◆−BE REVENGED ON−とーゆ (2002/2/28 23:13:46) No.8173
 ┗あとがきにかえて……駄文01−とーゆ (2002/2/28 23:25:53) No.8174
  ┗はじめまして−一坪 (2002/3/1 22:10:37) No.8177
   ┗Re:はじめまして−とーゆ (2002/3/3 22:46:29) No.8187


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8173BE REVENGED ONとーゆ 2002/2/28 23:13:46


BE REVENGED ON


 アメリア=ウィル=テスラ=セイルーン、崩御。
 アメリアが……死んだ。暗殺だったらしい。
 ゼルガディスがそれを知ったのは、大粒の雨が降りしきる墓地でリナ=インバースに殴られてからだった。
「なんで一緒にいてあげなかったのよ!?
 3年もあの娘を放っておいて!
 アメリアはこの3年、どんな気持ちでゼルを待っていたと思うの!?」
 彼女の悲痛な叫びが、ズシリと重い。
 涙なのか、雨なのか、その判断はつかないが、リナはその瞳を濡らし、雨のせいで額に張り付いた前髪をかきあげることもせず、再び拳を振りかぶる。
 ゼルガディスは、覚悟を決めて歯を食いしばる。
 しかし、ゼルガディスの頬を狙った拳は、ガウリイ=ガブリエフに阻止された。
「やめないか、リナ。ゼルガディスを殴っても、アメリアは、もう……」
 最後のほうは、声がかすれていた。
 リナは、やり場を無くした拳をギュッと握り締め、その場を走り去った。
「おい!リナ待てよ!」
 ガウリイは、駆け出そうと半身を踏み出し、踏みとどまる。
「ゼルガディス。キメラじゃない俺が言ってもキレイ事にしかならんだろうが言わせてくれ。
 元の人間の身体に戻るというのは、そんなに大事なことなのか?アメリアに寂しい思いをさせてでも、アメリアを犠牲にしてでも優先させるべきことなのか?
 俺は、違うと思うぞ」
 そう告げて、ガウリイもリナを追ってその場を走り去った。
 カチリ。
 彼の中で確かに、何かが外れる音がした。
 4人で行動していた時、いや、アメリアと一緒だった時、アメリアを近くに感じていた時には決して外れることのなかった、なにか決定的なもの。それが外れた。


「犯人を、知りたいですか?」
 相変わらず癪に障る笑顔で、好青年の格好をしたそれは言ってきた。
「失せろゼロス。今は貴様の冗談に付き合ってやる気分じゃない」
「それは……ご挨拶ですねぇ。僕は親切でいっているんですよ」
 屈託のない笑顔。それだから非常に疑わしい。
 ゼルガディスは、獣神官の胸倉を掴み、険悪な表情を隠しもせずに告げる。
「貴様、まさか現場を見ていたわけじゃないだろうな?」
「だったらどうだと言うんです?」
 澄ましたような、拗ねたような。ゼロスはそんな声で告げてくる。
 ゼルガディスは、掴んでいたゼロスを突き飛ばし、バランスを崩してたたらを踏んでいた彼に向かって、
「はぁっ!」
 気合一閃、バスターソードの抜刀術で斬り付ける。
 刃は、ゼロスの右の横腹から左の肩口にかけて大きな傷を残したが、その傷口は黒いノイズが見え隠れしているだけだ。
「冗談ですよ。僕は犯人を見てません。それに、仮に見ていたとして、どうだというのですか?
 まさか“なぜ助けなかった?”とか言うつもりですか?
 自分は放っておいて、ずいぶんとわがままな言い分ですね?」
 ゼロスは、クツクツと苦笑を交えながらそう言ってくる。
 ゼルガディスは何も言わず、振り抜いたままになっていたバスターソードを両手で握り、左半身を前に出して大上段に構え、再びゼロスにめがけて振りおろす。
 しかし今度は、ゼロスがすいと身を後ろに引いて刃をかわす。
 ゼルガディスは、右半身を半歩踏み込んで手首を返して斬り上げる。
 再び、刃がゼロスに吸い込ませる寸前、ゼロスの姿がゆらりと揺れ、空間から姿を消す。
「逃げられたか……」
 別に本気で斬り捨てるつもりはなかった。
 魔力を通していない、ただの金属の塊に過ぎない彼のバスターソードでは、純粋な魔族にダメージを与えることはできない。
 ゼルガディスは、舌打ちをしてから納刀する。
「もし、犯人に興味があるなら……」
 唐突に聞こえてきた獣神官の声は、背後――耳元から聞こえてきた。
 ゼルガディスは拳を握り、獣神官の顔面に裏拳を叩きつけようと振り返る。
「明日のこの時間、もう一度ここに来てください。
 その時にお教えしますよ」
 しかし、振り抜いた拳はむなしく空を切った。


 今さら……今さら……今さら……
 そう。全てが今さら。全てが遅すぎた。
 力を欲しキメラにされ、身体を失い、今さら後悔し、今さらこの身体を呪っている。
 拒絶されることを恐れ、自ら全てを拒絶し、孤立する。それをクールな生き方だと思い込んでいた、と今さら思い知る。
 それでも自分を、ありのままの自分を受け入れてくれた仲間たち。
 飾り気のない、純粋な笑顔を向けてくれた少女。
 彼女を見ているときだけ、妙に心が和む自分に気付いた。すこしづつ、彼女を見ている時間が増えた。彼女を見ているときだけ、表情が緩む。自分の中で、何かが変わる気がした。変われる気がした。
 その彼女も、今はもういない。失ったのか……捨てたのか……
 失った過去。捨て去った過去。思い知った現在。今さらの現在。失う未来。まだ見ぬ未来。
(今さら、許しを請うなどと……)
 今さら…………
「ここにいたのですか。
 てっきり、アメリアさんの墓前にいるものと思ってましたが……
 その様子だと、まだ墓前に立ってないのでしょう?冥福を祈って差し上げたらどうです?」
 今さら、こんな奴に頼っている。今さら……
「今さら……どのツラ下げて、アメリアの墓前に立てる?」
 ちらり。と、視線だけを獣神官に向ける。
 雨に打たれても濡れない服。重くならない髪。雨粒は、その表面を流れる。
 やはり人外の者か……と、今さら思い知る。
 獣神官は、肩をすくめて、
「ま、ぼくにはどうでもいいことですけどね。
 それより、約束のモノです」
 言って、大きめの、ファイリングされた数枚の紙を渡してくる。
『アメリア=ウィル=テスラ=セイルーン暗殺に関する最終報告書』
 そう題されたファイルを受け取り、ゼルガディスは表紙をめくる。
「犯人は、『流血の旅団』を名乗る傭兵団です。名称くらいは聞いたことはあるでしょう?中小の国家の国軍に匹敵する軍事力を持ち、一人一人の戦闘能力もゼルガディスさんとほぼ互角な傭兵団で……」
「それで」
 ゼルガディスは、要点だけを話せ。と、視線で要求し続きを促す。
「そんなに急かさないでくださいよ。」
「あいにく俺は、貴様ほど長生きはできないんでな」
「そんなに慌てて犯人を知って、どうします?復讐でもしますか?」
 薄ら笑いさえ浮かべて、ゼロスはそう言ってくる。
 今さら、復讐など無価値だ。何も産みはしない。今さら、アメリアは戻ってはこない。
「貴様には関係のない話だ」
 ゼルガディスは極力無感情を装い、冷たく言い返す。
「アメリアさんは、それを望んでいるのでしょうか?」
「くどいぞゼロス。貴様には関係のない話だといったろう!?」
 アメリアは、復讐を望んだりしない。そんな女でないことは充分に承知しているつもりだ。おそらく彼女は……
「おそらくアメリアさんは、あなたの平穏な生活を望んでいるのではないですか?
せめてもの罪の意識があるのなら……」
(今さら、平穏な生活など……)
 ガツッ。
 最後まで台詞を言わせず、ゴーレムの拳がゼロスの頬を打つ。
 ゼルガディスは、そのままゼロスの腹部に第二撃を突き上げる。
 当然何のダメージも受けず、獣神官は続けてくる。
「あるのなら、彼女の意思に沿って生きるのが本当ではないのですか?」
「魔族の貴様が道徳の指南か?随分と偉くなったものだな」
ゼルガディスはゼロスを突き飛ばし、落としたファイルを拾い上げる。
「これは、俺の気分の問題だ。貴様には関係ない。
 ファイルのことは、まあ、礼は言わないでおく。どうせ貴様のことだ。何か裏があるんだろう?」
そう言い残し、ゼルガディスは背を向け歩み去る。



 流血の旅団団長、ダニエル=イコライザ。アメリア暗殺の実行犯。現在は、ギルギア王国という、以前からセイルーン聖王国とは緊迫した関係にあった国に、正規軍として迎えられている。
「犯人に復讐するということは、一国家に喧嘩を売ることと同義なのですよ。
 それでも、あなたは躊躇わないでしょう。それがどうした、とでも言って。
 あの4人の中で、あなたは一番の激情家ですね。その本性は滅多に表に出しませんが。
 あなたの迷いや憤り、とっても美味しいですよ。もうしばらく、楽しめそうですね」


 城内の、軍人や傭兵が利用客のほとんどを占める酒場。
 ゼルガディスが、なんの咎もなく入り込めたのは、傭兵希望者を装っていたからだ。そんな状況なので、似つかわしくないガラの悪い連中も目に付く。
(なるほど。この国が近々セイルーンに宣戦布告をするらしいという噂は、ただの噂ではないというわけか)
 フードとマスクを外し、ザッと店内を見渡す。時間もだいぶ遅いせいか、思ったほど混んではいない。
(そのほうが好都合か)
 少し奥のほう。入り口からでは少々見難いところに、目当ての男を見つける。
 ツカツカと歩み寄り、取り巻きを押し退け、男の前に立つ。
 蛇のような男。ファイルに添付されていた似顔絵から受けた印象は間違いではないと確信する。
「ダニエル=イコライザだな」
 殺気を抑えようともせず、ゼルガディスは言い放つ。
 酒宴を邪魔されて機嫌を損ねた男――ダニエルは、不機嫌極まりない声で告げてくる。
「そうだが、何のようだ?」
 取り巻きが抜刀し、ゼルガディスを囲む。
「雰囲気からして、復讐か?」
 つま先から頭の先まで、ダニエルは一通りゼルガディスを観察してから続ける。
「腕に多少の覚えがあるらしいが、いい気になるなよキメラ野郎!」
 言って、ダニエルが持っていたワイングラスを握力で潰したとき、けたたましい轟音が連続して響く。
「なんだ?」
「おい!燃えてるぞ」
 外から、そんな声が聞こえてくる。
「貴様がやったのか」
 ダニエルが腰を浮かせ、冷笑を浮かべているゼルガディスに視線を向ける。
「兵舎の連中が駆けつけてきたら、さすがに不利なんでな。少々、駒を削らせてもらった」
 ゼルガディスは、ズラリとバスターソードを抜き放ち、言い放つ。
「ダニエル=イコライザ。お前を、殺す」


 彼は、人工的な上昇気流に髪をなびかせ、ペロリ、と唇を舐める。
「ご馳走様でした。ゼルガディスさん」



END

EDBGM:B’z/キレイな愛じゃなくても

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8174あとがきにかえて……駄文01とーゆ 2002/2/28 23:25:53
記事番号8173へのコメント

みなさんこんばんは。もしくはこんにちは。ひょっとしたらおはようございます。いずれにしても、はじめまして。初投稿のとーゆです。
因みにタイトルの英文は、間違ってるかもしれないし意味もわかってません。
今回の投稿分は、初めて完成させたお話です。以前も何度か挑戦した事はあったのですが、あえなく挫折。
しかしまあ、書き上げて見て分かったのですが、予定外のことはあるもんですね。当初はダークなお話を目指してたのですが、なんかわけ分からなくなったし。
次回はもうちょっと救いのあるお話を投稿できたらなあ。と思っております。
最後まで付き合ってくれた方、ありがとうございます。
注)ゼルガディスの最後のセリフは、某ガンダムパイロットの流用ではありません。と、思う。

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8177はじめまして一坪 E-mail 2002/3/1 22:10:37
記事番号8174へのコメント

投稿ありがとうございました!

ダークなゼロスさんがカッコイイですねー。
うーーん、ただでさえ死ぬほど感想文が苦手なのでダークな小説はどう感想を書いたらいいのやら……すみません。


次回作ガンバって下さいね。

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8187Re:はじめましてとーゆ 2002/3/3 22:46:29
記事番号8177へのコメント

コメントありがとうございます。
そーっすねー。だーくっすねー。はてしないっす。
いや、実は俺も感想文は苦手で……
次回作は救いのあるお話をと思っております。
また、よろしく。