◆−初投稿(ゼルアメ?)です−雨月かぐら (2002/7/10 23:00:09) No.8681 ┣初めまして(^^)−慈漠 零 (2002/7/11 16:37:46) No.8685 ┃┗ありがとうございま〜すv−雨月かぐら (2002/7/12 01:20:27) No.8688 ┃ ┗うふふふふ〜(^^)−慈漠 零 (2002/7/12 02:44:25) No.8689 ┗Re:切ないです〜−奈鈴多乃 (2002/8/3 23:38:28) No.8733 ┗遅くなりまして申し訳ありませんでした−雨月かぐら (2002/8/11 22:24:23) No.8754
8681 | 初投稿(ゼルアメ?)です | 雨月かぐら | 2002/7/10 23:00:09 |
はじめまして。 いつもこちらで、いろいろな方の小説を楽しく拝読していましたが、今回勇気をだして投稿させていただきます。 カップリングは一応ゼルアメです。 但し、ハッピーエンドとは少々言い難いので(そんなに不幸だとも思いませんが)、それでも構わないというお心の寛い方のみご覧下さい。 拙い話ですが、少しでもお楽しみいただければ幸いです。 【ONE FINE DAY】 あんたを 攫って 行けるところまで 逃げたらと 考えた日もあった 夢は 夢のままで 永遠に 言葉にされることもなく そして 今日という日を迎える 馬鹿みたいに晴れた 夏の日の午後 軽やかな衣ずれの音をさせて、その女は部屋に現れた。 俺を見て、満面の笑顔を浮かべる。 記憶にある、海の色の瞳。 「お久しぶりです。ゼルガディスさん」 白いドレスの薄い布地越しに、透ける四肢の細さが目についた。 「久しぶりだな」 差しだした手を握り締め、ぶんぶん振り回し、アメリアはほとんど半泣きの顔になる。腕から、アメリアの純粋な喜びの感情が伝わった。それを感じながら、俺は、ここまで来たことの全てが無駄ではなかったのだと、改めて自分に言い聞かせた。 「本当に、本っ当〜にお久しぶりです! ひどいですよ、ずっと何の便りもなくて、心配してたんですからね。 でも、良かった。やっと元の姿に戻れたんですね。岩の肌じゃないゼルガディスさん、初めて見ました。本当におめでとうございます!」 アメリアは、尚も嬉しそうに微笑みかける。その握る手には、前にはなかった柔らかさと弾力があるはずだ。髪も、色こそ同じだが昔の硬質の輝きは消えている。うんざりするほど長い旅を経て、俺は合成獣にされた体を分離させる方法を見つけだした。みつけて、実行して、やっとこの国まで辿り着いた。この国−−−−彼女がいる国に。 「謁見の間じゃなんですから、外で香茶でもいただきませんか? お庭に素敵なテーブルセットがあるんですよ」 導かれるままいかめしい建物を抜け出し、光溢れる屋外に出る。城の内庭には緑の芝生が広がり、所々に枝を十分に伸ばした木々が生えていた。一際高い木の下に、ママゴトのように華奢なテーブルと椅子が置いてある。アメリアは喜々として俺をその席に案内し、ティーセットを運んできた。 相変わらずの危なっかしい足取りに、“転ぶぞ”と注意しかけてやめた。俺の知っていた彼女は、こんな時よく派手にすっ転んでいた。今のアメリアは、それでも最後の一線で気を付けて、見事に持ちこたえる。会わなかった年月の彼女の体と心の成長に、俺は苦笑した。そう、成長と呼ぶのがふさわしいのだろう、この状態は。 アメリアの選んだ道は正しい。いつだって、そうだった。 「こうしてゼルガディスさんとお茶を飲むなんて、何年ぶりでしょうね」 「そうだな。最後に別れたのが、5年…くらい前だったか」 「ああ、そうです。闇を撒く者と戦ってすぐだったから、もう5年以上ですね。懐かしいなぁ。覚えてますか、ゼルガディスさん? 私、あの時、一緒にセイルーンに来て下さるようお願いしましたよね」 「ああ…」 「体を元に戻す方法を探さなきゃいけなかったから、結局は断られちゃったんでしたね。今日やっと あの時の願いが叶いました。だから、私 本当にすごく嬉しいんですよ」 手にしたカップから、ゆるやかに甘く日向臭い湯気が漂いだす。俺は、長い旅の間、この香りを吸い込む度、彼女たちと過ごした頃を振り返っていたことを、思い出した。 人間には心の拠り所が必要だ。 とくに、絶望に苛まれながらさ迷わなければいけないような時には。 「念願の人に戻って、これからはどうなさるんですか?」 「さあな。どこかで落ち着いて、生きて、それから死んで土になるんだろうさ。正直、後のことはあまり考えていなかったんだ。とりあえず、昔の仲間に会ってみるのも悪くないと思った。それで あんたに会いに来たんだ。−−−−他の奴らは、何処にいるんだか見当もつかんからな」 「あ、リナさん達だったら、今はゼフィーリアですよ。去年お子さんが生まれたから、しばらくはあっちで落ち着くみたいです」 「ほお、あいつらやっと納まる所に納まってたのか。リナもついに観念したんだな」 赤い髪の少女と長身の剣士の姿が、脳裏に蘇る。 あの二人は良いコンビだった。当たり前のように、並んで立つことができた。端で見ていて、さっさとくっついてしまわないのが不思議なほどだった。彼等にとっては、それはごく自然な選択だったのだろう。 「そっか。ゼルガディスさんは居所が分からないから、お式によべなかったんですよね。そういえば、リナさん怒ってましたよ。“手紙一つよこさないから、こんな時さえ連絡がとれない”って。私も同じことを思いました」 「………迂闊に立ち寄ったら、ドラグスレイブでもかまされそうだな(汗)」 「えー、大丈夫ですよ。行ってあげてください。赤ちゃん 可愛かったですよ」 「ガウリイも、守るものばかり増やして ご苦労なことだ」 「ふふふ。リナさんとその赤ちゃんじゃ、守るのが大変そうなものばかり、ですものね。でも、幸せってそんなものなんですよ、きっと」 アメリアは微笑んで、手を胴にあてた。 そんな他愛もない話をして、日が傾く頃に席を立った。 「泊まっていって下さればいいのに。とーさんも、喜びます」 「気軽に男を泊めて、家庭内争議の元にでもなったら 困るだろ」 軽口を叩くと、アメリアはくしゃりと表情を崩して笑った。 「やだ。そんな疑い深い人じゃ ありませんよ」 その顔を静かに眺めて、俺は荷物から小さな包みを取り出す。 「…これを」 解いて、手にのせて差し出した。 「あんたに返しに来た。長い間、借りていたな。ありがとう」 深い青の宝石は、掌の上でじわりと重かった。 アメリアが、目を瞠る。 「これは…あの時のアミュレット?」 俺は小さく頷いた。 「昔、別れ際に貰ったやつだ。これを見てあんた達を思い出すようにってな。旅の途中諦めかけた時に、何度もこいつに救われた。感謝している。おかげで元の体に戻れた。 俺の望みは叶ったから、もういいんだ。あとは、あんたが持っててくれ」 かつて朝な夕なに眺めた護符。 その色をもう二度と目にすることがないのだと思うと、胸の奥が微かに疼いた。 だが、これは俺のものではない。 かつて俺のものだったことは一度もなく、 そして、これからも俺のものにはならない。 それを分かっていて、持ち続けることはできなかった。 「……役に、立ちましたか?」 アメリアの白い手が、その石を受け取った。手の中に柔らかくに包み込んで尋ねる。 「ああ」 俺は、深い息と同時に答えた。 「ありがとう。この子の守り石にします」 アメリアはやさしく微笑んで、まるい曲線を描く彼女の下腹部を撫でた。 「いつ産まれるんだ?」 「来年です。年が明けてすぐのころに」 「よい子供が生まれるよう、祈っていよう」 「ありがとう。両親のどっちに似ても、よい子になる予定です。この子のおとーさんも、とても良い人なんですよ。今日は他国に出かけているから、ゼルガディスさんにご紹介できないのが残念です」 「ああ、あんたが選んだ奴なら、そうなんだろうな」 一年前、旅先で、アメリアが結婚したことを知った。 相手はどこぞの王子様。似合いの若夫婦で、セイルーンの将来も安泰だと。 幸福そうな二人の姿があちこちで報じられ、それきり俺は 昔受け取ったアミュレットを荷物の奥にしまい込んだ。 あまりに両国に都合の良い縁組みだったから 政略結婚を疑いもしたが、今日アメリアに会って、それも晴れた。彼女は、静かに満ち足りた表情をしていた。俺の知らない、成長した女の顔だった。 「じゃあな。フィルさんやあんたのダンナに、宜しく伝えてくれ」 「ええ。お元気で、ゼルガディスさん」 城門の手前で、短い挨拶を交わす。 ここで別れて、そして、もう二度と会うこともないだろう。 「そういえば」 立ち去ろうとしたアメリアが、ふと暮れかけた空を背に立ち止まった。 「私、あの頃ゼルガディスさんのことが好きだったんですよ。ご存じでしたか?」 “俺もだ”とは 言わずにおいた 夢は 夢の間まで シャボンのように弾ける ある 馬鹿みたいに晴れた 夏の日 |
8685 | 初めまして(^^) | 慈漠 零 E-mail URL | 2002/7/11 16:37:46 |
記事番号8681へのコメント 初めまして,私もいつもこっそりとお邪魔させていただいておりまして,こちらに書き込ませていただくのは初めてです(汗)。 小説拝見させていただきました(^^)。素敵なお話ドキドキと堪能させていただきました。確かにハッピーエンドではありませんでしたが,すごく穏やかに流れていた二人の時間が悲哀的な部分を感じさせませんでしたv ・・・とっても切なかったですけどね(^^)。 次なる作品の投稿,是非心待ちにしております。 |
8688 | ありがとうございま〜すv | 雨月かぐら | 2002/7/12 01:20:27 |
記事番号8685へのコメント はじめまして。 お優しいお言葉 ありがとうございましたv 内容が少々アレなので心配しながらの投稿だったのですが、読んで頂けて しかも感想まで頂けて、本当に嬉しいです♪ ゼルガディス&アメリアには 基本的にはハッピーエンドになってもらうつもりんですけどね。 そう思う安心感で、つい 手がこう勝手に逆方向に突っ走ってみたりする傾向があるようでございます。 そのうち思い立って、ハッピーな方向に向かうものができたら、どうぞまた読んでやって下さいませv 感想 本当に本当にありがとうございましたv 追伸 …………ところで、やっぱりバレバレでしたか?(苦笑) |
8689 | うふふふふ〜(^^) | 慈漠 零 E-mail URL | 2002/7/12 02:44:25 |
記事番号8688へのコメント >追伸 >…………ところで、やっぱりバレバレでしたか?(苦笑) バレないと思ってたんですか?(笑) も〜いっつもこっそり伺っていたのに,思わず引っ張り出されちゃいましたよ(笑)。 次は甘々ハッピーエンド期待してますね(^^)。とは言え,かぐらさんの後ろ向き魔剣士大好きなんですよね(笑)。また,楽しませてくださいませv |
8733 | Re:切ないです〜 | 奈鈴多乃 | 2002/8/3 23:38:28 |
記事番号8681へのコメント はじめましてv 奈鈴多乃と申しますv 小説、とても楽しませていただきました。 最後のところが、読んでいてなんとも言えずに、せつな〜くなりました。 2人の会話には暖かさがあふれていて悲しくはならなかったのですが。 そこが逆に・・・! カップリングっていうのはくっつけるためにあるようなものなので くっつけないで終わっているのがとても新鮮でした。 それでは、次の小説も楽しみにしています。さようなら〜 |
8754 | 遅くなりまして申し訳ありませんでした | 雨月かぐら | 2002/8/11 22:24:23 |
記事番号8733へのコメント はじめまして。雨月かぐらと申します。 お優しい感想 ありがとうございました(感涙)。 なのに、気付くのが遅れた上に その後の残業の嵐と親戚の来襲、旅行等々、全く落ち着いてPCに向かうことができなかったため、お返事遅れてしまって、本当に ごめんなさい。 頂いたレスを発見して以来 ほぼ毎晩「今日こそは!」と思いながら、時計を見て諦める日々が続いていました。 本当に、本当に、申し訳ありません。 でも 読んで頂けて、感想まで頂けて、本当に嬉しかったです。 ありがとうございました。 >最後のところが、読んでいてなんとも言えずに、せつな〜くなりました。 ああ。そういって頂けると 嬉しいです。 毎度 秘かに「切ない話」を目標にして書いておりました。 >カップリングっていうのはくっつけるためにあるようなものなので そうですよね。ほんとはくっつけるのが自然だし、特にこの二人には必ずや幸せになって欲しいという強い思いがあるのですが。 ゼルガディスの性格上、たとえ恋愛感情があっても 人間に戻らないうちはアメリアに告げないんじゃないだろーかいう疑念がありまして。 言葉がなければ、自分が振られたと思い込んだアメリアは、とっとと王族としての責務(この場合は結婚)を果たすこともありえるんじゃなかろーかと。 できれば実現して欲しくはないけれど、ありえる可能性かもしれないとふと思いついて書きました。 で、書いたはよいのですが “このカップリングが好きな方には 絶ぇっ対怒られる〜!”と戦々恐々としていましたので >くっつけないで終わっているのがとても新鮮でした。 こう仰って頂けて、本当にほっとしました。 きっと 読んでくださった他の方の中には 気分を害された方もいらっしゃるだろうと心配していたので、奈鈴多乃さんお一人でも喜んで頂けたと思うと、ほんとうに嬉しかったです。 >それでは、次の小説も楽しみにしています。 ああ!次も読んで頂けるんですか、ありがとうございますっ(泣)!!! 私的にしばらくたてこんでいるため、次に投稿できるのは少なくとも9月以降になると思います。 次こそは 必ずや、ハッピーエンドのゼルアメを目指しますので、またお見かけになった折りにでも、読んでやって下さいませ。 これ以外では、上に発言を寄せてくださった慈漠さんのHPに 似たようなPN(見ればバレバレですが)で 何本か投稿させて頂いておりますので、もしお気がむかれましたら そちらもご覧頂けると幸いです。 それでは、今更のレスで本当に本当に申し訳ありません。 ありがとうございました。 |