◆−翼無き天使たち 第3話 << 夜凪 >>−せりあ(7/6-12:42)No.6848
6848 | 翼無き天使たち 第3話 << 夜凪 >> | せりあ E-mail URL | 7/6-12:42 |
===== 翼無き天使たち 第3話 << 夜凪 >> ===== 「今日はこの辺で野宿だな」 森の中の開けた一角を見渡してガウリイが言う。 辺りは暗くなり始め、動物の動く音もあまり聞こえなくなってきた。 もうすぐ日も落ちきってしまうだろう。 「ふかふかベッドおおぉっ!!」 「リナさんがずんずん進んでっちゃうから・・・」 「そう言うレイも、スキップしながらついていってたじゃない」 叫ぶリナに、呟くレイ。更にレイに突っ込むレティ。 そんな妙な関係に苦笑するガウリイと、つっこまれて何やらブツブツ呟くレイに、 「ちょっとそこ!何笑ってるかなぁ?あんたが野宿って言い出したんだから、テキパキ焚き木集めてきてよね!!」 「そこで陰背負ってるのも。一応男なんだから」 リナとレティの声が飛んだ。 「よっ・・・と」 一通り集め終わった焚き木を、適当な長さのつるで縛る。 そうしてまとめた焚き木をかつぎ、ガウリイは手前にいるレイに声をかけた。 「おーい!もうそろそろ戻るぞー!!」 声をかけてみて、相手の様子がおかしいことに気づく。 まとめた焚き木を足元に置いたまま、星の出始めた空を見続けているのだ。何も無い、暗闇のただ一点を。 ガウリイはその場に焚き木を置くと、ゆっくりとレイに向かって歩き始める。 距離が縮まったその時、聞こえた言葉に、ガウリイは眉をひそめた。 「・・・レイ?」 言って手を伸ばした瞬間。 ・・・ィン! 金属が風を切る音と同時に、間合いを取って、レイが剣を構えた。 怒っているのか怯えているのか。 瞳は鋭く射抜くようで。 その視線の先にあるのは、少なくとも自分の姿ではない。 ガウリイは息を吸い込むと、 「レイっ!!」 出来うるかぎりの声で名前を呼んだ。 暗くなりきった森に声だけが響く。 剣が落ちて、木の根っこに当たった。 「・・・え・・・?」 ゆっくりと1回瞬きをして、口から出た言葉は間抜けなもので。 それでも瞳に光が戻ったことを確認すると、不安げに自分を見てくるレイの頭に軽く手を置き、 「早く戻らないとリナにどやされるぞ?」 ガウリイは屈んで剣を拾う。 レイは何かを払うかのように、弱く首を横に振ると、 「そうだね。もどろっか?」 言って、受け取った剣を鞘におさめて、焚き木を担いだ。 ガウリイが焚き木を取りに戻っている間も、リナたちの所へ戻る間も、レイはそれから一言も言葉を発することはなかった。 「遅い!」 一言放って仁王立ちで2人を出迎えたのはリナ。 レティは明かりの下で、丸太に座ってこちらを見ている。 「燃えそうな木探すの苦労したんだぞ?」 ガウリイはレイのことには触れずに答える。 「おれ、火つけてくるね」 レイはそう言うと、レティの居る方へと歩いていく。 その背中を見て、リナは短い溜息をついた。 「様子、おかしいわね。あの子」 「ああ」 「・・・まあ、いいわ。今きいてどうこうなるもんじゃないだろうし。それに・・・」 いったん言葉を区切って、 「あたし達より、適任者がいるみたいだし?」 悪戯っぽく笑うリナの指差す先にはレティの姿。 「そうだな。あっちが一段落つくまで、ここにいるか」 ガウリイは頷いて小さく微笑むと、リナの頭を撫でた。 「あんたにしては気がきくじゃない?」 ふいっと顔を横にそむけたままリナが言う。 照れているのだろう。 ガウリイは土の上に腰を下ろすと、リナの服をかるく引張った。 「何?」 「立ったままだと疲れるぞ?星がたくさん出てるんだし、ゆっくり見て待ってようぜ」 そう言って、左手で星を指差しつつ右手でぽんぽん地面を叩く彼に、 「あんたって結構器用なのね・・・」 思わず突っ込み入れつつ、リナも座ることに決めた。 「おかえり」 「ん、ただいま」 交わす言葉は短くそれだけ。 後は淡い光の下で、レイが焚き木をくむ。 一通り作業を終えて、レイは顔をあげてレティを見た。 「さっきからずっとおれのこと見てるけど・・・何かついてる?」 作業中、ずっと視線を感じっぱなしだったのだ。 レティなら星でも見て、終るのを待っていそうなものなのに。 「ついてる。『悩み中』って書かれた紙が」 そんな彼女の言った言葉に、彼は参ったと言う風に両手をあげた。 「一人で空見てたらさ、どうしても考えずにいられなかったんだ。おれのしようとしてることは・・・」 途中で言葉を止め、苦笑して空を見上げる彼に、 「レイは一人でやろうとしてるんじゃない。私もやるの」 レティは静かに、きっぱりと言った。 顔を空から元に戻したレイに、一言だけ短く問う。 「レイは一人ぼっち?」 その声は優しく耳に届く。 彼は瞳を閉じて口元を緩めると、無言で首を横にふった。 先程より弱くなった光とは反対に、月星の輝きは増したように思えた。 小さく、リナが笑った。 背をガウリイの背中に預け、視線を星からもう一つの光へと移して。 「大丈夫みたいよ」 「そうか」 背中合わせに、ガウリイも小さく笑ったのがわかる。 「どうする?あっちに行って食事の用意手伝うか?」 「くらげ。こういう時は気をきかすもんでしょうが」 肩にかかる自分の髪を、くるくると指に巻きながら言う彼を小突いて、リナは背中に預ける分を少し増やした。 「軽く寝るわ。ご飯できたら起こしてよね?」 「おう。ちゃんと起こすから安心して寝とけ。お前さん、疲れてるだろ?」 「そりゃあんだけ歩けば疲れるわよ。さてっと・・・それじゃ、おやすみ」 「おやすみ」 無風の夜底に広がる闇の下 月星の輝きは増してゆく ===================== 後書き・・・? ===== すみません。1ヶ月もあいてしまいました(汗) しかも話の時間ちまちましか進んでないしっ?! ・・・はしょろう。うん。 またもや副題、悩みつつ結局造語。 朝凪とか夕凪とかあるので、勝手に夜バージョンもつくってみました♪(爆) 嵐の前の静けさとでも思ってください。 これから色々おこるはずですので・・・たぶん(をい) でわでわ。 附箋になってない附箋練りこみつつ、せりあでした♪ |