性がちょちょいっと50匹ぐらいをかごの中に入れて片方の肩に1個。空いた方の肩にもう1個を掛ける。 「今日も凄いな。マリーの力」 ぷっ…………、あはははは。 同じように言った言葉に2人は同時に笑い出す。 魚介類で有名な村の仕事は魚の加工と違う町や村へ売りに行くこと。これが一番幸せだった毎日。同じ事の繰り返しだったが、一番良かった。 だが、それもあの日までのことだった。 「マリー!!」 茶色い髪。そして、緑の瞳。活発な青年がこちらに走ってくる。彼の名はルーシャ=カウンリード。マリーの大親友でもあり一番大好きな人でもあった。 「どったの?ルー」 「魔族だ。魔族がこの村に攻めてくるんだ!!」 のほほんっとした口調のマリーに対してルーは息を切らしながらも力一杯マリーに言った。 「だったら、封印の呪でもこの村に張れば……! 我は古より封として恐れられる太古の民の末裔なり…我がその力今こそここに解き放たんことを。封印(シード)」 マリー以外の人物ではけして発動することのない呪文。呪文の内容は結界と封印の呪文をくっ付けようなもの。遠い昔に忘れ去られてしまった呪文のうちの1つ。 『ひゅぅ。こんな術を使える人間がいるとは……。早く入ってきて正解だったようだな』 「誰?足長おじさん?」 「何故に足長おじさんが出てくる?こういう場面で…………」 生き生きとした表情で聞くマリーに対して、ぐったりとしてしまうルーシャ。 マリーがなにかを言おうとしていたが、その前にマリーの結界が壊れてしまったらしく魔族達が村になだれ込んでくる。 『な!!』 「なんで…!?なんで呪で結界を張った筈のなのに!切り取った筈なのにこの村を!!」 『ふん。人間ごとき呪など小賢しいだけだ。だが、疲れたな』 すっきりと言い切られてしまいマリーは絶句した。 『貴様。名前は何だ?』 「……マリー=シャイエ」 「ルーシャ=カウンリードだ!」 少し躊躇いながら言うマリーの言葉の後にルーシャの声が混じって魔族は顔を顰める。だが、気にしないで先を続けることにしたらしい。 『ふん。ブラックリストに乗る前に倒してやるよ。マリーとやら』 シュゥ──ン。 何処からともなく武器を召喚し、マリーに向って振り下ろす。ザクッ…! 「うわあぁぁ──────ッッッ!!ぐっ……」 肩が斬れ、血が滲み出る。手で抑えても血は止まらず流れ続けるのみ。 「マリー!!」 咄嗟にマリーを庇おうと前に出るルーシャ。だが、背中を向けているので魔族の恰好の餌食。背中に剣が刺される。 「ルーッ!」 あたしにもっと強い力を!こいつらをまとめて消し去れるような力をッ!! そう願った瞬間、背中に裂けるような痛みが走る。だが、意識が朦朧とすることはなく逆にハッキリとなにかが目覚めはじめる。 血が赤から濃い目の赤に変化して、瞳が真紅になって背中が震える。 「…………マリー……?」 『なんだ?』 バサ!バサバサバサ!! いきなり背中に真っ赤な翼が生えこちらの世界にも精神世界(アストラル・サイド)にも恐ろしいぐらいの力が流れ込む。 それはすべてを破壊するだけの力を含んだ力。村を1つ破壊尽せるほどの力。 自分としての意識を取り戻した時に目の前に広がっていたのは──荒野。なにも残されてはいない。人も家も魔族も──全て。 「こ、これ……あたし、あたしが、やったの……?」 目の前に広がる荒野を見て、マリーは悲鳴を上げ、黒い塊の中へと姿を消した。 自分の精神の傷を癒す為に、200年間もそこを出ようとしなかった。 人物紹介へまいります。 今回の特別ゲスト(?)のルーシャ=カウンリード君。 この子はまだマリーさんが自分の存在について考えていなかった頃に仲良しで一番大好きだった男の子。 結局はマリーさん自らの手で殺してしまうんだけど、再登場あり。 アメリア達が活動している年代の中で一応転生はしているけど、3才児。マリーさんは見てガックリと肩を落としていた。というエピソードも。(これにしようかな?外伝) たったこれだけなので殆ど設定は考えてない。(だって、何処でも死んでるんだもん。この方) 今度、漫画研究部(名前だけの幽霊部員です。私)の部誌にオリキャラのマリーさんを書く事が大決定。 同じ学校に通っている皆様(ここにいるのかな?)見たらどーぞ、「これがあのゆかりが小説で使ってるマリーさんか」と納得して下さい。ちょっと失敗したけど、結構良い感じ♪ では、ゆかりんでした。 |
6751 | Solar a Country(テラ)20〜19話 | 桜井 ゆかり E-mail | 6/10-23:23 |
記事番号6718へのコメント おこんばんわ。(古っ) 混乱しっぱなし。HPはちょっとおかしくなったし、友達に渡す土産は家に忘れたし、ボンバーマンでは負け続きだし。 なーんか、今日ってあたし不幸? なーんてね。上に書いたやつ本当の事だけど気にしない気にしない。 続きですね。地道に活動してきましょう。我。 [20] 魔力が尽きた。 「と言うことで深い眠りにつき、200年かかってすべてを整理できたって訳。 たった一つの答えを見つけるまでに200年もかかるなんて……!あたしって、あたしって本当に馬鹿だから……」 スッと顔を下に向ける。泣いているのか。自分でもそれは分からない。 自分自身のことなのに自分が分からないって変だね。 「そんな事ないですよ!ちゃんと答えを見つけ出せるのならば馬鹿ではないですよ。それに、今の話を聞いて私も少しだけ分かった気がします。だから、連れていって下さい。仲間の元へ」 スッと手を出してくるアメリアをあたしは強いと感じている。この子はあたしにない強さを兼ね備えている。 あたしは出された手を握りながら喋り始めた。 「そうね。じゃあ、いこっか。あたしの仲間はレイだけ。でもね、貴方の仲間はゼルガディス──愛称ゼルね──、目付きの悪いルーク、それにミリーナ。あとは何処かに何人かはいる筈」 「何人か?もしかして、あと2人ですか────」 「は?」 なんでそんな事を思うの? と思いながら、アメリアを見る。すると、マリーの心を読んでいるかのように言いはじめた。 「分かりませんよね。そんな事。私もなんとなく出てきた数を言っただけなんですけどね」 ぺロッと舌を出しながら謝る。 あたしに妹なんかが居たらこんな感じの妹が欲しい。できれば兄ではなく妹が欲しかった……!って、言ってもあたし母親の顔知らないんだった……。 少し寂しいことを思い出したが、頭から振り払いいつもの顔でアメりんのほうを向いた。 「じゃ、いこっかね。外出てて。呪文となえて召喚するから。竜を」 「竜を?それって、移動手段大胆すぎませんかぁ?」 「だってこれ以外召喚できないし、浮遊の呪文なんて一個も使えないから………」 自分自身で浮けるくせに風系の魔法は一番苦手らしい。というか、精霊魔法は得意なほうではないし、白魔法なんかパス。 とりあえずはここで竜なんぞを呼び出すわけにもいかない。そう思ってあたしはアメりんを連れ出し外へ出て、両手で印を結びながら呪文を唱え始める。 地面にはきっちり魔法陣を書いて。 実は魔力の使いすぎらしくて精神力も魔力も少ない。だからいつもは魔方陣無しで呼んでいる竜も魔方陣なしでは絶対に姿を現わさない。半竜だとしても、魔力と精神力の限界というものが存在するのだから。 「魔竜吠(グ・ル・ドゥーガ)」 しゅぅぅぅ…………! 「あ、あら?」 奇妙な音を出しながら生まれた魔力の球。淡い輝きを放っているそれを空中に投げた途端に散るように消えてしまう。 いつもならば上空まで伸びていきそこから魔王竜が呼び出されるのだが、これでは出現する訳がない。 『魔力の限界のようですねぇ。マリーさん』 何処からともなく聞こえる声に2人は同時に反応した。 『ゼロス(さん)!』 生ゴミ、そして、生きとし生けるものの天敵(フィリア曰く)。そのゼロスが2人の目の前に現れた。 「なにかご用?獣神官ゼロス」 コイツの顔だけは2度と見たくない。そんなような殺気がゼロスに向けられる。 「いえね、ちょっとだけ教えてあげようと思って来たんですよ。マリーさん。竜族から追われていますよ。なんでも危険因子だそうで」 「危険……因子?アメりんの側にいるのがいけないのか。 ま、覚悟はしとくよ」 「覚悟って!マリーさん!無駄に命を落とすことはいけませんよ!」 「誰が何時勝手に命を落とすって言ったっっっ!!?竜族と戦う覚悟をしとくって意味」 勝てるかどうかは分からない戦いの覚悟を。まぁ、絶対に火竜王の奴等とは戦わなくてはならない運命にあるんだから、今更どおってことないことよ。 いつも通りにいきましょ。いつも通りに。 自分に言い聞かせるようにして、ゼロスの話を聞こうということになってあたし達は宿へと戻っていった。 [21] 王女一人旅 「1人って寂しいなぁ……」 テラの王女リナがフッと息を吐きながら言った。 今、彼女はたった一人。マティリナスは付いていくと言ったが、レゾからのドクター・ストップが掛かり塔に置いてきた。 そして、今に至る。 王女がこの事件を解決しないでどうするのか。それが、一歩一歩と歩みを進めている力の元になっているが、幾つかの疑問が頭から離れない。 まずは、魔族の目的。昔と変わっていないのなら、世界を滅ぼすこと。だけど、魔族の攻撃は進展を見せてはいない。大きな魔族が動きはじめたという報告もきかない。 次に自分の家のことについてだった。何故プロテクトが解けないのだろうか。アリアも王族の姓はセイルーンではなかったか。と言っていた。 あたしは本当にリナ=インバース=テラなのだろうか? 只のリナ=インバースでテラの王族ではない極々平凡な村人ではないのだろうか? よくは分からないが、なんとなくそういうような感覚がするのは何故だろう。 だが、思考はそこで中断された。 「なに?追いかけっこ?もう気付いてるんだから出てきたらどう?」 挑発するような口調でずっと追いかけてきている人達に向って言い放つ。 実は数時間前に彼女は盗賊団の一個を壊滅させていた。つまり、リナを追いかけてきたのは命知らずの盗賊の残党。 「ちっ、気付きやがったか。勘だけはいようだな」 あれだけ殺気を出していれば誰だって気付くって! 心の中でそう思いながらも口に出さなかった。そんな事をすれば相手は逆上するだろうと思い。だが、言ったらどんな反応をしただろうか?などと考えてしまう。 こんな残党相手ならば苦戦することもなく、リナは至って余裕の表情だった。 「こんにゃろう!おい、野郎共出てきやがれ!」 ロングソードを持ったこの盗賊団のリーダー各の男が命令をするとわらわらわらと集ってくる盗賊達。目の前にいる人数だけではなかったらしい。最初からここで挟み撃ちにする計画だったのだろう。 「んふっふっふっふ。さぁて、これで人数も揃ったのかしら? じゃあ、先に言っといてあげるわ。シバキ倒されたくなかったらお宝置いて逃げ帰ったら?」 含み笑いをするリナに盗賊達は切れた。こんな所で逃げ帰ったら盗賊の名(?)が泣く。それどころか盗賊仲間に馬鹿にされる。 「てめえ等!相手は一人だ!臆することはねぇ。たたんじまえ!!」 『わぁぁぁっっっ!!』 一斉に襲い掛かってくる盗賊達に怯えることもなく唱えておいた呪文を放つ。 「地霊砲雷陣(アーク・ブラス)」 バチバチバチバチッッッ!! 大地を走る雷が盗賊達に当たり、倒れていく。リナに襲い掛かってきた盗賊達は倒れ、その場に伸びる。 「なっ!」 たった一人リーダーだけが驚きの声を上げることが出来た。 「せ、先生ッッ!!よろしくお願いします」 こちらへ向ってくるかと思ったが、誰かを呼んだ。何故に盗賊に荷担しているかは分かってはいない。が、相当の使い手とみた。 短い銀色の髪にゆったりとした服装。瞳はグレーで、普通の街にいるごくごく普通の青年だが、なにかが違う。 「会いたかったぞ。リナ=インバース=テラ。我が名はノースト。覇王様に仕えるべく生み出された覇王将軍」 「──魔族!!?」 今まで表情にあった余裕という2文字が綺麗さっぱり消えた。後ろへさがって呪文を唱えはじめる。 「先生。アイツをコテンパンに伸してやってくだせぇ」 魔族。もうテラの世界の人物からは忘れられてしまっている存在。なので、全然反応を示さないものも中にはいる。例えばこの盗賊のように。 「貴様は邪魔だ。失せろ」 手を盗賊の顔に置き、衝撃波を放つ。それは、あまりにも強力で盗賊と一緒に近くにあったフィリプの街──リナがさっきまでいた街──を半壊させてしまっている。 これでは、盗賊など影も形も残っている訳がない。 そして、丁度この時リナの呪文も完成した。 「魔竜烈火砲(ガーブ・フレア)!」 一直線に伸びる火炎。 魔法教室だよ〜〜〜ん 地霊砲雷陣(アーク・ブラス)・・・術者を中心に超広範囲にわたって、雷の雨を降らせる術。よほどのことがない限り──例えば心臓が悪かったとか(ゾーレス5兄弟か!)──は死亡することはない。術者を目の前にして逃げることは不可能に近い。 魔竜烈火砲(ガーブ・フレア)・・・魔王の腹心の1人、ガーブの力を借りて繰り出す術。一直線に伸びる火炎は目標を貫き、背後にいるものまでダメージを与える。 不意をついた。リナはそう思ったがノーストが放った黒い魔法で簡単に相殺されてしまう。 「ちぃぃぃっ!」 楽に倒せる相手ではないというものを感じながら横へ飛んだ。ノーストからの攻撃を避ける為に。 [22] リナの戦いと切り札登場 魔族との戦いの最中、一瞬の隙は命取りになる。 何処かで見た文にそう書いてあった。 精霊魔法の精神系、黒魔法しか効かず、精神体を攻撃しないことには十分なダメージは与えられない。低級の部類ならば避けること、防御することはないが上級になれば避けることも防御することもた易い。 このノーストも上級の部類に入るのだろう。なんせ、覇王直結の部下なのだから。 「獣王牙操弾(ゼラス・ブリッド)!」 獣王。覇王よりも力の強い魔族。その力を使った呪文を放つ。光の帯びがリナの思考を読み取り複雑に動き回りノーストに攻撃を繰り出す。 「ふん。こんなもので我を倒そうなど甘い!」 腰から下がっていた剣を鞘から抜き、光の帯を斬ってしまう。 「この剣はディゴール・ウィゴール。我が部下であり、我が武器でもある存在」 「つまりその剣も魔族だってこと?自由自在に姿が変えられるのは本当らしいわね」 「テラの王族がいなくなれば、この世界など簡単に滅ぼすことができるだろう。覇王様はそうお考えだ。我は只、その考えに従うのみ」 「なにいってんのよ!あたしには姉ちゃんがいるのよ!そう簡単にテラは崩壊したりしないわ!例え、あたしが死んでしまったとしても」 姉ちゃんは無敵。 リナの頭の中にはそうインプットされている。いつも、イジメ倒され普通の攻撃や剣の攻撃が効かない竜を包丁でぶった切ってしまった時もあった。その時の後の言葉なんぞが一番ビックリした。料理中だったからって、「なによ。包丁に血が付いちゃったじゃない。ま、いっか」とか言って血が付いたままの包丁で食材を切りはじめたのだ。何事もなかったかのように。 結局恐ろしくなってその料理には手を付けなかったが…… なにか特別な竜の力を受け継いでいるらしいが、それが、姉ちゃんをもっと強くしてしまっている。 「獣王様(グレーター・ビースト)、海王様(ディープ・シー)、冥王様(ヘルマスター)、覇王様(ダイナスト)が力を合わせれば敵ではない」 このテラに住む魔王の部下の4人の名前。 「って、ちょっと待って。魔竜王(カオスドラゴン)は?」 「そんなもの、死ぬ人間には関係のないことだが教えてやろう。 あの方は我等魔族から離反をしたものだ。もう我等とは関係のない存在だ」 「魔族の人間関係(?)も結構シビアなのね……」 頬を指でかきながら、呆れながら言った。なんだか本で読んだものとかなり違い、面白い。 「シビア、か。人間にそんな事を言われるなどは……。 これ以上喋ることは持ち合わせてはいない。死ね!リナ=インバース=テラ!」 ノーストはディゴール・ウィゴールを大きく振りかぶり、降ろした。だが、刃はリナに届くことなく、頭の上で止められていた。なにかの魔法で。 黒い刃。そこの言葉が一番ぴったりだろう。刃の長さはショートソード並。小さくてディゴール・ウィゴールを抑えるだけで精一杯。 ──まだ完成には程遠い……じゃない……! 昔テラの図書室で見た呪文。古代ルーン文字で書かれていて読みにくかったが一年という歳月を掛けて読み終えた。が、それは未完成で書かれていたので、自分でアレンジを加えて作った魔法。 今の呪文ではマティリナスが使った魔王剣(ルビーアイ・ブレード)を見て修正が加えられている。 「くっ!」 圧倒的にこちらが不利。ノーストの刃に押され続けている。それに、魔力がずっと吸われ続けているから長期戦は絶対に無理。 「ちぃぃっ!なんだ!斬れないとは……!まさか、まさか───!」 ──悪夢を統べる存在の呪文!!? それを認識した途端刃を力一杯押し、とんっとリナと距離を置いた。 「……?」 何故距離をとったのだろうか? このままディゴール・ウィゴールをおし続けていたら絶対に斬れた筈なのにどうして退いた? 黒い刃を消しながら思ったが、答えは出てこなかった。 「時間をたっぷりと掛けている暇はなくなった!さっさと死んでしまえッッ!!」 まるで体当たりしてくるかのような勢いで手に集めた魔法を手前に持ってきながら叫ぶ。 が、こちらも呪文が既に完成している。近付いてきてから呪文を放つ。 いくら魔族でも避けられないといった距離から。強力な呪文を一発。 「竜破斬(ドラグ・スレイブ)!!」 殆どゼロ距離発射。もう目の前にディゴール・ウィゴールがあったりする。が、呪文で吹き飛ばされ、ダメージはノーストの左腕とディゴール・ウィゴールを折っただけ。 「我としたことが……人間ごときに遅れをとるなど……」 左腕をおさえながら話していく口調の中には痛みという感情も混じっているらしく、苦しい声が所々に入っていたりする。 「このままで済むと思うな。人間よ。 この借りは腕が回復したら絶対に返してやる」 スゥゥっと溶けてなくなるかのように消えていく。まるで、なにかの液体のように。 「どぉでもいいけどさぁ、帰り方恐ろしいわよ」 ぽつりと魔族の帰りかたに文句をつけるリナだが、次の瞬間にはもうテラへと続く道を歩いていた。 今日はキャラ説明なし。さぁて、HPを直すか。 |