◆−金色の来訪者 1−1−みー(8/1-21:34)No.6992
 ┣金色の来訪者 1−2−みー(8/1-23:52)No.6993
 ┗金色の来訪者 1−3−みー(8/2-11:10)No.6996
  ┗Re:金色の来訪者 1−3−明(8/13-14:54)No.7132
   ┗感想ありがとうございます−みー(8/13-22:00)No.7133


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6992金色の来訪者 1−1みー 8/1-21:34



 この話はフィクションです。実際の人物、団体、事件、もちろん原作スレイヤーズとも、一切関係ありません!

 えー、どうもこんにちは。みーと申します。投稿小説2のほうには初めての投稿になります。何で今回は投稿場所が違うのかというと・・・ずばり、使い分けをしたいのです!
 1のほうでもかなり好き勝手やってますが、こちらはさらに輪をかけて変です。
 説明すると、いわゆる「現実世界から迷い込んじゃったよ」とゆー、「ふしぎ*戯」「日*りクエスト」などのの入り交じった代物(恐れ多い・・・)をスレイヤーズ世界で! というかーなーりマニアックなものです。オリキャラなんか、ばんばんと出します。とゆーか、オリキャラが主人公なんです。もちろん、リナ、ガウリイ、ゼロスといったキャラも大活躍ですよ。カップリングは、本編通りにいきます。
 では、ここで補足説明を。

オリジナルキャラクターズ

主人公 天宮 輝(あまみや ひかる)
中学3年生の女の子。頭の回転が速く、運動も得意。ちょっと天然で、純粋、まじめな性格だが、それ故に進路などといった、自分の「やりたいこと」に悩むことになる。

天宮 聖(あまみや ひじり)
輝の双子の兄。3年前、行方不明に。なにかと謎が多い。

天宮 影行(あまみや かげゆき)
輝・聖の従兄。大学一年生。現在祖父と輝と同居中。クールで素っ気ない印象だけれど、なんだかんだいって、輝のことは心配している。それが恋愛感情なのかは未定。
 
 双子の名前の由来・・・知ってる人はいますか? 少年ジャンプで連載していた某有名るろうに漫画の、プレステでの主人公の名前からいただきました。
(ああ・・・こっちも恐れ多いし・・・)まあ、それ以外関係ないですけど。
 では、長くなると思いますが、どうぞよろしくっ!


 金色の来訪者
 1−1  迷子のこども

 
 金色の海。表現するなら、その夢はそういうイメージだ。
 強く弱く、たゆとう流れ。いくつもの顔を持ち、荒々しく動きを変えていく。
 きれいだけど・・・とても怖い。
 それでいて、どこかやすらいでいる自分がいる。
 もうずっと、何回も何回も、今日と明日の間をつないでいる夢。
 ―いつからだろう? この夢を見るようになったのは・・・
 映像は流れ・・・わたしは何もせずそれを眺め続け、そして目を覚ます。
 

 けだるさと、どうしようもない憂鬱感が残っていた。
 まだ半分夢の世界をさまよいながら、わたしは大きくのびをした。
 でも全然やる気が起きない。机の上に広げられたままの参考書を目にして、重いため息をついた。
 ・・・なんかばばくさいなあ・・・まだ15だっていうのに。
「ストレスたまるとはげたり、老けやすくなったりするんだよねえ・・・」
「なにがストレスだ。受験期の、しかも夏休みに、のんきに居眠りしてるやつが」
 何気なくつぶやいた一言に、答えは後ろから聞こえてきた。
 わたしは対して驚かない。気配を消して人の背後に立つのは、この人の得意技である。
 ジト目で振り向いてわたしは言った。
「いつからいたの? 影兄」
「おまえが年寄り臭くため息ついてるあたりから」
「・・・ドアの音、全然聞こえなかったけど・・・」
 侮りが足し。てっきり、起きる前からいたのかと思った。
 天宮影行。わたし、天宮輝の従兄である。わたしは普段影兄と呼んでいる。クールな容貌と性格のかっこいいお兄ちゃん・・・なんだけど、あくまで黙っていればの話。しょっちゅう人をからかってくるし、人をくった性格だし。一度口で勝ってやる!というのが、わたしの目標である。ううっ、自分で言っといてなんなんだけど・・・スケールが小さいし。
「ぼけっとしてるからだろう。夕食はどうした? 早くしないと、じーさんが帰ってくるぞ」
「おじいちゃん、今日夜遅くまで囲碁打ってくるって」
「・・・またか。弱いくせに好きだねえ・・・あのひとも」
「・・・それ、おじいちゃんに言ったら殺されるよ?」
 軽口を返してから、わたしはまた重いため息をつく。
 その様子に、影兄は形のいい眉をわずかにかたむけて見せた。
「どうした? 解けない問題でもあるのか? 珍しい」
「・・・違うよ。ただ・・・なんか、変だなあって思って」
 ぱたんと参考書を閉じて、わたしは言う。
「変って、なにがだ?」
「勉強は嫌いじゃないの。・・・でも、目標がないって、変かなあ・・・って思って。
 まだ進路だってはっきりしてないし。
 わたしって、なにがやりたいのかなあ・・・」
 机に頬杖をついて、わたしはつぶやく。なんか、愚痴ってるみたいで嫌だなって、言ってから思った。
 ・・・わたしって、こんな暗い性格だったっけ?
「・・・この場合、悩めるっていうのはいいことじゃないのか? 少なくとも、お前は真剣に考えてるんだから」
「・・・うん」
 珍しく気を遣ってくれてる影兄には申し訳ないんだけど、わたしはまだ気が晴れなかった。ただ、言いようのない不安がしこりになっていて。
 なんでだろう。
 口が勝手に動いた気がした。
「聖だったら・・・なんていうかな」
 しん・・・と空間が音を立てた気がした。
 長く重い沈黙に、わたしも影兄も何もいえなくなる。
 聖。3年前に行方不明になった、双子の兄。誰よりも近く、遠い存在だった、わたしの半身。
 彼だったら、わたしの言葉をどう受け止めてくれるだろう。
 でも、いくら考えても、所詮それは・・・
 物思いにふけりかけたわたしの目の前に、いきなりドンッ、と文庫本の束が置かれた。
 よく古本屋で、全巻をセットにして売っている、ああいうやつである。
 目をぱちくりさせて、いきなりなんなんだと視線で問うと、影兄はひょいと肩をすくめて、
「古本屋で安かったから買ってみた。けっこう好きだろう? そーゆーの」
 いや・・・どっちかってゆーと理由より今までどこに持ってたんだってほうが気になるんだけど。
「考えすぎるのもよくないだろ。気晴らしくらいしろ。夕食、作っておくから」
 ぶらっぽうに言って、とっとと部屋を出ていく。ぱたんというドアの音が、やけに響いた。
 ・・・気を遣ってくれたのかな。
 それにしても、いきなりファンタジー文庫かあ。わたしがファンタジー好きなのを知ってのことだろうけど、あの影兄が、このての小説売り場をうろちょろしているのを想像すると・・・けっこう面白いかも☆
 気を遣ってくれるのは、とってもうれしい。
 それに甘えて、ちょっとはリラックスしますか。
 積まれた文庫は、全部で十五冊。どうやらシリーズものらしい。タイトルは―聞いたことがある。アニメや映画になってたっけ。友達がやたらと気に入ってたのを覚えてるけど、そのときは金欠で興味がもてなかったんだ。
 一冊目を手にとって、わたしはつぶやいた。
「・・・スレイヤーズ、かあ」

 

 ・・・すみません、つぎはちゃんとスレイヤーズキャラも出てきます。
 たぶん、リナと輝の一人称がいったりきたりするのかな。
 計画性なくて、ほんとうにすみません(汗)
 

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6993金色の来訪者 1−2みー 8/1-23:52
記事番号6992へのコメント

 金色の来訪者
 1−2  さいしょは・・・

 
 夢は、いつも同じ映像だった。
 ただ、今日は少しだけ、昔の夢を見た。
 ・・・わあ、聖、見てよ。きれいな石。
 ・・・ほんとだ。きれいな金色だね。不思議だな・・・こんな浜辺に落ちてるなんて。
 ああ、あれはわたしたちだ。
 このあとの悪夢なんて想像もしていない、たわいもない子供の姿。
 ・・・ふたつ落ちてるよ。宝石みたいだね。わけっこしよう。
 ・・・うん。輝はこういうのすきだねえ。
 ・・・だって、きれいじゃない。なんだか夢の色してる。
 ・・・輝は面白いこと言うね。将来、詩人とかになりたいの?
 ・・・うーん、わかんない。好きなことはほかにもいっぱいあるよ?
 ・・・ふーん。
 ・・・聖は、何になりたいの?
 ・・・僕? 僕はねえ・・・
 夢は、そこでとぎれた。


 いきなり画面が切り替わって、今度は目の前に青一色が広がった。
 雲一つない青空。太陽はまぶしく光っていて、でも、とても心地よい。絶好の洗濯日和というやつだ。
 ・・・あれ? 今、夜じゃなかったっけ?
 そこでようやくわたしは、自分の置かれている状況にきがついた。
 浮遊感。体中をばしばしとたたく、風。
 間違いない。今、わたしは落ちてるんだ―
 なんて冷静に分析してる場合じゃないっ!
「っきゃああああああぁ!!?」
 どざばきいっ!
 なんだか派手な音を立てて、でもわたし自身はたいしたけがもなく、地面に降り立った。・・・この場合、落ちたったというべきなんだろうか。
 なにがともあれ、あまり高度はなかったみたい。とりあえず上半身を起こして、あたりを見回して・・・沈黙。
 あたりは、一面が草だった。
 ちょっと離れたところには、白い町並みが見えるけど、わたしの周りは一面草の海。
 ちょっとまて・・・? わたしはさっきまで、家の、ベッドの中にいたはずである。夕食食べて、おじいちゃんが帰ってきて、スレイヤーズは一度読み出したら止まらなくて、ちょうど8巻を読み終えたところで。
 それが、いきなりなんで屋外にいるんだろーか?
「い、いったいなにが起こったんだろ?」
「それはこっちの台詞ですう・・・」
 なんだか情けない声は、わたしの下から・・・へ?
「ああああっ!? ご、ごめんなさいっ! 大丈夫ですか!?」
「え、ええ。まあ」
 わたしがあわてて飛び退くと、その人は杖をついて、よろよろと身を起こした。
 としは、影兄と同じくらいだろうか。つややかな黒い髪を肩のあたりでそろえたお兄さんだ。にこにこしているせいか目は細くて開いてるんだか閉じてるんだかわからない。顔立ちは、端正っていうんだろう。顔の善し悪しって、いまいちよくわかんないんだけど。
 ただ、気になるのは、その服装。
 ファンタジーなんかでよくでてくる、神官服・・・みたいな感じだ。こんな草原のど真ん中で、コスプレ大会でもあるんだろうか?
 じーっとみていると、彼が困ったように口を開いた。
「あなた、一体何者です? いきなり空から落ちてくるなんて」
「・・・へ?」
 言われて、思わず沈黙する。
「空って・・・上から?」
「まあ・・・空と言ったら上でしょう」
 ・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・わかった」
 わたしはぽんっと手を打った。
「夢だね。これは」
「・・・は?」
「夢だね絶対。そーでなくちゃ、いきなり瞬間移動もしないし、夜が昼になったりもしないしね。早くさめてくれないかなー」
「あのー、もしもし」
「なんです? 夢の住人さん」
「訳のわかんないこと言わないでくださいよ・・・ちゃんと現実ですってば」
「そんな、こんな訳のわかんない現実が・・・・」
 あるはずないよ。
 言おうとしたわたしの言葉は、途中でとぎれた。
 なんていうか―強烈な悪寒が、通り抜けたのだ。
「おやおや・・・?」
 お兄さんの口調が、なんだか面白そうなものに変わる。
「どうやら、面白いお客さんをお連れになったようですね」
 わたしはそれに答えられなかった。
 振り向いたその先・・・現れた、まるでおとぎばなしの『魔物』をかたどったかのようなそれに、あっけにとられたからだった。

 しゃああああっ!
 獣の威嚇に似た叫びとともに、それはライオンのような大きな体で、わたしに向かって飛びかかってきた!
「っ!?」
 反射的にぎゅっと目をつぶった、そのとき。
 ばしゅうっ!
 妙な音が聞こえ、獣が絶叫をする。
 びっくりして目を開けると、そこには黒い風のようなものに阻まれ、こちらに近づけないでいる獣の姿。
「事情はよくわからないですけど・・・とりあえずここで暴れられたら、こちらも迷惑するんですよね」
 お兄さんの声がどこからともなく響いてくる。
 けど、姿は見えなかった。
「と、いうわけで・・・消えてくださいね」
 にこやかな口調とともに、風がいっそう強まった。
 獣の絶叫。そして―
 意識が暗転する。


 
「あー、すーっとしたっと」
「おまえなあ・・・やりすぎじゃないか? いくらなんでも・・・」
「なにいってんの。少なくとも今回のは正当防衛じゃない」
 ぷすぷすとこげてる盗賊たちを前に、呆れた口調で言うのガウリイに、あたしはきっぱりと言い切った。
 とある、なかなか大きい街道。そこを歩く二人ずれ。一方は男でも、もう一方は可憐なおとめとくれば、盗賊に出てきてくださいというようなものである。しかしそれがあたし、リナ・インバースだったのが運の尽き! 前口上を無視してあたしが放ったファイアーボールの一撃で、みごとに沈黙した。
 ストレス解消になったし、このあとはアジトの場所をはかせるのもよし、近くの町の役人に突き出すのもよし。さーて、どーしたもんかなー。
 しかし。
 
 どがああああん!!
 

 考えていたあたしの耳に、風にのって爆音が響いた。
「おい、リナ」
「わかってる。こっちね!」
 言って、あたしはかけだした。ガウリイもそれに続く。
 トラブルの転がるところ、危険ともうけ話がありっ!
 木のこげるにおいがこくなる。どうやら場所は近いようだ。
 木々をかきわけ、進むうち―
 視界が開けた。
 森の少し開けた場所。その中央にうごめく、なにやらグロテスクな獣モドキと、その近くに倒れた人の姿。
 魔法では、その人を巻き込むおそれがある。それを見越してか、となりのガウリイが地を蹴った。
 
 ざんっ!
 
 まさに一刀両断。
 あっけないほどに、その巨体は二つに割れ、どろりっととけ、黒くわだかまる。
 見たことのない魔物だったが、今は手当が先である。
「ちょっと! 大丈夫!?」
 脈はあるが、返事はない。とりあえず外傷はないので、ただ気絶してるだけのようである。
 あたしよりいくつか年下だろう。流れるような金の髪。整った顔立ち。ほっそりと華奢な体つき。着ている服はなんか変わってるけど、はっきりいって、美人、いや、美少女というやつである。
「う・・・」
 小さくうめいて、やがて、ゆっくりと目を開いた。
 ―吸い込まれるような色。
 表現するならそんな感じだろうか。
 その子の瞳は、そんなきれいな金色をしていた。
 唇が小さく動いたが、聞き取れず、再びその瞳を、ねむるように閉じた。 

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6996金色の来訪者 1−3みー 8/2-11:10
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 金色の来訪者
 1−3  非常識な人々

 
 ・・・僕は、・・・になりたいな。
 
 思い出せない。あのとき、聖はなんていったんだっけ?
 変だなあ、そこだけ記憶が抜けてる。
 そういえば、あのときの石は、どこにしまったんだろう・・・
 
 
 目を開けると、見慣れない天井が見えた。
 遠くから、鳥たちのさえずりが聞こえてくる。朝・・・なのだろうか。
「・・・?」
 身を起こすと、そこはベットの上だった。ただし、見たことのない。
 いつもの、自分の部屋じゃなかった。石造りの、シンプルな部屋。一つだけの窓では白いレースがなびき、風を招き入れている。
 ええと・・・
 状況がわからず、きょろきょろとしていると、突然ドアが開いて、人が入ってきた。
「ああ、気がついた?」
 入ってきたのは、女の人だった。としはわたしより少し上くらい。長い栗色の髪は、染めては出せないきれいな色。たぶん地毛だろう。丸みの強い瞳は、赤みのある茶色だった。
 ただ、さっきの人と同じくその服装は、まるでファンタジーの世界から抜け出したよう。いわゆる魔道士、というかんじだろうか。
 ・・・なんか、どっかで見たことあるような気がするけど・・・?
 わたしの沈黙をどうとったのか、とにかくその人は笑って言った。
「ここ、近くの町よ。宿代は立て替えておいたから、後で払ってよね。
 事情の説明はこのあとでいいわ。とりあえず、あんたの服は、そこにあるから」
 言って指さした方向には、見覚えのある服が。
 そう、それはわたしの中学の制服だった。
 ・・ん? たしかわたし、パジャマを着てたはず・・・なんだけど・・・
 あれ?
「変わった服よねえ。あんたいったいどこから来たわけ?」
「え・・・えっと・・・」
 ・・・一体、どう答えていいものやら。
 お姉さんはちょっと眉をひそめて、
「まあ、ちゃんと整理がついてからでいいけど。
 もう朝食の時間だから、とっとと着替えて下に降りてきなさいよ」
「あ、はい」
「名前知らないのは不便よね。あんた、なまえは?」  
「・・・輝、です」
 うそをついても意味ないので、とりあえずちゃんと名乗っておく。
「ヒカル、ね。珍しい名前ね。
 あたしはリナ。リナ・インバースよ」
 ・・・・・・・・
「・・・へ?」
 わたしは、間抜けな声をあげていた。
 リナ・インバース。
 それは確かに、わたしがさっきまで読んでいた小説・・・スレイヤーズの主人公の名前だった。


 着替えたこの子・・・ヒカルといっしょに一階の酒場に降りていけば、そこにはすでにガウリイの姿があった。      
「おはよ、ガウリイ」
「おー、おはようリナ。
 ・・・えーと、そっちの子は、もういいのか?」
「あ、はい。どうも・・・」
 ヒカルはおどおどした様子で、それに答えた。
 なんていうか・・いまいち、人見知りするタイプなんだろうか? さっきっから言葉にあやふやなものが多いしなぁ・・・
「ヒカル、っていうらしいわよ。
 ・・・あ、ちなみに、こっちは・・・」
「ガウリイだ。よろしくな」
 自己紹介の後、席についてメニューを見てみる。おおっ! 適当に入った宿だけど、けっこういいものがあるじゃない!
「ヒカル、あんたは何注文すんの?」
「え? あー・・・」
 メニューをにらむように見つめながら、やはりおずおずと答える。
「ここ、鶏肉のグラタンがおすすめらしいぞ」
 食べ物だけに関してはみょーに記憶力のいいガウリイが言うと、ヒカルはそれにうなずいた。
「・・・じゃ、それにします」
 ・・・なんか、変わった子である。
 そばにいたウエイトレスさんに注文をすませて、あたしはヒカルに向き直った。
「さてと、説明してくれる? あなた、どうしてあんな所に一人でいたわけ?」
 あたしの言葉に、ヒカルは難しい顔して、考え込むような仕草を見せる。
 あたしはさらに言った。
「女の子が一人で、しかも丸腰で、街道からはずれた森の奥にいるなんて不自然だわ。なんか事情があるって思ったんだけど」
 ヒカルは、顔を上げていった。
 その瞳には、不安というか、なんだか言いようのない感情が浮かんで見える。
「・・・わたしも、よくわからないです。・・・ただ、あなた達が来る前に黒ずくめの、神官の服来たような人がいたはずなんですけど・・・そういうひとがいませんでしたか?」
「あたしたちが来たときは、誰もいなかったわよ。あのグロいへんな魔物がいただけで」
「うーん・・・そうですか」
 暗い表情のまま、ヒカルは口を閉ざす。
 しかし・・・黒ずくめの神官ねえ。
 ・・・いや、まさか、ね。
「おまたせいたしましたー」
 ウエイトレスさんの声とともに、テーブルの上に料理が運ばれてきた。
「・・・まあ、悩んでてもしょーがないわよね。まずはごはんにしましょっ!」
「おおっ! めしだめしっ!」
「いっただっきまーす!!」
 あたしとガウリイが、食器に手を伸ばしたその瞬間!
 ざしゃあああっ!
 衝撃波―
 そうとしか表現できない何かが、あたしたちに襲いかかった。
「!?」
 さいわい、あたしたち自身にけがはないが・・・来たばっかの食事は、全部ひっくり返ってしまった!
 ああああっ! なんてことにいいい!!?
 衝撃波の来た方向に目を移せば、ドアを破り、店内に入ってくる黒い何か。
 客たちの悲鳴が上がる。
 それは、昨日見た、ヒカルに襲いかかった魔物と、全く同じ外見をしていた。


「ブラスト・アッシュ!」
 素早く唱えたあたしの呪文は、身も蓋もなく、それを黒い霧とかす。
 はずだった。
 ぐおおうっ!
 雄叫びとともに、ばしゅうっ! と音をたて、あたしの術のほうが四散する。
 ばかなっ!?
 ブラスデーモンでも一撃という技である。そんじゃそこらの魔物やキメラが、あっさり防げるはずがない。
 純魔族・・・というふうでないし。
 いつのまにか剣を抜いたガウリイが、それに向かってつっこんでいく。
 しかし。
 それは巨体に似合わぬ素早さで、ガウリイの上を飛び越え、躍りかかる!
 ヒカルに向かって。
「ヒカル!?」
 間に合わない―そんな考えが浮かんだ、その瞬間。
 ばしゅっ!
 それの体が四散した!
 一瞬姿を見せた、黒い何かに貫かれ。
 今のは―
「やれやれ、間一髪でしたねえ」
 声は、どこからともなく聞こえてきた。
 背筋に、冷たいものが走り抜ける。
 この・・・声は・・・
「まあ、役者がそろっていらして、僕としてはラッキーでしたけど」
 言いながら、空間から姿を現す、黒い影。
 その名を呼んだのは、ガウリイだった。
「ゼロス・・・!」



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7132Re:金色の来訪者 1−38/13-14:54
記事番号6996へのコメント

はじめまして。明です。
みーさんの小説読ま士ていただきました。
続きが楽しみです・

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7133感想ありがとうございますみー 8/13-22:00
記事番号7132へのコメント


 感想どうもありがとうございます!
 これからもちまちまと続けていくので、どうぞよろしくっ!