◆−赤ずきんちゃん1(ゼルアメ)・再掲示+追加−羅紗 (2002/1/22 17:25:02) No.7978
 ┗赤ずきんちゃん2−羅紗 (2002/1/23 13:36:46) No.7980


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7978赤ずきんちゃん1(ゼルアメ)・再掲示+追加羅紗 E-mail URL2002/1/22 17:25:02


かなり久しぶりの羅紗です。
以前投稿していた物の再掲示と、それに追加部分が加わっています。
前回読まれた方も、最後の方が追加されているので、是非お一度お読みくださいませ。

本当はこのままなし崩しに連載やめよっかなとか思ったのですが。
一人でも読まれる方がいると、その方に申し訳ないと思いましたので。
それでは、どうぞ。

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昔々。
あるところに、とても可愛らしい女の子が居ました。
彼女はいつも、おばあちゃんにもらった赤ずきんをかぶっていました。
それがまた、とても似合っていたので、みんなは彼女のことを「赤ずきんちゃん」と呼んでいました。
ある日、赤ずきんちゃんはお母さんにお使いを頼まれました。
それは、森に住むおばあちゃんにケーキを渡すことでした。
「はい!必ずおばあさんに届けます!」
元気いっぱいに、赤ずきんちゃんは答えました。
そして、かごを持ってにぎやかに家をあとにしました。


「おっつかい、おっつかい♪
 リナおばあさんに会うの、久しぶりですぅ♪」
赤ずきんちゃんは森の小道をスキップしています。
なぜなら、赤ずきんちゃんはおばあちゃんが大好きだったからです。
多少お金にがめつく、ちょっと気に入らないことがあればすぐ魔法をぶっ放し、
食べ物に関しては、こちらが呆れるほどの執着心を持っていますが、赤ずきんちゃんをとてもかわいがっているのです。
さて、そうこうしているうちに、赤ずきんちゃんは分かれ道の前に来ていました。
右側の方が遠回りになります。
赤ずきんちゃんは特に遠回りをする必要もなかったので、左側に行こうとしました。
すると、赤ずきんちゃんの前に、怪しい黒い影が落ちてきたのです。
「だれです!?」
「怪しい者ではありませんよ。」
その黒い影は細い目でにっこりと答えました。
「じゃあ、誰です?」
「見てわかりませんか?」
「全然。」
黒い影はガクッとこけてしまいました。
そして、頭の上に乗っかった大きな耳をなでながら言いました。
「一応それらしく見せたつもりなんですよ?ほら、しっぽまでつけたのに。」
そう言うと、黒い影はマントの端っこをめくって、ふさふさのしっぽを見せました。
「ね?わかりません??」
「んーーーーー………」
赤ずきんちゃんは首を傾げました。
黒い影は申し訳なさそうに言いました。
「あの……一応狼なんですけど……。」
「ああ!」
ぽんと納得したように赤ずきんちゃんは手を打ちました。
その途端、彼女のボルテージが急上昇しました。
「狼と言えば、数ある物語でもとことん悪いことをする悪の代表選手じゃないですか!
 でも、わたしの前に現れたのが運の尽き。このアメリア=ウィル=テスラ=セイルーンが……。」
「ちょっと待ってくださいよ!僕はまだ、何も悪いことはしてませんよ?」
「これからするかもしれません。」
はっきりきっぱり言う赤ずきんちゃんに、狼はわざとらしく首を傾げました。
「まだ何もしていないのにいきなり成敗するのは、やはり正義の道に反していると思うんですけどねえ。」
赤ずきんちゃんはしばし悩み、狼の言うことにも一理あるかもしれないと思いました。
「それじゃあ、狼さんはここで何をしているのですか?」
「赤ずきんさんこそ、こんなところで何をしているのですか?」
「お使いです!」
「お使い?ああ、リナさんのところへ……。」
狼は少し考える振りをし、おもむろに手を叩きました。
「それなら、右側の道の先に綺麗な花畑がありまいたよ。摘んでいってはどうですか?」
「駄目です。」
赤ずきんちゃんの即答に、狼は止まってしまいました。
「寄り道なんて正義じゃありません。」
すると、狼は首を傾げて言いました。
「でも、その籠の中身だけでは、少し寂しくありませんか?」
「う゛。」
赤ずきんちゃんは思わず詰まってしまいました。
なぜなら、狼の言うとおり、おばあさんに届けるにしては量がちょっと足りないような気がしていたからです。
「でもでも、寄り道をするのは……。」
「寄り道せずにリナさんの機嫌を損ねるのと、少し遅くなってもリナさんの機嫌をよくするのと
 ……どちらがいいですか?」
赤ずきんちゃんの心の中は激しく葛藤していました。
リナおばあさんには早く届けたい。いえ、届けなければなりません。
しかし。
最近行ってなかったのでリナおばあさんの機嫌がいいとは限りません。
機嫌を損ねたリナおばあさんを想像するだけで、赤ずきんちゃんの背に冷たいモノが走りました。
「プレゼントを探しに行くことは、別に悪いことではないでしょう?」
狼はにこりと言いました。
その言葉に、赤ずきんちゃんの顔がぱっと晴れやかになりました。
「そうですよね!何も行かないわけではないのですから!!」
どこか吹っ切れた、爽やかな笑顔で赤ずきんちゃんは言いました。
「それでは、身を守……もとい、おばあさんを喜ばせるために花畑に行って参ります!」
赤ずきんちゃんはそう言うとくるりと身を翻し、右の道の方へと走り去っていきました。
狼はそれを見送ると、細い目を少し開けました。
「さて。今度はあちらの方に話を付けてきますか。」
狼は実に楽しそうに笑うと、その場から姿を消しました。

続く。

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7980赤ずきんちゃん2羅紗 E-mail URL2002/1/23 13:36:46
記事番号7978へのコメント

非常に短いですが、続き、いきます。

ゼルアメと銘打っているのに、ゼルの出番がない。
しかもガウリイのファンまで敵に回しそう……

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さて、狼がやってきたのは一軒の家の前でした。
煉瓦を積み上げられたそれはこぢんまりとした感じの、可愛らしい家です。
周りの草花は生き生きとのび、光をその体いっぱいに浴びています。
木々はそれらの周りを十歩ほど離れたところでぐるりと囲んでいます。
狼は扉の前に立っていました。
狼は扉をノックすると同時に開け、にこやかに言いました。
「こんにちは、リナさん。」
「帰れ。」
間髪入れないお返事に、狼は情けない声をあげました。
「リナさん、ひどいじゃないですかぁぁ。
 『また来たの?』とか『何か用?』とかコミュニケーションの取れる返答をしてくださいよぉぉ。」
「やかましい。」
言葉で一刀両断された狼は寂しそうな表情で玄関に座り込み、床に「の」の字を書き始めました。
その後ろ姿には何故か人魂が添えてあり、どこからか木魚の音が流れてくる手の込んだ演出です。
「どーせ僕はひがまれてますよ。主役のリナさんさしおいて人気投票一位にもなりましたよ。
 でもそれくらい笑ってすますのが『大人』ってもんですよね。そうですよね。
 ああ、リナさんはどことは言いませんが『大人』ではなかったですよね。ほんと『胸』とか言いませんけど。
 そうですね。僕は不見識でしたよね。」
はあ、とこれ見よがしに狼は溜息をつきました。
一方、リナおばあさん(と言っても若く見えるのですが)の額には幾筋もの青筋が浮かび上がっていました。
リナおばあさんはおもむろに指を鳴らしました。
「ガウリイ!こいつを追っ払って!!」
それと同時に、奥の扉がぱたんと開きました。
狼はその方に身構えて───困った顔をしました。
「…………リナさん。」
「何よ!?」
「鎖につながれたままですよ。」



「…………忘れてた。てへ(はぁと)」
「『てへ(はぁと)』じゃない!!」
ガウリイと呼ばれたそれがほえると、首輪がフルフルとふるえました。
「ガウリイさん………いつ見ても同情を禁じ得ないですね、その犬の姿。」
狼はぼそりと呟きました。
「いーのよ。ガウリイだから。」
『ひどい……。』
きっぱりと言い放つリナおばあさんの態度に、ガウリイ犬と狼は思わず呟きました。
「ともかく!」
リナおばあさんは、ガウリイ犬の鎖を外しながら言いました。
「さっさと出ていかないと愛の賛歌+ガウリイつき光の剣をお見舞いするわよ。」
ジャラリと鎖の端っことメガホンを両手に持ったリナおばあさんが狼を睨みます。
ガウリイ犬も光の剣を持ち、耳としっぽをピンとたてて構えます。
狼は慌てました。
「ちょっと待ってください。話だけでも……。」
「減るから嫌。ガウリイ、行って来い!」
合図とともに襲いかかってくるガウリイ犬を避けながら、狼は言いました。
「赤ずきんちゃんのことなんですけど、いいんですか?」
「ガウリイ!お座り!!」
きょきょきょきょきょ……………ごめっ。
「………ガウリイさんでも、急に止まれないことがあるんですね。」
「あー……昨日そこ、ワックスかけたから。」
リナおばあさんと狼は、何故か遠い目で、壁にめり込んだガウリイ犬を眺めました。
しかし、すぐに二人はシリアスモードに入りました。哀れ、ガウリイ犬。
「赤ずきんのこと、ってどういう意味?」
「そのままの意味ですよ。」
狼はどこからかとりだしたティーカップに紅茶を入れ、リナおばあさんに差し出しました。
リナおばあさんはそれを受け取らず、厳しい顔で狼を睨みました。
「あの子に何かあって、ただですむと思ってないでしょうね。」
「どう、『ただ』じゃすまないんですか?」
二人の間の空気が、ピンと張りつめました。
リナおばあさんの鋭い視線と、狼の細い目から除く冷たい視線がぶつかり合います。
狼は小さく笑いました。
「もしかして『愛の賛歌』でどうにかなるとでも思っているんですか?
 確かに効果はありますが、僕にも対策はできています。」
「対策?」
リナおばあさんは怪訝そうな顔をしました。
狼はごそごそと鞄の中から何かを取り出しました。
「これです。」

続く。