◆−蒼い瞳の半魔族 15−夏青龍(6/9-22:35)No.6738 ┗蒼い瞳の半魔族 16 −夏青龍(6/14-21:49)No.6768
6738 | 蒼い瞳の半魔族 15 | 夏青龍 E-mail | 6/9-22:35 |
こんばんは。夏青龍です。もう少しでこの話も最終回です。今まで 読んでくれた方、ありがとうございました。 ところで、14話か13話でリザーの宝玉について話が出てきま したが、リザーの制御に必要なのは3つです。間違えて2つに してしまいまして、あとあともおかしくなりました。もうひとつの 宝玉は仮面の方にまぎれて(?)ます。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――― 蒼い瞳の半魔族 15 ――闇。闇の中で、少女が泣いていた。まだ幼い、14歳くらいの少女。 青銀色の髪は乱れ、蒼い瞳には涙をたくさんためて。それはとめどなく 下へ落ちる。彼女の下がどれくらい深いのか、そこに地があるのかどうか すらあいまいだった。泣きつづける少女はその場から動こうとはしな かった。 ――・・・っ・・・ひっく・・・ 闇に響くのは泣き声だけ。彼女の声だけ。光もなにもない。隔てすら ないのだ。 ――嫌だよ・・・これ以上・・・誰も傷つけたくないのに・・・っ・・・ 悲しみしか含まれていない声。泣きじゃくる少女に、慰めてくれる人は 誰もいなかった。 泣くことなどできないはずの少女の瞳から、涙が流れていた。人間で なくなったときから、もう二度と流れることのないと思っていた涙が。 泣くことしか、できなかったから。 栗色の髪の少女は、包帯をしてベッドに横になっていた。黒髪の 少女も同じく、隣のベッドで横になっていた。起きているのは2人の 青年。黒い神官服の青年は椅子に座っていた。誰しも、顔色は よくない。リナはあちこちを針で貫かれ、アメリアは電流を まともに食らって少し火傷をした挙句、それ以外にも傷があった。 ガウリイもかまいたちで切り裂かれ、吹っ飛ばされたときにその他の 個所も傷めた。ゼルガディスも後ろから肩から斜めへ斬られたため、 いくらか失血していた。一番酷かったのがゼロスである。ダメージを 受け、危うく消えるところだった。まあ怪我をした他の4人の『負の 感情』によって、少し回復できたため、5人を連れて地上まで戻って これたが。しかし今でもゼロスのダメージは回復しきっていない。 あれから、2日。リザーは死んだように動かずに眠っている。 眠っているというより、『ただ生きているだけ』というほうがあって いる気がする。息も、脈もあるが、意識が戻ってこないのだ。 ゼロスは仮面の宝玉も、リザーの体内に封印した。彼女の顔は綺麗 に整っていた。隠すことなどなかったはずなのに、仕方なかったの だろうか。 「目・・・覚まさないわね」 「そうだな」 「ずっとこのまま・・・目覚めないんじゃ・・・」 「・・・かもな」 4人の声はか細かった。ダメージがあまりにも大きかったのだろう。 ゼロスは声すら発しない。このまま、リザーが目覚めない方がいいの だろうか。彼女のことだ。目覚めれば自分を責めるのは必至だろう。 4人は、複雑な心境だ。いざとなれば責めるかもしれない。だが 責めないかもしれない。微妙なところで止まっている。 そんなこんなで、また一日が過ぎた。 「・・・・・・」 月明かりを受けるリザーの顔を、ゼロスは見ていた。 眠っているリザーは死んでしまったかのようだった。悲しそうな 顔のまま、凍ってしまったようだった。 「リザーさん・・・」 リザーが原因で、ダメージを1番受けたのは彼だ。だが彼は、彼女を どうしても責められそうになかった。 「リザーさん」 目覚めることのない死人に呼びかけているように、ゼロスは繰り 返した。悲しい、とは思わない。だが、できることなら目覚めて欲し かった。何か言いたいような気がする。何かはわからない。でも、何か 言いたかった。 彼女の輝く髪に触れて、ゼロスは止まった。いつのまにか、リザー の目から涙が伝っていた。 「目覚めてはくれませんか・・・?リザーさん・・・」 ぴくっとリザーの手が動く。 「?」 まぶたを開けたリザーは、何も言わなかった。ゼロスに手を伸ばす だけで。口を開くが、言葉を発しない。 「どうしたんですか?」 今までまったく動かなかったリザーが確かに動いてはいる。だが 喋らない。話さないのはおかしかった。彼女なら何か訊いて来るはず だと、ゼロスはふんでいたからだ。 「リザーさん?」 口を動かしている。なぜか、必死の面持ちで。 「・・・喋れないんですか?」 ゼロスの言葉に、リザーは頷いた。そして、泣いた。声は出さずに、 泣いた。ゼロスの手を握って、泣いていた。 (喋ることができなくなるほど・・・苦しかったんですか・・・?) そんなことを疑問に思いつつ、ゼロスはリザーに近づいた。泣き止むこと のない彼女に、できることといえば、ついていてやることぐらいだと 自覚していたからだった。 泣きはらした彼女は、ゼロスから離れて、また横になった。ゼロスは 言った。言うことがこれしかないと思って。 「いなくならないでください」 と。リザーは頷いて、眠った。今度はいつもと同じ眠りだった。ゼロス は、逃げるように虚空へ消えた。何処へともなく、消えていった。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――― わああああああ!!!!今回はめっちゃ寂しいぃぃぃぃ!!!セリフ が全然ないうえにリザーもしゃべらないしっ!おまけに短い!次かその次 で最終回のはずっ!では!(逃走) by 夏青龍 |
6768 | 蒼い瞳の半魔族 16 | 夏青龍 E-mail | 6/14-21:49 |
記事番号6738へのコメント こんばんは。夏青龍です。寝不足でだるい〜・・・。期末も近い〜 ・・・。一応これで最終話です!くれぐれも!ゼロスファンの方は見ない でくださいね! ―――――――――――――――――――――――――――――――――― 蒼い瞳の半魔族 16 ―海へ行きたい― リザーが喋れなくなってから2日がたった。リナたちはもはや仕事 がらみ、というわけではなくなっていた。そんな時、リザーがゼロス に渡した紙に書いてあったのがそれだった。海へ行きたい、と。 とくに無理強いをして連れて行って欲しいといったわけではなかった。 しゃべらないまま、リザーはただ表情とその虚ろな瞳だけでそれを 伝えていた。 海など、簡単にいけるような場所ではなかった。リナたちだって、特に あてがあるわけではないとはいえ、海に行くというのには少し反対した。 リザーは何を言うでも、何を伝えるでもなく、黙って頷いた。そうなる ことを予想して、だめもとで言ったようだ。だが、突如として1人が 口走ったのだ。 「連れて行ってあげますよ。僕が」 ゼロスだった。ゼロス以外全員、リザーまでもが驚いていた。 「ちょ・・・ちょっとゼロス?」 「何か?」 「あ、あんた海へ行くって言ったって・・・」 「僕は別にあなたたちにずっとついていなくてはいけないわけでも ありませんし、仕事のついでですからね。しばらく見ていないもの ですし、海ぐらい行っても構わないでしょう?」 「あ・・・あのねぇ・・・」 戦力であるゼロスがさっさと行ってしまうことを恐れたのか、リナが 言う。 「・・・行かせてあげましょうよ。リナさん」 アメリアだった。リナは少し考え出した。そしてため息をついて、 「わかったわよ。行ってきなさい。ま、戻って来ないっていうのは なしにしてよね?」 リナの言葉に、ゼロスはいつもの顔で頷いた。 リザーは少し気まずそうだったが、ゼロスのあとについていった。 ゼロスは虚空を渡って海までやってきた。途中途中で休んではいたが。 リザーの中の魔族の部分の力を利用していたためか、虚空を渡ること も距離は短いながら、不可能ではなかった。 「着きましたよ。リザーさん」 「・・・・・・」 やや呆然とした表情で、リザーはゼロスにくっついていた。一応宙に 浮いているのだ。 「久しぶりですねぇ。海なんて」 真っ青な海を見ながら、ゼロスが呟く。リザーはいまだ呆然としている。 「どうしたんですか?」 慌てて首を振るリザーに、ゼロスはくすくすと笑った。頬を紅潮させて いるリザーだったが、下へ降りたいというように、視線を下へ向けた。 ふわりと着地すると、ゼロスはちかくにあった大きな流木に腰を下ろした。 リザーはそろそろと海へ近づいていた。 「海、来たことないんですか?」 確かに、内陸のあたりで生まれたのなら、川で泳ぐことはあっても、海へ はとうていこないはずだ。旅でもしていれば別だが。 こくんと頷くリザー。靴をぽいっと投げ捨てて、海へ入っていった。 (一体なんで来たんでしょうね・・・僕は) 自分で疑問に思いつつ、ゼロスは後悔していなかった。なぜかはわからない が。リザーは足首あたりまで水が来たところで、うろうろしていた。 「どうかしましたか?」 ひょいっと何かを持ち上げて、ゼロスの方へ向けて見せる。巻き貝だった。 両手で一度大事そうにもってから、耳へ近づける。海の音が聞こえると いうが、実際のところはわからない。目を閉じ、また開けて、貝を持った まま歩き出す。 (今度は何を見つけるやら・・・) リザーはいきなり後退した。魚か何かがいたらしい。驚いたようだったが、 また楽しそうに笑った。 笑った――。 喋れなくなってから、一度も笑っていなかったリザーの笑顔だった。無邪気 に笑う彼女はどこからどうみても普通の少女だった。なのに、彼女は複雑な 環境で育った『普通でない娘』だった。 リザーが歩いてきて、ゼロスははっと我に返った。ぼ〜っとしていたのだ。 リザーはにこっと笑って、ゼロスの腕を引っ張って海の方まで連れてきた。 ゼロスはその時点で何か嫌な予感がしたのだが、連れて行かれるだけだっ た。 砂浜に、何か書いてあった。 「何ですか・・・?」 近づいてから意識して見ると、 『ありがとう』 と書いてあった。リザーの方へ振り返ると、またも彼女が何か書いている。 どこから持ってきたのか、木の棒でうまく書いていた。 「え〜と・・・」 ゼロスが見ようとしたとき、ぱしゃっとゼロスの顔に水がかかった。 ・・・もちろん海水。 悪戯をした子供の笑顔。リザーはそのまま逃げるようにたたっと走って いった。砂浜を見ると・・・ 『捕まえてみろ!』 と書いてある。 「・・・・・・」 呆れて物も言えないゼロスの前で、リザーは水際でばしゃばしゃと水飛沫を あげて走っている。ゼロスは走る気は無かったので、いつものペースで歩いて いた。 すごく嬉しそうな笑顔。すごく楽しそうな笑顔。 突然、リザーが戻ってくる。追いかけてこないことを知ってか、つまらなく なって戻ってきたらしい。と、ゼロスの目の前で転びそうになる。 「リザーさん!」 捕まえようとしたゼロスだったが・・・ ばしゃぁっ! 「・・・・・・・・・・・・」 沈黙。2人とも水浸しである。しかし、リザーはまた笑顔を浮かべた。 濡れた手をぺろっとなめてみる。・・・やっぱししょっぱかったのか、 舌をぺロッと出した。 「大丈夫ですか?」 頷いて立ち上がるかと思いきや、近づいたゼロスにいきなりがばっと 抱きついてきた。 「!?」 もちろん驚くゼロスくん。 頬で何か柔らかいものが触れたような気がして、そのあとリザーの顔 が近づいてきた。どうやら舐められたようだったが・・・? 「ちょっ・・・!?」 何を言うひまも無く、一方的にキスされてしまう。一瞬呆然とした後、 ふっと表情をかえた。リザーの頭をなでたあと、離れる。 よく見れば(よく見なくてもわかったが)、リザーの顔は真っ赤だった。 あたりまえといえばあたりまえだが・・・。 「ご・・・ごめん・・・」 「は?」 「へ?」 ゼロスの間の抜けた声に、リザーも反応して間の抜けた声を出す。 「今・・・喋って・・・」 「あ」 事態が解っていなかったらしい。混乱したような表情をするリザーに、 ゼロスはまたくすくすと笑って、 「なんで『ごめん』って言ったんですか?」 「え・・・」 「いつもなら『すまない』だったでしょう?」 「!!?」 びくっと背筋を伸ばし、硬直する。 「そ、それは・・・その・・・あの・・・」 「何ですか?」 リザーは一度黙り込んだが、決心したように言った。 「き・・・期間限定。好きな人だけに言う・・・謝り方」 未だ顔は真っ赤である。いつまで赤くなっているやら・・・。 「・・・・・・」 「わ、悪いか?それとも変?」 おろおろするリザー。ゼロスはひょいとリザーを持ち上げた。外見から はあまり想像できないが、リザーのほうが軽かったらしい。 「わっ!」 「軽いですね〜。翼でもあるみたいですよ?」 「な、何す・・・!?」 ぱっと離され、落ちる感覚に襲われる。が、やはりゼロスが受け止めて いた。 「っ!無意味に人を驚かすな!・・・って・・・ん?」 見れば、ゼロスの法衣に包まれている。 「こ、こら!抱きつくなっ!ゼロスっ!」 やや暴れるリザー。ゼロスは放してくれない。 「ゼロス?」 「すみません。止められなくて」 「・・・あの事か」 リザーの瞳に、暗い色がかかった。 「いいんだ。気を抜いた私が悪かった」 「・・・・・・」 「私こそ、すまない。いろいろ迷惑かけて」 自嘲的に笑う。ゼロスはやっとリザーを放した。 「魔族なのに、ゼロスは人間みたいだよ。ちょっと違うけど・・・ 人間らしい」 「そうですか?」 きょとんとしてゼロス。 「ああ。どうせなら2人とも人間だったらよかったな。それか、私が 完全な魔族で、ゼロスと同じくらい力があればよかったなぁ・・・」 水平線を見ながら、リザーが言う。そしてすくっと立ち上がった。 「いつまでも、ゼロスやリナ殿に迷惑はかけられない。だから、行くよ。 一緒にはやっぱり居られないと思うんだ」 「・・・・・・」 「帰ろう。リナ殿たちのところへ」 「リザー!?」 「あ、アメリア。えっと・・・ただいま・・・かな」 「喋れるの?」 「ああ」 「良かったぁ〜〜!」 駆けつけてくるアメリアを、リザーは受け止めた。ゼロスはまっすぐ リナのところへ行った。 「帰ってきましたよ。この通り」 「わかってるわよ」 リザーを見て、リナ。 (やっぱり・・・ゼロスは魔族より人間に近いのかもね・・・) そんなことを独りごちるリナ。 「でもあいつ、性格が変わってないか?」 ゼルが言う。確かに雰囲気が柔らかくなったというか、性格が明るくなった というか。 「いいんじゃないの?こういうのも」 「そうだリザー!どうせなら、セイルーンの衛兵にでもなればいいんじゃ ない?そうすれば会いにいけるし」 「で、でも私は・・・」 アメリアの言葉に戸惑うが、どうやら好意に甘えることにしたらしい。 アメリアが直接行くのなら、全く問題はない。 「ありがとう。みんな」 最初に会ったときの表情などどこへ行ったのやら、リザーが微笑んだ。 「よし!じゃあ次の目的地はいちお〜セイルーン!リザーを送り届けて から旅は再開!」 リナの言葉に、みんなは頷いたのだった。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――― ありがとう 一緒に居てくれて 守ってくれて 変えてくれて みんな ありがとう 本当にありがとう ありがとう 終 ―――――――――――――――――――――――――――――――――― ・・・変な終わり方だぁあああああ!!!最悪の終わりかたかも・・・!?リザーが完璧性格変わったし、ゼロスも変わったし、まずいっ!(汗)おまけ になんだこの詩はっ!?お願い、石(苦情)なげないでくだせいっ!(汗) もしかすると再びリザーを登場させて別の小説投稿するかもしれません。 そのときはどうか見てやってください。お願いします。 ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました。では。 by 夏青龍 |