◆−TRUE プロローグ−悠樹一水 (2001/11/14 19:03:16) No.7763
 ┣TRUE 第一章第1話−悠樹一水 (2001/11/14 19:36:03) No.7764
 ┃┗はじめまして−一坪 (2001/11/15 07:15:18) No.7767
 ┃ ┗ありがとうございます−悠樹一水 (2001/11/18 12:52:02) No.7776
 ┣TRUE 第一章第2話−悠樹一水 (2001/11/18 13:45:32) No.7777
 ┣TRUE 第一章第3話−悠樹一水 (2001/11/25 12:56:35) No.7803
 ┗初めまして−紗希 (2001/12/14 22:47:38) No.7875


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7763TRUE プロローグ悠樹一水 E-mail 2001/11/14 19:03:16


「悪く思うなよ。この国のためだ」
窓から月の光に照らされると男は言い、ベットで休んでいた国王を殺す。
国王はピクリとも動かず、真っ赤な血を天井に吹き上げ、死んでいった。
男は国王が完全に事切れたのを確認すると、口元だけをゆるめて笑う。
そして月の光に吸い込まれるように姿を消した。
(この国は私のモノだ。私がこの国の王となるのだ)
                        続く

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7764TRUE 第一章第1話悠樹一水 E-mail 2001/11/14 19:36:03
記事番号7763へのコメント

「ここは本当にナルディンなのか?」
 小柄で巻き毛の少女が瞳を凝らしながら言う。
 今、港から四人の芸人たちがでてきた。四人うち二人が女でもう二人が男の格好をしていた。
「ラディン、言葉遣いには気をつけなさい。とくにここは異国人を嫌うのだから」
 くせのある短い髪を、風になびかせている男が言う。この男は四人の中で一番年上である。彼の名はギルディー。彼が話し掛けた少女は実は十七歳の青年であった。名はラディン。小柄で中性的な顔をしている彼は、女の踊り子として自分を売っていた。
 ラディンは肩より少し長い巻き毛を掻き揚げると、ギルディーを睨みつけた。そして一人、街の中へと消えていってしまった。
「兄さん、ラディンに何を言っても無駄ですよ。それより街を見てください。ラディンの言うとおり、ここはナルディンなのでしょうか?」
 肩まであるストレートの髪の女性はギルディーに話し掛けてくる。
 ストレートの髪の女性もまた女ではなく、二十一歳の男である。名はテロン。中性的な顔をしているので、女として踊り子をしていた。
 ギルディーがゆっくりと周りを見渡していると、後ろから日に焼けた褐色肌の男が口をはさんできた。
「じゃあ、国王が殺されたという噂は本当?」
「クレス! 本当かどうかは城に言ってみないとわからないだろう。憶測で物事を判断をするんじゃない」
 ギルディーは強い口調で褐色肌の男に怒鳴る。
 褐色肌の男の名はクレス。
 この四人の芸人、ギルディー、テロン、クレス、ラディンは兄弟である。
 五年前まで彼らはここ、ナルディンで生活をしていた。彼らの父親の死と共にこの国から姿を消した。母親は九年前に愛人の男と一緒にこの国を出ている。だから彼らの親は父親しかいなかった。その父親が亡くなり、彼らは生活が困難になった。
 国で英雄扱いをされていた父の息子達として、それなりの暮らしをしていた。しかし世間は冷たい。父が死んだとなった途端に、彼らは捨てられた。国王とその娘のソフィアはそんな彼らを優しく迎えいれていたが、自分たちがいることで迷惑になるだろうと、ギルディーたちは思い、国を出ることにした。そのとき国王と約束をした。
『自分にもしものことがあり、ソフィアが辛い思いをしているときは必ず助けてくれ』
 国王には子どもがソフィア一人しかいない。ソフィアを守っていく人間は、娘が心から信用している人間にと国王は思っていた。それがギルディーたちである。彼らはソフィアと同じような教育も受けているし、ソフィアが安心している人物であった。
 ギルディーたちはその国王との約束を果たすために、ナルディンに帰ってきたのである。
「ではさっそく城に行ってみましょう。ソフィア姫に会うのは久しぶりですね。元気にしているでしょうか?」
 テロンは嬉しそうに言う。するとギルディーが怖い顔で彼のことを見る。
「テロン、彼女が元気にしているなら、私達が帰ってくる必要はないんだ」
「そう、でしたね。軽率な態度、申し訳ありません。気をつけます」


                             第二話に続く
 よかったら感想ください。待ってます。

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7767はじめまして一坪 E-mail 2001/11/15 07:15:18
記事番号7764へのコメント

投稿ありがとうございました!

プロローグ、すごいインパクトですね。
一気に引きつけられました。
第1話もおもしろく、今後の展開がスゴい楽しみです。


というわけで続き、期待してます。

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7776ありがとうございます悠樹一水 E-mail 2001/11/18 12:52:02
記事番号7767へのコメント

ありがとうございます。
生まれて初めて書いた小説です!

頑張って書きますので
これからも応援お願いします。

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7777TRUE 第一章第2話悠樹一水 E-mail 2001/11/18 13:45:32
記事番号7763へのコメント

 ここは南のはずれにある小さな島、ナルディン。この島は緑が多く、豊かである。今は争いも少なく、島全体が一つの国となっている。
 一週間前、『民は神』と唱え、民衆から親しまれていた国王ウイス・セミノールが殺された。犯人はまだ見つかっていない。一部では王家の者の仕業ではないかと噂されているが、真実は今だ解明していないのが現状である。
 判明しているのが、国王が喉の動脈を斬られ、ほぼ即死状態であったということだけであった。
 国王ウイスの死によって、ウイスの一人娘であるソフィアがナルディンの女王となった。彼女がウイスのときのように、命を狙われるのではないかという不安の中、彼女は即位した。警備を厳重にしているためか、今のところそういう動きはないようだ。
 ソフィアは十九歳という若さで女王となった。今まで姫として育てられてきた彼女は、国がどういう状況なのか、政治とはどういうものなのか、どういう仕組みになっているのか、国王とはどういう役割を果たしていくべきものなのか、全くわからない。
 女王になったからと、急に理解が出来るはずもない。彼女は日々不安と苦痛の連続であった。
「ソフィア女王、先日の会議の報告書です」
 王室で休んでいたソフィアに分厚いファイルの束を二冊、彼女の前の机に男が置いた。
 ソフィアは大きく溜息をつく。毎日毎日、ファイルと人に追われ、彼女の気の休まる時間など無いに等しかった。
「リュウ、私には無理ですわ。女王なんて荷が重過ぎます」
 ファイルを机の上に置いた男のことを、ソフィアは真っ直ぐに見つめて言う。リュウはソフィアの従兄弟である。背はあまり高くなく、体も華奢である。武術には長けてはいないが、政治を任すには匹敵する実力を持っていた。
「ソフィア女王そんなことありませんよ。貴方には私の父上がついていますし、何も心配することはありません」
 リュウは軽く微笑んで口を開いた。ソフィアは小さく溜息をつくと、何も言わずに椅子を回転させ、彼に背を向けた。
「ファイルは夜までに見ておきますわ。今は一人にしてください」
 ソフィアの冷たい言葉を、リュウは受け取ると一礼して王室を後にした。
 彼女は自分の前にある窓から、外の風景を眺める。
 王室の窓から見える風景は、とても安心出来る。囲いの木々から覗かれる緑の芝生に、小さい池。その景色は、今のソフィアにとって唯一の心休まる場所であった。
 どうして自分はこんなことをしなくてならないのだろう。自分は姫として生きてきたはずなのに。どうして自分はこんなにも不幸なのだろうか。
 ソフィアは溜息をつく。今更、自分の問い掛けたところで、答えが返ってこないことぐらいわかっている。今の生活が改善されないこともわかっている。
 母親は体が弱く、早くに死んでしまった。父親も殺され、この国にとって自分は必要なのだ。自分一人の我儘を言っている場合ではない。
 ソフィアは椅子を机の方に向きなおすと、ファイルを開いた。

                    第3話に続く

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7803TRUE 第一章第3話悠樹一水 E-mail 2001/11/25 12:56:35
記事番号7763へのコメント

 ラディンは三人の兄よりも先に、城に最も近い街・アクアに来ていた。彼は肩から落ちてきた髪を掻き揚げると、街の景色をじっくりと眺める。
 五年前とは随分と変わった街並み。昔よりも店が賑わっているような気がしてならない。
 自分の記憶が不確かなせいか、鮮明に思い出すことは出来ないが、昔よりも華やかになっているような気がする。
 五年前の忌まわしい過去を忘れたかのように、街は動いている。ラディンだけが知っている父親の死の真実。
 誰にも言わなかった・・・いや、言えなかった。記憶もショッキング過ぎて俄かにしか残っていなかった。それに父親・ディークルを殺した人間の声にか聞いていなかった。犯人が誰だかわからない。
 大した証拠のないのに人に言っても、誰も信じてくれないことなど、幼いラディンでも知っていた。だから彼の父親が、自殺だと言われても何も反論はしなかった。そのかわり大して調べようとしないで、解決しようとしたこの国の人間達反感を持つようになっていた。
 父・ディークルが愛したこの国を、息子のラディンは嫌っていた。

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7875初めまして紗希 E-mail 2001/12/14 22:47:38
記事番号7763へのコメント

初めまして、悠樹一水さん!
私は主に、ここで活動している「紗希」です。
宜しくお願いします!

>そして月の光に吸い込まれるように姿を消した。
この表現が好きです。個人的には…ですけど。
吸い込まれる…月は受け止めてくれるから…

これからも、貴方の活躍に期待しています♪
では…