◆−BE PARASITIC NIGHTMARE 4−あんでぃ (2002/3/3 14:08:49) No.8181
 ┗BE PARASITIC NIGHTMARE 5−あんでぃ (2002/3/3 14:23:19) No.8182
  ┣BE PARASITIC NIGHTMARE 5 −G&R−−あんでぃ (2002/3/3 14:32:52) No.8183
  ┗BE PARASITIC NIGHTMARE 5 −R&S−−あんでぃ (2002/3/3 14:49:07) No.8184


トップに戻る
8181BE PARASITIC NIGHTMARE 4あんでぃ E-mail URL2002/3/3 14:08:49


どうもです。あんでぃです(> <)
前のツリーが落ちるのを心待ちにしてみたりしてました(笑)


あんでぃは気に入った曲を元に話を書いちゃう傾向がある人間なのですが、今回元にしている歌がわかる方いられるでしょうか?
ちなみにこの話を書いたのは去年の今ごろだった気がします(笑)


4話です。どうぞ!
===========================================














          ―――――確かにひとつの時代が終わるのを僕はこの目で見たよ

                 だけど次が自分の番だなんて事は知りたくなかったんだ――――――




















BE PARASITIC NIGHTMARE 4

















真夜中の小さな池に攻撃呪文の花が咲く。
「火炎球(ファイアーボール)!!」

どーん

「またまた火炎球(ファイアーボール)!!」

どどーん

「そしてまたまた火炎―――」
「――――――いいかげんにせんかっ!!」

すぱーん!?

「ひぇっ!?」
えんえんと火炎球(ファイアーボール)の呪文を唱えつづけていた少女は、一人の青年のスリッパ攻撃にあっさりと吹っ飛ぶ。
「痛い。ついでに呪文今のでちょっと暴走しちゃった・・・・・手が火傷してる・・・・・・・何すんの!!」
涙目で少女は青年―――――グリーブに抗議をする。



青年の名はグリーブ=グリス。
リナの父親を剣術の師と仰いでいる魔法剣士で、リナと―――もう一人は今セイルーンにいるはずなのだが、その三人とグリーブで幼馴染み。
攻撃魔法にも長けている魔法剣士(余談だが、攻撃呪文の師匠はリナの母)で茶髪に青い瞳をしていてなかなかきれいな顔をしているし初対面の人間には礼儀正しく結構好青年、しかし猫の仮面を外すと結構口の悪いヤツである。

そして彼が背中にさしている剣もただの剣ではない。リナ=インバースとガウリイ=ガブリエフによって発見(?)された伝説の魔剣ブラストソードである。
この剣は継承を拒否したリナの代わりにグリーブが継承した。グリーブの師曰く『せっかくのいい剣なんだ、使わないで飾ってるだけっつーのももったいないだろ?減るもんでもないしお互い知らない仲でもなし、何にも言わずに使えや』とのことだ。
もちろんタダでくれるわけがない、だからそのかわりに自他共にリナ公認の保護者をやっているのだ。


「お前は、いくら研究って言っても自然破壊はするなって言われてるだろーが」
グリーブはは呆れ顔で完全に沸騰している池を視界の端に(直視できない)入れながら、少女――――リナにスリッパを返しそう言った。


少女、リナ=セイムネス=ガブリエフ。
希代の魔道士リナ=インバースの曾孫にして、格闘家である。
容姿は若い頃のリナ=インバースとうりふたつで、『"リナ=インバース"はやはり人間じゃなかった』という噂が流れたという微笑ましい事実もあるほどだ。
彼女は、以前セイルーンの王女である幼馴染みからもらったナックルを持ってさらに強力な格闘家になった。リナの毎晩にわたる研究によってこのナックルはリナが敵と認識するものにのみ、あの不思議な力を発揮する事がわかった。さすがは正義に命をかけていたと伝説のセイルーン元王女の武器というだけある。
そして小さい頃からセイルーンによく遊びに行っていたリナは、よく曾祖母やセイルーンの王族である幼馴染みについて魔道士協会に出入りし、魔法についてのことを聞かされていた。そんな事もあってさすがに魔法の知識、特に白魔法の知識は豊富だった。
彼女は魔法を曾祖母のように一度に大量に使えない、はずだった。今までは。


「お前、そんなにいっぺんに魔法連発して一人で帰れんのか?また運んで帰んのヤだからな。めんどくせぇ」
グリーブが欠伸をしながら言う。毎晩にわたるリナの研究に彼は完全に寝不足だった。何しろリナは限度を知らないのだ。
「む、あたしは付き合ってってたのんでないじゃない。帰ってゆっくり寝ていいのに」

ぴきき。

その言葉にグリーブの額に青筋が浮かぶ。瞬間、リナはしまったという顔で首を縮める。
「宿からそんなに離れてない所でこんな風に火炎球(ファイアーボール)連発されて、うるさくて、いくら慣れてる俺でも一人すやすや眠れるか!しかも毎晩毎晩呪文試した後その場で眠りやがって!結局お前が頼まなくてもなぁ、お・れ・がっ! 宿まで運んでるんだ!!大体なあ―――――」
こうなったグリーブは誰にも止められない。ここが外であったのがせめてもの救いである・・・・寒いが。これが宿の中だったらリナは他の客の人、一人一人にグリーブのようにお説教されているだろうから。


(グリーブがお説教に走っちゃう癖・・・・・忘れてた・・・・うかつだったかも)


リナはその場に正座したまま泣く泣くグリーブの説教を聞いていたのだった。
・・・・・・ちなみに彼が我に返ったのは朝日も見え始め、説教に疲れきった頃だったりする。


















「うう、おはよう」
「・・・・・・おう」
あれから、何とか機嫌の直ったグリーブと別の意味で疲れきったリナはやっと明け方宿に帰った。
それからお昼頃まで寝ていたのだが、明け方に徹夜して帰ってきたことで宿のおばちゃんにあらぬ誤解をされ、二人で焦っていたのは余談である。

「ねねね、グリーブ。次はどこに行く?私は急ぎじゃなくっていいから一回ディルス王国の方に行きたいんだけどな」
とりあえず、少し早い昼食ってことになるのだろう食事の注文をしてリナは尋ねた。
「そうだな・・・・・・・別に俺は行きたいところがあるわけじゃないし、良いんじゃないか?ゆっくりディルスの方に行くってことで・・・・・・くぁっ」
グリーブは瞼が閉じそうになるの必死に堪え、あくびをかみ殺し、そう答えた。一晩中怒り続けるっていうのは、かなり疲れるものなのだろう。
「・・・・グリーブ、ご飯食べてからもう一回ゆっくり寝たら?今から次の町に向かうには遅すぎる時間だし、もう一日この村にいたって問題ないでしょ?」
「・・・・・・そうする」



















「さてさて、お説教魔グリーブも寝ちゃったし、あたしは何しよっかな?」
昼食後、グリーブは寝るために部屋へ戻った。チロルはグリーブに相当なついたらしく、グリーブの頭に乗っかって、ついて行った。一人になったリナは村の中をうろうろ歩いていた。
宿がひとつしかないくらいのごく普通の小さな村なので、特にする事もなく退屈していた。そしていつの間にか来ていた村の外れの小さな広場。

「こんな場所でよくグリーブと遊んだっけ・・・・・・リゼア、元気かな?いや元気だろうけど。あそこまで元気だと王宮でおとなしくしてるのは性に会わないだろうなあ」
思わず昔いつも王宮の中で魔法の研究をして爆発を起こし、お付きの少年に怒られる少女―――リゼアを思い出す。

セイルーンの王女リゼア=ミルス=アクト=セイルーン、リナとグリーブの幼馴染みである。
政策のためリゼアには小さい頃からの英才教育がなされていた。たった一人の王位継承者なのだ、同い年の平民の友達なんてつくる事など許されないだろう。いや、それには語弊がある。つくるヒマがなかったのだ。
リナは曾祖父母がセイルーン王族と交友関係であったために自由に王宮に入る事ができたから結果的にリゼアと友達になったが、そのために多少教育の時間が削られた事になった。多少の時間なのにそれさえも王宮の重臣たちはいい顔をしていなかった。
そういう場所なのだ、リゼアが立っている場所は――――――――













王や王妃はやっぱり自分たちが王族という事以前に人として肉親として、仲良くなったリナやリゼアの事を喜んでくれたが。

・・・・・このままリゼアはずっと王宮という大人の作った牢の中に居続けるのだろうか?

「王様も王妃様も、リゼアのお母様もお父様もすごくいい人だし、リゼアの他に王位継承者がいたら継承問題でもめちゃうから結果的にはリゼア一人って事が国のためっていうのもわかるけど・・・・・・」
それでもリゼアとはこんな広場で遊んだ事はない。リゼアにはどこへ行くにも必ず護衛の少年がついていたから。
「リゼアにもやっぱり私たちと一緒に旅してもらいたかったな。絶対そのほうが人間としていい勉強になると思うのにな・・・・・・」
「本当にそう思ってますか?」
「もちろん――――――って、え?」
突然かけられた声に顔を上げる、そこには見覚えのあるようなないような青年――――
「―――――!?あなた・・・・・・・・もしかして?!」
金髪に近い茶髪に碧色の瞳、整った顔立ちの青年。
突然の出来事に混乱しそうになりながらリナはその青年を見つめていた。・・・・・見とれていたとも言うかもしれないが。






















「グリーブ?!グリーブ起きてー―!!」

ばぁん!げしっ!!がこんっ!?

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・んあ?」
「・・・・・・・扉」
ドアをぶち破って入ってきたリナに蹴られてベッドから変な体勢で落ちたというのに、まだ目が覚めきれていないのか間の抜けた声でグリーブは答える。女将さんの悲痛な呟きをリナはあっさりと無視すると興奮した様子でグリーブの首ねっこを掴み、かっくんかっくん・・・・・いや、がっくがっく揺さぶる。
「すごい!!すっごいのよグリーブ!さぁっ早く来てっ!ほらぁ!!」
ひたすら嬉しそうにそう言うが早いかリナはグリーブを引きずって食堂へ向かった。
「やっほっ グリーブ連れて来たよ!!ほら!」
「・・・・・・おう」
「これが・・・・グリーブさん?」
「なはは・・・・・・・・また寝ちゃったよ。ごめんねぇ、徹夜で今寝たところを無理矢理起こしたもんだから。自分で起きればこんな風にならないんだけどね。
・・・・・・・・・・・たぶん」
青年のグリーブを見て驚いたような問いにリナは苦笑してそう答える。
「まあ、気にしちゃダメです」
にっこりとサントスの隣りに座っていた少女もそう言った。


「んで、どうやって王様に話をしたの?」
リナはさっそく本題に入る。何しろこの青年がここに来た時点ですでに、魔族がリゼアの生の賛歌に感動の拍手を送る事ぐらいの怪現象なのだ。
「まあ、いろいろです。先に王妃様を説得して、それから王妃様に王様の方と一緒に話をしていただきました」
確かに王よりも王妃に話した方が早いだろう、なんと言っても王妃の方が今回ばかりは物分りのいい人だろうから。
リゼアによく似た(この場合リゼアが王妃に似たという方が正しいのだろうが)性格の人だけあって王妃は思い込んだら一直線、猪突猛進よりもタチが悪いとも言える人物だ。
「信用できる人に共に行動してもらおうということでリナさんとグリーブさんの名前が出たのですが、その途端に王様が必死の形相で反対なさいまして」
その言葉にぴきっとリナの顔が引きつる。


(確かに現王と現王妃はリナおねぇちゃんと旅してた事があるみたいだけど、だからってそんなに嫌がることないじゃない・・・・・人を天災みたいに)


青年はそんなリナの様子にも全く気にせずに話を続ける。
「まあ、確かにすごい人ですけど信用はできるということで、僕がボディーガードということでお供してもらおうと思いまして」
「すごいって・・・・・」
この青年は一体誰から守るつもりなのだろうか・・・・?
「って、なんで勝手に話が進んでんの!!」
「もしかして、断るおつもりだったんですか?」
リナの抗議の言葉に青年はあっさりと返す。解ってて聞いてくるのだ、人が悪い。極端に悪い。極悪と言ってもいい。というかそう言える、言ってやる。
「・・・・・・・・・・・・・断らないよ・・・ねぇ、グリーブ?」 
「・・・・・・おう」
その言葉にサントスの隣の少女―――――――セイルーン唯一の王継承者リゼアが飛び上がった。嬉しそうに、そして元気にテーブルの周りを一周するとリナに飛びついた。
「連絡も何もなしで来ちゃったのに、ありがとう!!これからもよろしくね!!リナさん、ついでにグリーブさん!!」
「うん、よろしくねっ!!って、こういうシリアスな状況でも起きないのねグリーブ・・・・殴っちゃえっ」
「あ、私もっ」
グリーブにひとしきり二人がかりで殴りかかった。どうせ起きないのだから、いいのだ、これで。
「ふう、すっきり♪」
「爽やかな汗ですねっ!!」
そして、思い切り笑いあった。
「じゃあ、改めて。俺はリゼア様に同行する事になっている、サントス=イージェアです。以後よろしくお願いします」
サントスと名乗った彼はリナとグリーブに礼儀正しくお辞儀をした。
もちろんリナはサントスの事を知っていた。小さい頃からいつもリゼアのそばにいて、危険な遊びをしようとするおてんばなリナとリゼアをグリーブと共に叱っていた少年だ。


そうだ・・・・・・忘れるわけはない。恨みつらみはごまんとある。


「あたしたちの自己紹介はいらないわよね?よろしくサントス!!・・・って、あれ?・・・・・でも、イージェア?」
「森の管理していたモリーウンさんの息子なのよ」
不思議顔のリナにあっさりとしたリゼアの言葉が疑問を解消した。
「でも、似てないね」
「よく言われます」
リナの失礼な物言いに、苦笑してサントスは答えた。
「さて親父――――もとい、父さんの話はともかく、次はどこに行くんですか?」
「・・・・そうだね、とりあえずディルスへ――――リナおねぇちゃんの全ての伝説の原点へ」
サントスの問いにリナは迷いなくそう言った。
ディルスがリナの疑問の原点へつなぐ第一歩であるとも言えるような気がしたのだ。



銀色の水晶、これがあたしの全ての原点になり、疑問が解けるのなら、
あたしはディルスに行く義務がある。
義務はこれから探すんじゃなくって、もうすでにあるものだろうから。人間が、生まれた時から持っているものだから――――――
そう、リナおねぇちゃんの過去を完璧に知る事から始めてみよう――――――――





















私たちは確かに今かつての時代が終わって、新しい・・・・・・自分たちが動かすべき時代がやってきている事を知っている。

だけど、本当はそのことに気付きたくなかったんだ―――――――――――――

責任だらけの、義務にまみれている、大人になりたくなかったんだ―――――――――――――













トップに戻る
8182BE PARASITIC NIGHTMARE 5あんでぃ E-mail URL2002/3/3 14:23:19
記事番号8181へのコメント

ゴスペラ―ズが踊ってる?!などと衝撃を受けつつ(何故)珍しく微笑ましく(?)めでたくあんでぃは連続投稿でし♪
というわけでこんにちはvv あんでぃです。

デーモン大量発生事件再来です。そして、勝手に考えた設定が飛び交っております(^ ^;
そんなの許せない!!という方、本当にすみませんです(汗)


============================================














ディルスへ―――――
あの可能性を解明するために・・・・・
もしかしたら知りたくない事まで知る事になるかもしれないけど・・・・・・






















BE PARASITIC NIGHTMARE 5


























「リナさん?」
はっ
突然リゼアに呼ばれリナは慌てて振り向いた。そしてぎょっとして炎の前に落ちた自分の髪の毛―――――多少不自然な癖のついた栗色の髪を慌てて後ろへやる。危ういところで焦げなかった事を確認してほっとする。
「何?」
ディルスへ向かう街道の中の森。リナ、グリーブ、リゼア、サントスの四人はあっさりと道に迷い、そして野宿である。そして今、グリーブとサントスは薪拾いに行っている。
「何ぼーっとしてるんですか?そのまま行ったら火に顔つっこんじゃいますよ?」
「あ、うん。ちょっと考え事」
リゼアのセリフにリナは答える。大丈夫ですか?と心配するリゼアを何とかなだめてリナはそっとその場から抜け出した。





誰かに話せたらどれだけ良いだろう。
しかし・・・・・話して、もしも許してもらって、そうしたら自分の罪は消えるの?

ならば、話すべきではない。
あたしの罪は消す事ができるほど、甘いものではないのだから―――――――






「リナさん、最近様子がおかしいですね・・・・・・」
「昔からずっとああだよ。・・・・・・・つい最近まで少し治まってきてたんだけど、旅に出てからまたおかしくなってきたな」
リゼアの心配したようなひとり言に答えたのは薪を両手いっぱいに抱えたグリーブだった。
「昔から・・・・・ですか。私全然気付きませんでした・・・・・」
グリーブのセリフに落ち込むリゼアを見て、慌ててグリーブはサントスに目配せする。グリーブの隣に立っていたサントスは持っていた薪をその辺りに置くとリゼアの頭をぽんぽんとなぐさめるように軽く叩いた。
「気が付かなくて当然なんだよな、俺だってはっきりリナの様子が変だって確信してるわけじゃないし。ただ、俺がそう思ったのは昔の経験から、な」
グリーブはバツの悪そうにそう言うと頭をがしがしとかく。
「たぶん俺のせいだろうからなぁ・・・・」
「・・・・・・・理由の程はわからないけど・・・・・・・」
グリーブにそれ以上は語る様子が無いことを見て取ると、サントスは立ち上がった。にっこりと微笑んでリゼアとグリーブの二人を見つめた。
「そういう事なら、俺がリナさんを探しに行くよ。というわけでグリーブさん、その間リゼアをよろしく」

言いたくない事は言う必要はない。信用の置ける人間に、言いたくなった時に言えばいい。
――――それが彼の考えであった。













「サントス、気を使ってくれたみたいですね・・・・・」
リゼアが小さくつぶやいた。リゼアの顔からは、気を使ってくれたサントスに対する喜びと、ほんの少しの申し訳なさそうな表情が見て取れる。
「私の事をいつも一番に考えてくれるんですよ、彼は。私を旅に出してくれたのだって、きっと・・・・・・」
「きっと?」
そこまで言ってからグリーブはしまったと顔をしかめた。リゼアは王族だ。それである程度の事は予想するべきだったのだ。そして、理解するべきだったのだ。

訊くべきではない、ということを――――――――


「・・・・・いいえ、それはいつかお話します。グリーブさん、リナさんは一体どうしたんですか?昔にも似たような事があったってどういうことですか?私も一応リナさんとグリーブさんの幼馴染みです。聞かせてくだいさい」
サントスの歩いていった方をしばらく見つめていたが、ややあってこちらに真正面から向き合う形になる。リゼアのとめどない質問攻撃にグリーブは観念したようにため息をつくと、話す覚悟を決める。何処から話すべきか・・・・・・・・・頭を悩ませる。

「そうだな・・・・・リゼアが疑問に思って当然のことなんだよな。今まで頻繁にセイルーンに遊びに行ってたのに、一時期全然遊びに行かなかった時期があっただろう?」
「はい、すっごく淋しかったです」
リゼアのきっぱりとした返事に・・・・悪い、あれは俺が原因なんだ。とグリーブは申し訳なさそうにつぶやいてから続けようとした―――――しかし、グリーブは続きを語ることなく無言で立ち上がる。
リゼアも普段でだったらその態度に怒っていたかもしれない。しかし、今は違った。

「―――――この話の続きは、後にしても許してくれるか?」
「まあ、仕方ないですよね」
グリーブは背中から剣を抜きつつそうつぶやく。リゼアも普段使っている杖(ロッド)を構えながらその問いに答える。ちなみに懐から取り出したピンクのメガホンを首にかけた事がグリーブは少し気になるが、リゼアにそのことを指摘する気力はなかった。後が怖い、というのももちろんあるのだが、もうこちらに遠慮なく殺気を向けている相手はいつ襲ってきてもおかしくない状況でもあったからだ。
「こっちもけっこうたくさんいるな・・・・・それにリナたちの方にもけっこう行ってるみたいだ。あいつら大丈夫か・・・・?」
「大体は大丈夫だと思いますよ。サントスは強いですし、もちろんリナさんも強いですし。だから、今はとりあえず自分たちの心配をしましょうか」

刹那、殺気が一気に膨らんだ。




























「リナさん」
森の中からどうやって見つけてきたのか、サントスはリナのところへやって来た。
「・・・・・・サントス?どうしたの、リゼアの事ほっといていいの?」
「えーっと・・・・大丈夫だと、思う。グリーブさんもいるし」
リナの言葉にサントスは複雑そうに答える。それに、とサントスは続ける。
「リゼアから聞いたんだけど、結界に守られているセイルーンですら魔族に襲撃されたんだ、一人でいると危ないだろ?だからグリーブの代わりに来たんだ」
言うとリナの隣に座る。そういえば・・・・・・と、リナは思う。

「そういえば今回あたしたちが王宮へ行った時、リゼアにも会いに行ったのにあなたには会わなかったわよね?いつもならリゼアとサントスがセットで出てくるのに」
「セット・・・・・・・って」
多少語弊があるかもしれないが、確かに小さい頃からリゼアと遊ぶ時は必ず護衛である彼もついて来ていた。だから彼のことをグリーブのリナも小さい頃から知っていたのだ。だから彼の事も幼馴染みと言ってもいいかもしれない。
「あの時はちょっと王たちの説得中だったからな・・・・・王宮の中ならある程度は安全だと思ってたけど、甘かったな・・・・・」
どうやらリゼアが旅に出ることをすすめたのはサントスらしい。その説得をしている間に襲われたのが彼にとっては悔しいのだろう。
「えっと・・・・・・ねぇ、ところでサントスってその剣が武器なの?」
なんとなく嫌な事を思い出させた事に罪悪感があったのか、リナは慌てて話題を変え、前から気になっていたサントスが腰にさしている剣を指差す。
「うん、まあ。でもこれは剣だけど剣じゃないんだ。リナさんのナックルと親戚みたいなもんだよ。」
「親戚?」
詳しい事はきっと戦闘の時に全てわかるよ。そう言うとサントスは立ち上がる。

「そろそろ二人のところに戻ろう。考え事もいいけど早く戻らないと心配してるよ。それに、たまには何も考えないで感情だけで動くってのも良いんじゃないか?」
「・・・・あたしには、できないんだ。しちゃいけないんだ」
「?」


感情で動く事、それはできない。それは自分が何よりも禁じた事だから・・・・・・・・


リナはひとつため息をつく、本当のことを言えばこんな場面で落ち着いていられる状況ではなかった。
そう、もうすでに二人の周りは囲まれているのだから。
「この分だと、やっぱりリゼアとグリーブさんのほうにも行ってるんだろうね。かなりの数が」
「そうかもね。でも、どうにかなるんじゃないかしら?あの二人だし。どっちかっていうと『かよわい』あたしがいる分こっちのが不利って感じじゃないかしら?」
「一応リゼアの方が非力だよ」
リゼアのフォローをしている筈のサントスが『一応』とつけてしまうあたりとても説得力の無い事なのだが。
「あの子には歌があるもん。広範囲で無差別で最強の音波攻撃がね」
いまだに立ち上がろうとすらしないりナはサントスにあっさりとそう言った。リゼアの歌は確かにお世辞にも上手ではないが、さっぱり上手ではないが、はっきり言ってド下手であるが・・・・・・・・・・それで生きとし生ける者、そうでない者、全てのものにダメージを与えると暗に言われていることに対して本人が居合わせたらさぞかし怒っていただろう。
今自分たちの置かれている状況が決して良いわけではない事はすでに二人にも分かりきっていた。


(こんなところでこんな集団に囲まれるなんてね・・・・・しかも、こいつら突然現れたわよね?でなきゃ囲まれるなんて事はそうそう無いもの・・・・・)


「・・・・・って事は瞬間移動でもしてきたわけ?誰の差し金よ!! もう!!あたしそんな人に恨まれるような事まだしてないのに・・・・・」
「まだ、っていうのが大分気になるんだけど」
リナの言葉にサントスはジト目で見つめる。
「まあ・・・・・ほら!自分たちの心配しよう!って、こんな場合なのよっ!!何よネタ帳って?!」
「あとで役に立つんだよ」
「何によ・・・・・・もう」
リナはゆっくりと立ち上がった。サントスにすべてを任せるつもりだったのだが、少しこの後が不安になったのだ。

殺気は少しずつ膨れ上がる。
臨界点は近い。





















===================================================
つ、続いてたりして(汗)

トップに戻る
8183BE PARASITIC NIGHTMARE 5 −G&R−あんでぃ E-mail URL2002/3/3 14:32:52
記事番号8182へのコメント
グリーブとリゼアペアと、リナ&サントスペアに分かれます。時間的には二つの話は同時進行なんですが、話の流れ的にはグリーブたちの方を先に読んで欲しいなぁと思います(なら普通に投稿すればいいのに)

ちなみにここを5話としていますが、このグリーブ&リゼア、リナ&サントスの二つの話も含めて全14話になっとります(言い訳)

では、どうぞです

=================================================















「グリーブさんちょっと離れていてください」
リゼアはそう言うとロッドを掲げ呪文を唱え始める。グリーブはその呪文の正体を知ると慌ててリゼアの近くに駆け寄る。


ぐるぉぉぉぉん!!


リゼアの様子に気がついたのか辺りを囲んでいたレッサー・デーモンがいっせいに炎の矢を生み出す。

「炎呪封殺(フレア・シール)!!」

グリーブの唱えた防御呪文がデーモンの放つ無数の炎の矢を吹き散らす。
デーモンが炎の矢を撃ってくる事はもはや予想済み。かなり詠唱時間の長いこの術だが、予想が出来ていれば呪文の長い耐火の魔法でも使う事は簡単だ。それにこの魔法は降ってくる炎の熱さえ感じないほどの強力な術なのだ。

「雷花滅吼(ラザ・クロウヴァ)!!」

リゼアが呪文を開放する。
無数の小さな光の粒がブリザードのように相手に向かって吹きつける、精神と肉体双方にダメージを与える攻撃呪文だ。
この呪文はかなり命中率の高い呪文で、よほどの体術がないとかわす事は不可能。
そんな問答無用の呪文があたりにいたデーモンたちを吹き散らした。
今のでかなりのデーモンを倒したが、それでもまだ囲まれている。このままではさすがにリゼアとグリーブでもマズイ。グリーブは急ぎ呪文を唱える。

「爆裂陣(メガ・ブランド)!」

グリーブが唱えた呪文で大方のデーモンが吹き飛ぶ。この呪文でデーモンたちを倒す事はできないが、これで狭まっていた輪が崩れる。その隙に倒れたデーモンの横をリゼアとグリーブはすり抜ける。

「黒妖陣(ブラスト・アッシュ)!」

すり抜けざまにグリーブは呪文で何体かのデーモンをブラストソードで切り滅ぼす。これでかなりの数のデーモンを倒せたし、囲まれていないため戦いやすいがまだそれでもあと五体のデーモンがいた。


ぐるぉぉぉぉぉぉん!!


デーモンは再び雄叫びを上げると、無数の炎の矢を放ってくる。
「誘蛾弾(モス・ヴァリム)!!森の中で火を使うなんて、あなたたちは悪ですね!?そもそも―――――」
「それは今さら言うセリフじゃあないぞ」
リゼアの消火のための呪文を放った後に始まった正義の演説をグリーブはあっさり止めると、そこではじめて剣を抜く。
「それじゃあ、あとはお願いします!!」
正義の演説を止められてぶーたれていたリゼアが一変して笑顔でグリーブを送り出す。
あっさりと残りをまかされたグリーブはひとつため息をついてから、残りのデーモンの殲滅にかかった。




























BE PARASITIC NIGHTMARE 5−1





























「ご苦労様でしたー!!」

ぱちぱちぱちぱち

それからほとんど時間が経たないうちにグリーブはデーモンたちを一掃した。リゼアから送られた拍手にグリーブはまたひとつため息をつく。
「最近リナに似てきたぞ、お前」
「そういう事言うとリナさんに言いつけますよ」
・・・・・グリーブはリゼアに勝てない事が判明した。
「さあっ!さっきの続きをお願いします。どこがどう、グリーブさんのせいなんですか?」
とりあえず、三秒前の事は忘れてくれたようだった。その事になんとなくほっとしながらグリーブは記憶の糸を紡ぐ。

「・・・・・俺が十二歳の時、俺の家族が死んだのは知ってるよな?」

「・・・・はい」

「それでその時に俺が荒れたのも知ってるよな?」

「・・・・・・・はい」

リゼアはなんて答えたらいいか分からずに、それでも正直にうなずく。
「確か、父さんたちが死んだのは祭りの前だったか?夏の暑い日だったな・・・・んで、その一ヶ月前からリナと祭りにいく約束してたんだよな。でも、俺はその約束を破った。約束の場所に行かなかったんだ・・・・・」
グリーブはその時の詫びはきちんとしたが、その事についてはリナは覚えているわけもないだろうし何より照れくさいので言わないでおいた。
「・・・・その時のリナさんと、今のリナさんが同じような様子だってことですか?まあ確かにその昔の方は、グリーブさんのせいで落ち込んだんでしょうからグリーブさんが悪いですけど」
「その通りだけど・・・・お前、毒舌だなぁ・・・・・慰めるとかしろよ。義理でもさ。まあ、とにかくそんな感じがするな」
リゼアの辛口発言にグリーブはちょっとこけるが、間違ってはいないのでうなずく。
「でも、今回はどういった理由でリナさんが落ち込んでいるかまでは分からないんですね?」
リゼアの言葉にグリーブはうなずく。役に立たないですね。と再びばっさり切り捨てられ再びグリーブは落ち込んだりもしているが。
「それだったら本人に聞くしかないですよ。答えてくれるかは分かりませんけど、いざとなったら力づくにでも聞き出しますから。」
そう言うと、リゼアは立ち上がって辺りを見回した。じゃあ、早く戻りましょう!!とすたすたと歩き出すリゼアをグリーブは黙って見つめた。


(俺には絶対真似できんな・・・・・まあ、だからこそリゼアがいてくれてよかったのかもな)


リゼアの決心のこもった言葉を聞いてグリーブはそう思った。リゼアはやっぱり怖い・・・・・と心の中でつぶやきながら。

















『リナさーん、サントスー!!どこにいるんですかー?』

ピンクのメガホンを使ってリゼアが森に向かって叫ぶ。
「こういう場合って、動かないでじっとしてたほうが良いんじゃないか?」
グリーブとリゼアはあれからすっかりはぐれてしまったリナとサントスを探していた。と言っても、グリーブはめんどくさそうだが。
「グリーブさんは二人が心配じゃないんですか?!二人の方にもたくさんデーモンが行ってるって言ってたじゃあないですか!」
グリーブの態度に腹が立ったのかリゼアはグリーブを睨みつける。その様子にグリーブはめんどくさそうに手をぱたぱたと振る。
「そんなに心配しなくても、もうこの森にデーモンの気配は一体もねえよ。ただでさえさっきデーモンが出てきて暴れたせいで方向感覚が無くなってるんだ、闇雲に動くと二人を見つけるどころか完全に道に迷うぞ」

「そんなの、グリーブさんのカンで進めばいいんです!!」

「俺をガウリイさんと一緒にすな!?俺のカンは時々はずれるんだよ!!」
びしぃ!とグリーブを指差して言うリゼアにグリーブが怒鳴りつける。それでも時々しかはずれないのはすごいと思うが。
「・・・・・とにかく、早く二人を見つけるぞ。こんなところで、こんなことしてたら夕飯くいっぱぐれる」
「最初っからそう言ってるじゃないですか!!もう、もし夕ご飯が食べれなかったら・・・・・・・ぜんっぶ!グリーブさんが悪いんですからね」
リゼアに理不尽な事を言われグリーブは今日になって何回目か・・・落ち込んだが、それでも再びカンに頼って歩き出す。
もう少しで日が暮れる。リゼアとこんな所で遊んでいるヒマはない。

急がなくては。

















================================================
ま、まだ続いたりして(殴)

トップに戻る
8184BE PARASITIC NIGHTMARE 5 −R&S−あんでぃ E-mail URL2002/3/3 14:49:07
記事番号8182へのコメント

ま、またやっちまっただー(泣)ミス投稿(汗)

タイトルで、リゼアのRとリナのRがかぶっていますが、気にしちゃいけませんです(最悪)
すみませんすみません(平伏)でわ、どぞ。


===================================================












もうすでに二人の周りは殺気に包まれていた。それでもこの二人は慌てない。
「ね、サントス。その剣の正体って戦闘の時に全部分かるって言ってたわよね?」
「ああ、そういったな」
のんきにリナが準備運動などしながらサントスに尋ねる。急にまわりが揺れたことでびっくりしたのか、今まで寝ていたチロルがリナのフードからひょこっと顔を出す。
リナの問いに軽く答えてサントスは腰にさしていた剣抜く。そして彼は刃を外したそれを力任せに折った。さすがにその行動にはリナも驚き思わず声をあげた。
「うそ!!壊しちゃっていいの?」
サントスの手の中にある武器はくの字型に折れ曲がる。
サントスの武器が折れたことで焦ったのは当の本人のサントスではなく、リナだった。しかしサントスは慌てることなく辺りの様子を窺う。


(うう、せっかく全部サントスに任せて木の上で待ってようと思っていたのに・・・・武器が壊れちゃったらどうにもならないじゃない。サントスの馬鹿)


なにやらあくどい事を考えていたリナは、心の中で涙しつつ手にはめていたグローブを外す。グローブを外してみたものの、リナはできるだけ手を使って戦いたくなかった。


(一人だけで、しかも足技だけでこの人数は何とかなるかなぁ?ならないよねぇ・・・魔法は力尽きちゃったら本末転倒だし。やっぱ手、使わないとだめかぁ・・・・)


げしげしっ!

悲しみつつもうすぐそこまで来ている殺気の主、レッサーデーモンを思い切り蹴る。もうすでに囲まれている。その輪が縮まらないうちにこの包囲網から抜け出す必要があった。
「リナさんは誤解してるみたいだけどさ、壊れてないよ。もともとこれが本来の形なんだ。さっきも言ったけどこれは剣じゃない―――――――弓矢だからね」
がこっ
サントスはリナに向かって軽く答えるとその弓でデーモンを殴りつけ、囲まれていたその場から抜け出す。そして――――
「光よ!!」
まるでかつての光の剣士を思わせる言葉を叫ぶと、弓からあるはずもない光の弦が出現する。
サントスは無数の矢をつがえる連想をすると弓から無数の矢が現れる。サントスは弦を引く手には力は篭めず、しかし精神は一点に集中したままで、ぎりぎりまでひきつけたあと、放つ。サントスの放った無数の矢は不規則な動きを見せ、そのうえことごとくがデーモンに突き刺さり、あっさりと全てのデーモンが倒れていく。
そんな中リナはサントスをぼーぜんとして見つめていた。




















BE PARASITIC NIGHTMARE 5−2




















「それ!!それってもしかして伝説の・・・・?!」
我に返ったリナはサントスの武器を見て、かつて自分の曾祖父が手にしていたという伝説の武器の仲間を連想する。しかし、あれらはもうこの世界にはないはずだ。
「これは、リナさんのナックルと同じだよ。黄金竜のたちとエルフの人たちが共同制作した武器のひとつだそうだから」

サントスの説明によると現在セイルーンには彼らから譲り受けた武器が四つあるそうだ。



リナの持っているナックル。
サントスの持っている弓矢。
リゼアの持っている杖。
そしてセイルーンに安置されている鎌。



それぞれにみんな特徴の異なる魔力が宿っており、魔族が原因による諍いの多いセイルーンのためにかつての王たちと親しかった黄金竜が制作してくれたものだった。
そしてその中でもサントスの持つ弓は異界の魔王の武器を模して作ったものなのだ。
「普段はただの棒切れだから、刃を付けて剣にしてる。リナさんの曾お爺さんが持っていた伝説の剣みたいだろ?」
冗談のようにそう言って、笑ってサントスは剣の形状に戻した弓矢を腰に納めた。
「これってセイルーンのために作られてる武器なんでしょう?あたしたちが持ち出しちゃっていいの?」
リナがふとした疑問をもらす。リゼアの護衛であるサントスはともかくリナにはこの武器を持って行っていい理由がない。
「これは何でも持ち主を選ぶらしい。と、言ってもそんなに厳密でもないらしいけど、それでもリナさんのナックルや俺の弓矢は敵味方を判別するだろ?それと同じように持ち主の事もある程度選ぶらしいんだ。そうじゃなきゃこんな強力な武器がセイルーンに置いておける訳無いだろう?」
先ほどサントスが放った大量の矢は、デーモンのまっただなかにいたリナをきれいによけすべてがデーモンに突き刺さっていた。それはサントスの腕がいいという理由だけでもないらしい。

なるほど、言われてみればそうかもしんない。

サントスの言葉にリナはあっさり納得した。
セイルーンは諍いの多い国だ。それも魔族などが絡むことも少なくない。そのために魔族に対抗する武器が必要なわけだが、そのための武器を悪用されてはミもフタもない。
そのために黄金竜たちはこういった部分を判別できる『目』をつけたのだろう。
「それにこの武器たちも、リゼアも、息苦しそうだったからな・・・・あそこにいるのは」
「?」
サントスの言葉の意味がわからずにリナは首をかしげる。 
「リナさんたちは知らないか・・・・リゼアが王宮の影でなんて言われているか・・・・」
「どういうこと?」
リナは眉をひそめる、何のことだか分からない。リゼアは影で何かを言われるような子ではないのだから。正義オタクという事以外は。

「・・・・・・知らないならそれでいいんだ。むしろ知らない方がいいだろうし」
サントスはその場に座ると、機嫌悪そうにそう言った。
「リゼアは王宮唯一の継承者だ。絶対にその身に万が一があってはいけないし、将来愚王になってもいけない。でも、リゼアは絶対に立派な王になる。もちろん、そうなる才能もある」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
サントスの言葉に、リナは何も言わずに耳を傾けた。
「才能だけあったってだけなら、確かに別に何もすごいもんじゃない。才能はあっただけではダメだ、そのまま開花しない事もある。じゃあ、その才能を開花させたリゼアの努力はどうだってんだ?!」
サントスは相当腹立つのか、吐き捨てるようにそう言った。




彼女の人生はいつも大人の事情で埋め尽くされ

求める事は許されずただ求められる。

それなのに彼女は怒る事も、悲観する事も無く

ただ、其処に在るばかり。




「・・・・・・だから、リゼアを王宮から連れ出したのね?」
「うん・・・・・まあ」
「リゼアが大好きだから、あんなところにおいて置けないと思ったんだもんね♪」
「げっ・・・・・ちょっ!!」
にこにこ微笑むリナにサントスは真っ赤になり、慌てたように言う。
「この事を話したって事はリゼアには内緒にして欲しいんだ。王宮の事はリゼアにとって思い出したくない事だし」
「・・・・・・リゼアにはなんて言ってあるの?王様に説得した内容は」
「国を継ぐには、周りの国の現状や下の者の事も知る必要があるって事で」
「んで、本当はあの息苦しい国から抜け出すために・・・って事なんだ。大嘘つきだねぇ」
照れるサントスににこにこ顔でリナは告げる。
リゼアの付き人がこんな人間で良かった。たった一人でも王宮で信用できる人間がいれば、それだけで気分はだいぶ違うだろうから。と、心からそう思いながらもそれは全く表情に出さずに。
「で、内緒にしてくれるのか?いや、してくださいますか?」
「ん〜♪どうしようかなぁv」


(本人の口から聞くまでは、リゼアには知らないフリしてた方がいいよね?うん、きっと)


口ではサントスをからかいながらもリナはリゼアにこの事を話すつもりがなかった。それでももちろんリナは、『からかえる人はからかう』という曾祖母からの教えを忠実に守っていたが。
「むぐぐ、そっちがその気ならこっちだって・・・・」
サントスは悔しそうにリナをにらむとリナの手元をちらりと見た。その視線に気がついたリナは慌てて左手を隠すが、時すでに遅し。サントスはにやりと笑う。彼の左手には”ネタ帳”が、右手には羽根ペンがきっちりと握られていた。
「リナさんこそ、その手のものは何かなぁ〜?指輪はめて相手を殴ったら自分が痛いだろ?格闘家なのにどうして外さないんだ?」
サントスは不意にまだグローブをはめていないリナの左手を取ってそう聞いた。・・・・・ナックルの影に隠れていた指輪を見つけるとは、サントスもなかなか侮れない。
「や・・・・それは」
「さっきもほとんど手使ってなかったなー。足技だけだ」
「うう・・・・・分かった、さっきの事はリゼアには内緒にするわよ・・・・・」
にこにこ笑顔のサントスに畳み掛けられたリナは降参する。
「それよりその指輪が誰からもらった物なのかの方が気になるな〜♪ 内緒にされると余計みんなに指輪の事言いふらしたくなっちゃうかもしれないな〜v」
にこにこ顔でさらに詰め寄るサントスにリナは顔を引きつらせる。
サントスもリナより一枚上手の『からかえる人はからかうべし』モットーの人間のようだった。彼もかつてはリナと同じ人間から教育を受けていたのだから、当然といえば当然といえる。そう、『これ』は深入りしてはいけない人種だったのだ。自分の浅はかさ加減を恨みつつ、無駄だと思うがリナはとりあえず嘘をついてみる。
「・・・・・・・自分で買ったのよ」
『みなさ〜ん!!ここにいるリ――――――』
「あーーーーーっ!!・・・・ぎゃ〜〜!!やめてー!!」
風の呪文で声を大きくしたサントスの言葉をリナは慌てて遮る。サントスはにーっこりとリナに向かって微笑む。・・・・・こういうのを悪魔の微笑み(デビルスマイル)というのかもしれない。
「俺、本当の事知りたいな♪」


(こいつもグリーブと同じで猫かぶり男か・・・・・・・あたしの周りの男ってなんでいつもこんな感じなの・・・・・?)


心から涙しつつリナは頭を抱えた。



















「昔ね、いろいろあって一時期グリーブが荒れたのよ・・・・・・」
結局負けたリナは言いにくそうに、というよりもかなり恥ずかしそうに視線をそらし、頬を紅くしながらサントスにそう言った。
「あたしはそんなグリーブにどうしたらいいか、わかんなくて・・・・・それでも、最後にはちゃんとあたしたちの所に帰ってきてくれると思ってたし、お祭りに行く約束してたんだよね・・・・だからずーっと約束の場所で待ってた。二日間あるお祭りの間、ずっとね・・・・」
指輪を見つめながらそう言った。
サントスは何も言わずに聞いていた。グリーブが荒れた理由というのにも心当たりがあったが、リナがあえて語らなかった事から自分もあえて聞くのをやめた。
「んで、二日間ずっと待ってたあたしにグリーブがお詫びに買ってきてくれたのが、この指輪」
「そのグリーブさんからのプレゼントを今までずっと大事に持ってたんだ」
にやり、と笑ってサントスが聞き返す。
「なっ・・・・・!?昔はこの指輪、ゆるかったのになんだか最近サイズがぴったんこになったから・・・・・だからなんとなくつけてるの!!そうじゃなきゃこんな安物の指輪なんてつけてないわよ!!」
必死に両腕をバタバタ振り回しながら弁解するリナをもう少しからかいたいという衝動を何とか抑えて、立ち上がった。リナに手を差し伸べながら言った。
「わかったよ♪これで交換条件だ。お互いにこのことは内緒だな」
サントスのその手をリナが取れば交渉成立。リナに選択権は、無い。


(この人、敵にまわせないわ・・・・・説得された王様も気の毒ね・・・・)


リナはサントスの手を取り立ち上がりながらそう思った。
























何はともあれ、いろいろいぢめられたが、リナはサントスが今の自分の気分の事を何も聞かない事に感謝していた。
どうしてこんなに気が重いのか、自分でも理由がはっきりとは分からないものを人に説明する事はできない。あの目覚めの悪い夢がこんなに気分を悪くさせるのか、そう聞かれても首をかしげる事しかできない。
他にも何か理由がある気がするのだ。今の気の重さとはまた違う苦しさみたいなものが。




人は誰もが皆 何かを背負ってる

だけどふとよぎる不安 消せやしないよ




そう、人は皆大きな事、小さな事、とにかく人それぞれの何かを背負って生きてる。
疑問、不条理、罪の意識、宿命――――――

それでも自分たちが生きるのは――――――刹那であっても嬉しい事、楽しい事が、ずっと背負うであろうものの辛さに勝るから。
自分たちの未来を自分が知る訳がない、それでも未来を創るのは自分たちだから―――――





















「あっ!!グリーブさーんっ こっちこっち、こっちにいましたよー!!リナさーん、サントスーっ!!」
不意に聞こえる元気な声にリナは慌てて手にグローブをはめる。そんななか姿を現したのはリゼアだった。周りに少し葉っぱをつけながらやって来たその姿は相変わらず元気そのものである。
「リゼア。こんなにどんどん進んでたら道に迷っちゃうんじゃないの?」
少しあきれながらもリナは笑顔だった。
「おう、迷ったぜ。さんざんな・・・・・・その原因の二人はどこまで行ってんだよ。探すのに苦労したじゃねえか」
ガラの悪いゴロツキがからんでいるかのような口調でグリーブはやってくる。その目に少しクマが出来ているのは、なぜだろうか?
「なんかデーモンが出てきちゃって大変だったんですから」
「ほとんど俺にやらせたくせによく言うな。お前」
リゼアの言葉にグリーブはかなりジト目でそう言った。
「あらら、やっぱそっちも襲われたんだね。あたしたちの方にもいっぱいきたわ。サントスが一人でやっつけちゃったけど」
グリーブについた枯れ葉を取りはらいながらリナが答えた。
「私たち全員が一斉に襲われるなんて、おかしいんじゃないですか?これじゃあまるで、おばあ様たちが旅している時に起きたデーモン大量発生事件みたいじゃないですか」
やはりサントスに葉を取ってもらっているリゼアが府に落ちないのかそんな事をつぶやく。
「ここらでそんな噂、聞いた事ないしな・・・・だから、誰かが俺たちを狙っているって仮定した方が自然だな」
「誰なんだろうね・・・まあ、その人が私たちを殺したかったのなら、今回それは失敗って事で。ふふふん、だ。ざまーみろ」
グリーブの言葉にリナは今もどこかで見ているかもしれない襲撃者――――まだそうとは決まっていないがーーーーに向かって、いーだ。をしたのだった。



























ばきいっ!!

静かなその空間に突如走る鈍い音。
「・・・・・・・・なんて生意気な小娘でしょう!!」
リナの『いーだ』を見ていた当の襲撃者は、怒りに任せて手に持っていた扇子を折った。自分がこんな娘に馬鹿にされるのは、彼女にとって身を切られるよりも辛かった。
その行動の所為で自分に苦痛が走るが、この程度の痛みはもはや怒りで感じなかった。むしろこの痛みがなければ自制を忘れる所であったかもしれない。
「しかし、あの小娘達の持っている武器・・・・・・面白いではないですか。ただ殺すのではなく、しばらく楽しませてもらいましょうか」
そう言うと手に持っていた扇子を軽くなでる。きれいに二つに分かれていたはずの扇子はもうすでに元通りに戻っていた。長い指でそっと水鏡を撫でる。

緩やかに波紋が起きた。

「グリーブ、あなたはなかなか良いわ。私をきっと満足させられる。さあ、早く」
妖絶な赤い唇はそっと三日月型にかたどられた。
「さあ、カタートへいらっしゃい子供達――――――――」






















================================================

ははははははははははは(汗)
とんでもなく伏線ばかりです(汗)いろいろ網張りをしつつ書いていたはずが、改めて読み返して忘れているところを発見。放置(こら待て)

さてさて、デーモン発生事件は彼女の差し金でした。彼女はこれからもきっといろいろ悪さをしてくれるでしょう。そして、彼女が今回の事件の元凶です。原因はリナですが。


こんなところまで読んでくださってありがとうございます(> <)ややこしいツリーですけど。これからもお願い致します!!

でわでわ、あんでぃでした!