◆−兆候(ゼロリナ)−灯夏(7/31-15:25)No.6980
 ┗はじめまして−一坪(8/1-20:40)No.6988


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6980兆候(ゼロリナ)灯夏 7/31-15:25



初めての投稿で緊張しております。灯夏(ひなつ)と申します。
リナちゃんとゼロス君を愛してやまない子供です★
というわけでゼロリナですが、どうぞよければ読んでやって下さいませ。
それでは・・・

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兆候          




「恋愛ごっこしようか」
「はあ?」
スパーンと黒髪の神官を叩くと、リナは人差し指を彼の額に突きつけた。
「いいからやるの!今日一日あたしとあんたはカップルよ。いい?」
「はあ・・・・(少々殺気に怯えつつ)」
こうして、人間と魔族の不思議な一日が始まったのである。


一日という制限なので、とりあえず妥当にデートを遂行することにする。
リナが言い出したのが昼前だったので、まずは昼ご飯から。彼女が一番輝く時間帯だ。
「当然勘定は彼氏もちよねっ☆」
------------とか「彼女」が言ったことは、ゼロスは別に気にしていない。というより、彼女の今日の奇行の方が、彼は気になるのだ。体面上向かいに座ってスープをすすっているが、内心その事しか考えていない。
自分に対する彼女の何らかの罠だとしたら、えらく突飛な作戦である。
「何見てんの」パスタを食べていたリナがふと目を上げた。
「リナさんですよ」ゼロスはにっこりと微笑んだ。「今日は何だかいつものリナさんと違いますね。どうしたんです?」
突然、リナの顔が真っ赤に染まった。意外な反応だった。
リナは出窓に映る自分の顔を確認すると、恥ずかしそうにつぶやいた。
「・・・・・・彼氏ができたの」
「え、実際にですか」
「あんたよ!あんた!」
カーンといい音がして、ゼロスにナイフとフォークが直撃した。
「ひどいですよぉリナさん・・・聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥というじゃありませんかあ・・・(しくしく)」
「やかましい!!!」
リナは一喝すると、パスタを荒々しく食べ始めた。そのうち、ゼロスはいつもと違う負の感情が流れている事に気がついた。
なるべく慎重に彼は話題を振った。
「で、ご飯の後はどこへ行きます?」
「ゼロスが決めて。あたしは、あんたにリードして欲しい」
リナは顔を上げずに答えた。

ゼロスはリナをはっきりした人間だと思っている。良かれ悪しかれだが。それが、今日の彼女を見ると間違いなのかと思えてくる。
意図が見えないというか行動が一環していない。そして、彼女らしくない。
(まあ、人間ですから)
ゼロスは思い直した。もやが思考に引っ掛かったが、それは考えないことにして。


そしてゼロスが選んだデートスポットは。
「・・・・・・・・何で教会なの?」
「だって恋人とは、いずれここに来るものでしょう?だからですよ」
町外れの小さな教会は、無人だった。何十年も使われていないらしく、埃と蜘蛛の巣だらけである。
「『だから』って、何がだからなの」
ゼロスは壁の十字架を面白そうに見つめていたが、リナの問いに振り向いて笑った。
「他の恋人同士はここに来るまで何年かかるか知りませんがね、僕たちは一日しか時間がありませんから。こう、早送りってことで」
「あたしらはビデオテープか!!!」
呑気に笑う神官に、一応突っ込みを入れるリナ。だが彼女が怒っている様子は無い。
その時太陽が射した。頭上のステンドグラスから、様々な色の光が漏れてくる。
「きれい・・・」
リナが目を細めて言った。ゼロスは彼女の表情を見て、またしても不可解な気分に成らざるを得なかった。まるで泣いているようだったのである。
「そろそろ教えて下さいませんか?リナさん。この遊びには何が隠されているのでしょう?」思ったより強い口調で言った。
リナは来たか、と言うように一瞬顔が鋭くなった。しかしすぐにため息をついて、それから笑った。
「何にもないわよ。あんたが考えてるようなことはね」
「僕の考えている事?とは?」
「罠でも何でもないってこと。わかってんでしょ」
ゼロスは何も答えずに、ただ笑みを深くした。
「あんたにとっては恋愛ごっこよ。ただの」
声が執拗に反響した。ゼロスは彼女の言葉に反応せずにはいられなかった。
「………リナさんにとっては?」
「ま、自分に追い討ちかけてるってやつ?結構追い詰められてるから、あたし」
彼女はあっさりと言い放った。いつもの彼女の素振りを見て、ゼロスは何故か戸惑った。
彼が返答しようとしたとき、急に彼女が近づいてきた。彼女のブーツが踏み込む度に、床板の割れ目がキシキシと歌った。そしてようやく、ゼロスはリナがうっすら化粧をしていることに気がついた。
「あたしゼロスが好き」
リナはまっすぐ彼を見つめて言った。
「別に答えは分かってるから、返答はいらないわ。ただ、知って欲しかったの」
ゼロスはリナを見た。また彼の知らない顔立ちをしていた。
とっさに彼は何故か苛立って言った。
「僕もあなたの事が好きですよ、リナさん」
ゼロスは冷たく言い放った。リナは彼を凝視した。
「恋愛ごっこですから」
彼はにっこり笑った。いつも通り、にこやかな笑みだった。
リナは笑おうとして顔を歪ませた。「…………そうね。当然だわ」
目からあふれ出る涙を隠しながら、彼女は彼に背を向けて言った。
「もう遊びは終わりにする」
「………」
「もう帰っていいわよ、ゼロス」
「……リナさ」
「あたし泣き顔は人に見せたくないの!帰って!」
ゼロスには、リナの叫び声があまりにも大きく聞こえた。
自分は今なぜあんな事を言ったのだろう。なぜ苛立って、無駄に彼女を刺激したのか?彼は急にそう思った。自分の醜態を悔いたが、謝るのも変な気がした。彼は魔族である。
しかし確実に、彼は悔いていたのだ。
自分が彼女のために今出来る事をしようと、結論が出るまで数秒かかった。
「じゃあ、あなたが泣き終えたら迎えに来ます」
誠意のつもりで彼は言ったのだが、リナには逆効果だった。
「ゼロス、あんたあたしを馬鹿にしてんの………」
波立つ殺気。さっきまでの悲哀のオ−ラが吹き飛んだと同時に、彼はアストラル・サイドに逃げ込んだ。
「ドラグ・スレーーーーイブ!!!!!!!!」
増幅版のドラグ・スレイブは、教会周辺を見事業火に呑み込んだという……。


リナは町の広場に一人、ポツンと立っていた。さっきまで中央の噴水に鳥が戯れていたのだが、もう夕刻なせいか今はいない。
三時間泣いた。こんなに泣いたのは久しぶりだった。一通り泣いたあとで、お腹が空いたので近くのメシ屋で半ばヤケ食いし、店を出るとまた泣きたくなって泣いた。
特にゼロスを責めるつもりは無い。魔族に愛情を持った自分が情けないので泣いたのだ。
「・・・・・・・そろそろ帰るか・・・」
リナは一つ背伸びをした。今はつらいが、じき慣れる。そう自分に言い聞かせて帰ろうとした時、地面の影が動いた。
--------夕日に照らされた闇を纏った神官であった。
「来るな、とはおっしゃいませんでしたので」
「あたしはひとりで帰れるわよ」
素っ気なくリナは言った。
「さ、帰りましょう」
「ちょっと、人の話を聞・・・・」
ゼロスは彼女の手を引っ張った。そうしてその手をつないだまま歩き始めた。
「宿屋まで徒歩10分ですよ」
彼にしては珍しく、リナと目を合わさずに言った。リナはかっとなって叫んだ。
「あんたね!そんな親切にしないでくれる!!?本心からそう思ってないくせに優しくしないで!!!バカ!!へっぽこ神官!!離せ!!」
「・・・・・本心、ですか」
「・・は?」
「今僕は心から手を離したくないと思ってますから」
今度はいつもどうり、リナに微笑んで言った。
リナは何か反論しようとしたが、また目のあたりが熱くなって来たので黙り込んでしまった。彼も特に話すことを思い浮かばず、ただ宿屋に向かって足を運んだ。
しばらく複雑な思いが双方を交錯した。

                        



兆候


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6988はじめまして一坪 E-mail 8/1-20:40
記事番号6980へのコメント

投稿ありがとうございました!

うひゃはーー! らぶらぶですねー。
思わず、にやにやしちゃいました。
あと「あたしらはビデオテープか!!!」ってツッコミがツボでした。(笑)


では、これからもよろしくお願いしまーす。