◆−リップ−愛内鼎 (2002/4/14 16:57:33) No.8304


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8304リップ愛内鼎 E-mail 2002/4/14 16:57:33


――あたしは何も 間違ってなかったんだよね――






ピピっ……
PC(パソコン)から電子メールの到着音がする。

誰からだろう?こんな夜更けに。
不思議に思いながらもあたしはPCの前に座った。

「新着メールが一件アリマス」

そう表示された部分をクリックする。

カチッ…

あ・・・ゼロス……

  リナさん、お変わりはありませんか…?

…変わり…ね…
――ふぅ、と小さく溜息をついた。

  ロスでの生活は順調ですよ。一度こちらに来てはどうです?
  おいしい食べ物もたくさんありますよ

なによ、ひとを食欲魔みたいに。

  リナさんは今ごろは大学生でしょうか?

全く、それくらい覚えときなさいよね。
いくら1年もロスにいたからって、それはないんじゃないの?

  折角の貴女のバースディ、棒に振ってしまって申し訳ありませんでした

もういい。言い訳は聞き飽きた。

 プチ……

あたしはそこでメールを閉じた。
なによなによ……

――ピンポーン……

「あっ……」

あたしは慌ててドアに駆け寄った。

――こんこんっ

「あ、待って、今あけるわ。ガウリイ……」


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次の日、早朝、またメールが届いた。

部屋中が煙草の煙で満たされていた。
ガウリイはごろん、とあたしとは反対側のほうに寝返りをうつ。
彼の腕からようやく抜け出し、服を羽織ながらPCの前に座る。

――カチッ

  件名:どうかなされたのですか?

……別に、どうもしないわよ。
そう心の中で毒づきながらメールを開けた。

  昨日は何か悪い事でもしましたか?

…別に。
ぶっきらぼうに心の中で答える。

  昨日の手紙にも書いた通り……

……昨日の手紙?あぁ。ガウリイがくる前の……
何か書いてあったかしら?
遅めの誕生日祝ってくれるとか?ふふっ…まさかね。
そんな事できるわけないじゃない。

そうやって、画面をスクロールする。




           頭が真っ白になった。







    だって……
           だって……


           ――なんでっ!?










       「昨日は飛行機の中でしたが……


           ようやく会えそうですね、リナさん」


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ぜろすが……かえってくる……

嘘だよ。そんなことあるはずないもの…

だって、前に言ってたじゃない。

        「良い人を見つけましたよ」

って。
いってたじゃない。

だからしばらく、帰れない…って。

それって…それって…

        一体どういうことなのよっ!!



ピンポ―ン…

その音に、はっと我にかえるあたし。
…まさかゼロス…?
帰ってきたの?

しばらく、頭が働かなかった。

ピンポーン…

フィアンセでも、見せつけに来たの?

いやっ、いやっ!いやいやいやいやっ!!

あのドアを開ければ、絶望が待っている。
絶対帰ってこないと思ってた。だから、あたしはっ……!!

「――ナ…おいっ、リナ!」

肩を叩かれ、後ろを振り返る。
するとそこには不思議そうな顔をしたガウリィ……

「どうかしたのか?リナ」

――ガウリイを選んだ。

でもやっぱり、

「ガウリイ…」

想いは

「ごめん、帰って……」

くすぶり続けて

「リナ……」

消えなかった……


床にへたり込んだままのあたしから、PCの方へと視線を移す彼。
そして……

「リナさんっ!!」

出て行く足音、近づく足音。
そして、ドアが閉じられる音。


ほのかに、バラの香りがした……



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          ごめんなさい

ごめんなさい、ゼロス
あたしはあなたを裏切った。

「リナさんっ!?リナさん!」

あぁ、愛しい声。だけどもう、二度とあたしの名を呼んでくれはしないでしょうね。
今日を限りに、もう二度と。

「リナさんっ!しっかりしてください!!」

涙でぬれた、あたしの頬を、彼がゆっくりと撫でるのが分かった…


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「気がつかれましたか?」

…………

がばっ!!

あたしは勢い良くベッドから飛び起きた。
ベッドの脇にはバラの花束が、白い花瓶にきちんと飾られていた。

「ゼロス…!!」

なんでいるの!?どうして!?

「一体どうされたんですか…僕がいない間に、何かあったんですね…」

そんなの、一目瞭然じゃない。

あたしのベッドに腰をかけ、優しくあたしの髪を撫でる。

また、頬が濡れた。
そして、口をさいて出た言葉は……

「どうしてッ…!?あんた、フィアンセは!恋人は!?
良い人みつかったんでしょう!なのに何で帰ってくんのよ!
あたしがあんたの事忘れようとするのに、
どんだけ大変な思い下か分かってるの!?ねぇっ!ゼロス!!」

自分でも驚くような剣幕でまくし立てる。
ダメだ…違うんだよ、そうじゃ…そうじゃなくて……

まともに顔が、見られないよ…
恐い…すっごく、恐かった……

「リナさん…?」

あたしは――!!

ぎゅっ…と目を閉じ、口を一文字に結ぶ。

「あなたの思っていることくらい、分からない訳、
ないじゃないですか……」

「僕に恋人がいると、勘違いなさったのですね……?」

何で分かるの…?

そう言いたげにあたしは思わずゼロスを見つめてしまう。

「…だから、ガウリイさんと……」

どうしてぇ……?
何でそんなに優しいのよぉ……

「すれ違いざま、言っておられましたよ『リナを泣かす奴は例え誰でも許さねぇ…』」

ガウリイが…?そんな事……

「全部僕を忘れるためになさったんですか?」

「……そうじゃなきゃ……あんな事絶対にしないわよ!
あんたを裏切るような事!!だってだって、
あたしなんかいると迷惑でしょう!?あんたの邪魔してばかりっ…」

  続きは、言えなかった。言う事ができなかった。


――何故ってそれは……






        秘密です












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えぴろぉぐ(?)
しかし、僕がいなくて、いくら寂しいからといって他の男性を部屋に連れ込むなんて…
許せませんね。

ゾクぅっ!

いままでに感じた事がないような悪寒が背中を走る。

「あっ、あのっ、ゼロス!?」
その気配にたじろぎながらもあたしは後ずさり…


……今夜も寝かせませんよ……


耳元で囁かれた言葉に、あたしは抗う術を持ち合わせていなかった……














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初めまして。愛内鼎(あいうちかなえ)と申します。

ご感想、苦情、アドバイス…その他、お聞かせください。(あっ、イタズラは
嫌ですよ)(^u^;)


  初投稿☆ですっ。ドキドキっ。