◆−はじまりはここから−北上紗菜 (2002/7/15 19:02:18) No.8699


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8699はじまりはここから北上紗菜 E-mail URL2002/7/15 19:02:18


「貴方はリナを愛していたの?」

 街道沿いの草むらで寝ころんで休憩を取っていたガウリィは、突然掛けられた女の声に視線だけ女の方へ向けた。
 女は意識してか太陽の前に立ち、ガウリィには逆光のせいで服装は知れても表情を知ることができない。
 腰に剣を下げ一見剣士風のようだがそのすらりとした手足は華奢な部類でとても剣を扱う人間には見えない。
 だが、その女は良く似ていた。
 自分の旅の仲間に。

「貴方はリナを愛していたの?」

 もう一度女は言った。
 先程と全く同じ有無を言わさぬ口調で。
 ガウリィは素直に女の問いに答えた。

「ああ。リナを愛している。
 最初は危なっかしい女の子で俺が守らなくてはと思っていたのが、どんどんあいつの存在が大きくなって……気づいていたら愛していた」

「今も、リナを守りたいと思っているの?」

 女はまた問いた。

「思っている。
 俺以外にあいつを守れる奴なんていない」

「そう」
 
 女はため息をついて髪をかきあげた。
 肩できりそろえられた髪が風になびいた。
 その仕草にガウリィは立ち上がり、女を見下ろした。
 女は真っ直ぐにガウリィの瞳を見つめた。
 その全てを見通すような赤い瞳にガウリィは息を飲んだ。

「守る、ね。
 あの娘が一緒に旅することを許しているから少しは期待していたのだけど、がっかりだわ。
 貴方、あの娘と一体何年旅をしてきたの?あの娘の何を見てきたの?
 貴方にあの娘を愛してるなんて言う資格なんて無いわ!」

 きっぱりと女は言っ放った。
 その言動に圧倒され、ガウリィはたじろいだ。
 女はまたため息をついて、くるりと背を向けて歩き出した。

「待ってくれ!」

 ガウリィは慌てて女を引き留めようと、女の腕を掴んだ。
 女は煩わしげに振り返った。

「あんた一体誰なんだ?
 リナを<あの娘>なんて呼んでいるし、リナの居場所を知っているのか?」

「私はルナ=インバース。
 リナの姉よ。
 リナの居場所は知っているというよりも、知らされているだけ。
 貴方に会って確かめたいことがあるからリナに会う前に会いに来ただけよ」

「リナに……。
 俺も連れていってくれ!」

 ガウリィは強くルナの腕を掴んだ。
 ルナは眉をしかめてガウリィを見ていたが、ふっと表情を変えた。

「良いわ。
 そんなにリナに会いたいなら私と一緒に来るといいわ。
 そして、自分のせいでリナが死んだということを思い知りなさい」

「リナが……死んだ?」
 呆然とガウリィは呟いた。
 ある日突然行方をくらましたリナを探し回っていたガウリィにはルナの言葉が信じられなかった。

「ええ、そうよ。
 リナは死を選ぶことしかできなかった。
 リナに会う迄、その理由を良く考えていなさい」

 ガウリィの腕を振り払って歩き始めたルナの後をガウリィは慌てて追いかけた。
 ーー自分のせいでリナは死んだ。
 その言葉の意味をガウリィは必死になって考え始めた。


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 お久し振りです。
 または、初めまして。
 ちょっと前に思い付いて書いた短編(?)を投稿しました。
 長編のプロローグみたいな感じですが………どう思われました?(意地悪笑)