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6894 | Escape 〜予告編〜 | あんでぃ E-mail | 7/14-10:39 |
皆様こんにちは。大馬鹿者のあんでぃ、久々の投稿です(汗) ああああああああ予告編を出してから一体どれだけ経ったっ!自分っ(汗) そういうわけで忘れられている事はまず間違えないので、予告編から投稿させていただきますです(汗) 待っていて下さった方、いないかもしれませんけど(泣)ごめんなさぃぃぃぃぃぃっ(泣) と言い訳はこれくらいにしておとなしく投稿しようと思います(汗) これは私が超のろのろ投稿しているビーパラの番外編です。全然話にリンクしていないのでこれだけでも大丈夫ですが、オリキャラばっかです(汗) それではどうぞです〜!! ========================================================= Escape 〜予告編〜 舞い降りた天使よ 白い翼広げ ここから連れ出して もしもいつか その重い扉を開いて 飛び立てるのなら――――――――― アア・・・・ 彼女ハ神ノ予定外。 予定外ノ彼女ハ 神ノ失敗作。 存在ハ 罪。 ソウ、 彼女ハ忌ムベキ子 ソンナ十字架ヲ背負イ、 ナニガ神ノ祝福ゾ!! 彼女は自らを拘束する塔から、 国から、 運命から、 放たれる 残酷な刃を すべてをその身に受け入れ、 そうすることで均衡を守っていた。 自らを閉じ込め、 何よりも全ての者を 愛する少女。 夢を見てた あの日の夢 いつもと同じ変わらぬSTORY あと少しで何かが起きる その時に目覚めてしまう その少女の内なる願いに 無意識に引き寄せられる少年がいた。 彼の見る夢は、 いつも途中で途切れてしまう。 誰かに呼ばれているのに、助けを求められているのに、自分は何もできない そして 漂う 無力感 君は一体何を望んでいるの? 君は一体何から耐えているの? 僕にだけで、いいから、教えて ねえ? 彼らの真実は 一体何処に? 『さあ、飛び立とう。 国からも、神からも、誰の目も届かない僕達だけの世界へ――――――』 今、彼らを拘束する 全ての鎖から Escape・・・・・・・・ =========================================================== ☆言い訳(汗)☆ 実を言うとこの話のはMisaさんの“Escape”の曲を使用させて頂いています。 私がとっても好きな曲ですので、お勧めしたいです!!(結構前の曲なので間違え無くレンタル屋さんにありますので) それでは、こんな話ですが、お付き合いいただけると嬉しいです(> <) あんでぃでした!! |
6895 | Escape 〜プロローグ〜 | あんでぃ E-mail | 7/14-10:59 |
記事番号6894へのコメント こんにちはあんでぃです(> <; オフライン作業にしようとしたら窓ごと消してしまうという大失敗をやらかした馬鹿な女です(泣) 何とか2回失敗は免れようとしつつ(2度あることは3度あるというので2回目の失敗は怖いのです/汗) それでは、どうぞ!! ================================================= Escape 〜プロローグ〜 ある王国の、ひとつの塔 そんな中に彼女はいた。 緑が多く、空気もきれい 不自由の無い生活・・・ しかし、当然というか何と言うか、何もかも完璧なものなんてこの世にありはしない。 変化 そして、自由――――― 彼女の生活からはそれが欠落していた・・・・・・ 舞い降りた天使よ 白い翼広げ ここから連れだして もしもいつか その重い扉を開いて 飛び立てるのなら――――― ひとつの塔、ひとつだけある窓に君がいた。 きれいな黒髪は長く流れ、瞳は碧で澄んでいた。 「サントス君、何しているんだい?」 「・・・・・・・・あ、すみません。今行きます」 宮廷魔道士の人に呼ばれサントスは慌ててその場を後にする、その場を後にしながらも先ほど見た少女のほうを再び見やる。 少女はただ、こちらを気にする風でもなく、青い空を見上げていた。 現実感の無い感のする 塔という籠の中にいる少女 その澄んだ瞳はどこか虚ろで、どこかで生きる事に喜びを感じていないような・・・・・ 不思議とサントスは、その少女の事を一目見ただけで忘れられなくなっていた。 いつか私を外へ連れ出してください 雨の夜が嫌いな少女がいた 毎日星に願いをかけてたから いつもと同じように過ぎる日々を 大きく変えてくれる奇跡を待った 流れ星を探して 星に願いを いつか、 いつか私を外へ連れ出してください いいえ、それは考えてはいけない! 私の愚かな考えを消してください!! いつもと同じように過ぎる日々を、この生活から逃れる術を、この生活を変える力を 大きく変えてくれる奇跡を待った。 それが、罪深い考えだと 彼女自身が気付き、その考えを消そうとしても―――――― ・・・・人間の慣れって、感覚って怖い。 『どうして王女様の方が死ななかったのか』 そんな事言われても、 そのうち何も感じなくなった。 『人の身から産まれてきた悪魔』 ああ、私は悪魔なんだ。 不思議とそう納得してしまったり・・・・・・ これだけ言われても何も感じないなんて、 私が悪魔だからなんだ、 そんな気もしてくる。 でも、それは仕方がないことなんだ。 何もかも、私一人が耐えれば、 きっとこのまま何も起こらないのだから・・・・・・・・ ふと、目が覚める。 ああ、またいつもの夢か――――― そんな風に思う。 不思議とこの夢を見る事はもう慣れていた。 毎日、一体何回見ただろう? 最後に、誰かに手を差し伸べられる。 とても暖かい 心地よい手 この手を取れば、何かが変わるのだろうか? ・・・・・ならば、私はこの手を取ってはいけない。 もし、私がこの手に少しでも触れてしまったら 私も、 この国の均衡も お母さんも きっと、壊れてしまう・・・・・・・ 夢を見てた あの日の夢 いつもと同じ変わらぬSTORY あと少しで何かが起きる その時に目覚めてしまう でも、私の中にいる私がささやく。 私をここから連れ出してください 私をここから連れ出してください・・・・・・ 私の中にいる私は、自分の責任を放棄して ここから飛び出したい そう、願う 変化を求めてる。 私の中にいる私はいつも甘く誘惑する。 このまま、 誰にも助けてもらえなくて良い 誰にも気付かれなくて良い だから、 早く私の中の私、 消えてしまって お願いだから 自分自身の本心を気付かせないで・・・・・・ 自分の存在理由を忘れ得ないために、 “あの人”からの手紙を読んだ。 真紅の薔薇を一口、食べた・・・・・・・・・ どこからか血の味が、する ================================================= ☆言い訳(汗)☆ 何とかプロローグをアップする事ができましたっ!! しかし、私の話ってまとまり無いぞ(汗) こんな抜けさくあんでぃですが、これからも読んでいただけると嬉しいですっ! それでは、あんでぃでした!! |
6908 | Escape 1 | あんでぃ E-mail | 7/16-23:52 |
記事番号6894へのコメント どうもです〜(> <) あああああ、話の内容がないっ(汗) ・・・・・・・頑張ります(汗) それでは、どうぞです〜 ================================================ Escape 1 舞い降りた天使よ 白い翼広げ ここから連れ出して もしもいつか その重い扉を開いて 飛び立てるのなら 「おはようございます、リゼア様。今日も良いお天気ですよ」 リゼアと呼ばれた、艶やかな黒髪を腰まで伸ばした碧色の瞳を持つ少女は、まどろみの中からその声を聞いた。 少女はリゼア=ミルス=アクト=セイルーン、セイルーン第一王位継承者アクリティ=イジュ=タォラ=セイルーンの娘―――――――――もしかしたら将来この国を治める運命にあるかもしれない者。 リゼアがゆっくりと目を開けると、そこには王女の周りの世話をする侍女がいた。 「おはようございます」 心の中のどこにも何の感情も抱かないまま、顔には張り付いたような笑みを浮かべ、リゼアは侍女に対してそれだけ言うと窓の外を見た。 真っ青な空 所々に散らばった白い雲 自由に空を飛ぶ鳥たち・・・・・ (別に晴れても曇っても雨が降っても雷が落ちても超巨大ハリケーンが来ても晴れの合間に突然ブタが降って来たとしても私にはどうでも良いんですけどね。 だって・・・・・・どうせここから出られませんから・・・・・・・・それに、どうせ私はここから出ようと思いませんから) でも彼女はそれを侍女に言う事はない。 そう、彼女の本心は誰も知らない 誰も信じない 誰に対しても決して油断をしてはいけない 誰に教えられたわけではない しかし、今までの彼女の短い人生経験から そう彼女は考えていた それが、この先この王国を治める者のルールだと思っているから―――――――――― 「ここは巫女さんたちの詰め所、こちらが私たち宮廷魔道士たちの詰め所です―――――それでここが・・・・」 彼は、淡々とものすごい速さで王宮内の説明を続ける宮廷魔道士に後ろから控えめについて行っていた。 セイルーン魔道士協会評議長である父親が王宮に用がある間、社会見学という名目で彼は王宮の中を出入りしていた。 もちろん子供である自分が一人でうろうろする訳にもいかず、こうしてヒマそうな宮廷魔道士に案内を依頼したりするのだが。 依頼はしたものの、実を言うと彼は宮廷魔道士の説明の方はあまり聞いていない。 前髪以外は短く切った金髪に翠の瞳、今はよそ行きなのだろう、黒っぽいローブを着ている十歳位の少年――――――サントスは軽く、こっそりとため息をついた。 少年、サントス=イージェア。 セイルーン魔道士協会評議長、モリーウン=イージェアの息子である。彼自身も父親の影響を受けて魔術の勉強はしていた。使えるかどうかはさておき。 確かにこの魔道士にとって所詮は子供。自分がここにいる事、そしてこんな子供に王宮内を案内しなくてはいけないことは不本意なのだろう。 そうだとしても、彼にとってお決まりな事しか言わないこの宮廷魔道士について行くのはかなり苦痛であった。欠伸をかみ殺すくらいの気は使っているが。 サントスが何回目かの欠伸をかみ殺した頃・・・・・・ふと、視界の端に塔が見えた。 サントスは聞き流している説明の中でも、宮廷魔道士がその塔の説明を省いていることにも気付いていた。それが何となく気になって尋ねてみる。 「あの、すみません・・・・・あそこにあるあの塔は?」 「・・・・・・・・あれは、リゼア様という第一王女様の住んでいる塔です。いずれこの国を治める方ですからあの中で様々な勉強をされているそうです。 一度もお会いした事がありませんから詳しい事は知りませんが、お母上にそっくりな美しい王女様だそうですよ」 サントスのおずおずとした質問に宮廷魔道士は淡々と答えると、次の案内場所へ向かうべく、歩き始める。 塔の中にいた少女、恐らく彼女がリゼアという王女なのだろう。 少女はこちらに気付く風でもなく、ただ空を見上げていた。 その少女の瞳はどこか儚げで、現実感が無いように見える。 ふとそう思ったが、それは間違えかも知れない。 現実感がないのではなく、むしろ現実という鎖にがんじがらめにされて動けなくなっているような・・・・・・ 絶望・・・・いや、違う・・・・・・切望か? そんな言葉が一番似合う気がする。 (彼女は今が楽しいのかな?) ふと、そう思ってしまってから自分は思わず苦笑した。 まさに今を苦痛としていて楽しんでいない自分がそんな事を思うのはお門違いだろう・・・・・・・ 「サントス君、何しているんだい?」 「・・・・・・・・あ、すみません。今行きます」 サントスはあまり歩くのが早くない宮廷魔道士のあとを慌ててついて行く。 その場を後にしながら、サントスは再びその場を見やる。 不思議とサントスは、その少女の事を一目見ただけで忘れられなくなっていた。 塔を気にして、何度か振り返るサントスのその様子に気付いた風でもなく、宮廷魔道士はどんどんと次の目的地に向かおうとしている。 (さっさとこんなめんどくさい仕事を終わらせたいっていうのが本音なんだろうな・・・・・・) 宮廷魔道士の態度にそんな事を考えながら、サントスは再びこっそりとため息をつこうと息を吸って――――― どんっ 「うわっ!!」 「ひゃぁぁぁ!!」 彼のその行為も虚しく、ため息をつくために吸ったその息は目的のため息ではなく、体を打ちつけた時に一気に出た。 「いてて・・・・」 「う〜〜わ〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・」 ぶつかった拍子に体重の軽い彼はあっさりと吹き飛ばされ、尻餅をつく。 しかし、体重が軽かったのはぶつかった相手も同じようだった。サントスとぶつかった女性も見事に吹き飛ばされ、尻餅をついて目を回していた。 「ご・・・ごめんなさい!!お怪我はありませんか?」 サントスは慌てて立ち上がると吹き飛ばされた女性が取り落とした宝珠(オーブ)を拾い、傷が無いか確認する。 (あああ、よかった無事だ・・・・・・) その宝珠(オーブ)の無事を確認して、女性に返そうとほこりを払うと手を差し伸べる。 その女性は三十代後半だろうか?栗色の髪の毛、そしてその小柄な体に似合わぬ強い紅蓮の瞳を持っていた。 そして今、その容貌は厳しい。サントスの拾った宝珠(オーブ)をじっと見つめている。 「あ、えと・・・・・ごめんなさいっ宝珠(オーブ)の方もたぶん大丈夫かと思いますけど・・・・・壊れてたら出世払いにしてくださいっ」 「え?・・・・・・・あ、ああ、はははっ ごめんね、あなたに怒ってたわけじゃないのよ」 思わず圧倒されかけたサントスの差し伸べた手を、彼女は笑顔で受け取った。 「気にしないでね、あたしもちょっとよそ見してたし」 気圧されかけた第一印象とは全く違う様子でにこにこと立ちあがりながら話す彼女に、思わずサントスはきょとんっとした。 サントスはわりと人を見る目には自信があるつもりだった。 そして、その自分の第六感が彼女は只者じゃないと告げていたのだが、最初のイメージと今の彼女の印象がまったく違う気がする。 「もう、私の曾孫どもはどこに行ったのかしら?王宮の中ってわりと広いんだから、勝手に入って迷っても知らないわよ・・・・・・まったく」 彼女の口から出た愚痴とも独り言ともつかない言葉にサントスはさらに混乱した。 「あのぅ・・・・・曾孫さん・・・・ですか?」 自分はこの女性が三十代後半だとふんでいた。三十代後半で曾孫はいくらなんでも無理である。 「そうよ。どうして?あ、もしかしてあのお馬鹿どもをどこかで見かけた?」 「いえ、孫すらいるような風には見えなかったものですから・・・・・」 サントスの言葉に今度は彼女がきょとんっする番だった。 「彼女はリナ=インバース殿です。現王たちの友人でございますよ」 「ちょっと、今はリナ=ガブリエフって言ってくれない?」 きれいに吹っ飛んだ二人の心配すらせずに、王宮内の案内という目的だけを果たそうとする宮廷魔道士の紹介にリナは少し不服そうにそう言った。 サントスは現王の年齢を思い出す。友人という事はリナさんという女性はそんなに現王たちとは歳は離れていないのだろう。と、サントスは予想した。 (そこから考えると彼女の年齢は・・・・・・・えーっと・・・・ひー、ふー、みー、よー・・・・・・え゛?) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ しばし、その場に沈黙が流れる。 「うーん・・・・えーっと、ぜんっぜん、そんな風に見えません。せいぜいお子さんがいるかな?ぐらいですよ」 サントスは正直に思った事を力説した。 「正直な子ね・・・・お世辞を言う気なら普通二十代に見えるって言うでしょうに。まあ、いいわ、気に入ったから♪」 リナはそう言うとサントスの腕をがっしと握った。 「へ?」 突然の事にサントスは間の抜けた声を漏らすが、リナはそんな事はまったく気にしない。 「ねえねえ、あなた。突然で悪いけど、この子あたしに貸して♪私が代わりに王宮の中案内しておいてあげるから。ねっ?」 「ええっ!!」 宮廷魔道士に向かって言った突然のリナの言葉に思わずサントスは声をあげるが、宮廷魔道士にとっては願ったり叶ったりだったのだろう、あっさりとリナにサントスを任せて自分はさっさと帰って行った。 「さあ、あんなへぼへぼ宮廷魔道士じゃあ案内できないような、すごいところに連れてってあげるわ♪」 サントスはリナがいたずらっぽく笑ったのを見て、もしかしたら宮廷魔道士のヒマな案内の方がよかったかもしれない・・・・・・と、思う。 しかし、そう思ってもとても口には出せず、リナにずるずると引きずられながらこっそりと先程出しそこねたため息をついたのだった。 「いやっほ〜ぃ♪アメリア〜vゼル〜〜vひっさっしっぶりーー!!」 「リナさん!!お久しぶりです〜〜〜〜!!」 「リナ・・・・・お前さんは少し静かにできないのか?ここは一応王宮なんだぞ」 サントスがリナに問答無用で連れてこられたのは、なんと謁見の間だった。 謁見の間の荘厳な雰囲気もどこへやら、のんきにぶんぶかと手を振って挨拶をしているリナに、今にも飛び出してリナに抱きついて行きそうな様子のアメリアと呼ばれた王妃・・・・・・あきれた様子で憎まれ口を叩きながらも、どこか懐かしそうに二人の様子を見つめるゼルと呼ばれた王・・・・・ そして、どうしたらよいのか分からずにおろおろしているサントス。 放っておけばそのまま世間話を続けそうな勢いのある空気だが、その空気を打ち破ったのは以外にもリナだった。 きょろきょろとリナの後ろで辺りの様子を窺っているサントスを、リナはずいっと前に出す。 「みてみて、この子♪外見も中見もいい感じだから連れてきちゃった♪私の曾孫どもとも歳が近いみたいだし、王宮に入れるようだし、この子リゼアのお付きにしてみる気、無い?」 「ええええっ!!」 リナの爆弾発言に驚いたのはゼルガディスやアメリアではなく、サントスだった。 ・・・・・もしかしたらこの二人はリナの爆弾発言など、サントスとは違ってもうとっくに慣れているだけなのかもしれないが。 ゼルガディスとアメリアは驚きのあまりに口をパクパクさせているサントスと、いたって本気のリナの二人を冷静に見つめている。 「も、もしかして・・・・・本気で言っていらっしゃるんですかぁぁぁぁぁぁっ?!」 そんな二人に対して、彼はよほど動揺しているのか今日何度目かの驚愕の叫び声を漏らした。 「君は・・・・サントス・・・・・サントス=イージェアか?あの、魔道士協会評議長(に見えない)モリーウンの息子の」 ゼルガディスはサントスの顔をじっと見つめて、そう呟いた。 「へぇぇ・・・・あなたモリーウンさんの息子さんだったんだ?言われてみれば似てるかもね」 こちらをまじまじと覗き込んできたリナのその言葉にサントスはきょとんっとする。 サントスは今まで父親に似ているといわれた事は一度も無かった。 サントスは金髪に翠の瞳。モリーウンは黒髪に青い瞳。サントスは歳の割には大柄だし、モリーウンは小柄で痩せている。 『二人は本当に親子なのか?』 そう言われた事すらある。 「似てますか?僕って・・・・・・父に」 「外見は全然似てないけど、あんた達雰囲気がそっくりよ。いい人っぽいオーラが出てたりするし、親子って感じ」 リナはサントスの問いにあっさりとそう答えた。 (この人は、見た目でものを判断する人じゃあないんだ。何事も物事の本質を見て判断している・・・・のかな? よく分からないけど、すごい人だ・・・・) 何よりも、尊敬している父親に似ていると言われた事が嬉しかったこともあるかもしれないが・・・・・・ サントスはリナが只者じゃない、というその第一印象に間違えが無い事を確信した。 「あら、あなたはモリーウンさんの息子さんだったんですか。それなら文句ありません♪リゼアの事お願いしちゃいます♪」 アメリアもこの国の重臣たちなんかよりずっと信用の置いているモリーウンの息子だという事を考慮してか、まったく心配した様子は無い。 もしかしたら、リナがサントスはモリーウンに似ていると言った事も心配していない理由に入るのかもしれない。 リナの人を見る目は、ガウリイの勘に並んでかなりの信用されているのだから。 「・・・・・・・・そうだな、あれもそろそろ歳の近い人間が必要だろう・・・・・」 アメリアだけでなく、ゼルガディスもしばし迷いながらもリナに同意する。 「えええっ!!」 サントスがこの二人の言葉にさらに声をあげるが、三人はそれをあっさりと無視する。 「それじゃあ、決定ね♪この子が今日からリゼアの付き人♪私の曾孫とそのおまけはあなたとも歳が近いしリゼアの幼馴染みだし、ちょうど良いわね♪」 「あううう・・・・・・」 強引な大人たちに振り回され、サントスはひたすら涙をこぼすばかりであった。 (ううううう、この人たちは・・・・・・・本当にすごい人なんだろうか・・・・・・・?) かくして、サントス本人の意見、主張はまったく取り合ってもらえず、問答無用でサントスがリゼアの付き人をやる事が決定したのであった。 サントスは、まだ幼いとはいえ、いきなり王女の付き人を命じられてしまった。 よほど自分が信用してもらえたのか、よほど彼らに緊張感が無いのか・・・・・・ 確かに平和な世の中だ、しかし王女をこんな幼い頼りない自分に任せていいのだろうか? と、そこまで考えてから、自分のマイナス思考っぷりに情けなくなる。 (これもなにかの運命かもしれない・・・・・ずっとずっと、もしかしてとは思っていたけど、僕はきっとこういう星の下に生まれたんだな・・・・) そう思って納得する事にした。自分を納得させる事にした。 これからを生きていくのに必要なのは、強さだ。 (強くなろう・・・・僕も。きっとこんな事にくじけてるようじゃあ、ダメなんだろうなぁ、これから・・・・・) ・・・・・・・ちなみに、この頃からサントスのしたたかな性格は形成され始めるのだが、それは余談である。 ============================================== ☆言い訳(が、良い訳だったら嬉しいのに・・・)☆ どうもです、あんでぃですっ セイたちの話は前後編、リゼアたちの話は今のところ所3話まで書きあがってて・・・・・この扱いの違いは一体(笑) わはは(汗)こんな話でもレスして下さるとあんでぃはひたすら嬉しいです(> <) それでは、あんでぃでした〜!! |
6920 | Escape 2 | あんでぃ E-mail | 7/17-22:40 |
記事番号6894へのコメント こんばんはです〜♪あんでぃです。 やまなし、意味は少しだけ、落ちなし(おひ)の話です(汗) こんな話でも付き合ってください〜!! それでは、どうぞ!! ========================================== Escape 2 舞い降りた天使よ 白い翼広げ ここから連れ出して もしもいつか その重い扉を開いて 飛び立てるのなら―――――――――― 彼女は自分の自由も何も望んではいけない。 彼女は只、この国の平和と発展を望まなくてはいけない。 この国で一番の愛国派(パトリオット)であり、国王派(ロイヤリスト)でもある少女・・・・・・ 国民を想わなくてはいけない。 国王を想わなくてはいけない。 彼女には多くの義務はあっても、只一つの権利はない―――――――――― 真紅の薔薇の園。ここは大臣たちによってリゼア王女の生誕10周年を記念して建設されたものだ。 そしてこの薔薇園にリゼアが一日も欠かさずに訪れている事も有名だった。 彼女は薔薇園か彼女のための塔、 この二ヶ所にしか行き来しない。 外を見た事がない――――――― 「はじめまして、リゼア様。僕はサントス=イージェアと申します。国王様からリゼア様の付き人を命じられました」 「――――そうですか。よろしくお願いします」 リゼアはサントスに向かってぺこりとお辞儀をすると、それから彼には見向きもせずに作業を続ける。 ―――――正直、怒られると思っていた。 サントスは思わず唖然とする。 突然決定したことを彼女は何の抵抗もなく受け止めた。 相当王を信じているのか、あるいは―――――――― ぱちんっ 剪定用のはさみを使って彼女は惜しげもなく薔薇の花を切り落とした。 「うぁっ・・・・・・良いんですか?まだ咲いているのに」 「良いんです。薔薇は咲いた後は静かに散っていくだけですから・・・・綺麗なうちにこうして取ってしまった方が嬉しいはずです」 サントスが慌てて尋ねても彼女は動揺した様子もなくそう応えた。 切り落とした何個かの薔薇の花を彼女は抱える。それをサントスは慌てて受け取る。 「慣れてない人には刺がついていて危ないです。私がやりますから」 「だから僕がやるんですよ。怪我したら危ないじゃないですか・・・・・・って痛てっ!」 奪い合ったせいだろうか、茨がサントスの指に刺さる。 サントスの指から真っ赤な血が流れ出たのを見てリゼアが顔をしかめた。 「・・・・・・・だから、私がやるって言ったじゃないですかっ」 はじめて見せたリゼアの感情の変化にサントスは少しだけびっくりとする。がすぐに笑顔になった。 「大丈夫ですって・・・・・・・・・・・治療(リカバリィ)」 サントスの呪文によって指先の怪我がすぐに消える。 たいした怪我ではないが、それでもリゼアのこの怒りようではこうしておかないと納得してくれないだろう。 「ほら、これくらいの怪我、どうにかなるもんですから」 傷がきれいに消え去った指をリゼアに見せながらサントスはにっこりと笑った。 「・・・・・・・・・・だったら私が運んでも良いじゃないですか」 「それはダメです」 サントスの手を一通り見回したリゼアがサントスに恨めしそうに言うが、サントスはそれをあっさりと却下する。 「どうしてですかっ」 「そんなの決まってます」 サントスはぴっと指を立てて自信まんまんに――――― 「女の子を大切にしない男はこの世で一番最低なんです」 リゼアに彼の家の家訓を述べた。 「何しているんですか?」 サントスは今日何回目の問いになるだろう―――――リゼアに尋ねた。 「薔薇の砂糖漬けとローズティのための薔薇ジャムを作ってるんです」 「いや、僕が聞きたいのは・・・・・・」 どうして自分で作るんですか?って事なんですけど―――――――― サントスは言いかけた言葉を飲み込んだ。そして不意に気づく。 (この人は誰も信用していない、誰にも頼っていない―――――――) 王族というのはそんなに悲しいものなのだろうか? 両親と一緒に食事もできずに、話さえ満足にできずに・・・・・・・ 「えっと、僕も食べて良いですか?」 そう言うとまだ作りかけだった薔薇の砂糖漬けを口に放り込む。 「あ・・・・・・・」 突然で驚いたのだろうか? 信じられないという様子でこちらを見つめてくるリゼアに向かってサントスは笑みを作った。 「おいしいですよ」 (・・・・・鼻で息をしなければ) サントスはそう思ったがあえて言わなかった。 甘いものが苦手なサントスも作りたてのこれは甘味が少なく―――――というかまるっきり花の味なのだが・・・・・・それは言わぬが華である。 とにかく、確かに香りは強いがおいしい事には変わりないのだ。 リゼアは思わず口をぽかんと開けてサントスを見つめていた。 ――――――信じられない。人の作ったものを平気で食べられるなんて。 ・・・それにおいしいはずがない。薔薇の砂糖漬けはちゃんとしたものでさえ、慣れなければおいしいと思えないはずだ。 それでも、彼の言葉、表情に微塵も嘘は感じられない。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・ありがとうございます」 はじめてのその感情、その経験にリゼアは戸惑うことしかできなかった。 「やっほー♪お二人さん♪仲良くやってる?」 またしても甲高い間延びした声が響く。おおよそ謁見の間には似つかわしくないが、友人を思いやる優しい声。 最近ではそんなのんきな声を聞きなれたせいか、誰も文句は言わない。 むしろ平和な証拠だと、王たちは喜んでいる・・・・・・・はずである。 「リナさんっどうしました?最近よくいらっしゃいますね」 「うん。あの子はどうしてるかなぁと思って」 王妃アメリアの声にリナは片目を閉じてそう答えた。 「問題はない・・・・・みたいだな。さすがモリーウンの息子だな」 王ゼルガディスがぶっきらぼうにそう答えた。 「なに?あんた“どっち”にあんまり気が進まないわけ?」 リナが悪戯っぽくゼルガディスに尋ねた。その様子を見てアメリアはくすくすと笑っている。 「女の子に男の付き人なんだ、心配して何が悪い」 ぷいっとそっぽを向いて言ってくる王の姿にその場にいたほぼ全ての人が吹き出すが、ゼルがぎろりとあたりを見回すとリナとアメリア以外の人全員が慌てて気を付けをする。 その姿にさらに二人は吹き出す。 「と、とにかく・・・・・・」 こほんっと咳払いをし、ゼルガディスは立ち上がる。 「“あれ”は近日とり行う予定だ。念のためにその日まで内容は伏せておいてくれ・・・・・」 それだけで内容を察したてもらえたのか、無言でリナが頷いたのを見届けると、ゼルガディスは謁見の間を出て行こうとする。 「どこ行くの?」 ふとリナが尋ねるとゼルガディスがバツの悪そうな表情をしてちらりとリナのほうを見る。 「・・・・・・・・ああー、はいはい。行ってらっしゃい」 にやりと笑ってリナがそう言うと、ゼルガディスは恥ずかしそうにしながらもいそいそと部屋を出て行った。 「なんだかんだいって、孫は可愛いのね。ゼルってば」 「そうですよ。最近毎日ですもん、ああやって塔の様子を見に行くの」 またリナとアメリアは顔を見合わせて笑った。 『様子はどうだった?』 『分からない。だが、この国の政策は一見合理的なようで大きな穴がある』 『何としてでも――――――――』 『そうだ、この国の将来のために――――――――』 『本来いるべきでない者の代わりに――――――――』 『この国を本来あるべき姿に戻すのだ――――――――』 ============================================= ☆言い訳(汗)☆ ・・・・・・薔薇の砂糖漬けって、食べた事ある方いますでしょうか・・・・? ちなみに私はないです(汗)←ならば何故書く(汗) 食べた事のある方、どういう味なのかお願いしますです(汗)想像で書いてしまったので、間違えた可能性がありまくりかもですので・・・・・ それでは、まだ続く予定ですが最後までお付き合いの程お願いしますです〜!! あんでぃでしたっ(逃) |
7062 | Escape 3 | あんでぃ E-mail | 8/9-22:10 |
記事番号6894へのコメント どうもです(汗) 数日中にあがらなかった大馬鹿者あんでぃです(汗) 今度こそこれで終わりです(汗)・・・・・・・・たぶん(待て) お付き合いくださっているかたがいるか分かりませんが、読んでくださると嬉しいですm(_ _)m それでは、どうぞっ!!! ======================================= Escape 3 舞い降りた天使よ 白い翼広げ ここから連れ出して もしもいつか その重い扉を開いて 飛び立てるのなら―――――――――― “アメリア王女が退位して次の王へ引き継ぐ―――――――” そんな発表がされたのはついさっきだ。 リゼア王女の代からは一人っ子政策をとっているが、ゼルガディスとアメリア王妃の間には3人の子供がいた。 そしてその子供たちにもさらに子供がいた。それがリゼアたちである。 第一王女 アリクティ 9歳の娘、リゼア。 第二王女 ディクヒィ 3歳の娘、ジュジュテュ。 第一王子 ラルゴ 7歳になる娘、ヒナォ。 末っ子だが、男性であるラルゴが国を継ぐか、王位継承権の順番に従ってアクリティが国を継ぐか―――――― その判断はゼルガディスとアメリア王女の判断に委ねられていた。 しかし、第一王女のアクリティが王位を継承する事など実質ありえないも同然だった。 それは、めぐりめぐってこの国最大の汚点になると一部の者に信じてられていたから――――――― 「リゼア様?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えっ?」 サントスはぼーっとしているリゼアの額に手を当てる。 「んー――・・・・・・・熱はないみたいですね」 「・・・・・・何でもないです」 それだけ言ってサントスの手をどけるとリゼアは薔薇の砂糖漬けを一口食べた。 そんなリゼアを見てサントスは首をかしげる。 それでもそれ以上追求するのは避けて、壁に寄りかかった。 リゼアの付き人になってからもう少しで1ヶ月。 (―――――まだ信用してくれてないのかな?) そう、サントスは思う。 相変わらず彼女は何も言わないし、あれ以来感情を表に出す事もなかった。 それでも少しずつ、自分に対する警戒心が薄れているのは感じる。 しかしそれは信用されているのとは違う。 (まあ、実質僕は空気みたいなもんなんだろうな) いることをあまり意識されていないような態度に、サントスはそう思う。 (追い出されないだけいいと思って頑張ろう・・・・・・) 何故サントスがこれほどまでに彼女に尽くすのか、それは自分でもわからない。 無理矢理に決められたこの仕事だ。普通ならすぐにでも投げ出してしまうだろう。しかし、サントスはこの仕事を苦痛だとは思わなかった。 (僕と似ているのかもね。リゼア様は) どこが、とかは聞かれても答えられない。 ただ何となく漠然と彼はそう思いながら薔薇の砂糖漬けを黙々と頬張っている少女を見つめる。 リゼアが自分で作った薔薇の砂糖漬けとローズティだ。はっきり言って香りがきつい。 「・・・・・・・・・・前から思っていたんですけど・・・・・それ、お好きなんですか?」 「嫌いです」 この沈黙を何とかしようと話しかけたサントスにリゼアはミもフタもなくそう答えた。 「嫌いよ・・・・・・・でも、忘れてはいけないんです。決して・・・・・・・・自分が王女だという事を」 サントスには何が言いたいのかよく分からなかったが、ただ必死にローズティを飲み、薔薇の砂糖漬けを頬張っている少女を見て―――――――――― (薔薇を見ることで・・・・・・食べることで・・・・・・・・・何かを必死に忘れまいといているのかな?) 少なくとも忘れまいとしている事が・・・・・それが良い事でないという事だけは彼にも察する事ができた。 「リゼア様、いつものお方からお手紙ですよ」 そう言って侍女から渡されたその手紙をリゼアは何の感情も抱かずに受け取った。 真紅の薔薇の刻印 ああ、今日はその日だったのね・・・・・・・ 一月に一度必ず届くその手紙・・・・・・・・・・・・これは私が王女である証。 「リゼア様それは?」 「・・・・・・・手紙です」 それだけ言うとリゼアは部屋に閉じこもってしまった。 「いや、あの・・・・・・・・聞きたいのはそういうことじゃなくって・・・・・・・いやでもプライバシーの問題だし・・・・・・うーん」 困ったようにリゼアの部屋の前でうろうろしているサントスに侍女がくすくすと笑う。 この塔に住み込みでリゼアの身の回りを世話している女性だ。 「あの手紙は一月に一度、新月の日に必ず届くのです。差出人は私たちには分かりませんが、必ず真紅の薔薇の刻印がされています。 私が思うにあのお手紙はリゼア様のお母上のアクリティ様ではないかと思うのです。リゼア様はいつも大事にその手紙を引き出しにしまっていらっしゃいますもの」 「うーーん・・・・・・・なんか違う気がするんだよなぁ・・・・・・」 黄昏時、仕事の終了したサントスは家路につくために王宮の外へ向かいながら一人呟く。 『アクリティ様はこの塔に近づいてはならないんです。というよりも王位継承権をもつ人は誰も。理由はあるらしいのですが、私たちには分かりません。噂では――――』 普段から退屈していたのだろう、侍女の世間話に付き合わされ―――――長ったらしいわりに内容のない話だったが、それでも得た情報をサントスは整理していた。 門番の兵士に挨拶しながら――――最近でもう顔パスで王宮に入れる自分に苦笑しながら―――――サントスは顎に手を当て考え込む。 『――――噂ではリゼア様は巨大な魔力を持っていて、それが暴走する事を恐れて塔に閉じ込められているという話が―――――――』 「高名なリナ=インバースさんがセイルーンにいるのに、リゼア様だけ幽閉するなんて変な話じゃないか」 さすがはセイルーン魔道士協会評議長の息子というべきか、サントスはぱたぱたと全ての噂話をあっさりと否定した。 『――――そうでなければ、どうしてなんですか?ご両親とも一緒に暮らしていけないなんて王族といえどもまだ幼いんです、酷すぎます――――――』 サントスはふと立ち止まり、イライラしたように頭をかきむしる。 「だから僕も今それを考えているんじゃないか―――――――」 「サントス?」 不意にかけられた声に驚き、サントスは慌てて後ろを振り向く。 「何一人でブツブツ言いながら歩いているんだい?今すれ違う人が変な目で――――――」 「父さんっ!」 首をかしげながら話してくるその言葉を遮り、ずんずんとサントスは自分の父親―――――モリーウンに詰め寄る。 「父さんっずっと聞きたかったんだ。どうしてリゼア様は塔に一人で暮らしているのっ?」 その言葉を聞いた瞬間、不意にモリーウンの顔が陰る。 「―――リゼア様は可哀想なお方なんだ・・・・・・サントスは何も聞かずに守ってあげる事はできないかい? こんな事、大人の勝手な言い分だって分かってるよ。それでも・・・・・何も知らなくても、リゼア様にとって一緒にいてあげられる人間が欲しいんだ」 「・・・・・・・・父さん?」 サントスはモリーウンの――――自分の父の顔をまじまじと見る。 分からない。 父さんの言葉を理解できるには、自分はまだまだ幼すぎるのかもしれない。 それでも―――― 「父さんの言い分は納得できないよ・・・・・・・」 サントスは父親の言う事を信頼し、従っていた。 父さんのようになりたいと思っていた。願っていた。努力していた・・・・・・ そんなサントスがはじめて父親に逆らった。 正しくない。 違う。 間違っている。 そう感じたから。 「分かっているよ。これは大人の勝手な言い分なんだ。サントス、お前は父さんのような人間にはなってはいけない。いいね?」 哀しそうに笑った父さんを嫌いにはなれない―――――― (でも、子供の夢は踏みにじられたさっ!!) 悲しいのか、腹ただしいのか、情けないのか――――― ごちゃまぜな感情を残したまま、サントスはその場から走り去っていった。 根拠なんてない。ただの勘さ。 それでもサントスは走るのを止めなかった。 「絶対おかしいんだっ!あれは―――――――」 あれは絶対に違う。 通りすがりのおばちゃんに道を聞く。 お礼を言って再び走り出す。 「あの手紙は――――――」 あの手紙はリゼア様の喜ぶ内容じゃない。 「あの人なら――――――」 あの人ならきっと僕の言いたい事を理解してくれる。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・はっ・・・・うぅ・・・・・ここかな?・・・・・」 小さいとは言わないが、決して大きくない。 そんな家の門の表札を息を整えながら確認して、しばし迷ったあとにドアノッカーを叩く。 ――――――出てきた人は彼が予想していた女性ではなかったが―――――― サントスははゆっくりと彼に向かってお辞儀をした。 ======================================= 続きます(汗) わははは(滝汗)←待て |
7064 | Escape 4 | あんでぃ E-mail | 8/9-22:23 |
記事番号6894へのコメント これと、あとの残りの5話にてこのお話は終了です(汗) 長いですけど、読んでくださいませ〜っ!! ======================================= Escape 4 舞い降りた天使よ 白い翼広げ ここから連れ出して もしもいつかその重い扉を開いて 飛び立てるのなら―――――――― 「皆の者――――よく聞いてくれ。私が次の王位継承者を発表する前に、皆に伝えなければならないことだ」 アメリア王女の夫にして補佐をしているゼルガディスの声が謁見の間で朗々と響く。 そして、謁見の間の一番隅にサントスとガブリエフ夫妻はいた。 サントスはモリーウンと別れてから、リナの家へ向かった。 ドアを叩いて、出てきたガウリイに家の中へ招かれ―――――― 何が起こるのか理解できないまま、本当に彼女を守る事なんてできない。 きちんと全てを理解したい。 サントスは、そう二人に伝えた。 『・・・・・・・・・そこまで考えているのなら。いいわ、全てを知りなさい』 リナはサントスにそう言った。 そして、王位継承の場面にも立ち合わせてくれると言った。 自分を認めてくれたような気がしてサントスは嬉しかった。 大人の言い分に隠さずに、言い訳をせずに話し、きちんと一人前の人間として扱ってくれる二人に心から感謝した。 『でも、これだけは覚えておきなさい。モリーウンさんはあんたが大切だから何も知るなと言ったの。セイルーンはあんたが思っているほど平和な国じゃない。 ――――――少なくとも、あたしとモリーウンさんはそう思っているから』 リナの最後の言葉がサントスには引っ掛かった。 セイルーンが平和な国じゃない、そうリナは言った。しかしサントスにはこの国が平和じゃないようには、そういう風には見えなかったからだ。 (結局、僕はまだ子供なんだよ。夢見ているあたりがそうなんだろうな・・・・・・・) サントスは大人ぶってそう考えてみたりした。しかし結局、 夢を見たっていいじゃないか。 理想と信念の何が悪い。 そこにたどり着いたが。 「私が皆に伝えておきたい事はただひとつ。将来の王位継承問題だ」 ゼルガディスがそう言った途端に周りがざわつく。 これから何を言いたいのか、それを察したらしかった。 「アメリア王女の次に継ぐ者――――つまり『新王』の次の第一王位継承権は『新王』の子だ。他の者の王位継承権は、争いをなくすために一切を無いものとする。 ―――――――何があってもだ。良いな?」 つまり、『新王』の子供が第一王位継承権を持つ。それは半ば予想されていた事だ。それでもあたりはざわつかずにはいられなかった。 それはそうだ、他の兄弟たちに王位継承権が無くなってしまったのなら、もしもの事があった時、この国はどうなるのだ? これは、誰もが考える不安要素だ。 「それでは新王の発表をしたいと思う。皆の者静まれ」 ゼルガディスがそう言うとアメリアは王女頭にある王冠を自らの手で外し、台座に載せる。 「私やアメリア王女は、国を治めるのに男も女もない、そう思っている。それに我が子たちは皆王になるにふさわしい、選ぶことなどできぬ。 よって、王位継承順位に従おうと思う。新らしいセイルーン王はアリクティ、お前だ」 しかし、アリクティが無言で王の印としてかけられたマントを突っぱねた。その姿はあまりに猛々しく、そして誰もが呆然として、赤い絨毯の上に広がったマントとアリクティを見比べる。 先ほどまでざわついていたこの場は、今や完全な沈黙に包まれていた。 「嫌です。その決定、取り消してください」 その沈黙を破ったのは、『新王』になるはずのアリクティだった。 彼女は黒い長い髪を揺らしながら謁見の間全体の人々全てを見回し、そして見つけたある一点に向かって、きっぱりと言った。 サントスがその視線を追うと、そこにいた人物に思わず戦慄する。 感情のこもっていない瞳でじっと様子を見ていたのは、アリクティによく似た雰囲気を持つ少女。リゼアだった。 「私は、絶対に王になりません」 アリクティはリゼアに向かって晴れやかな笑顔でそう言った。 ざわっ!! アクリティの爆弾発言にその様子を見守っていた人々はざわめく。 ゼルガディスとアメリアは毅然としたアクリティの様子を無言で見守る。 アメリアとゼルに向かって一礼をし、その場を立ち去ろうとしたアリクティの進路を塞いだのは、四十代前半の小太りの男だった。 早くも薄くなってくすんだ黒髪には白髪が混じり始め、神経質そうなその茶色がかった瞳にはっきりとした怒りと困惑、そして焦りがあった。 「何ゆえ王になることを拒むのですかっ?!あなたには王族としての自覚はないのですか―――――」 「黙れ、トリス」 アリクティに向かって叫んだトリスの言葉をたった一言で黙らせたのは、今まで端の方で黙って様子を見守っていた、ガウリイ=ガブリエフだった。今は王と、トリスがいる赤い絨毯の上に抜き身の剣を携えて、隙無く立っている。その斜め後ろには手のひらよりもやや大きい宝珠(オーブ)を抱えたリナがじっとトリスを睨みつけていた。 その様子に、誰もがこれから何が起きるのか理解できずに怪訝な顔をする。見る事を許された仕事が休みの侍女たちも、宮廷魔道士も、一部を除いた宮廷大臣も、隣国の使節団やそのあたりに住んでいる貴族も、そしてサントスも―――― 「ご苦労様です、リナさん――――――」 「どうって事は無いわよ、バレてないと思って普通に尻尾出しまくりだったもの。 ――――――本当に呆れるくらいにね」 アメリアのその言葉にリナは右手をぱたぱたと振りつつ答えた。 事情の分かるその一部、トリスだけが、ぎりっと歯を食いしばる。その顔色はすでに青いを通り越して真っ白になっていた。 「どうしてアリクティが王になることを拒むのか、何故アリクティが王にならなければあなたが困るのか・・・・・それは自分が一番わかってるんじゃない?」 リナはガウリイの前へ一歩出ると、トリスに向かって冷たい視線を送った。 「な・・・・・・・何の事だ・・・・・・」 「ま、とぼけててもいいけどね。こっちはちゃんと証拠を掴んだから」 リナの言葉にトリスが小さく身じろぎする。 サントスはそっと、気付かれないようにリゼアの元へ向かった。リゼアは隅の方にある柱の陰で事のなりゆきを複雑そうに見守っていた。 宝珠(オーブ)を発動させるリナの呪文詠唱の声だけが謁見の間に響く。 『様子はどうだった?』 『分からない。だが、この国の政策は一見合理的なようで大きな穴がある。何といっても忌み子が一国を納める事になるのであろうからな』 『何としてでもアリクティを王にするのだ。そうすれば、いずれリゼアお姫様が女王になられる』 『そうだ、この国の将来のために、今から準備しておく事も悪くない。長い戦いになるが、その分事は公になりにくいはずだものな』 『本来いるべきでない者の代わりにお前がこの国を支配するのだ』 『この国を本来あるべき姿に戻すのだ。俺たちが治める新しいセイルーン王国という正しい姿にな―――――』 「この声、誰だか分かるわよね?みんな? ついでにこの会話だけで、何を企んでたかもバレバレ。本当に何もかもお約束どおりね」 リナはあたりを見回した。誰もが膝をついているトリスに視線を注いでいた。 「もう一人の声は誰だ?」 ゼルガディスがリナに向かって聞いた。 それと同時に 「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 あたりの貴族や、隣国の代表、神官などが様子をじっと見守っていた人だかりの中から奇声をあげて男が剣を抜き払った。 ひょろっこい細長い体、くすんだ黒髪に神経質な茶色がかった瞳には今、明らかな殺意が現われていた。 「しまったっ!!何で来てるのよっ!!」 リナは驚きのあまり思わず声をあげた。ガウリイも慌てて男を取り押さえるために走る。 しかし、遅すぎた。 ガウリイも間に合わず、男はリゼアに向かって剣を振り上げながら突進していった。 リゼアは隠れていた柱から出ると。男を見つめる。怯えも何も無い、相変わらず何の感情も現われない瞳で。 「あなたたちは教えてくれましたね。『あの手紙』で。私が王族である事を。私が王族である以前に兄を殺した忌み子である事を。 ―――――――私の事を恐れたいなら恐れればいい。操りたいなら操ればいい。殺したいなら殺すがいい!!」 リゼアは叫ぶと両手を大きく広げて瞳を閉じた。 リゼアが好きな言葉。リゼアが始めて自分で調べて存在を知った言葉。 ――――――Escape 脱出。 そして、知っているだろうか?この言葉には他にも意味があることを。 ――――――Escape 人の記憶に残らない。 これは、リゼアの願望でもあった。 (そう、これは私が望んだ、道かもしれないですね・・・・・・・・・・) 謁見の間に 人が切られる、 嫌な音が響いた。 ======================================= お蔵入りしたい衝動を押さえつつ、次がラストです(笑) お付き合いいただいてありがとうございますです(> <)←まだ早いから ラストも読んでくださいませっ!! |
7065 | Escape 5 | あんでぃ E-mail | 8/9-22:51 |
記事番号6894へのコメント 最終回です(汗) やっと終わったのねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜(笑)←待て それではどうぞですっ ======================================= Escape 5 舞い降りた天使よ 白い翼広げ ここから連れ出して もしもいつか その重い扉を開いて 飛び立てるのなら―――――――――― 『殺したいなら、殺すがいい!!』 どうしてそんなに自分を追いつめる―――――――――? ざくっ!! 人が切られる嫌な音がした。そして同時に、錆びた鉄にも似た血の匂いもした――――――― リゼアが恐る恐る目を開けると、そこは一面真っ赤だった。 血の海、これをこう言うのかも知れない。 そして自分の体を恐る恐る見る。白かったドレスは血によって真っ赤になっていた。しかし、ドレスのどこも切れていない。痛くない、怪我をしていない・・・・・? リゼアは再び恐る恐るあたりを見回す。目の前にある出入り口では、兵士たちによって関係者以外の人間は謁見の間から追い出されていた。 自分の右側に、自分を殺そうとした男が兵士に取り押さえられていた。 そして今度は左側―――――― 「――――――――っ!!サントスっ?!」 「はい・・・・」 リゼアは思わず声をあげてサントスに駆け寄る。そしてその呼びかけに倒れていたサントスは律儀にも答えてくれた。良かった。まだ意識はある。 宮廷魔道士は慌ててサントスに駆け寄ると『復活(リザレクション)』を唱え始める。 「ひどい出血・・・・・っ!!どうして飛び出したりしたんですかっ!!あの人はあなたを殺そうとしていたわけではないのですよ!!」 相手が怪我人だという事を忘れ、思わずリゼアはサントスに怒鳴りつける。 「すみません・・・・・・」 「・・・・・・・・謝っても許しません!!」 リゼアは視界がぼやけてくるのを感じた、鼻の奥がつんとして、喉の奥の方が痛くなる。 「こんなっ・・・・・・・私は・・・・・・・」 (誰にも傷ついて欲しくなかったのに――――――――) リゼアの想いは言葉にならず、嗚咽に変わっていく。 「・・・・・・・大丈夫ですよ・・・これくらいの怪我。何とかなるもんです・・・・・・皆さん―――――アメリア様まで呪文をかけてくださってるんですから」 浅い速い息をしながらサントスは軽く笑うと、心配そうにしているリナとガウリイに視線を向けた。 「リナさん、ガウリイさん・・・・・・ありがとうございます。今日、ここへ・・・・・・・・連れて来て下さって・・・・」 「あの男はトリスの息子一号よ。声からしてあいつが王になる予定だったのね・・・・・あれが王ねぇ・・・はぁぁ・・・・・これだから親バカってやつは・・・・」 リナはちらりとトリスを見る。が、すぐに視線を外してこちらを見る。もはや何も言う気になれず諦めているらしい。 まさかあんな気の小さいヤツが、ここに来ているなんて思わなくて・・・・・・ごめんね。これじゃあモリーウンさんに申し訳が立たないわ・・・・」 「無理矢理つれてきて、怪我させるなんて最低だな。すまない・・・・・・」 サントスのその言葉に二人は複雑そうな顔をした。 「サントス、礼を言う。リナの目に狂いは無かった。しかし・・・・・・こんな事に・・・・・・」 ゼルガディスがサントスに向かって頭を下げる。 「やだなぁ・・・・・僕が死んじゃうみたいな言い方、やめてくださいよ・・・・・・・・・僕はたまたま・・・・・すべってリゼア様の前に出ちゃっただけですよ・・・・・・・・・・・・リゼア様・・・・・・・」 「・・・・・・っはい・・・・・」 サントスが視線を移すと、目を真っ赤にしたリゼアがびくっと身じろぎしたあとに慌ててサントスの近くに駆け寄る。いや、駆け寄ろうとするが腰が立たないらしく、這うようにしてサントスのほうへ寄る。 「・・・・・・・・・怪我がなくって良かったです」 「・・・・・・・っ」 サントスの言葉に何も言えないリゼアに向かってサントスはにっこり微笑むと、深い闇の中へ意識を委ねた。 「あ・・・・・・・・・あの、サントスの具合は・・・・・・」 「リゼア、来てくれたんですね・・・・・・・・サントスのほうはもう大丈夫、心配ありません」 アメリアはおずおずと訊ねてくるリゼアににっこりと微笑んだ。 子供らしく泣き、怒り、喜ぶリゼアが嬉しくて。 アメリアは病室の入口のところでもじもじしているリゼアを部屋へ招き入れ、寝ているサントスの方へ案内する。 そして、安らかに眠るサントスを見て、リゼアはほっとする。 その様子をにこにこと見ていたアメリアはそこでふと思う、以前までリゼアが王宮に来る事は珍しかった。そう、誰かのために来ることも―――――― 最近はサントスが寝ている間にだけだが、毎日王宮へ来て様子を見てからサントスが寝ている間に塔へ戻っていく。 「一時はちょっと危ない所までいきましたけどね・・・・・・ここは『聖王都』です。一応、他の国に比べて『復活』を使える術士はたくさんいましたから・・・・・・・ ・・・・・・・本当に良かったです・・・・・サントスが助かって・・・・・・・」 アメリアはそう言うとほっとした様子のリゼアにさらに微笑んだ。 「リゼアはとても正義感が強い子ですね。お母さん想いの優しい子です」 「いいえ、私は逃げてばかりです・・・・・・誰かに操られる事で、周りを見る事を拒みました。 間違えに気付く事が・・・・・・自分が忌み子だって気付く事が嫌だったんです・・・・・そうじゃないと、やっていられなかった・・・・・・・」 リゼアは頭を垂れた。アメリアのを見ていられなかった。 「リゼア・・・・・あなたは忌み子じゃない。あなたのお兄さんが死んでいたのはあなたのせいじゃないの・・・・・」 アメリアはそう言うと目を伏せた。言わなければいけない。真実を。 「確かにあなた達が生まれたとき、あなたのお兄さんの心臓は止まっていました。でも、同時にあなたも危険な状態でした。でもあなたはお兄さんにきつく抱きしめられていたんです。 確証なんてありません。でも、私はこう信じています。きっと、お兄さんはあなたにまで誤ってへその緒が首に絡まないように――――――――――」 その言葉にリゼアは顔を上げた。 「あなたがお兄さんを殺したんじゃありません。あなたはお兄さんに命を救われただけです。だから、命を粗末にしたらダメです。いいですね? あなたには今こうして心配している相手も、心配してくれる人も、いるんですから」 アメリアはそう言うとリゼアの頭をぽんと叩いた。 「―――――こういう話を聞いた事があります。 双子というのは、魂を共有していて、それぞれに影響を及ぼしているという話を・・・・・その話が本当だったとしたら、お兄さんの形見はあなたです」 「・・・・・・・・私・・・・・?」 アメリアの言葉に、リゼアは自分の体を抱きしめた。 (今、ここにいない私のお兄様。私が生きている事で、あなたの存在の証明ができるならば、私は・・・・・・・・) 精一杯生きていきます。 魂の半分を持って生き残った少女。 ――――――こんなにもお互いの事を想う。 しかしそれがお互いをこんなにも縛る―――――――― 「私の初恋の相手は、お兄様かもしれませんね・・・・・・」 その言葉に寝ているサントスがぴくりと動く。 アメリアは思わず吹き出しそうになるが、リゼアは自分の発言に笑ったのかと勘違いしたらしい、顔を真っ赤にしている。 「そうだリゼア、いいこと教えてあげますっこっちへいらっしゃい!!」 そう言うが早いかアメリアはリゼアを引きずって自室へ向かった。 ちなみにそのあとに、むっくりとサントスが起き上がった事をリゼアは知らない。 「いーですかリゼアっ。今からあなたに教える唄は『正義の仲良し4人組☆』といって(由来を切々と説明中)」 「はいっ♪」 「一度しか歌いません。きっかり覚えなさいっ」 「はいっ☆」 王位継承問題のあと、すっかりアメリアに懐いたリゼアはアメリアのところへよく訪れ、正義についての教育を受ける事となったとか。 リゼアは昔の静かな様子が一変して明るくなり、くるくるとよく表情も変わるようになった。 (しかし、アメリア二号が生まれるとは・・・・・・・・・) ほっとしている一方、一部の人間がそう思ってため息をついていたことは余談である。 「リゼア様」 部屋の外でリゼアが出てくるのを待っていたサントスは、リゼアがほくほくとした表情で出てくるのを見てにっこりと微笑んだ。 「サントス。お待たせしました」 つられてリゼアもサントスに向かってにっこりと微笑んだ。 「サントス。私は自分が兄殺しの十字架を背負った忌み子だと思ってました。そして、実際そのとおりだったと思います」 塔へ戻る帰り道。突然そんな事を話し出したリゼアに驚きながらも、サントスはリゼアの方をじっと見た。 「何も知らないし、何も見ない、何も拒否しない――――――生きてないと同然じゃないですか。 ・・・・・・私は人形だったんです。人形は人の形をしていても所詮人じゃあないんです」 「でも、私は未だにこの王宮の外を知らないんです。今は確かに自分は変わったって、言えるかもしれません。でも、やっぱり無知なんです。非力なんです」 リゼアは悔しそうにぎりっと歯を食いしばる。 「世界を知らない世間知らずが、将来国を治めるんです。ふふ、笑っちゃいますよね」 自嘲ぎみに笑うリゼアの手をサントスは引き、勢いよく塔に戻った。 「世界を知りたいと思うならば、世界を見に行けばいいんです。だから―――――――」 言った後、後悔にしゃがみこむサントスをよそに、リゼアはその言葉ににっこりと笑った。 セイルーンの中心にある武器庫。リゼアは杖を抱え、封印されている鎌を見上げていた。 ふと後ろを見ると、そこにはいつも守ってくれていた付き人の姿があった。 昔の約束。忘れた事などなかった。それを、彼も覚えているだろうか・・・・? 「ねえ、サントス。ちゃんと守ってくれるんですよね?約束を」 「もちろん」 良かった、覚えてくれていた。 サントスの言葉にリゼアは満足そうににっこりと笑った。そして、一本の短剣を取り出した。そして、リゼアは自分の髪の毛をその剣で躊躇なく切り落とした。 ぱらぱらと落ちる黒い筋。リゼアの手に残る黒い束・・・・・・・ 突然の事に一瞬サントスは唖然とするが、すぐに我にかえる。 「何するんですかっ!!!」 「髪の毛切ってるんです」 サントスの悲鳴のような言葉に髪の毛が肩ほどの長さにまで短くなったリゼアは何事もなく答えた。 「リナさんに渡したナックル、サントスの持っている弓、私の持っている杖・・・・・・これらが何なのか、サントスは知っていますよね?」 リゼアの言葉にサントスは頷いた。 かつて竜族とエルフ族の合作した武器・・・・・・ナックル、弓、杖、そして鎌。 それは種族を超えた交流の証としてセイルーンに保管してある。 「あと一つ、ここにある鎌は・・・・・・・セイルーンに残しておきます。あれはお兄様のものですから・・・・・」 リゼアはそっと、切り落とした髪の毛を兄の武器に縛り付けた。 「私は、世界を見てきます。世界を見て、旅して、世界の悪に正義の素晴らしさを教えてやるんです。私には何の力もないかもしれませんけど、私の地位や、私の好きな人たちははみんな強いですから。 ――――――だから、行ってきます」 サントスはリゼアを見ながらここまでにこぎつける事の大変さを思い出していた。 ゼルガディスを説得する事がどれだけ大変だったことか。 結局なかなか頷かないゼルガディスの弱みを握ることで、なんとか首を縦に振らせた。 孫の心配をするのは当然の事である。しかし・・・・・・ (心配する方向が間違ってるんだよ・・・・・・・・・) まあ、それはリナたちと一緒に旅する事で決着がついたが。 「ねえ、サントス」 突然、リゼアが振り向いた事にサントスは驚いた。何も言えずに固まっていると、リゼアは恥ずかしそうに囁いた。 「もういちど、あの時のセリフ・・・・・・・言ってくれませんか?」 サントスは困ったようにリゼアから視線をそらした。 はっきり言うと、かなり恥ずかしい。当時もあれを言ったあと、あまりに恥ずかしくて一人で大暴れしたのだ。 「言ってください」 リゼアの言葉に負けて、サントスは観念したように口を開いた。あたりを入念に見回し、リゼアにしか聞こえない程度の大きさの声で呟いた。 「さあ、飛び立とう。 国からも、神からも、誰の目も届かない僕達だけの世界へ――――――」 予想通りというべきかなんというか・・・・・・ あまりの恥ずかしさにサントスはしゃがみこみ、リゼアは嬉しそうににっこりと笑った。 思い出は過去じゃなくて いつも未来で出会うの だから強がる事でしか 守れない時もある そう、強がる事しかできないときも いつも支えてくれたこの人がいれば、私はきっとどんな事でも乗り切れる。 そう信じていいと思う。 誰も、信用できないなんて もう言いませんから―――――――― 今、彼らを拘束する 全ての鎖から Escape・・・・・・・・ TO、、、 BE PARASITIC NIGHTMARE ======================================= ああああああああああああああああああああああああ、恥ずいっ(汗) サントスの行動(しゃがみこみ)はまんま私の心です(笑) こんなんでもお付き合い頂いてありがとうござますm(_ _)m セイリナ&グリーブよりもこっちの方が進展してる(笑) なんてことでしょう♪←待て こんなにこの二人がラブラブなのは恐らく(というか間違えなく)私が恋愛マンガを立ち読みしてしまったせいでしょうなぁ(苦笑) 恥ずかしいですが、お付き合いいただきありがとうございました(> <) それでは、ビーパラのほうも頑張らなくちゃ(汗) の、あんでぃでしたっ(逃) |
7066 | わぁいっ | みてい | 8/10-01:12 |
記事番号7065へのコメント わーい、話が完結してるっ☆ お疲れ様でした、あんでぃさん。 ではでは、あらためましてみていでございます。 『正義の仲良し4人組☆』がそう伝わっていったとは…(笑) 正義の歌第一号だったんですねっ。嬉しいやら嬉しいやら←喜んでいる リゼア、幼い身体で大変な重荷を背負ってたんですね。 でも本当の重さを知って目線が変わったようで、よかったですv サントスが健気です。 いいんでしょうか、ここまで健気で(爆) 本編ではもちょっとしたたかなお坊ちゃんだと思ってたんですが…きっとそれもサントスの一面ですね。 そして要所要所を押さえてるアメリアとゼル、リナとガウリイ。 かっこいいっすっo(>∇<)o 本編、番外、首を長くしてお待ちしてます。 ではではみていでございました♪ |
7086 | もうもうもう!!本当にみていさんありがとうございます!!!! | あんでぃ E-mail | 8/10-13:42 |
記事番号7066へのコメント お久しぶりです(> <) レスありがとうございます!!あんでぃですっ >わーい、話が完結してるっ☆ >お疲れ様でした、あんでぃさん。 ありがとうございます!! まさかこんなに長くなるなんて思いもよりませんでした(汗) みていさんのおかげでラストは決定していたんですが、決まっててこんなに遅くなったのはやはし私の力不足ですね(汗) >ではでは、あらためましてみていでございます。 >『正義の仲良し4人組☆』がそう伝わっていったとは…(笑) >正義の歌第一号だったんですねっ。嬉しいやら嬉しいやら←喜んでいる みていさんに『正義の仲良し4人組☆』の使用を許可していただけて、あんでぃは幸せです(> <) はっ!!みなさーん!!時間がなくてあとがきに書いていませんが(待て待て待て)アメリアがリゼアに『正義の仲良し4人組☆』を教えている場面は、みていさんが考えてくださったエピソードなのです♪ Escapeが完結できたのもまぎれまもなくみていさんのおかげなのです☆ 本当にありがとうございます!!みていさん!!! >リゼア、幼い身体で大変な重荷を背負ってたんですね。 >でも本当の重さを知って目線が変わったようで、よかったですv 本来ならば一緒に生まれてくるはずのお兄さんがいないというのは、辛いと思うのです。 友人にも双子として産まれてくるはずが自分ひとりだったという子がいまして、私は産まれないほうがよかったんじゃないか、なんて言われてしまって・・・・そんな事ないんだよ。という気持ちが伝わればいいなぁなんて、思ったりしています(^ ^; >サントスが健気です。 >いいんでしょうか、ここまで健気で(爆) >本編ではもちょっとしたたかなお坊ちゃんだと思ってたんですが…きっとそれもサントスの一面ですね。 素直なサントス世間の冷たい風に吹かれしたたかになっていく(笑)を目指しました(笑) 最後のほうではゼルの弱みを・・・・・・一体何の弱みを握ったんでしょう(笑) >そして要所要所を押さえてるアメリアとゼル、リナとガウリイ。 >かっこいいっすっo(>∇<)o ありがとうございます!!(> <) 私の中で、この4人はとってもかっこいい人たちだと決め付けているので、そう言っていただけると本当に嬉しいですっ!! >本編、番外、首を長くしてお待ちしてます。 >ではではみていでございました♪ この話にセイリナたちが出る予定だったのはいつの話でしょうか(笑) 没リマス菌にやられあっさりと消えてしまったのですが(汗)もしかしたらその二人のこの時間での話を書いてみたりするかもしれません(笑) 進まない亀のあんでぃですが、これからもよろしくお願いしますです(> <) 最後に、みていさん本当にありがとうございました!!! それでは、あんでぃでした!! |