◆−終らない夜の詩−穂波 (2001/11/25 23:33:51) No.7805 ┣Re:終らない夜の詩−31 (2001/11/29 19:49:47) No.7818 ┃┗ありがとうございます。−穂波 (2001/12/1 00:28:34) No.7822 ┗切ないですねぇ・・・。−雫石彼方 (2001/12/1 22:43:49) No.7825 ┗お久しぶりです〜−穂波 (2001/12/2 23:17:09) No.7830
7805 | 終らない夜の詩 | 穂波 | 2001/11/25 23:33:51 |
久々に投稿させていただきます。 珍しくガウリナです。NEXT最終話後のちょっと設定いじっているお話です。 よろしければ、どうぞです。 --------------------------------------------------------------------- 窓の外は、雷鳴が響いていた。 豪奢な天蓋付きの寝台を、たっぷりとした羽根枕に背を預けた女を、シーツを巻きつけただけの裸の肩を、時折稲光が照らし出す。 女は何をするでもなく、震える窓ガラスに視線を向けている。 その向こうは暗闇で、風の上げる悲鳴だけが間断無く続いている。この部屋以外に世界は存在しない、そんなことを思わせる夜だった。 また一つ、雷鳴。 漆黒を切り裂く稲妻が、いっそ幻想的だった。 「……面倒なもんね」 ため息に似た吐息をついて、女は乱れてもいない髪をかきあげる。 闇の中に走る光は、消えかけていた記憶をフラッシュバックさせる。 姉のように自分を慕ってくれた明るく愛らしい少女の笑顔や、冷静さと固い信条を持つ不器用な男の微笑、おっとりとして優しげな娘の少し困ったような微苦笑、迷惑ばかりかけるくせにどこか憎めない女の威勢のいい笑顔。 懐かしいそれらが、胸の奥で微かに痛む。 手放したのは自分自身だと言うことを、女はよくわかっていたし、それを後悔してはいなかった。 女はひとつしか選べなかった。 そしてそのひとつは、彼らではなかったのだから。 女の指がするりと伸びて、毛布に沈む金色の髪をすくいあげた。さらさらと指の隙間からこぼれる髪を何度も何度もすくいあげる。 それの持ち主である男は、やがて小さく寝返りを打った。それでも女はその行為を止めない。 「……ううん?」 自分の頬にこぼれる髪がくすぐったかったのか、男がむずがる子供のような声をあげる。 「目が覚めた?」 女の声にあわせるように、男の瞳が開かれる。 雲一つ無い春の空を思わせる、やわらかな青。 それを微笑ませて、男は自分を見下ろす女の頬に手を伸ばす。 「おはよう」 男の手に自分の手を重ねて、女も目を細める。 「おはよう」 あどけない口調で、男が女に尋ねる。 「もう、あさ?」 「まだ外が暗いでしょ」 女の答えに男がはじめて窓の方に視線を転じる。どこか神懸ったような、緩慢な仕草だった。 「そっかぁ……じゃあ、よるか」 「もう少し寝ていたら?」 「うん……」 目元を軽く擦って、男はふたたび寝台に沈む。ぱさりと枕の上に落ちる大きな手は、女の華奢なそれと繋がったままだった。 「おやすみ……リナ」 それだけをどうにか呟いて寝息をたてだした男の肩に、リナと呼ばれた女は毛布をかけなおしてやる。 何もかも捨てて、彼を選んだ。 何もかも捨てて、彼もまた自分と共にあることを望んだ。 その代償なのだろうか? 女がリナとして目覚めたとき、彼の心は空になっていた。 彼の覚えていたこと、望んだことはひとつだけ。リナという少女と共に過ごしたい、それだけだった。 稲光が再び室内を照らし出す。 女の髪が黄金色に輝いたが、それは一瞬のことだった。ぼんやりと光を放つランプに照らされた長い髪は、いつもの薄い栗色をしている。 世界と断絶されたちいさな部屋で、女はそっと男の額に口付けた。 「おやすみなさい……ガウリイ」 浅いまどろみを繰り返す男に囁きかける。 終ることの無い夜、永遠のふたりだけの夜。 静かな時間が、流れていった。 --------------------------------------------------------------------- 偽者度高すぎてガウリナ……になっていないような気もしないでもないですが(汗)。書くきっかけをくれたM嬢、ありがとうございます。 ここまで読んで下さり、ありがとうございました。 |
7818 | Re:終らない夜の詩 | 31 | 2001/11/29 19:49:47 |
記事番号7805へのコメント お邪魔します。不義理しまくり31です。 穂波さんのガウリナとはホントに珍しいですね。で、読みました。 なんかこう……けだるい……という感じ。この二人、旅をするとき結構賑やかなのに、実はもうだいぶ前から、言葉は要らなかったんだな〜というのを思い出しました。 短いですが、以上感想でした。素敵な小説、ありがたいありがたい。 |
7822 | ありがとうございます。 | 穂波 | 2001/12/1 00:28:34 |
記事番号7818へのコメント こんばんは、31さん。 コメントありがとうございます〜。 > なんかこう……けだるい……という感じ。この二人、旅をするとき結構賑やかなのに、実はもうだいぶ前から、言葉は要らなかったんだな〜というのを思い出しました。 非生産的な話ですねぇ、そういえば。 ガウリイとリナの関係は、ある意味崩しようがないというか、私の中では夫婦みたいなものなので、かえって書くのは難しかったりします。 ……状況はシビアなんですが、なんか、まったりとした話になってしまいました(笑)。 ではまたです。 |
7825 | 切ないですねぇ・・・。 | 雫石彼方 E-mail URL | 2001/12/1 22:43:49 |
記事番号7805へのコメント 久しぶりに穂波さんのお名前をここで発見したので、やってきました(^^) ガウリイ以外は助からなかった、という設定なのですね。 あり得そうで怖いです。 > その向こうは暗闇で、風の上げる悲鳴だけが間断無く続いている。この部屋以外に世界は存在しない、そんなことを思わせる夜だった。 世界とガウリイを天秤にかけてガウリイを選んで、大切な仲間たちを失った。そんな事件の後だから余計、そう思えるのかもしれないですねー。 切なくって、でもとっても雰囲気が綺麗なお話でした! また素敵なお話読ませてくださいね!! ところで、ですね。 先日うちのパソコンウィルスにかかったのですが、私から穂波さんのところにウィルスメール、行かなかったでしょうか? アドレス帳にずっと前の穂波さんのメルアドが入ってて、でも今もそのアドレスなのか変わっているのかちょっとわからなかったもので・・・・。 で、もしウィルスメール届いていたら本っっ当にすみません!!; |
7830 | お久しぶりです〜 | 穂波 | 2001/12/2 23:17:09 |
記事番号7825へのコメント 今晩は、雫石さん。 お久しぶりです、勝手な設定の話を読んで下さりありがとうございます〜。 >切なくって、でもとっても雰囲気が綺麗なお話でした! 中身は「リナが眠るガウリイでぼんやり遊んでいる」だけなんですが、そう言っていただけると嬉しいです。ありがとうございます。 >アドレス帳にずっと前の穂波さんのメルアドが入ってて、でも今もそのアドレスなのか変わっているのかちょっとわからなかったもので・・・・。 あ、メルアドは変わっていません〜。某所の掲示板でその旨拝読してましたので、そうだったのかぁと思って削除していました(汗)。 治ったのでしたら、よかったよかった。 私もかかったことありますし、お気になさらないでくださいな。 |