◆−赤い糸 11 〜sister〜−早坂未森(6/28-22:43)No.6828


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6828赤い糸 11 〜sister〜早坂未森 E-mail URL6/28-22:43






思い出されるのは、幼き日のこと。


「…ヴィン、シヴィン!」

―――はっ…

突然、現実に戻される。
見ると…自分を見つめる、皆の姿。

「あ…ガディル…リナさん達」
「どうしたんですか?シルヴィンさん。ぼーっとしちゃって…」

未だにぼーっとしているシルヴィンに、アメリアが尋ねる。

「もしかして、身体の調子でも悪いの?それだったら、早く次の町に着かなくちゃいけないけど…」
「あ、いえ…ちょっと考え事をしていただけ。別に悪くないわ」
「そう?ならいいんだけど…それでも、早く次の町に着かなきゃいけないわね」

そう言って、リナが空を見上げる。
太陽が、傾き始めていた。

「ところで…その、妹のいる町まであとどれくらいなんだ?」
「…次の町の次、ですね」


あと、もう少し。





赤い糸 11 〜sister〜





山のふもとに位置する、ヴァルアーナ。
そこが、シルヴィンとガディルの故郷だった。
そしてそこに、シルヴィンの妹だという人が、いる。




でん。

「「「「…………………………………」」」」

ある建物の門の前に立って、四人は呆然としていた。
目の前には、セイルーンなどの王宮にはかなうはずもないが、普通の人の家にしてはやたらでっかい家――いや、屋敷があった。
…何故、こんなイナカにこんな屋敷があるのだろうか?

「…?どうしたんですか、皆さん」

呆然としているリナ達に、きょとん?とした顔で尋ねるシルヴィン。
横ではガディルが呆れた顔をしている。

「…なによ、ガディル。その顔は…」
「シヴィン、おまえ、自分の立場ちゃんと分かってるか?」
「立場…って…、ああ!」

ぽむ、と。
両の手のひらをあわせて、未だ屋敷を見ている四人に言った。

「こんなところで立っているのもなんですし、屋敷に入りましょうか、皆さん」
「・・……シヴィン………(汗)」

なんか違うぞ、シルヴィン。






…ぱたん…

シルヴィンが、ある部屋のドアを開く。

開いたその先の部屋には、誰もいない。
ソファとテーブル、豪華な家財があるだけだった。

「…どうぞ、入ってください。今、お茶持ってきますから」
「あ…どうも」
「ほらガディルっ!あんたも手伝うのよっ!」
「お、おう」

シルヴィンに連れられて、ガディルも部屋を出ていく。
その部屋――客室に、リナ達四人が、取り残された。

「…なんか…すごいことに、なったような気がするわね…」

部屋を見回して、リナがぽつりと呟いた。
部屋の窓からは、果てしなく続く田舎の風景。

「…なんでこんな田舎の地に、こんな大きい屋敷があるんでしょうか…」

ソファに座って、アメリアも呟く。
この部屋にあるどの家財もどれもこれも立派に価値のあるもので。

「…メイドたちのようなのがいない、っていうのも気になるな」

顎に手をやり、ゼルガディスが呟く。
そう、ここにはこんな屋敷につきものなメイドのような人たちの姿も見当たらない。
一人、庭で手入れをしている男性が見えるが、その人も雇われているようには見えない。

「―それは勿論、この家の人が他人を雇うなんてことを考えてないからさ」
「…ガディルさん」

突然かかった声に振り向くと、そこにはお茶を持ったガディルの姿。

「…どういう意味なの?それ」

慣れた手つきでテーブルにカップとティーポットを置き始めるガディルに、リナが尋ねる。

「どういう意味もなにもないさ。ただ単にこの屋敷の人は自主性が強くてね。
 なまじこの屋敷に何家族も住んでいるもんだから、みんな当番制で生活してるんだよ。
 だから、メイドもなにもいらないんだ」

珍しくまともに話を聞いているのか、ガウリイが尋ねる。

「何家族って、どういう意味なんだ?」
「シヴィンの親戚さ。
 シヴィンはこの屋敷の当主の娘だよ」
「そ、そうなんですか…すごいですね」
「だろう?感心しちゃうよな。
 …まぁ、ただ単に雇う金が惜しいって説もあるけ…ぅぐっ!?」
「…ガディルv
 口は災いの元って諺、知っているわよ、ねえぇぇぇえええぇええ?」

ぎゅうぎゅうぎゅう…

何時の間に背後に来たのか、シルヴィンがにぃっこりvと微笑みながらガディルの首を絞める。

「ぐっ、ぐるひ、しヴぃん、お、おれがわるっ、かっ…」
「ふふふふふvそうよねぇ、ぜぇぇぇえんぶあんたが悪いのよね、ガディルv
 今度何か変なこと言おうとしたらどうなるか…わかっているわよねv伊達に何年この屋敷にいないわよねぇv」
「ぅわ、わかっ、た、から、はなしっ…」
「ああぁぁぁああぁぁあら、誠意っていうものが感じないのは何故かしら、ガディル〜〜〜〜?」
「ちょ、ちょっとシヴィンさん…」

さすがにやばいと思ったのか、アメリアが止めに入ろうとする。
だが、その時。

ばたんっ!
「―…・・ねえさまっ!」

扉が勢いよく開き、10歳ほどの少女が入ってくる。
腰の辺りまでのばした見事な銀髪に、透き通るような蒼い瞳。
その肌は絹のように肌理細く、初雪のように白い。

「…ミーディ!」
「ねえさまっ、会いたかったあああっっ!」
どわきっ!

少女は、シルヴィンの姿を見とめると、駆け出しそのまま飛びつい――もとい、抱きついた。
シルヴィンに首を絞められていたガディルも一緒に。
…どこまで哀れなのだろうか、この男は。真実はスィーフィード神のみぞ知る(おい)

ぎゅううぅぅぅうううぅぅ・・・・・・

巻き込まれているガディルのことなんかお構いなしに、シルヴィンと、ミーディと呼ばれた少女は抱きしめあう。
まるでどっかの熱血親子のようだ。
…いや、その親子のうち娘はこの場にいるけど。

ガディルはもちろん、リナたち周りのことなんか気にしていない。完全に二人の世界へ行ってしまっている。

「…あのぉ〜〜?
 わたしたちのこと、忘れないでくださいます?」

たまりかねたのか、リナが呼びかける。
このままだと巻き込まれているガディルが窒息死しそうな勢いである。

「あ、ああ…ごめんなさいリナさん達・・・」
「いえまぁ、いいですけど…ι」

頬をポリポリと掻いて、リナが応える。

「…ところで、その子は…?」

ちらりと、ミーディと呼ばれた少女を見、たずねた。

「ああ、この子は・・・」
「―ミディアです。ミディア・・・ウィルランド」
「え、じゃあ・・・」
「ええ…わたしの、妹です」

シルヴィンの言葉に、四人の視線が、ミディアに集まった。



その頃ガディルは、シルヴィンの足元で再起不能の状態に陥っていた。



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おおっ!今回はなんか長めっ!?
ワードで6枚でしたわ♪はじめてはじめて♪(おい)
妹さん初登場・・・ということになるのでせうか?
うん。多分。
…っつうか、最近シルヴィンの性格がよくわからん(待て)
まぁ、そのうち…うん。(待てってば)
さて気になること。
ガディルは果たして復活できるのかっ!?
…それはまだわかりません(死)