◆−Beauty and the Beast 7−水晶さな(6/13-00:19)No.6761 ┣素敵すぎですさなさん・・・!!−ゆっちぃ(6/13-06:44)No.6762 ┃┗きゃふぅ(感涙)−水晶さな(6/13-23:11)No.6765 ┣じりじり〜−雫石彼方(6/13-12:58)No.6764 ┃┗のろのろ〜(爆)−水晶さな(6/13-23:27)No.6766 ┣Beauty and the Beast 8−水晶さな(6/13-23:38)No.6767 ┣Beauty and the Beast 9−水晶さな(6/16-01:05)No.6776 ┣Beauty and the Beast 10−水晶さな(6/17-00:07)No.6778 ┃┗やきもきv−あごん(6/18-22:09)No.6781 ┃ ┗やきやき(違)−水晶さな(6/19-01:29)No.6782 ┣Beauty and the Beast 11−水晶さな(6/19-01:31)No.6783 ┣Beauty and the Beast 12−水晶さな(6/20-23:06)No.6791 ┃┗Re:Beauty and the Beast 12−こずえ(6/22-01:00)No.6793 ┃ ┗初めまして〜(^^)−水晶さな(6/23-01:30)No.6804 ┣Beauty and the Beast 13−水晶さな(6/23-01:18)No.6803 ┣Beauty and the Beast 14−水晶さな(6/24-01:32)No.6808 ┣Beauty and the Beast 15−水晶さな(6/28-00:04)No.6820 ┣Beauty and the Beast 16−水晶さな(6/30-00:17)No.6837 ┃┗気になるぅ〜〜(>_<)−ゆっちぃ(7/6-05:56)No.6846 ┃ ┗詰まってます〜(爆)。−水晶さな(7/7-00:26)No.6850 ┣Beauty and the Beast 17−水晶さな(7/7-15:11)No.6851 ┗Beauty and the Beast 18−水晶さな(7/9-23:42)NEWNo.6867 ┗(T‐T)−雫石彼方(7/10-22:23)NEWNo.6871 ┗Σ(゜ロ゜)!!−水晶さな(7/11-01:08)NEWNo.6872
6761 | Beauty and the Beast 7 | 水晶さな E-mail | 6/13-00:19 |
【West Wing(禁断の塔)】 「・・・あれ?」 戻ろうとした筈だが、道を逆に進んしまったような気がする。 歩けど歩けど見知った道に出てこない。 「えーと・・・」 くるりと今来た道を振り返る。 既にどこで道を曲がったかもわからなくなってしまった。 「・・・・・・こーなったらとことん歩いて確かめるしかないですかねぇ?」 独り言を呟き、仕方なく足を進める。 応接間、書斎、寝室、寝室、また寝室。 「城の大きさはうちと同じぐらいの筈なのに・・・人がいないとこうも広く見えるんですね」 石造りの螺旋階段を登って― 「こっちは見張り塔ですかね・・・外が見えたら、セイルーンがどっちにあるかもわかるんですけど・・・」 ―が、重苦しい扉を開けるとつんとした埃臭さが鼻をついた。 どうやら予想は外れていたらしい。 乱雑に床に散った油絵。中身が飛び散って代わりに埃が詰まった宝箱。かぎ裂きに破れた厚いカーテン。 ただ時が過ぎて埃が積もるならまだわかるが、わざと散らかしたような内装。 盗賊が入った様子でもないし― 静寂と薄暗さに閉塞感を覚えながらも、好奇心には勝てずアメリアが足を踏み出した。 「・・・・・・・・・」 重厚なカーテンの隙間から、わずかに光が見えたような気がした。 散らばっている物を踏まないように慎重に一歩ずつ進みながら、アメリアが光の方に近付く。 「・・・・・・・・・!」 丸テーブルの上に静かに光を放っていたのは―1本の深紅のバラだった。 ガラスケースの中で土を必要ともせず、凍り付いたように空中にとどまっている。 光を失った花びらが、半分ほどテーブルに散っていた。 「・・・物語と・・・同じ・・・」 アメリアが息を飲む。 壊れやすいものをさわるように、そっと―そっとガラスケースに指先だけ触れた。 ひんやりとしたガラスの感触が、そこに本当にあるという実感を与えてくる。 「私・・・これを・・・見た事がある・・・」 それ以上触れていると消えてしまいそうで、アメリアがガラスケースから手を離した。 「見た事がある・・・」 『何をしている!』 「っ!!」 唐突に頭の中ではじけた言葉に、アメリアは身をすくませた。 ぞくりとして―そのまま後ろを振り返る。 誰もいなかった。いる筈もなかった。 消えてしまった夢をたぐるように、アメリアが額に手をあてる。 「ここで・・・バラを見つけて・・・誰かに怒られて・・・」 『誰か』の姿は、影となってよく見えない。 思い出せないもどかしさに、彼女は乱暴に頭を掻いた。 「ん〜!」 「『こんな所になんかもういられないわ、うちへ帰る!』」 「そう! 私そう言って・・・・・・・・・・・・え?」 自分以外の声をはっきりと聞き取り、アメリアがおかしな動きで扉を振り返った。 「確か、そうおっしゃいましたよね?」 開いた扉の前に、人影。 リナと―その肩に乗っていた、メイド人形。 先程声を発したのはパットだった。 「パット、まだ早いんじゃない?」 微妙な表情を浮かべるリナに、パットがきっぱりと言い張る。 「いいえ、間違いはありません」 すとん、とリナの肩から下り、パットがアメリアの元まで駆け寄った。 テーブルの上に飛び乗って、アメリアを見つめる。 「このバラをさわろうとして・・・旦那様のお叱りを受け、1度城からお出になりましたね」 「旦那・・・様?」 必死に断片的な記憶をつなげようとするが、いかんせん記憶が少な過ぎる。 「このバラは、魔法のバラ。この花びらが全て散る前に、旦那様が人を愛し愛されなければ永遠に城の呪いは解かれぬまま・・・」 「ちょっと待って・・・それっておとぎ話と同じじゃ・・・」 とは言うものの、城で見付けた本の物語は、実在したのだと思ったのは自分。 しかしあまりにも突飛過ぎる話に頭がついていかず、アメリアが困った表情を浮かべた。 「あなたは帰ってきた・・・私は最初から気付いていましたとも」 アメリアの目をまっすぐに見つめて、たった一言。 「―お帰りなさい、ベル」 そのたった一言が―アメリアの脳を、記憶を、揺さぶった。 『何をしている!』 あの時バラのガラスケースを奪い取り、嫌悪の表情を見せたのは。 『これが欲しいのか?』 背の届かぬ自分の手を追い越して、本の背表紙に指をかけたのは。 『ベル』 この上ない優しさを込めて、自分を呼んだあの声は。 「―!!」 ガラスが割れて、砕け散っていくような感覚。 「・・・ル・・・ィス・・・ん」 これにはリナも目を見張った。 ぺたんとその場に座り込み、頭をかかえるアメリア。 「ゼル・・・ガディス・・・さん・・・」 頭が痛くなるほど脳を酷使して―ようやく振りしぼって出てきた名前。 それなのに―脳裏に浮かぶのはフィルターを通した影の形だけ。 あの声は間違いなく『彼』のものなのに。そこまで思い出せるのに。 テーブルから下りたパットが、アメリアを下から覗き込みそっと手を触れた。 「お会い下さいませ、旦那様に。さすれば全て思い出すでしょう」 「会う・・・? どこにいるんですか?」 アメリアが驚いてパットを見つめ返した。 「おりますよ。ずっと・・・この城に・・・100年間ずっと・・・」 「自らの時を止めて、眠りについた野獣がね・・・」 パットの言葉をリナが続ける。 非難するようなパットの視線にも、リナは動じない。 なるたけ感情を表に出さないように、リナがつぶやいた。 「確かにあたしの予想もしない事だったわよ・・・だからこうしてここで見守ってたんじゃない」 無造作にかきあげると、指の隙間から栗色の髪がさらりとこぼれ落ちた。 「あたしは・・・リナ。リナ=インバース・・・東森の魔女」 当惑の表情を浮かべるアメリアを見つめ、言葉をつむぐ。 「あのバラを野獣に与えたのは・・・あたしよ・・・」 |
6762 | 素敵すぎですさなさん・・・!! | ゆっちぃ | 6/13-06:44 |
記事番号6761へのコメント さなさんこんちわです、 ネット禁止令発動のためまたもやiモードよりお邪魔してまス、ゆっちぃですー(半泣) 料金気になるところですがさなさんのお話読めるならまぁいっか☆ それにしても新展開ですね! まさかリナちゃんがアノ魔女だったとわ・・・ しかも姫、記憶が戻り始めてますし!! さてさてさて、一体これからどうなるのかっ! 続き、楽しみにしてますねー♪ |
6765 | きゃふぅ(感涙) | 水晶さな E-mail | 6/13-23:11 |
記事番号6762へのコメント こんばんわ〜、さなです(^^ゞ >ネット禁止令発動のためまたもやiモードよりお邪魔してまス、ゆっちぃですー(半泣) >料金気になるところですがさなさんのお話読めるならまぁいっか☆ 携帯から見るとどうしても料金跳ね上がるからアイタタなんですよね(←月末に悲鳴あげる奴)。同じようにならないようお気を付けを(汗)。 >それにしても新展開ですね! >まさかリナちゃんがアノ魔女だったとわ・・・ >しかも姫、記憶が戻り始めてますし!! >さてさてさて、一体これからどうなるのかっ! >続き、楽しみにしてますねー♪ はい、やっと動き出しました(汗)。 急展開が嫌なのでどーしても話が遅々となってしまいましたが(汗)、やっと野獣さん登場です(何かこの言い方嫌だ)。 リナの魔女役は今回適役だと思ったのですが、浮遊しているだけのガウリイの使い所に泣いていたり(マジ泣)。 けふぅ、とりあえず気長にお付き合いお願い致しますv 水晶さな. |
6764 | じりじり〜 | 雫石彼方 E-mail | 6/13-12:58 |
記事番号6761へのコメント さなさん、お久しぶりです〜v 雫石でっす! で、何がじりじりかって、出てきそうで出てこないゼル!!あぁぁもどかしい ぃ〜〜〜(><)早く出てきてアメリアとらぶらぶして下さい(^^) それにしても、さなさんのディズニーパロ!!大好きなんですよぅv しかも『美女と野獣』なのですね!!・・・・とは言っても、実は私、 『美女と野獣』ってちゃんと見たことないんで詳しい内容知らなかったりする のですが・・・・・(汗)だから魔女が出てくることも知らなかったり(汗) そんな私はかなりヤバイでしょうか?(^^;) 何はともあれ楽しみにしておりますv さなさんのお話は私の昼休みのオアシスですわ〜v(笑) でわでわっ!! |
6766 | のろのろ〜(爆) | 水晶さな E-mail | 6/13-23:27 |
記事番号6764へのコメント 彼方サン御久しぶりです〜v さなです(^_^) >で、何がじりじりかって、出てきそうで出てこないゼル!!あぁぁもどかしい >ぃ〜〜〜(><)早く出てきてアメリアとらぶらぶして下さい(^^) 確かに登場遅いです野獣(汗)。しかも眠ってますし野獣(野獣野獣言うな)。 てへ、次あたり出てきそうですがラブラブはいつになることやら(爆)。 >それにしても、さなさんのディズニーパロ!!大好きなんですよぅv >しかも『美女と野獣』なのですね!!・・・・とは言っても、実は私、 >『美女と野獣』ってちゃんと見たことないんで詳しい内容知らなかったりする >のですが・・・・・(汗)だから魔女が出てくることも知らなかったり(汗) >そんな私はかなりヤバイでしょうか?(^^;) 王子を野獣に変えたのは魔女なんですよ〜。大丈夫、本編でも冒頭にしか出てきませんでした。パロに作り変えた時に無理やり出しました(笑)。 簡単な本編の説明もお話中に紹介する予定ですので、心配しなくて大丈夫の筈・・・です(自信ナシ)。 >何はともあれ楽しみにしておりますv >さなさんのお話は私の昼休みのオアシスですわ〜v(笑) >でわでわっ!! はぅあ! オアシスなんですね。期待を裏切らないよーに頑張らないと(汗)。 ではでは〜v 水晶さな. |
6767 | Beauty and the Beast 8 | 水晶さな E-mail | 6/13-23:38 |
記事番号6761へのコメント 【Lost time(失われた時)】 パットに案内されたのは、城の地下室だった。 岩肌むき出しの階段を気を付けて下りながら、アメリアが口を開く。 「私、まだ全てを思い出したわけじゃないし・・・実感がまだ沸かないんです。この城に来た事もないのに・・・何故思い出せたのか」 誰に、と相手を定めて喋ったわけではないが、答えたのはリナだった。 「アンタはまさか、と思うでしょうけど―わかりやすく一言で言えば、転生よ」 これにはアメリアもおもむろに眉をひそめた。 「転生って・・・あの・・・生まれかわりのことですか?」 「そーよ、わかってんじゃない」 リナが言うと、先頭で小さなカンテラを持つパットが振り返った。 「アメリア様は彼女に生き写しです。見間違える筈ございません」 ここまできっぱり言われると、本人もそうなのかと思ってしまう。 「彼は・・・ゼルガディスさんは何故眠りに?」 「・・・・・・それは、あんたが思い出す事よ。下手な記憶を植え付けて、混乱しちゃ元も子もないわ」 リナの言い方は―どことなく理屈をこね回したようにも感じられた。 やがて辿り着いた地下室は、使われなくなって久しいのか閑散としていた。 ずらりと並ぶ地下牢― アメリアが無意識の内に自分の体を抱き締めた。 「・・・寒い・・・」 上に居る時と気温は変わっていないのに、何故だかそう感じる。 「まだ優しさを知らなかった旦那様は、アメリア様を最初はこんな所へ入れなさいましたから・・・」 パットの言葉で―不意に足元から沸き上がる孤独感。 そうだった、確か自分はここで寒さに震えて― 家臣達に突つかれるようにして、彼は自分をここから出して上の部屋に移したのだ。 「旦那様がここを眠り場として定めたのも、貴女と同じ『凍(こご)え』を感じたからかもしれません・・・」 辿り着いた場所は、独房。 その部屋の真中には、黒い棺だけが鎮座していた。 「本当に・・・本当に眠っているだけなんでしょうね!」 思わず怖くなって声を荒げてしまう。 棺の中に眠っているなど縁起でもない。 「反対側持ってくれる? よいしょ・・・っ」 リナに指示されて、アメリアがフタの片側を持った。 二人がかりでフタをずらし、床へと下ろす。 「・・・アメリア、何アンタ下向いてるの?」 「・・・・・・ちょっとまだ・・・心の準備が・・・」 「今更何言ってるの、ホラ」 ぐき、とリナに首を動かされて見た先は― 「・・・・・・・・・」 青い岩肌に照り返すような銀の針金の髪。 棺の内側の黒いビロードに包まれた彼は―今にも寝息が聞こえてきそうな程安らかな表情を浮かべていた。 彼の顔が、まともに見られないほど視界が滲(にじ)んで― 胸の奥から沸き上がる愛しさは、嘘では無い、偽(いつわ)りではない。 どうして今まで思い出せなかったのか悔やまれて、アメリアはただ涙した。 「理由はどうあれ、野獣はベルを失った。その痛みに堪え切れず眠りについたのよ」 そんなアメリアからわずかに視線をそらし、リナが小さな声でつぶやいた。 自分でも、まさかこうなるとは予想もしていなかった。 魔法のバラを与えたのだってただ単に苦しめたかったわけじゃない。 この城に少女が訪れる事を先見(さきみ)したからこそ与えたのだ。 「・・・旦那様はベルの言葉を信じていらっしゃった・・・けして堪えられなかっただけじゃありません」 カンテラを床へと置き、パットが棺のへりによじ登った。 「堪えられなかったのは・・・むしろ私達です」 五本の指のないその手が、ゼルガディスの髪に触れる。 「希望を失い、言葉を失った・・・もう元の姿に戻れはしない・・・全てに絶望して」 「・・・パット」 「私は信じてました・・・『きっとまた会いにくるから』・・・その言葉を」 「・・・・・・・・・」 アメリアは無言で唇を噛み締めた。 城に人知れず存在した結末の違う『美女と野獣』― あれは『自分』が書いたものだ。 100年前の『自分』が、結末までを書き終える事が出来なかった本・・・。 「・・・ゼルガディスさん・・・」 壊れ物を扱うように、アメリアが彼の頬に手をそっと伸ばす。 「会いに来ました・・・貴方に。約束を守る為に・・・」 嗚咽が混じって、言葉が思うように出てこない。 「だから・・・だから起きて下さい・・・お願い・・・」 リナが沈痛な面持ちを浮かべた。 自分の魔法でもなす術(すべ)がなかった『死に近き眠り』。 彼自身が眠りを選んだ為に、誰にもそれを妨げる事は不可能。 彼の眠りと共に―バラも時を止めた。住民も。城も・・・。 「お願いです・・・」 懇願の声をつむぐ事に精一杯で、アメリアは彼の顔を見る余裕もなかった。 ゼルガディスの右手を両手で握り締め、祈るように願い続ける。 「・・・・・・・・・!」 リナの表情が驚愕のものに変わった。 「・・・アメリア!」 呼ばれて、初めてアメリアが顔を上げる。 彼女もまたしばし固まった。 まだうろんとしながらも―鳶色の瞳がこちらを見つめている。 朝早く起こされて、まだ眠りから覚め切っていないような表情。 「・・・ゼル・・・」 アメリアが、震えた声で彼の名を呼ぶよりも早く― 「・・・・・・・・・誰だ、お前は」 希望を打ち砕く言葉は、かくも短く、残酷なことか。 その場の空気は凍らざるを得なかった。 |
6776 | Beauty and the Beast 9 | 水晶さな E-mail | 6/16-01:05 |
記事番号6761へのコメント 【Love of 100 years after(100年後の恋)】 「ゼル・・・ガディスさん? まだ寝ぼけてるんですか? それともボケちゃいましたか?」 目覚めたばかりだという状況に期待してか、アメリアはわざと明るく言う。 頭痛でもするのか顔をしかめて、ゼルガディスがじっとアメリアを見つめる。 「知らん」 「・・・・・・」 「・・・・・・」 「・・・・・・」 彼を囲んで三角形の頂点の位置にそれぞれいた三人が顔を見合わせた。 「旦那様! パットは情けのうございます!!」 一際大きな声で叫んだかと思うと、パットが突然ゼルガディスの胸の上にダイビングした。 「ぐおっ!」 いくら人形が軽量とはいえ、重力を加えたフライングボディアタックをくらえばそれなりに痛い。 「昔からヒネててグレてて根性曲がりでいらっしゃいましたけど! 脳まで蒸発してしまったなんて・・・」 「悪かったな!!」 ゼルガディスが勢い良く上半身を起こしたせいで、パットが足元まで転がった。 「・・・・・・・・・」 もはや呆れた顔しかできないリナを視界の端に収め―彼女の事は覚えているのかゼルガディスがびくっと身をすくめた。 「・・・な、何でお前が・・・」 「・・・何だかもう・・・ほとほと疲れたわ」 額を押さえ、苦々しくリナが呟く。 「アメリア、城まで送ってあげようか?」 既に諦めた気分で声をかけたリナだが、唇を噛み締めているアメリアにはたと口をつぐむ。 「・・・今の今まで私だって忘れていたんです。ゼルガディスさんが私の事忘れたって責める事はできません」 これから兆戦状でも叩き付けるのかというくらい気迫のこもった声でつぶやき、ゼルガディスの手をはっしと握る。 「思い出すまで一緒に暮らします。諦めませんからね! ええもう意地です!!」 アメリアの気合いに押されるようにゼルガディスがのけぞる。 むっくりと起き上がったパットが、ぱんぱんとスカートをはたくと床にひらりと飛び下りた。 「そろそろお昼の時間ですね、御食事の用意をして参ります」 「百年後の恋!! ロマンチックじゃないですか!! 試練があってこそ愛も燃えあがるんです!!」 一人熱弁を始めたアメリアと、そそくさと立ち去っていくパット。 そしてゼルガディスの後方で脱力しているリナ。 女は常に自分勝手であった。 「お昼でございます。旦那様がお好きのローストビーフ。パンはガーリックトーストをご用意致しました」 台車がパットも一緒に乗せてガタガタと自分で動いてくる。 やたら長いテーブルの王座席に、何故か一番落ち付かない様子で当主が座っている。 それもその筈、彼の両側には自分に魔法をかけた魔女と、全く見覚えのない娘が無言のまま着席しているのである。 そして更に椅子2座席分を占領している巨大なクラゲ―いやこれは既に思考から除外していたが。 「・・・・・・・・・」 食前酒の赤ワインをパットに注(つ)がれたが、ゼルガディスは手に取る気すら起こらなかった。 「肉料理には赤ワイン、魚料理には白ワインがあうんでしたよね」 唐突に黒髪の娘に話しかけられ、ゼルガディスが目をしばたたかせた。 思考が混乱して言葉の意味を理解するのに時間を要したが、ややあってうなずく。 「間違えると旦那様は大目玉でしたよ」 アメリアにワイングラスを差し出しながら、パットが続ける。 リナは特に会話に参加する気はないようで、そんな三人の様子を端目に食事を始める。 「パット、おかわり」 ―が、五分もたたない内に手が伸びた。 隣ではクラゲがバケツ一杯の冷製スープをかかえこんでいる。 「ふう、ご馳走様でした!」 とん、とフォークとナイフを同時に置いてアメリアが立ちあがる。 「ゼルガディスさん、お城の案内して下さい。私お客様なんですよ!」 助けを求めるようにゼルガディスがパットの方を向いたが、彼女は無情にも一言。 「行ってらっしゃいませ」 「・・・・・・・・・」 恨みがましくずるずると引きずられていくゼルガディスに見向きもせず、パットは皿を片付け始めた。 「・・・・・・・・・」 にゅ、とその前に空になったバケツを持った白い触手が突き出される。 「お代わりですって、厨房に直接行った方が早いんじゃないかしら」 リナが自分の食事の手は止めないまま言う。 バケツとガウリィを乗せた台車が、ガタガタと去っていった。 「シェフが間違えて料理しなければ良いんですけれども」 パットの言葉にリナが吹き出した。 |
6778 | Beauty and the Beast 10 | 水晶さな E-mail | 6/17-00:07 |
記事番号6761へのコメント 【Something There(芽生え)】 「ゼルガディスさんっ、ここ何の部屋ですか?」 既に知っているような口ぶりで、それでも少女が自分を見上げて尋ねてくる。 「・・・図書室(ライブラリ)だ」 あまり気の無い口調で答えたつもりだが、それでもアメリアは笑みを浮かべて中へ入る。 「ここの本よく読むんですか?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 長い沈黙の後に、ようやく一言。 「・・・・・・たまに」 あさっての方向を向いたまま答えたゼルガディスに、アメリアが思わず吹き出した。 「文字、嫌いなんでしたよね」 思わず目の端に浮かんでしまった涙を指先でぬぐいながら、アメリアが慌てて付け足した。 『・・・文字は嫌いだ』 あの時答えた言葉も、同じようにぶっきらぼうに一言。 「じゃあ、読み物語は好きですか?」 先ほどテーブルの上に乗せた本を手に取り、胸の前に抱いた。 『じゃあ、私が読みます!』 笑顔が―フィルターのように一瞬重なった。 「・・・・・・・・・?」 ゼルガディスが一瞬だけ戸惑ったような表情を浮かべたので、アメリアが思わず駆け寄った。 「・・・どうか、しました?」 慎重に言葉を選びながら、恐る恐る尋ねる。 「・・・・・・・・・」 ゼルガディスは無言のまま、ただ首を横に振った。 アメリアの期待している、『記憶』はまだ蘇えらない。 もっとも―そんな記憶が自分に本当にあるのかどうか、まだ疑わしくはあるが。 「・・・まったくぅ。仕方ないですね」 苦笑混じりの笑みを浮かべ、アメリアが暖炉の前に腰を下ろした。 「さ、ここに来て下さい。これ私の好きな本の中でも特にお勧めなんです」 ぽんぽんと自分の隣を叩くアメリアに、人嫌いの主人も何故か素直に従った。 とことんマイペースだが怯えも恐れも見せない無邪気な笑顔。 穏やかな気持ちに包まれていくようだった。 『・・・こら、覗き見するんじゃないの』 『あー』 扉の隙間から身を乗り出していたふちの欠けたティーカップが、ポットに引っ張られて姿を消した。 |
6781 | やきもきv | あごん E-mail | 6/18-22:09 |
記事番号6778へのコメント こんばんわvv何があろうとも水晶様の弟子にしてもらう気でいる(笑)あごんです。 ああああ、もうっvvvv ゼルったら何で忘れてるんですかぁぁぁぁ(><) 折角、人目もはばからないらぶらぶバカップルが見れる、と期待しましたのにvv アメリアの気遣いも最高にアメリアです(なんじゃそりゃ)。 はぁ、もうなんか水晶様の手のひらで踊らされてますね、私(笑)。 ハッピエンダーの水晶様を信じていますが、それまではやきもきしそうです(笑)。 私も覗きたいぞっティーポット(力説)!! ではでは、壊れつつあごんでしたv 弟子にしてくださるまではここを動きません(笑) |
6782 | やきやき(違) | 水晶さな E-mail | 6/19-01:29 |
記事番号6781へのコメント >こんばんわvv何があろうとも水晶様の弟子にしてもらう気でいる(笑)あごんです。 今晩和さなですv・・・って、弟子!?(汗) はぅあ学べるものどころか盗めるものすら持ってませんが(滝汗)。 >ああああ、もうっvvvv >ゼルったら何で忘れてるんですかぁぁぁぁ(><) >折角、人目もはばからないらぶらぶバカップルが見れる、と期待しましたのにvv >アメリアの気遣いも最高にアメリアです(なんじゃそりゃ)。 今回もどかしくじれったくがテーマで(嘘)。 二人とも記憶曖昧だから話が遅々として進まなくて作者もイラついてたり(爆)。 どっちかと言うとゼルガディスのが記憶喪失が重傷だから、アメリアが頑張るしかないんですよね(汗)。 >はぁ、もうなんか水晶様の手のひらで踊らされてますね、私(笑)。 >ハッピエンダーの水晶様を信じていますが、それまではやきもきしそうです(笑)。 >私も覗きたいぞっティーポット(力説)!! ああ、信じられてる!? どうしようこれはやはり期待を裏切らなければならないのかしら!?(爆) エピローグでわかる事ですが、実はメインキャラ以外にもちゃんと配役(あるいは声優)があったりして・・・人数の都合上オリキャラですが(汗)。 >ではでは、壊れつつあごんでしたv >弟子にしてくださるまではここを動きません(笑) ええ!? じゃ、じゃあこっちも負けじと逆に弟子志願してみたり・・・(爆)。 二人でじりじりと日に焼けますか(爆笑)。 メインのダンスシーンまであと少し〜(^_^;) ではではさなでしたv |
6783 | Beauty and the Beast 11 | 水晶さな E-mail | 6/19-01:31 |
記事番号6761へのコメント 【Facing a lot of difficulties(前途多難)】 「・・・もう一つ、語り話をしていいですか?」 膝の上に本を閉じ、アメリアが虚空を見上げながらつぶやいた。 緊張がほぐれたのか、少し楽な体制をしたゼルガディスが続きを促すようにこちらを見る。 「・・・・・・・・・」 そんな彼の眼差しに昔の面影を感じたのか、アメリアが少しだけ微笑んでから口を開いた。 「むかーしむかし・・・ある立派なお城に王子様とその家臣達が住んでいました」 なるべく感情を込めないよう、昔話を子供に語るような口調で。 「ある夜一人の老婆が一本のバラを差し出し、これで一晩の宿を与えて欲しいと願ってきました」 「・・・・・・・・・」 「けれど王子は老婆の醜い姿をあざけり、その願いをすげなく断りました」 ゼルガディスはいつの間にかこちらを見なくなっていた。 「すると老婆は一瞬にして魔女に姿を変え―王子を野獣の姿に変えて一本のバラを投げました」 『このバラの花びらが散り終わるまでに、人を愛し愛されることを覚えなければ、お前は一生野獣の姿のまま』 リナがとうとうと言葉をつむぐ様子が目に浮かぶ。 「絶望した王子は城を閉ざし・・・姿を見られることを恐れ外界との関わりを断ちました」 「・・・め・・・」 「バラの花びらは散り、家臣達も諦めの色を濃くしていた時、一人の男が城に迷い込み捕らえられました。その数日後に帰ってこない父親を案じた娘もまた・・・」 「―やめろ!」 唐突な中断の声に、面食らったアメリアが呆然と立ち上がったゼルガディスを見上げた。 「人の古傷をえぐって何が楽しい!」 「ゼルガディ・・・」 アメリアがようやく名前を呼ぶことができた時、彼は踵(きびす)を返してドアノブに手を伸ばしていた。 ―が、彼の手がドアノブに触れる前に、扉の外側から声が響いた。 「女中頭(ハウスキーパー)の権限において許可します。やっておしまいなさい」 ―ばんっ! 勢い良く扉を開けて入ってきた台車(とその上のガウリイ)が、前方に立っていたゼルガディスを壁との間に押し潰した。 アメリアはいまだ呆然と、ゼルガディスの消えた空間を見つめていた。 「・・・アンタも主人に対してなかなか思い切ったことするわね」 呆れたようなリナの言葉は、ガウリイの背(?)に乗せられた、気絶したゼルガディスを見て放たれた。 「百年たてば性格も変わります」 台車の上につつましやかに鎮座したまま平然と答えるパット。 「そーよね、アンタだけ百年間起きてたんだし」 外を向いたまま言ってから、はたとリナが動きを止めた。 「・・・ねぇ、どうしてパットだけ起きてたの?」 城も主人も家臣達も全てが眠りについた場所で、たった一人動き続ける人形。 「私はいつかベル・・・いえ、アメリア様が戻ってくると信じてましたから」 『泣かないで・・・どうか』 アールグレイの紅茶をカップに注ぎながら答える。 『きっとまた、会いにくるから』 「誰かが起きていないと、彼女が戻ってきた時出迎えられないでしょう?」 「ん〜、意図はわかったけど・・・そうじゃなくって・・・どうして起きて『いられた』の?」 パットが意味がわからないといった風に首をかしげた。 「ゼルガディスが眠り・・・バラも時を止め、同じ魔法にかかった住民達は全て眠りについたはず」 「私は・・・気がついたら私一人立っておりました。皆は動かないけれども変わらず声は聞こえるので、あまり気にしてなかったのですが・・・」 リナが額に指先を当てた。 「パットは眠らないという、明確な意識があったから引きずり込まれなかった・・・?」 頭を両手でかかえこみ、がりがりと爪をたてる。 「魔女様、それよりも疑問な事がございますが」 思考を中断されたせいか、リナが少々不機嫌な表情で顔を上げた。 「旦那様の眠った地下の部屋。棺のフタを中の人物が持つにはかなり重くて不可能だと思われますが、一体どうしたんでしょうねぇ?」 「・・・・・・・・・」 きっかり3秒固まったリナが、唐突にテーブルを叩いたのでパットが見事に後転した。 「どうしてそれを早く言わないのよ!」 突然の物音に驚いて、背中から落としてしまったゼルガディスを慌てて拾い直すガウリイ。 「野獣を眠らせた人物がいるって事じゃない!!」 テーブルの上に仰向けになったパットが、きょとんとリナの顔を逆さまに見上げていた。 |
6791 | Beauty and the Beast 12 | 水晶さな E-mail URL | 6/20-23:06 |
記事番号6761へのコメント 【Oath(誓い)】 「・・・・・・・・・」 木製の階段は、冷たさを感じないのは良いが硬いことに変わりはない。 螺旋(らせん)階段の中途に腰かけ、アメリアはぼんやりと薄暗い舞踏室(ボール・ルーム)を眺めていた。 シャンデリアに声をかければ照らしてくれるだろう事はわかっていたが、別段明るくして何をするでもなし。 ゼルガディスを怒らせてしまったことだけが悔やまれて、ただ落ち込んでいるに過ぎない。 「全く覚えてないなんて・・・これじゃあどこから思い出させようとしてもまた怒られちゃいますかねぇ・・・」 膝の上で頬杖をつき、溜息混じりにつぶやく。 「昔っからゼルガディスさんは怒りっぽくてヒネてて史上まれに見る後ろ向き思考で・・・」 「・・・・・・・・・悪かったな」 「のひえええっ!!!?」 真後ろから聞こえた声に、アメリアがびくうと身をすくませた。 「ゼッゼゼッゼルガディスさん!!?」 「俺はそんな名前じゃない」 まったくもって正当な意見で否定する。 アメリアが場を立て直すように咳払いを一つ挟んだ。 それから自分の隣を叩く。『座れ』と言っているのは見てわかる。 「・・・・・・・・・」 階段に直座りするのは王族の礼儀上好ましくなかったが、またパットから小言を受けたくはない。 『ご自分の感情は今一時抑えて、彼女の言葉にお従い下さいませ。全て貴方の為なんです』 渋々とではあったが、ゼルガディスがアメリアの横に座った。 「ゼルガディスさん、さっきは嫌な話して・・・すみませんでした」 まだ気まずいのか、ゼルガディスの顔を見ずにアメリアが謝罪する。 「あ・・・・・・・・・いや・・・気にするな」 『どーしてもっと気のきく言葉が出ないのかしら』 『超がつくほど不器用な御方ですから』 回廊の影ではリナとパットが壁に貼り付いていた。 「素敵な舞踏室(ボール・ルーム)ですね」 「・・・そうか?」 普段から住み慣れている城を今更誉められても、いまいち実感が沸かない。 「ゼルガディスさんは踊ったことあるんですか?」 「ここで? ・・・・・・いや、面倒で傍観者に回っていた・・・」 アメリアがきゅ、と唇を噛んだ。 「1度も踊ったこと、ないんですか?」 何故念押ししてくるのかわからなかったが、ゼルガディスがうなずいてみせる。 「知っていることは知っているが、誰かと踊ったことなんて1度も・・・」 言いかけて、ゼルガディスがふと口をつぐんだ。 薄暗闇の舞踏室(ボール・ルーム)。チェス盤のような配色の大理石の床。 その床を撫でるように、さらりと揺れた向日葵(ひまわり)色のドレス。 自分の手に触れた、同じ色合いの肘までのレースの手袋。 何故その色だけが鮮明に思い出せる? 「―!」 突然額を押さえたゼルガディスに、アメリアがうろたえた。 「どっ、どうしました頭痛いんですか!?」 突き刺すかのような鈍く尾を引く痛みに、ゼルガディスが眉間にシワを寄せる。 「・・・・・・痛い」 「ゼルガディスさん! え、えと、お薬か何かもらって・・・」 『ゼルガディスさん』 「・・・・・・・・・」 響く頭痛を振り切るように、ゼルガディスが立ち上がろうとしたアメリアの肩をつかんだ。 「・・・ゼルガディス、さん?」 『・・・かないで、どうか・・・』 大きく見開いた海色の瞳を、じっと見つめる。 戸惑いはするが、けして怯えないその双眸(そうぼう)。 『・・・たが私を忘れても、私が貴方を・・・』 「・・・・・・・・・誓った、よな?」 「はい?」 言葉の意味がわからず、アメリアがきょとんとゼルガディスを見返す。 『きっとまた、会いにくるから』 「誓ったのに、俺は・・・」 苦悩の表情を浮かべ、ゼルガディスがと唇を噛む。 目の前の少女は記憶にはない。ないというのに― 胸の中でせめぎたてる後悔がとどまらない。 「・・・ゼルガディスさん」 ふわりと―アメリアの温かい腕に包まれた。 いたたまれなくなって、無意識の内に出た行動かもしれない。 それでも―今の彼には救いとなった。 「・・・貴方はここに居てくれた。待っていてくれた・・・それだけで充分です・・・」 少女から伝わる体温を感じて、彼女の望む『自分』を取り戻せない事がひどく悔やまれた。 『あ、ちょっと何すんのよコラ!』 ガウリイの触手にからめられたリナがずるずると回廊を後にしていく。 パットはリナの肩にいたので、一緒に巻き取られてしまった。 『出羽亀もここまでということでしょうねぇ』 リナとは対照的に、パットがのんびりと呟いた。 「・・・・・・・・・アメリア」 「はい」 「もう1度、続きを聞かせてくれないか」 「続き?」 ゼルガディスから身を離したアメリアが、首をかしげる。 「図書室(ライブラリ)で話してくれた―」 「ああ!」 言って手の平をぽんと叩く。 それから―思い出したのか、アメリアが半眼になってゼルガディスを下から見上げた。 「・・・でもさっきはゼルガディスさん、怒って出ていっちゃったじゃないですか」 「・・・・・・・・・・・・今度は真面目に聞く(多分)」 しばし考え込むような様子をしていたアメリアが、ぴっと人差し指を立てた。 「じゃあ―私のお願い聞いてくれたら、もう1度話してあげます」 やけに嬉しそうに言ってくるアメリアに、ゼルガディスが渋い顔をする。 「そんなイヤな顔する事ないじゃないですかー」 ぷうとふくれてみせた後、立ち上がって微笑んだ。 「・・・私と踊って下さい。ここで、この舞踏室(ボール・ルーム)で。もう1度―」 |
6793 | Re:Beauty and the Beast 12 | こずえ | 6/22-01:00 |
記事番号6791へのコメント はじめまして(のはず)、さなさん(ああ!勝手に名前のほう呼んじゃってごめんなさいっでも、さなって、いい名ですよね。) 感想なかなか書きません(・・・汗)が普段読ませてもらっています。 さなさんのおはなし、あたたかくて、面白くて、いいです〜。 今回、ディズニーなんですね!!うっふっふ 『LITTLE MARMAID 』を読んだときから(めっちゃっおもしろかった!)、こんな話、また読みたい思ってたので嬉しいです。 ガウリィ君またクラゲで(笑)、リナちゃんもクールだけどアメリアの味方っぽい魔女で、良く似た役なので、読んだとき「おお!」と声あげて喜んでました これからの展開楽しみですv では、このへんで。 |
6804 | 初めまして〜(^^) | 水晶さな E-mail URL | 6/23-01:30 |
記事番号6793へのコメント >はじめまして(のはず)、さなさん(ああ!勝手に名前のほう呼んじゃってごめんなさいっでも、さなって、いい名ですよね。) 初めましてさなです。名前の方はお好きに呼んで下さって構いませんv >感想なかなか書きません(・・・汗)が普段読ませてもらっています。 >さなさんのおはなし、あたたかくて、面白くて、いいです〜。 そのお言葉だけでもう・・・(感涙)。 基本はほのぼの好きなので、「あたたかい」と言って頂けると感無量です(T_T) >今回、ディズニーなんですね!!うっふっふ >『LITTLE MARMAID 』を読んだときから(めっちゃっおもしろかった!)、こんな話、また読みたい思ってたので嬉しいです。 「リトルマーメイド」に続いて他にも書けるかな〜と思案した結果「美女と野獣」が出てきまして(^^ゞ リトルマーメイドも読んでいてくれたんですねv ありがとうございますvv >ガウリィ君またクラゲで(笑)、リナちゃんもクールだけどアメリアの味方っぽい魔女で、良く似た役なので、読んだとき「おお!」と声あげて喜んでました >これからの展開楽しみですv >では、このへんで。 リトルマーメイドに比べると配役が微妙に難しいです(汗)。なのでガウリイは又クラゲに落ち着いてしまいました。出番があんまりない(爆)。 後半になってから別のキャラクターも登場予定です。もう少しかかりそうですが宜しければ気長にお付き合いしてやって下さいねv ではでは〜。 |
6803 | Beauty and the Beast 13 | 水晶さな E-mail URL | 6/23-01:18 |
記事番号6761へのコメント 【Ball(舞踏会)】 「どういう風の吹き回しでしょうかねぇ」 せかせかと部屋の中を行き来しながらも、パットの口は止まらない。 「・・・うるさい」 コート掛けの姿になった理髪師に頭をいじくられながら、ゼルガディスが呟いた。 ペンチで針金の髪を無理に引っ張るものだから、頭が痛くてしょうがない。 足元ではほつれた王族衣装を、縫い針姿のお針子達が総出で必死に繕(つくろ)っている。 「ちゃんと寸法も合わせるんですよ。旦那様のサイズが永久不変とは限りませんから」 「お前は少しは黙れんのか」 役に立たなかったブラシを投げてやると、器用にも両手で受け止められてしまった。 「旦那様ばっかりかまってる訳にはいきませんので、私はこれで失礼致します。指示した通りにね」 パットが扉の隙間に半身を滑り込ませると、縫い針達がきれいに同じ角度で礼をした。 「・・・・・・・・・まだ、終わらんのか」 一本だけ飛び出た髪に手立てがなくなったのか、ぶつりと力任せに切られてゼルガディスが悲鳴を上げた。 回廊の両側から伸びて、一つに合わさる螺旋階段の手前― 反対側からガウリイに手を引かれてやってきたアメリアの姿を目に留めて、ゼルガディスが思わず言葉を失った。 足元まで伸びる、向日葵(ひまわり)色の輝かんばかりのアンティークドレス。 肩と鎖骨を出すデザインは、艶(あで)やか過ぎずにアメリアの白い肌を引き立たせていた。 薄化粧を施(ほどこ)した、珊瑚色(コーラル・ピンク)の唇が恥じらうように笑みの形を浮かべて― 「・・・お待たせ、致しました」 かすかに震えた声が、緊張を伝えてくる。 「ああ・・・」 つられて上ずった声を返すと、膝の裏にどすりと鈍い衝撃がした。 『お褒めの言葉の一つもおっしゃれないんですか。パットは情けのうございます』 どこから調達したのか、パットの背丈に丁度良いホウキがゼルガディスの膝の裏に食い込んでいた。 「・・・・・・・・・よ、く、似合ってる・・・」 痛みを堪(こら)えるほうに意識がいってしまっている為、口調がおかしくなってしまった。 「・・・・・・ありがとうございます・・・」 ―が、アメリアも緊張がまさっている為か気にする余裕もないようだ。 そんな二人の足元をすり抜けて、パットが片隅のグランドピアノにかけられた幕を取り払った。 楽譜がにめくれ、真中あたりのページで止まる。 自分で調律をしたピアノが、2・3呼吸置いてから前奏を奏(かな)で始めた。 「・・・ゼルガディスさん」 やや上ずった声で呼ばれ、ゼルガディスが右腕を差し出した。 アメリアがおずおずと手をかけ、二人で階段を歩み出す。 「魔女様、歌って頂けますか? さすれば城の歌姫達も、歌声を思い出すかと」 パットが下から呼びかけると、魔女にふさわしく黒いマーメイドドレスを着たリナが裾(すそ)をつまんで下りてきた。 ひとりでに動く鍵盤を興味深げにのぞきこんでいるガウリイをおしのけ、リナがピアノ備え付けの椅子に腰かける。 「高いわよ。ついでに座らせてもらうわ、歌うのって結構疲れるから」 指先で喉をさすると、リナが古き歌を紡(つむ)ぎ始めた。 歌い手は違うが、百年前にも流れた歌を― |
6808 | Beauty and the Beast 14 | 水晶さな E-mail URL | 6/24-01:32 |
記事番号6761へのコメント 【Beauty and the Beast(美女と野獣)】 『Tale as old as time, true as it can be』 (遠い昔に、きっと本当にあった物語) 『Barely even friends, then somebody bends unexpectedly』 (友達とも言えない、思いがけず心をかたむけた) 広大な舞踏室(ボール・ルーム)の中を、たった一組の男女が踊る。 ステップを間違える事もなく、お互いの足を踏む事もなく。不思議なくらい息はぴったりと。 時折目が合うと見せる、はにかんだような切ないような少女の笑み。 ―思い出して。百年前も、こうして貴方とここで踊った事・・・ 『Just a little change』 (ちょっとした違い) 『Small, to say the least』 (小さな、本当にちょっとした) 『Both a little scared, neither one prepared』 (二人とも臆病で、心の準備もなく) 『Beauty and the Beast』 (美女と野獣) リナの歌声に引き寄せられるように、おずおずと娘達の声が重なりだした。 歌う事を忘れていた歌姫達の、百年ぶりの歌声が響く。 『Ever just the same』 (同じような) 『Ever a surprise』 (驚きが) 『Ever as before, ever just as sure as the sun will rise』 (昔からのように、太陽が昇るように) 痛いような切ないような思いが胸に押し寄せる。 アメリアの言っている事に嘘はない。 真っ直ぐに向けられる瞳は偽(いつわ)りなどない。 それなのに彼女の記憶が、いまだ掘り起こされぬのが悲しいほど辛い。 「ゼルガディス、さん」 ダンスの途中、アメリアが自分を見上げながら呟いた。 この上なく幸せな笑みを浮かべながら。 自分と共にいるこの時間を、限りない幸福と思うように。 『Tale as old as time』 (遠い昔の物語) 『Tune as old as song』 (古い調べのように) 『Bittersweet and strange, finding you can change, learning you were wrong』 (ほろ苦く不思議、あなたを探す事は変わり、あなたを知る事も間違い) 覚えていますか、百年前の私も『アメリア』だったんですよ。 『ベル』って、『美しい』とか、『可愛い』という意味があるんですって。 貴方がつけてくれたんです、『ベル』という名を。 貴方が呼んでくれたんです、『ベル・アメリア』と― 『Certain as the sun rising in the East』 (東から太陽が昇るように確かなこと) 『Tale as old as time, song as old as rhyme』 (遠い昔の物語、古い歌のように) 『Beauty and the Beast』 (美女と野獣の物語) 歌の終わりにつれて燭台達がその灯(ひ)を弱める。 艶(あで)やかな光から、ほんのりと淡い光へ。空間が幻想的に変化していく。 段々と胸に溢れてくる穏やかで熱い想い。 このまま曲が終わってしまうのが切ないほどに。 『Tale as old as time, song as old as rhyme』 (遠い昔の物語、古い歌のように) 『Beauty and the Beast』 (美女と野獣の物語) 伴奏を終えたピアノが、静かに楽譜を閉じ、蓋(ふた)を閉じる。 歌にリラックスしていたガウリイは、ピアノに寄りかかったまま寝てしまったようだった。 アメリアはゼルガディスに手を引かれてテラスへと出て行く。 閉じた蓋の上に肘を置き、リナが月明かりの差し込む窓を見上げる。 もう雪は降っていない―城の外観を隠す為の魔法の雪は、今夜ばかりはその役目を休んでいた。 「あたしも外気にあたってこようかな・・・」 かたりと席を立ち、寝ぼけたガウリイを引きずって階段に向かう。 パットだけがその場に取り残され、ピアノの椅子によじ登ると息をつく真似をして座った。 静かだ―心地良いくらいの静寂。 先程のリナの美声とピアノの余韻(よいん)にひたりながら、パットは100年ぶりの心の安らぎを覚えた。 「あと・・・少し・・・」 呟いた言葉は―ゼルガディスとアメリアに向けられたものなのか、それとも自分へだったのか。 わからないままに、パットは閉じない瞳のまま眠りについた。 |
6820 | Beauty and the Beast 15 | 水晶さな E-mail URL | 6/28-00:04 |
記事番号6761へのコメント 【Reviving love(よみがえる想い)】 「・・・帰ってこない父親を案じた娘は、父親を探して同じように古城に迷い込みました。そこで野獣に捕らえられた娘は、自分が身代わりになるから父親を解放してくれと懇願(こんがん)しました」 石造りのテラスの縁に腰かけ、アメリアが柔らかな月の光に包まれながら語り出した。 『こんな所になんかもういられないわ、うちへ帰る!』 身を切るような寒さにも関わらず、外套を一枚羽織っただけで飛び出した。 「暗闇の森では、飢えた狼達が娘を襲いました。娘が死を覚悟した時、野獣が助けにきて狼を追い払ったのです」 狼以上に目をギラつかせた彼の姿に、初めて恐怖を覚えたが―― 狼達が逃げた後、彼がこちらの無事を確かめるように1度だけ振り返って、 そのまま――雪の中へと突っ伏した。 「狼達との戦いで疲れ果て、野獣は倒れました。娘は立ち去る事ができずに、彼を連れて城へと帰りました」 傷だらけの彼を看病して、逃げた事をなじられて、横柄な彼の態度に逆に怒って、助けてくれたお礼を言って。 「次の日から・・・少しずつ、わだかまりが溶けていって。二人は心を通わせ始めました」 空を仰いで呟くアメリアの瞳は、遠くを見ていて。 あの時を思い出しているかのように顔をほころばせた。 「・・・お互いに、お互いの優しさを知った・・・そしてある夜に、舞踏室(ボール・ルーム)で二人だけの舞踏会を開いて―」 あの日も、月明かりの美しい夜だった。 先程リナの歌った旋律が、記憶の中によみがえる。 「二人で踊って、テラスに出て・・・娘は呟きました。『父親がどうしているか知りたい』と・・・」 野獣が差し出したのは、願いに応じてものを映す魔法の鏡。 「鏡が映したのは・・・吹雪の中娘を探してさまよう父親の姿でした」 今の今まで不自由なく暮らしていた自分を恥じた。 父親がどうしているかなど、考えもしなかった・・・。 鏡を抱き締め泣き始めた娘に――野獣は城を出る事を許した。 『行け』 「本当に・・・想ってくれていたから、出た言葉だと・・・信じてた・・・私は・・・」 昔話をしていただけなのに、声が震えてきた。 「・・・その・・・先は?」 今の今まで黙って話を聞いていたゼルガディスが、続きを尋ねる。 アメリアが力なく首を横に振った。 「娘は城を出た・・・その後、どうなったのかわからないんです」 わからない。そこから先はどうしても思い出せない。 「ただ一つ言えるのは・・・私は、貴方の前から姿を消した」 アメリアが泣きそうな笑みを浮かべる。 「『きっとまた、会いにくるから』って・・・言ったのに・・・」 その言葉がアメリアの口から漏れた途端―ゼルガディスは頭をはじかれたような痛みを覚えた。 『キットマタ、アイニクルカラ』 貴方が私を忘れても 私が貴方を忘れても きっとまた、会いにくるから 貴方をまた愛するから 貴方にまた、恋をするから 「誓った・・・」 アメリアは、ゼルガディスが呆然と呟くのを耳にして顔を上げた。 「ゼルガディスさん?」 「誓ったんだ、俺に・・・」 額を割るような痛撃を堪(こら)え、ゼルガディスが言葉をつむぐ。 「それなのに・・・どうして忘れることができるんだ?」 キットマタアイニクルカラ 言霊(ことだま)が耳を突いて離れない。 「俺は・・・」 「・・・思い詰めないで下さい」 不安げな顔をしたアメリアが、ぎゅっとゼルガディスの服の端をつかむ。 「私・・・今・・・幸せです・・・」 励ます為だったのか本心から漏れた言葉だったのか―― そんな事はどうでも良くなっていた。 無意識の内に腕を伸ばし、アメリアの肩を抱いて引き寄せる。 「・・・何故だろうな、俺もだ」 見上げた月は、歪(ゆが)み一つなく曲線を描(えが)いて―― 月に落ちるシルエットまで鮮明に映し出していた。 「・・・・・・・・・?」 雰囲気を感じ取ったのか、アメリアも不思議そうに空を見上げて―同じように固まった。 宙に人が浮いている。 闇夜に溶け込みそうな、烏の濡れ羽色の髪とマントをなびかせて。 女性にしては高い身長の、不敵な笑みを浮かべた美女だった。 ゼルガディスの脳裏に、弾(はじ)けるような痛みと共によみがえる彼女の言葉。 『眠りを、あげましょうか?』 それは、もう一人の魔女だった。 『貴方の記憶と引き換えに――』 |
6837 | Beauty and the Beast 16 | 水晶さな E-mail URL | 6/30-00:17 |
記事番号6761へのコメント 【Aggressors(侵略者達)】 「・・・・・・ったく」 頭痛をこらえるように額を指先で押さえた後、彼女は気だるげに姿勢を戻した。 城の尖塔(せんとう)に立つリナの位置からは、不法侵入者の姿がよく見える。 「おーっほっほっほっほっ!」 「気色悪い笑い声あげてんじゃないわよ!」 闇夜によく響く声に、相手が驚いて振り返った。 そしておもむろに、見せ付けるように片手を上げる。 「笑い直さんでいい!!」 先手を打たれて魔女が渋々と手を下ろした。 「西森の魔女ナーガ・・・あんたとこっとんいらん事してくれるわね」 「ふっ! 相手があなたなら尚更よ!」 嫌味の如く胸をそらし、無意味に高笑いを響かせる。 「・・・予想はついてたわよ。あたし以外に百年の眠りを与えられる奴なんてそうそういないしね・・・」 聞こえないように呟くと、魔女の正装に戻ったリナがマントをなびかせた。 「言っとくけど、そこの二人に手出しはさせないわよ」 リナの言葉に、ナーガが心外だという顔をした。 「魔女が一般人をいたぶったって面白くないじゃない。私がわざわざ出向いたのはあなたがいるからでしょ」 もったいぶったような言い方にリナが眉をひそめる。 「野獣の相手なら相応の人間を用意したわ。邪魔しないで欲しいのはこちらの方よ、リナ=インバース」 ナーガの言葉が終わると同時に、どすんと突き上げるようなやかましい衝撃音。 城へと続く道に浮かぶ、松明(たいまつ)の火の波。 『アメリア様をお助けしろ!』 『野獣を殺せ!』 城門の前には丸太をかかえた男達が、扉を破ろうと狂乱じみた声をあげていた。 「・・・まさか」 リナの胸中に嫌な予感がふくれあがった。 「!」 アメリアがテラスの手摺りに身を乗り出し、先頭に立つ人物を見て青ざめた。 「エリオット王子・・・!! 私を探しに!?」 ここへ来る前に立ち寄った、隣国で自分に言い寄ってきた王子。 「やめ・・・」 下に向かって呼びかけようとしたアメリアを、ゼルガディスが後ろから口をふさいだ。 「むが!」 「頭に血が昇っている連中に、何を言っても聞かん!」 テラスにいると姿が見えてしまう為、慌てて舞踏室(ボール・ルーム)に戻り扉を閉める。 暗闇の舞踏室には、音を聞き付けたのかパットを筆頭に動ける家臣達が終結していた。 「侵略者でございます、旦那様」 「・・・・・・・・・」 既に心を決めている家臣達を目の前に、ゼルガディスが唇を噛む。 「百年前と同じ事をするだけです。旦那様、ご命令を」 言葉を言わぬ姿へと変わり果てた家臣達が、ゼルガディスを見つめてくる。 心は決まっている。それでも一言が必要なのだ。 息を吐いたゼルガディスが、意を決したようにつぶやく。 「迎え撃て。ただし、追い返すだけだ」 しんとした舞踏室には、彼の声だけが響く。 「血の惨劇は見たくない。勝てないと思ったら、さっさと退散しろ」 「・・・ゼルガディスさん・・・」 アメリアがゼルガディスを見上げる。 「俺の為にこれ以上付き合う義務はない」 ゼルガディスが言い終えると、パットが敬礼の姿勢をとった。 「総員戦闘配置!」 彼女の言葉に家臣達が散って行く。 もう既に作戦まで立ててあったらしい。 「お二人はお着替え下さいまし。最善を尽くしますが、いつなんどき上まで敵が行くかわかりませんから」 ゼルガディスがアメリアを促して部屋へ行こうとすると、自分の配置場所へ行きかけたパットが振り返った。 「アメリア様をお守り下さいましね」 「重々承知だ」 きっぱりと答えると、パットが満足げにうなずいた。 上の部屋へ上がって行く二人を、パットが立ち止まったまま見送る。 「・・・お守り下さいましね。今度こそ」 パットの声は、もう二人には届かなかった。 |
6846 | 気になるぅ〜〜(>_<) | ゆっちぃ | 7/6-05:56 |
記事番号6837へのコメント お久し振りです、ゆっちーです! イキナリではありますが、さなさん、おめでとうございます♪ 本当はさなさんトコの掲示板にてお祝いしたかったのですが、ただ今ネット禁止令発動中でして。申し訳無いと思いつつ、こちらにお邪魔させて頂きました。 ご本人さんなので私が何を言ってるかおわかりだとは思いますが、もし日にち間違えてたらごめんなさい(汗) 後日、改めましてお祝いさせて頂きたいと思います♪ にしても。 続きが凄い気になります、この展開。 ナーさん登場にはかなり驚きました! 一体何を仕出かすんでしょう?ああどきどき〜 |
6850 | 詰まってます〜(爆)。 | 水晶さな E-mail URL | 7/7-00:26 |
記事番号6846へのコメント ゆっちぃサンいらっしゃいませ〜v >イキナリではありますが、さなさん、おめでとうございます♪ >本当はさなさんトコの掲示板にてお祝いしたかったのですが、ただ今ネット禁止令発動中でして。申し訳無いと思いつつ、こちらにお邪魔させて頂きました。 >ご本人さんなので私が何を言ってるかおわかりだとは思いますが、もし日にち間違えてたらごめんなさい(汗) どんピシャです(笑)。ありがとうございます。今年も無事に年が増えました(笑)。 >後日、改めましてお祝いさせて頂きたいと思います♪ >にしても。 >続きが凄い気になります、この展開。 >ナーさん登場にはかなり驚きました! >一体何を仕出かすんでしょう?ああどきどき〜 ナーさん気付いたら初めて書くキャラでした。(でも何気に動かし易かったり) 恐怖の試験&レポート期間が迫ってきているので、先にあげてしまうべきか後でゆっくり書くべきか、かなり本人いっぱいいっぱいになっております(爆)。 ネット禁止令発動中は痛いですね・・・私がされたらきっと発狂してます(核爆)。 できれば長ーい目でお付き合い下さい(懇願)。 ではでは〜(^^ゞ |
6851 | Beauty and the Beast 17 | 水晶さな E-mail URL | 7/7-15:11 |
記事番号6761へのコメント ふと昔の小説を見直したら、「LITTLE MERMAID」は全13話でした。 これの予定は一応21・・・二周りはいかないものの結構長いです。 コマ切れにしたって噂も(爆)。 ================================ 【Battle on the tower 1(決闘1)】 「折角百年ぶりの決戦を演出したのに、邪魔するつもり?」 ナーガが兆発めいた口調で言ってくるが、リナは至って冷静に返す。 「どやかましい。大体アンタが動く理由って『何か面白そーだから』しかないじゃないの」 最初から核心を突いた物言いが痛かったらしく、ナーガが思わず胸元を押さえた。 「な・・・長生きしてると人生に活性剤を加えたくなるものよ!」 「要は暇潰しでしょ」 「・・・・・・・・・」 ジト目で睨まれて、ナーガがそれ以上反論を思い付かないのか黙り込む。 ―が、そんな事を一瞬で忘れ去ったかのように再び意味もなく胸をそらした。 「ふっそんな事をいちいち気にする私じゃないわ! 百年の間に鍛えた私の魔術思い知しりなさい!」 ナーガの指先がゆっくりと複雑な印を刻み始めた。 リナが辺りからはじけてくるような魔力的エネルギーに眉をひそめる。 何か大技をしかけようとしているのはわかるが、一体何をしようとしているのか掴めない。 「大地に根付きしなゆたの魂・・・集(つど)いて我の僕(しもべ)となりや! ヴ=ヴライマ!!」 「!?」 足元から響くような震動がした。 城を隠す森が――周囲一帯を覆い尽くしていた木々が動いている。 ある一点を目指して枝葉が伸び、からまり、一つの異形を形作る。 「・・・・・・・・・・・・」 顔面蒼白になったリナが――恐らく呆れが限度を超過したのだろうが――ぽつりとつぶやいた。 「・・・ビオラ●テ?」 「プラントゴーレムと言ってちょうだい!!」 ナーガが間髪置かずにツッコミを入れた。 「冗談に決まってるじゃないの」 リナが落ち付き払ったように唇に指を当てた。 指先をくわえ器用にかん高い口笛を吹くと、そのまま屋根の上を走り出した。 「―はっ!」 端までスピードを落とさず走り込み、勢いよく足元を蹴って宙に身を躍らせる。 1mも落下しない所で、猛スピードで下から浮上してきたガウリイの上に『着地』した。 驚くナーガを尻目に、彼女よりも急速に浮上してリナが狙いを定める。 「震えし落つる天(あま)の欠片(かけら)、狂いて吠(ほ)えよ我が意のままに! ゼラス・ブリッド!!」 リナの手の平からはじけた光が軌跡を描(えが)きながらプラントゴーレムに突き進む。 一点から幾重(いくえ)にも分かれた光がプラントゴーレムの体をまんべんなく穿(うが)った。 「―うしっ」 空中でガッツポーズを決めかけたリナが、ふとその動きを止めた。 穴の空いたプラントゴーレムの上を、新しいつるが巻き付いてゆく。 わさわさと急激な勢いで巻き付くそれは、新たな表皮を作り出していた。 「ああああああっ!!!?」 「ほーっほっほっほっほっほっ!!」 驚愕の声をあげるリナと対照的に、いつの間にやらプラントゴーレムの真上に浮かんだナーガがこれでもかというくらい高笑いをあげる。 「まだまだこれからよ!」 ナーガが真下のプラントゴーレムに向かって手から光を放つと、その幹というか胴体の部分が急速にふくれあがった。 ぴしりと何筋もの亀裂が走り、内側から茨(いばら)を思わせるトゲが突き出す。 「・・・・・・・・・」 リナが今度こそ言葉を失った。 殻――いや、皮を突き破って下から表出したそれは、 たとえて言えば――いや、たとえなくとも一言で言い切れた。 栗。 「・・・・・・・・・イガグリ?」 わざわざ口に出す労力がためらわれるほど嫌そうな声でつぶやく。 「ほーっほほほ!! トゲの攻撃力と防御力! ツル植物の移動力!! この2つが合わされば怖いものなどなくってよ!!」 「・・・・・・・・・」 額に指をあてて――恐らく頭痛がしたのだろう――リナが疲れたように呟いた。 「ああ・・・バカバカしい・・・」 それからすっと腕を天に向かって上げる。 「幽玄なるかな真白き月(ルナ)よ、溢るる実りの雫とならん。天(あま)よりくだりて力を示せ」 頭上の月から溢れた光が――リナの手の平に落ち彼女を媒介にしてガウリイへと伝う。 「実りもたらせ今ここに、ひとときの夢を与えんことを」 光を吸い込んだのは――リナではなくガウリイの方だった。 無限に続くかと思われる月光を吸収して、ガウリイが徐々にその体積を増していく。 「・・・・・・・・・・・・」 ナーガが呆気に取られた様相でこちらを見つめていた。 ・・・・・・・・・・・・・・・ずずぅん。 プラント・ゴーレムとタメが張れるほど巨大化したガウリイが、のそりと動き対峙(たいじ)した。 「ガウリイ」 余裕の笑みすら浮かべたリナが、ガウリイの上に腰を下ろしてつぶやく。 「栗ってねーえ? 料理すると美味しいのよv」 顔がない為に、はた目から見た感情の起伏(きふく)が判明しないが――やる気が沸いている事くらい誰でもわかる。 唐突に沸きあがってきたガウリイの、恐怖すら覚えるオーラを感じてナーガの顔が引きつった。 「はっ・・・反則・・・」 「言語道断! しゃしゃり出て邪魔したアンタが悪い!!」 無慈悲な笑みを浮かべてリナが相手を指差す。 「やっておしまい」 闇夜に哀れな魔女の悲鳴が一際高く響いたが、下の喧騒にまぎれて誰の耳にも届かなかった。 |
6867 | Beauty and the Beast 18 | 水晶さな E-mail URL | 7/9-23:42 |
記事番号6761へのコメント 【Battle on the tower 2(決闘2)】 「・・・喧騒が・・・」 動きやすい普段着に着替えたアメリアが、下から聞こえる罵声と破壊音に痛々しい表情を浮かべる。 「そう簡単にやられるような奴らじゃない」 どこから調達してきたのか、ゼルガディスの手には剣が握られていた。 アメリアが何とも言えない表情で見つめていると、ゼルガディスがなだめるように笑みを浮かべる。 「守るための武器だ。心配するな」 「・・・わかってます・・・」 落ち付かない様子で椅子に浅く腰かけたアメリアが自分で自分を抱き締めた。 ――わかっているのに、この胸騒ぎは何だろう―― 抜き身の剣を携(たずさ)えて、窓から外の様子をうかがっているゼルガディスを見つめる。 緊張が張り詰めているのが見てとれる。 嫌な汗が背中を伝うのを感じて、アメリアがはっと身をすくませた。 ――こんな表情をしているゼルガディスさんを、見たことが、ある―― ミタコトガアル―― 『お前などにアメリアを渡すものか!』 「・・・ゼルガディスさん!」 外に気を取られていたゼルガディスが、驚いたようにアメリアを振り返る。 こんな時に尋ねるべきことではない。わかっている。わかってはいるが。 「私・・・百年前・・・本当に帰ってこなかったんですか・・・?」 アメリアの問いかけに、ゼルガディスが眉をひそめた瞬間―― 耳ざわりな音をたてて、窓ガラスが砕け散った。 真正面に居たゼルガディスが、咄嗟(とっさ)に両腕で顔をかばうようにする。 幸いガラスの破片も彼の肌に傷をつける事はできなかった。 「・・・ここにいたか、野獣」 「・・・・・・」 腕を下ろしたゼルガディスが、屋根の上に立つ人物を睨(にら)み返した。 月光を背にして立つ、王族衣装で抜き身の剣を持った男。 その双眸(そうぼう)は狂気じみた赤い色を放っている。 「・・・エリオット王子?」 アメリアがかすれた声で呟いた。 疑問符が付いたのは、彼の印象が前に見た時と全く違っていたからである。 自分に言い寄ってきたのは、歯の浮くような台詞ばかり言う優男(やさおとこ)だった。 ここまで攻撃的な事をする人間ではない。 それにオーラというか、雰囲気も語調も違うような―― アメリアの姿を認めた彼が、ぞっとするような笑みを浮かべて言い放った。 「――やぁ、アメリア。百年ぶり」 「――!?」 その低い声を耳がとらえた瞬間。アメリアは恐怖に膝をついた。 抱き締めた自分の体が、ガタガタと震えているのを自覚する。 「・・・ガ」 正常な呼吸ができない為、途切れながらもその名を紡(つむ)ぐ。 「ガス・・・トン・・・?」 「覚えていてくれたのかい、嬉しいよ」 にまぁと笑みを浮かべたその顔は、まぎれもなくあの男の顔。 「・・・・・・百年たってもか・・・しぶとい」 ゼルガディスも思い出したのか、凄みをきかせてガストンを睨みつけた。 「そいつぁこっちの台詞だ!!」 言葉と同時に、ガストンが剣を振り上げて襲いかかってきた。 剣を横にして受け止めながら、ゼルガディスが叫ぶ。 「アメリア! 逃げろ!」 「!」 自分の身の位置を認識したアメリアが、反射的に扉の位置まで走る。 ――が、その場を立ち去る事ができずに、扉を背にして震えながらも場にとどまった。 「アメリア!?」 「私・・・逃げるだけなんて嫌です! 守られるだけなんて嫌なんです!!」 恐怖を振り払うように声高に叫ぶと、涙目になりながらもその場を動こうとはしない。 「・・・・・・っ!! ならそこを動くなよ!!」 言い放つと、ゼルガディスがガストンに向かって切りかかった。 アメリアは歯を食いしばって、必死に恐怖と戦っていた。 「・・・・・・・・・」 喧騒も遠くに聞こえる塔の最上階で、リナが丸テーブルの前に何も言わず立っている。 ガラスケースに守られた深紅のバラは、時を刻(きざ)むようにひらりと花びらを落とす。 「タイムリミットまで・・・あと少し・・・」 主人と共に眠りから目覚めた魔法のバラの花びらは、あと一枚になっていた。 「こればっかりは止められないわよ・・・」 唇を噛んだリナが、覇気の無い声で呟いた。 ――膝が震える。 呼吸すらうまくできない。 何故だろう、ゼルガディスは素人目から見ても優勢に立っているのに。 何故自分はこんなにも、震えているのだろう。 ――恐れている。 何に? その剣の先端に。 何を? 刺し貫かれて溢れた鮮血と、遠のく意識―― 誰が? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わた、し? ぞくりと――足元から全身を襲う悪寒。 ほんのわずかにバランスを崩したゼルガディスに、ガストンが剣を振り上げた。 魔女が与えたのであろう、まがまがしい光を放つ剣を。 その鋭利な刃は、きっと彼の岩肌をも切り裂く筈―― 「やめて――」 動けないほど震える足で、一体どうしてこんなにも素早い行動ができたものか。 アメリアは自分でも驚くほど、ごく自然にゼルガディスの前に両腕を広げて立っていた。 その瞬間――アメリアもゼルガディスも、その脳裏に鮮明な過去の画像が映った。 父を案じて城を出た娘は、帰ってこなかったのではない。 帰ってきたのだ。彼を裏切らない為に。 ガストンとの戦いを止める為に。 同じ場所、同じ時に、同じ状況で―― 彼女は野獣を守る為に、両者の間にその身を投げ出した。 『泣かないで・・・どうか 貴方が私を忘れても 私が貴方を忘れても きっとまた、会いにくるから』 彼の腕の中で呟いた言葉。 彼の悲しむ顔を見たくなくて、必死になって紡(つむ)いだ言葉。 『貴方をまた愛するから 貴方にまた、恋をするから』 「眠りを、あげましょうか?」 それは、亡骸(なきがら)を抱(いだ)いていた彼を見付けた魔女の言葉。 「貴方の記憶と引き換えに――」 魔女の誘(いざな)いに抗(あらが)えなかった事を、誰が責められるというのだろう。 城は、眠りと共に時を止めた。 彼女が再び城を訪れる日が来るまで・・・。 |
6871 | (T‐T) | 雫石彼方 E-mail | 7/10-22:23 |
記事番号6867へのコメント ああぁぁぁ・・・・(涙) そういうことだったのですね・・・・・ゼルぅぅぅ(滝涙) あう、いきなりの号泣失礼しました(汗) でも、これが泣かずにいられますか!!そりゃ、記憶の一つや二つ、消してもらいたくなるさ!!眠りだって欲しくもなるさ!! 可哀想な野獣・・・・・(泣)つくづく不幸に好かれる男ですね!!(殴) > 『泣かないで・・・どうか > 貴方が私を忘れても > 私が貴方を忘れても > きっとまた、会いにくるから』 このセリフも、てっきりアメリアが父親の様子を見に城を出る時のセリフだと思ってたんですが、ゼルを守って死ぬ間際に言ったセリフだと分かった今では前と全然重みが違いますね。 元の話をよく知らない私ですが、知らない方がドキドキが多くてちょっとお得かも♪などと思っている今日この頃。ガストンとか、「おお、こいつは何者だ!?」ってな風に楽しんでます(^^) では、今度こそ二人が幸せになれることを祈ってv |
6872 | Σ(゜ロ゜)!! | 水晶さな E-mail URL | 7/11-01:08 |
記事番号6871へのコメント ツリーに列を為す顔にかなり驚かされました水晶さなです(笑) >ああぁぁぁ・・・・(涙) >そういうことだったのですね・・・・・ゼルぅぅぅ(滝涙) >あう、いきなりの号泣失礼しました(汗) >でも、これが泣かずにいられますか!!そりゃ、記憶の一つや二つ、消してもらいたくなるさ!!眠りだって欲しくもなるさ!! >可哀想な野獣・・・・・(泣)つくづく不幸に好かれる男ですね!!(殴) よーやく種明かしです。遅すぎ(爆)。 ここまで不幸でもなきゃ魔女ナーガに頼る気にはなれませんしね(苦笑)。 >> 『泣かないで・・・どうか >> 貴方が私を忘れても >> 私が貴方を忘れても >> きっとまた、会いにくるから』 > >このセリフも、てっきりアメリアが父親の様子を見に城を出る時のセリフだと思ってたんですが、ゼルを守って死ぬ間際に言ったセリフだと分かった今では前と全然重みが違いますね。 ここでやっと全文出せました。ちょこちょこ「・・・」を挟んで出していたのでかなり出し惜しみのような状態でしたが(爆)、ここが一番書きたかった所なので頑張りました(^^ゞ >元の話をよく知らない私ですが、知らない方がドキドキが多くてちょっとお得かも♪などと思っている今日この頃。ガストンとか、「おお、こいつは何者だ!?」ってな風に楽しんでます(^^) >では、今度こそ二人が幸せになれることを祈ってv 知らない人にも楽しんでもらえるよう書いている「つもり」ですv(爆) ガストンの説明は次の話に入ってます。先に入れておいた方が良かったかも・・・(汗)。 どうやら予定通り全21話で終わりそうな気配です。もしかしたら続きが上の方にお邪魔するかもしれませんが、あと少しお付き合い下さいませv 水晶さな. |