◆−あなたの望みは何ですか? 第五話−amy (2001/11/11 16:06:18) No.7752
 ┣Re:あなたの望みは何ですか? 第五話−Lily (2001/11/14 21:39:47) No.7766
 ┃┗どうもですうううう♪−amy (2001/11/15 19:23:16) No.7770
 ┗あなたの望みは何ですか? 第六話−amy (2001/11/15 20:02:48) No.7771
  ┣あたしの望みは餅を死ぬほど食うこと(激しく間違い)−希斗 (2001/11/15 20:47:36) No.7772
  ┃┗あたしの望みは、、、文才欲しい(切実)−amy (2001/11/20 17:18:41) No.7782
  ┗あなたの望みは何ですか? 第七話−amy (2001/11/20 18:01:39) No.7786
   ┗あなたの望みは何ですか? 第八話−amy (2001/12/4 19:12:39) No.7833
    ┣Re:あなたの望みは何ですか? 第八話−Lily (2001/12/4 23:57:07) No.7834
    ┃┗どうもです〜!−amy (2001/12/11 17:24:47) No.7855
    ┗あなたの望みは何ですか? 第九話−amy (2001/12/11 18:01:44) No.7862


トップに戻る
7752あなたの望みは何ですか? 第五話amy E-mail 2001/11/11 16:06:18



 忙しさのあまり連載が長らくストップしていたことを、
   深くおわび申し上げます。
  こんなダメダメな私の連載の続きを待っていて下さっていた方、
 本当に申し訳ありませんでした。
   どうぞ続きを御覧になって下さい。

 〜注意〜
   前のツリーの冒頭にも記しましたが、これはゼロゼルです。
  そういった系統のものが苦手な方は御遠慮下さい。


==================================


『青黒い岩の肌を持ち、輝く銀髪は針金の糸。
   しかしその顔はひどく端正で、自分の肌を忌み嫌い、
 フードですっぽり隠してしまうのを私はとてももったいなく感じました』


              シルフィール=ネルス=ラーダの手記より

『肌は青黒い岩で出来ていて、髪の毛は銀色の針金。
  いつも白ずくめで、肌のほとんどを隠している長身の青年。
  剣の腕も魔法の腕も一流で、冷静な判断力を持っている。
   かつては赤法師レゾの元で悪事を働いていたが、改心し、
     足を洗って私達と共に魔族を倒す手助けをしてくれていた』


         アメリア=ウィル=テスラ=セイルーン著の伝記より



 これらが主にデモン・スレイヤーズの一員たる自分。
 広く知られ、信用されている人間の手記。
 その一節。
 他にもちょっと前までは生き証人がいただけに、それはまことしやかに民
衆の間で広まっていった。
 シルフィールから見た俺。
 アメリアから見た俺が真実として受け止められる。
 二人の手記には俺の暗い部分はほとんど書かれておらず、ひどく後ろ暗い
気分にさせられた。
 他にもプラムという女性の日記が残っており、その日記には俺への賞賛の
言葉以外に何も書かれておらず、ひたすら俺に感謝している文章だけだ。
 また、ランツという男性の、俺のことをひどく美化した証言が残ってい
る。
 これらを総合して、人々はどうやら俺を正義の使者と勘違いしているらし
い。
 決して自分はそんなものではないし、なろうとも思わないのに。
 偶然、死んだ人間が多すぎて。
 知り合いは、裏の人物であることが多すぎて。
 俺にとって不利な証言が無いだけなのだ。
 それなのに。
 どうして皆、俺に期待したりするのだろう。
「辛くはないですか?」
 ヤツの声が聞こえた気がした。





 黒髪の少女は、ひたすらに探していた。
 この狂いに狂った世界を救って欲しくて。
 力をどうしても貸して欲しくて。
 彼が、死んでいないことは分かっているから。
 彼が、自分達人間にとっては最後の希望になりうるから。
 祈るような気持ちで、探し続ける。
 時には不安と共に死体の顔を覗き、彼でないことを確かめた。
 時には期待と共に生きた人間の集落に行き、彼を探した。
 彼に頼るのは自分勝手だとは分かっている。
 それでも。
 自分に力がないことを、これほど歯がゆく感じたことはない。
 彼を見つけだすことすらすぐに出来ない自分の力の無さを。
 黒髪の少女、、、、、、アリシアは、
 彼、、、、、、ゼルガディス=グレイワーズを探していた。





  続く

トップに戻る
7766Re:あなたの望みは何ですか? 第五話Lily 2001/11/14 21:39:47
記事番号7752へのコメント

待ってました&レス遅くなりました!!!
アリシアさん・・・・・・・?
どうゼル君に絡むのか楽しみです。
短いですがではこれで!!

トップに戻る
7770どうもですうううう♪amy E-mail 2001/11/15 19:23:16
記事番号7766へのコメント

Lilyさんへ

>待ってました&レス遅くなりました!!!
   待ってて下さって本当にありがとうございます!!!!
  いえいえ、レス遅くったって全然構いません!
    待っていてくれていた、
    その言葉だけで本気で救われますうううううう!!!!

>アリシアさん・・・・・・・?
>どうゼル君に絡むのか楽しみです。
>短いですがではこれで!!
   楽しみにしてもらえて本当に嬉しいです!
      これからも続けて行くので、よろしくお願いします!!


   短いですが、これにて


         amyより

トップに戻る
7771あなたの望みは何ですか? 第六話amy E-mail 2001/11/15 20:02:48
記事番号7752へのコメント


 俺は森を大きく迂回して、珍しくまだ生き残った人間のいる村へ到着し
た。
 この村に到着したのはほんの偶然だ。
 でなければ、わざわざ人のいる村になど足を向けたりはしない。
 大抵は死人だらけの村の壊れかけた言えから食料などを失敬する。
 死人にはもはや不要の物だし、自分も必要最低限の物しかとりはしない。
 しかし、今回は少し事情が違っていた。
 この体のおかげで食料をあまり必要としないが、流石にもう4日近く何も
口にしていないため、ひどく空腹だ。
 この村をさらに迂回し、破壊された村を探すのは至難の技。
 下手をすればそのまま野垂れ死ぬかもしれない。
 もうこれだけ長生きをした分、いつ死んだって構うものかとは思っている
が、流石にそんなマヌケな死に方はしたくない。
 仕方なく、俺はその村に足を踏み入れた。




 アリシアは久しぶりで生き残りのいる村を見つけた。
 丁度良い、自分の手持ちの食料もそろそろ底を尽きかけていたし、彼を探
すのにも生きた人間の証言が必要だ。
 彼である可能性のあるものを見かけたというだけの情報でも構わない。
 それが真実かどうかは自分が分かる。
 それだけで十分。
 早速村に足を踏み入れ、一応の確認のために手許から磁石のコンパスを探
り出した。
 そのコンパスには普通の方位磁石の他に、もう一つの銀色の針がある。
 その針は村の入り口、、、、アリシアより東の方角の入り口を指し示して
いた。
「?」
 アリシアは首をかしげ、そのコンパスに人さし指を当てて念じる。
 すると方位磁石の方は何も変わらないのに、銀色の針だけが物凄い勢いで
ぐるぐると回り出した。
「!」
 パアッとアリシアの表情が明るくなる。
 アリシアは思わず、先程銀色の針が示していた方向へ全速力で走り出し
た。





 やはり、この姿で村に入るのはまずかった。
 白ずくめのこの姿のせいで、村のあちこちから強い視線を感じる。
 自分もいい加減、白ずくめの服をやめてしまえばいいと思うのだが、どう
にも他の色は身につけられないのだ。
 赤い服は嫌が応にもあの男を連想させるし、黒い服も怪し過ぎる。
 もちろん、白ずくめが怪しいとは言わないが、、、、、
 いくらかはマシだろう。
 どうしても服を選ぶと白っぽいものを選んでしまう自分に、俺はため息を
ついた。
 ふと気がつけば、ざわざわと声が聞こえ始め、村人達がこちらへゆっくり
とやってくる。
 やれやれ、またか。
 その内、一人の老人が俺の前へ出てきた。
「、、、、、お名前は?」
「、、、、、、、、、、」
 聞かれたその言葉に、俺は答えられないでいた。
 本名を名乗れば何か起こることは必至。
 かといっていい偽名も思い付かない。
 知り合いの名前を使おうにも、有名人が多すぎる。
「、、、、、、、、、、」
 いつまで経っても答えようとしない俺に、村人達が不安そうな顔をする。
 もしここで魔族と勘違いされれば、それはそれでコトである。
 魔族と勘違いされることなく、そして自分の正体を知られずに食料を分け
て貰いここから去るにはどうするべきなのだろうか。
 最近は人と出会うことも少なく、会話もする必要がなかったため、脳の回
転が随分と遅くなった。
 そんな自分の脳に叱咤し、俺は必死に考える。
 特にいい策は思い付かない。
 仕方なく、俺はため息をついて口を開きかけ、、、、、、
「ゼルガディスさん!!!!」
 声と共に、斜後ろから衝撃が来た。
 一瞬よろけかけ、踏み止まる。
 俺の瞳は驚愕で見開かれていた。
 何故、俺の名前を知っているのか。
 何故、抱き着いてきたのか。
 何故、、、、、、、、
「ゼルガディスさん、ゼルガディス=グレイワーズさんですよね!!??」
 黒髪の、年は15、6といった所。
 愛らしい顔だちをした少女がそこにいた。
 俺の知らない、顔。
 見た事もない顔だった。
 しかし、その声はかつての彼女とそっくりで、、、、、
「ゼルガディス=グレイワーズだって!?」
「あの伝説の!?」
 少女の言葉に、村人の間でどよめきが広がる。
 やがてそれは歓声に変わった。
「ゼルガディス=グレイワーズ様がここに来て下さった!」
「俺達は救われるんだ!!!」
 喜び騒ぐ村人達の中で、俺と少女が沈黙のまま見つめ会う。
 少女は感極まった、といった感じで目尻に涙を浮かべている。
 そして俺に対し、柔らかく微笑んでいた。
 俺はただただ、その少女を唖然として見つめるだけ。
 やはり、見たことのない顔だ、何度見ても。
 同じ黒髪ではある。
 顔だちが全く似ていないというわけではない。
 けれど、やはり見たこともない顔。
 なのに、なのに何故、、、、、、、
「何故だ、、、、、?」
 思わず呟いた言葉は、村人達の歓声にかき消される。
 少女も聞こえなかったらしく、表情をかえない。
 何故、何故、何故、、、、そればかりが俺の頭の中で響いた。
「、、、、、、、、、、」
 口を動かしたが、声が出なかった。
 無意識に彼女の名を呼ぶことを、咽が拒否していたのかもしれない。
 ただ、心の中で何度も繰り返した。
 何故、そんなにも声がそっくりなのか、と。
 彼女は、結婚しなかったはずだ。
「あ、、、、、、、」
 やはり、声が出なかった。
 目の前の少女の声は、かつての彼女にそっくりだった。
 生き写しと言ってもいい。
 とにかく、本当に似ていたのだ。
 かつてのアメリア=ウィル=テスラ=セイルーンに、、、、、、、。








 続く

トップに戻る
7772あたしの望みは餅を死ぬほど食うこと(激しく間違い)希斗 2001/11/15 20:47:36
記事番号7771へのコメント



 ゼルやん☆人間不信警報発令中!!
 なんぞと思いつつ見ていた自分(笑)。
 でもなんか虚しい(謎)


 アメリアみに(仮)。ついに登場ですか……。
 これからの展開がサッパリ解らないですねえ。
 さらにゼルの名前暴露(なのか?)村人達の行動を予想しつつ、ゼルの魔法暴走も予想(嘘)


 さらに…………っ!
 (勝手に命名)ゼル追跡コンパスぅ〜♪(ドラ○モン風に)
 魔族総出で奪ってこーい!!(ちと本気)


 そしてゼロスとアメリアみに(仮)の活躍を期待しつつ、
 ゼルの考えも期待しつつ(何)、
 さらにamyさんの執筆の早さにも期待しつつ(大嘘)
 待っていますので。

 ではでは。





 どうでもいい備考、
 希斗はつい今日、「松竹」を「まつたけ」と読んで……、
 …………手痛いツッコミをもらいました(涙)



トップに戻る
7782あたしの望みは、、、文才欲しい(切実)amy E-mail 2001/11/20 17:18:41
記事番号7772へのコメント


希斗さんへ

  レス、どうもありがとうございました!
    あまりのレスの早さに驚いている amyです。

> ゼルやん☆人間不信警報発令中!!
> なんぞと思いつつ見ていた自分(笑)。
> でもなんか虚しい(謎)
    ザ・人間不信!!
     彼はあまり人を信用しないタイプな気がします。


> アメリアみに(仮)。ついに登場ですか……。
> これからの展開がサッパリ解らないですねえ。
> さらにゼルの名前暴露(なのか?)村人達の行動を予想しつつ、ゼルの魔法暴走も予想(嘘)
   登場です。アメリアみに(笑)
   なんだか凄く長くなりそうな予感がします。
    頑張るので見捨てないでやって下さい(T_T)


> さらに…………っ!
> (勝手に命名)ゼル追跡コンパスぅ〜♪(ドラ○モン風に)
> 魔族総出で奪ってこーい!!(ちと本気)
   特にゼロス!頑張れええええええ!!!!!(本気)


> そしてゼロスとアメリアみに(仮)の活躍を期待しつつ、
> ゼルの考えも期待しつつ(何)、
> さらにamyさんの執筆の早さにも期待しつつ(大嘘)
> 待っていますので。
   はあい!頑張らさせていただきます!!!
    ゼロゼルなのにアメリアみに(大笑)を登場させる私。
    はてさて、これから一体どうなることやら(おい)


> どうでもいい備考、
> 希斗はつい今日、「松竹」を「まつたけ」と読んで……、
> …………手痛いツッコミをもらいました(涙)
   私は『松竹梅』を『小竹売』と書いた過去があります。



  ではでは





トップに戻る
7786あなたの望みは何ですか? 第七話amy E-mail 2001/11/20 18:01:39
記事番号7771へのコメント


 俺は呆然としたまま、回りに流されて村長の家へやって来た。
 村人達は涙ぐましくなる程の親切を、俺に分け与えてくる。
 一刻も早くこの場から離れなければいけないと本能で感じ取っているの
に、俺は少女を凝視したまま身動きが出来なかった。
 黒髪の少女はにこにこしながら、村長と何やら話し込んでいる。
 本当に、何が何だか分からなかった。
「ゼルガディスさん」
 彼女と同じ声で、彼女と同じように名を呼ぶ。
 奇妙な目眩を覚えながら、俺は一つ瞬きをした。
「お初にお目にかかります。先程は失礼いたしました。
   私の名前はアリシアと申します。どうぞよろしく」
 アリシア、ときたものだ。
 名前まで似ている。
 年の頃はアメリアに出会ったばかりの時と同じくらいだし、黒髪だって同
じと言えば同じだ。
 長さはアリシアの方が幾分長いようだけれど。
 顔はアメリアと同じように『愛らしい』部類に入る顔だが、何度見返して
も別段、似てはいない。
 そして、アメリアは結婚せずに逝った。
 この目の前の少女がアメリアの子孫であるはずがない。
 では、どうしてここまで声がそっくりなのか。
 俺の思考は、またその迷宮をぐるぐると回り始めた。
 アメリアの死後、国を代わりに統治したグレイシアには一人息子がいた。
 しかし、セイルーンが滅ぶと同時にグレイシアも、その息子も死んだはず
である。
 セイルーン王家の血はすでに途切れたはずだ。
 ならば何故?
「私はずっとあなたを探していました。
     どうしても頼みたいことがあるのです」
 アリシアがそう言ったと同時に、村長が腰をあげ、部屋の外へ出て行っ
た。
 思わず、首を傾げてその後ろ姿を目で追う。
「ゼルガディスさん」
 びくっと、俺の体が震えた。
 自分でも分かるほど、はっきりと。
 振り返ると、アリシアが綺麗に微笑んでいた。
 本当に嬉しそうに。
 その瞳の色は美しいダークブルー。
 こんな所まで、アメリアと同じ。
「ゼルガディスさん」
 ちっとも似ていないのに、アリシアの笑顔とアメリアの笑顔が重なって見
えた。
「、、、、、呼ぶな」
 蚊の鳴くような声で、拒否する。
 しかし、アリシアはそのまま続けた。
「ゼルガディスさん」
 やめろ。
 言おうとして、声が上手く出ないことに気が付いた。
「ゼルガディスさん」
 がたんっっ!!
 座っていた椅子を蹴倒し、俺は立ち上がる。
 アリシアに動揺は見られない。
 ゆっくりと顔を上にあげ、俺と視線を合わす。
「ゼルガディスさん」
「よせっっ!!!!」
 咽からつっかえがとれたかのように、大声が出た。
 それでも胸の奥のモヤモヤがとれることはなく、ついでに頭痛もしてきた
気がする。
 思わず両手で頭を抱え、きつく瞳を閉じた。
「、、、、、やっぱり、覚えているんですね」
 悲しそうに、アリシアが目を閉ざした。





「私のフルネームをお教えします」
 俺が落ち着きを取り戻すのを待って、アリシアが口を開いた。
 やはり、アメリアに似ている声。
 それを聞いているのが辛くて、頷くことが出来なかった。
「私の名前は、
   アリシア=シアル=ラーダ」
 アリシア=シアル=ラーダ。
 ラーダ。
「、、、、、、シル、、、、フィール?」
 呆然とつぶやく、俺。
 アリシアはこくりと頷いた。
「私はシルフィールさんの叔父の子孫、と言えば御理解いただけますか?」
 シルフィールの叔父。
 確かセイルーンに住んでいて、サイラーグ崩壊の際、身寄りのないシル
フィールがそこへ身を寄せた。
 その、子孫。
「私の祖母が、シルフィールさんといとこの関係だったんです」
 思考の追い付かない俺に追い討ちをかけるように、アリシアは続けた。
「祖母は、シルフィールさんをひどく尊敬していました。
   あの人こそ、巫女の中の巫女だと。
  彼女の手記を世間に公表したのも私の祖母です。
     祖母はアメリア様とも知り合いでした。
      アメリア様も祖母をひどく信頼して下さりました」
 淡々と告げるアリシアの顔に、表情はない。
 しかし、ゼルガディスにはアリシアが泣いているように見えて仕方がな
かった。
「アメリア様は死ぬ前日、私の祖母にこう言い残したのです」
 何故だか予想出来てしまった。
 出来るなら、その言葉を聞きたくない。
 それでも、それは俺の独りよがりというものだから。
 瞳をきつく閉じ、歯を食いしばって、次の言葉を待った。
 そんな俺の姿を見て、アリシアが一瞬躊躇し、それでもついに言い放っ
た。
「ゼルガディスさんを探し出して伝えて欲しい。
   自分は今でもゼルガディスさんが好きです、と」
 頭を鉄製の剣で思いっきり殴られたような衝撃を受けながら、俺は強く歯
噛みした。
 それが予想通りの、言葉だったので。







  続く

トップに戻る
7833あなたの望みは何ですか? 第八話amy E-mail 2001/12/4 19:12:39
記事番号7786へのコメント


 先にお詫びを、、、、、すみませええええええんっっっっ!!!
  色々事情がありまして、小説の続きがとっても遅くなりました!
 本当に申し訳ありません。
   こんな私の小説の続きを楽しみにして下さっていた奇特な方、
  本当にすみませんでした!心よりお詫び申し上げます。
    では、続きをどうぞ、、、、、


==================================

「あなたがアメリア様のことを、
    妹のように思っていたことは知っています。
   アメリア様のことを、女性として見ていたわけではないことも」
 アメリアとそっくりなその声で、アリシアは気遣うように言う。
 もちろん、彼女は俺を気遣ってくれている、それは分かる。
 しかし、アメリアと同じ声でそれを言われると、まるで責められているか
のように心苦しかった。
「アメリア様も、それをちゃんと分かっていました」
 真摯な瞳で真直ぐ見つめられ、目を反らすことが出来ない。
「それでも、アメリア様は貴方に伝えたかったんです」
 アメリアの時もそうだった。
 汚れなどほんの少しも知らないかのように、相手の瞳を真直ぐ射る目。
 自分を信じ、他の何ものにも惑わされない強い眼光。
 俺はそれがひどく妬ましく、また羨ましかった。
 とても。
「私の声がアメリア様に似ていること、気付いていらっしゃいますよね?」
 確認するように言うその言葉に、俺は力無く頷いた。
 それを見て、アリシアがため息を一つつく。
「これは、祖母の望みでした」
 祖母。
 先程からよく話に出て来る人物だ。
 俺はゆっくりと瞳を閉じ、またゆっくりと開いた。
「祖母は、ゼルガディスさんにアメリア様の声で、
  アメリア様の言葉を伝えたいと考えました。
   少しでもアメリア様の意志を汲みたいと、、、、、、」
 アメリアの言葉を、アメリアの声で、伝えたい。
 息が一瞬だけ、止まりそうになった。
 咽がカラカラになったが、俺は気付かないフリをした。
 先のことが、予想できた。
 また、聞きたくないと思った。
 俺の悪い予感はよく当たる。
「人工的に声を変えたんです。
   祖母も、母も、そして私も」
 やっぱりだった。




 滑るように、夜空を何者かが滑空する。
 なめらかなその動きに合わせて、マントらしきものが風に舞った。
 一つの建物の屋根の上に、それは音もなく着地する。
 風に舞っていたマントも、バサリという音すら立てなかった。
 みすぼらしい、ボロボロの屋根の上で、その人物はため息をつく。
 獣神官ゼロスだった。
 いつもはニコニコ笑顔のはずが、今日はいかにも嫌そうに歪んでいる。
 屋根に手をつき、ゼロスはその場に座り込んだ。
 もう一度ため息をつく。
「なんだって僕がこんなことを、、、、、、」
 まさか上司に向かって面と言えるはずがないその言葉をぽつりとつぶや
く。
 やれやれと肩を竦め、ゼロスはするりと屋根を通り抜け、建物の中へ侵入
した。
 腐った人間の死体だらけのその建物に、ゼロスがただ一人立ち尽くした。




「瞳の色や髪の色は、シルフィールさんも祖母も同じでした。
  祖母はこうも考えました。
  姿形が似ていた方が、さらにいいに違いない、と。
   結果、祖母も母も愛のない結婚をしました。
    瞳と髪の色を保つためだけに、、、、、です。
   もしかしたら、祖母は狂っていたのかもしれませんね、、、、、」
 寂しそうに言うアリシアに、俺は何も言えなかった。
 ふふっと、アリシアが無理をして微笑む。
「名前も、母はアリア、私はアリシア、と。
  アメリア様に似せてつけていました。
    本当に、徹底的に、、、、
   祖母は、セイルーンを本当に愛していましたから」
 俺から視線を外し、アリシアは懐かしそうに虚空を見つめた。
 もちろん、そこにアリシアの祖母の姿はない。
 それでも、アリシアはただ一点を見つめていた。
「だから、ゼルガディスさん。
  どうか、アメリア様を否定なさらないで下さい」
 それが、私の望みです、とつぶやく。
 俺はゆっくりと目を伏せた。
 思わず唇を強く噛んでしまったが、どうでも良かった。
「、、、、何故、俺の居場所が分かった、、、、、、?」
 無理矢理だな、と思いながらも、俺は話を変えることにした。
 これ以上このことについて話をしていたら、気が狂いそうだった。
「、、、、これです」
 そう言ってアリシアが懐から取り出したのは、奇妙なコンパスだった。
 方角の示された文字が書かれている板の上に、磁石がついている。
 そんな普通のコンパスとは違い、それにプラスして銀色の針が一本、それ
にはついていた。
 そしてその銀色の針が、真直ぐに俺の方を指し示している。
 磁石の方角はまるきり無視していた。
「これは、、、、、?」
「この銀色の針には、魔法がかけられています」
 俺の問いに、アリシアは言った。
 そしてそのコンパスを俺に手渡そうとする。
 俺は驚いて、コンパスとアリシアを交互に見つめた。
「持って見て下さい」
 言われた通りに手に置くと、その銀色の針が物凄い勢いでぐるぐると回り
始めた。
「それは貴方のある持ち物を探索することが出来るんです」
「ある持ち物、、、、?」
「はい、アメリア様の、、、、アミュレットです」
 はっとして、思わず俺は腰に引っ掛けてある水筒に触れた。
 そこには、今もアメリアのアミュレットがぶら下がっている。
「この針はそれを探して方向を指し示し続けました。
  貴方自信を指し示したわけではありません。
  だから、一種の賭けでした。
 貴方がそのアミュレットを無くしたり、捨ててしまえば一貫の終わり」
 言いつつ、アリシアが俺の手の上に乗ったコンパスを懐に戻した。
「もう手がかりは一切なくなる、、、、、
  私はそう祖母に言われ、それを託された時、賭けました。
   貴方が100年以上経った今でも、
   そのアミュレットを無くさぬよう、大切に持っている方に」
 涙でにじんだ瞳をこちらに向け、アリシアが微笑む。
「銀色の針が指し示す方向がしょっちゅう変わる。
  それは誰かがアミュレットを持っていることに変わりありません。
 でも、不安でした。
  それを持っているのが、必ずしもゼルガディスさんとは限らないから」
 一つ息を吸い込み、小さく咽を震わせる。
 俺も一つ、息を飲んだ。
「私の声を聞いても、アメリア様を思い出さないかもしれない。
   そんな不安も、確かにあったんです。
  もしかしたら、貴方がもう死んでいるかもしれないとも思ったので」
「、、、、、、」
 何かを言おうとして、俺の咽からは声が出なかった。
 何とも形容し難い感情が、俺の中を渦巻いていた。
「、、、、、良かった」
 言うと同時に、アリシアの瞳から涙が溢れ出した。
 アリシアは恥ずかしそうに笑うと、両手で顔を覆い隠す。
「本当に良かった。
  貴方が生きていて、ちゃんとアメリア様の声を覚えていて、
   ちゃんと、、、、アミュレットを大切に持っていて下さって」
 所々に嗚咽を漏らしながら、アリシアは一生懸命につぶやく。
「私達の、祖母の、母の苦しみや犠牲が無駄にならずに済んで、
       祖母の望みをちゃんと叶えられて、本当に、良かった」
 覆った手の隙間から涙の雫をこぼしながら、アリシアは続けた。
「ごめんなさい、止まらないんです。
   だって、本当に良かったって、思って、、、、」
 俺は思わず、アリシアを抱き締めていた。
 背中を優しく撫でると、アリシアが驚いたように顔を上げる。
 俺は何も言わず、アリシアの背中を撫で続けた。
 子供相手にするようなその動作は、彼女の自尊心を傷つけたかもしれな
い。
 けれど、俺はそうせずにはいられなかった。
 申し訳なさでいっぱいだった。
 こんなにも他人に申し訳なく思ったことはない。
 何をすまなく思っているのかと聞かれれば、きっと俺は口籠ってしまうの
だろう。
 それでも、本当にすまないと思った。
 ほんの少しだけでも、俺はアリシアに何かをしてやりたかった。
 その思いが、こうして彼女をあやすこととして出ただけだ。
 そして、こんなにも酷い自分を想ってくれたアメリアを古い記憶から掘り
起こし、あらためてすまないと思った。
 何度同じ選択を迫られても、俺がアメリアの想いに答えることはなかった
だろう。
 彼女の葬式に出向くこともなかったに違い無い。
 それでも。
「すまなかった」
 俺はアリシアを抱き締めたまま、形の上ではアリシアに、そして心の中で
はアメリアに、謝罪を述べた。






続く

トップに戻る
7834Re:あなたの望みは何ですか? 第八話Lily 2001/12/4 23:57:07
記事番号7833へのコメント

コメントが遅くなりました。
でも待ってました!!
アリシアちゃんがシルフィールの親戚とは・・・
でもゼロス君は上司の何に不満なんでしょうね?
・・・・・・・探してみれば結構あるかも・・・・・・
短いですがこれで。

トップに戻る
7855どうもです〜!amy E-mail 2001/12/11 17:24:47
記事番号7834へのコメント

Lilyさんへ

>コメントが遅くなりました。
>でも待ってました!!
  ありがとうございます!!
  その言葉だけで、本当にどれほど救われることか、、、、、
   只今バイト続きで忙しく、疲れた体が
  その優しい言葉で癒されますううううう!!!!

>アリシアちゃんがシルフィールの親戚とは・・・
  さすがに、、、アメリアの親戚じゃあ芸がないかなあ、、、と。
    ううう、その程度の理由だったりします、すみません。

>でもゼロス君は上司の何に不満なんでしょうね?
>・・・・・・・探してみれば結構あるかも・・・・・・
  色々、、、、掘り返せば掘り返すほどいっぱい、、、、、、
   ゼロス君もにこにこしてるけれど、あれで苦労性なんです。


  短いですが、これにて


       amyより

トップに戻る
7862あなたの望みは何ですか? 第九話amy E-mail 2001/12/11 18:01:44
記事番号7833へのコメント


「まったくもって、、、、
   我が君主もなかなかに悪趣味なことをなさりますね」
 はあ、とため息をつき、ゼロスがつぶやく。
 その足下には、白い欠片。
 いや、人骨の残骸が4人分ある。
「僕はあまり、こういったものは好ましく感じられないのですがね」
 言いつつ、ゼロスは足下に手をかざした。
 それと同時に人骨がふわりと宙に浮かぶ。
 その人骨と共に、ゼロスは音もなく闇に消えた。


 体を離した後も、どちらも黙って座ったままだった。
 俺はあまり物を話す気力がなかったし、アリシアは気まずかったのだろう
と思う。
 大体、自分は昔の仲間に指摘された通り、口下手だ。
 それは100年以上経った今でも変わりはしない。
 それでも、俺の方は幾分落ち着いていた。
 それはきっと、俺が感情に乏しくなってしまったせいもあるかもしれな
いけれど。
「一つ、聞いてもいいか?」
「あ、はい、どうぞ」
 突然の俺の言葉に戸惑いを隠せぬまま、アリシアが頷いた。
 俺は極力優しい声が出るように努力しながら(それにしたって限界がある
に違い無い、そんなことを意識したことがほとんどないのだから)、彼女に
ごく自然に尋ねた。
「俺に会う目的、というのは本当にさっきの理由だけか?」
「、、、、、」
 俺の問いに、アリシアは一瞬だけきょとんとした後、はっとなって首を横
に振った。
「いえ、まだあるんです。
  すみません、つい自分のことばかり優先してしまって、、、、、」
 言いつつ恥ずかしそうに顔を俯かせる。
 その仕種はシルフィールにとてもよく似ていた。
「あの、あまりゼルガディスさんにとって好ましい話ではないんです」
「、、、、、」
 アリシアの言葉を、俺は無言で促した。
 アリシアはそれに、ちょっとだけ困ったような顔をした。
「、、、、、、貴方に助けて欲しいんです。
    魔族から、そして暴走し始めた神々から」
「何を?」
「この世界の人間を、です」
 きっぱりと、彼女は強い意志を込めて言い放った。
 思わず俺は苦笑する。
「俺は、、、、」
「知っています」
 また、やんわりとしていながらも強い口調で言う。
「貴方が、人々に助けを求められても無視していたことも。
      人と関わりたくないということも、、、、、、全部」
「、、、、、、」
 俺は黙ったままでいた。
 否定も肯定もするつもりはなかったからだ。
 彼女はその沈黙を肯定ととったらしかった。
「それでも、貴方はこうして、まだ仲間の遺品を持っている」
 アメリアのアミュレットを見つめながら、アリシアは言った。
「まだ、覚えている。私の声が、アメリア様と似ていることを」
「それで?」
「だから、どうか、人間に幻滅しないで下さい」
 多少、先程よりも冷たくなった俺の口調に気付いたらしく、アリシアが縋
るように言った。
 その瞳は切実に俺を見据えている。
「、、、、俺には、上級魔族に対抗しうる術がない」
 事実だった。
 デモン・スレイヤーズと称される体験談の中で、上級魔族にとどめをさし
ていたのは常にリナだった。
 彼女だけが、上級魔族にすら対抗しうる術を持っていた。
 俺はそれをサポートしたにすぎない。
 第一、フィブリゾとの闘いの時など、俺は少しも役に立てなかった。
 かえって足手纏いになっていたように思う。
 そんな俺が、世界の人間を救う?
 冗談じゃない。
「それでも」
 それでも、とアリシアは続けた。
「それでも、もうこの世界には貴方以上の魔導師がいないんです」
 それは、分からなかった。
 確かに、今この世界には神官や巫女は溢れているものの、魔導師の数が極
端に少ないらしい。
 そのせいで魔族に対抗することもできず、ただただ死人が増えていくばか
りなのだと、どこかで耳に挟んだ。
 リナ達の生きていた時代には「現代の五大賢者」なるものがレゾ以外にも
生きていたはずだが、やはりもう生きてはいないのだろう。
 それらしき噂も聞かなくなって久しい。
 他にも名のあるヤツはごろごろいたが、リナ達の時代でその命が尽きてし
まった者はひどく多い。
 自分だけが、ここにいる。
「、、、、、、」
 長く沈黙の続いた俺に、アリシアが不安そうな顔をした。
 俺はもう一度苦笑して、アリシアに言ってやった。
「、、、、、責任なんぞ持てんからな」
 何故だか、そうしてみようと思った。
 もう、何もかもどうでも良かったのかもしれない。
 生きることに疲れたのかもしれない。
 ひけめを、、、、感じているのかもしれない。
 ただ、アリシアが俺の言葉に笑みを見せたことが分かった。
 無性にリナ達に会いたいと思った。





続く