◆−美少女−たっちゃん (2001/11/6 19:48:19) No.7721
7721 | 美少女 | たっちゃん E-mail URL | 2001/11/6 19:48:19 |
小学5,6年の頃のことである。終戦直後のことでもあり遊びらしい遊びはなかったように記憶している。秋田の寒村に育った私は毎日のように野山を鼻を垂らして遊んでいた。 ある日夕方になり家に帰ろうと獣道を走っていると、いきなり目の前に私と同じ位の歳の少女が立ち塞がった。美人だった。子供ながら一瞬そう思ったが、今度はなにやら恐ろしくなり全身に震えがきた。少女はニコニコ笑いながら手招きをするのである。私は魔物に憑かれたように少女の後をついていった。 辺りはもう真っ暗である。約1時間も歩いたろうか、いつのまにか少女は消えていた。遠くにかすかな灯りが見えた。そうっと近づいていくと大きな武家屋敷があり、中ではなんと丁髷で鎧をつけた侍が二〜三十人で酒盛りをしていたのである。刀もある。和服の女もいた。 私は目を凝らして表の隙間から中を見ていたが、そのうちに気を失ってしまった。 気がつくと、朝だった。見渡すと側に廃屋があり、中には誰もいなく、人が住んだ気配もなかったのである。 それから我が家までどのように帰ったか、とにかく夢中で走った。家の近くに着くと沢山の人だかりができていて、私をみて、皆は顔をくちゃくちゃにして喜んだ。私を夜通しで探していたのである。 中学になり郷土の歴史を勉強した。ある日先生がこの地方は昔、平家の落人が流れてきて、住み着いた。落人の頭は、由緒ある家柄の武将で、その生活ぶりは、毎日宴会の連続であったが、徐徐に廃れていったという、そんな話であった。 未だに私が見たあの夜のことは誰にも話していない。 あれは平家の落人だったのではないかと思っている。 美少女は武家の娘だったのかな、と考えたが、あれは狐だったかもしれないとも思ったりしている。 |