◆−不自然な僕ら<プロローグかな?>−真吹 あずさ (2002/7/22 17:54:14) No.8704 ┣不自然な僕ら(1)−真吹 あずさ (2002/7/25 00:27:35) No.8714 ┗不自然な僕ら(2)−真吹 あずさ (2002/7/25 18:05:02) No.8717
8704 | 不自然な僕ら<プロローグかな?> | 真吹 あずさ E-mail | 2002/7/22 17:54:14 |
初めましてこんにちわ。真吹 あずさと申します!今回初投稿です。 今回は、プロローグっぽい感じで、登場人物は一切でてきませんが、これを読むと、これから先の話がわかり易いかなぁ・・・と思って書いた物ですv ファンタジーもので、舞台は西暦三千年という未来の話になっております。 お暇であれば、お茶やコーヒーのお供としてお読みください(笑) ちなみに!短いですので。 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 『不自然な僕ら』 プロローグ ―――――時は西暦三千年の遥かなる未来――――― 地球上の土地全ては一つの国となり、『クラシアネ』という名前をもつようになっ ていた。 人種に関わらず文明を分け合う事で、人々は更なる知識を得る事が可能になり、そ れは、様々な開発事業に多大な影響を及ぼす事にも繋がった。 宇宙旅行やエコカー、新しい電気エネルギー、難病治療の特効薬、環境問題の解 決策にいたるまで、多くの物が創り出され、国民の生活に深く馴染みを持っていっ た。 しかし、その反面で、楽な暮らしに慣れすぎた人間達による凶悪な犯罪は、留ま る事無く起こり続ける。 開発事業によって産み出された便利な環境は、犯罪を行う上で、以外にも役に立 つ事が多かったのだ。 犯罪者は、より巧妙な手口で罪を犯すようになり、常に警察や政府を悩ませてい た。 ―――やがて、政府や警察はこの様な現状を重く見て、ある秘策を取る。 最先端技術を利用して、死体から人間そのものの人造人間を創り出したのだ。 人造人間は、人と同じく感情を持つように作られ、外見では機械と本物との区別が つかない程だった。 本来人間が持つ能力の他にも、戦闘に便利であろう様々な技術が体内に備えられ、 最終的には五人の人間から五体の人造人間を創りあげた。 そして彼等は、犯罪者逮捕を目的とされ、人間のために働らく事を強制されてい た。 しかし、その事実は国民に一切伝えられず、政府や警察の極一部の人間がその事 実を握っているという非常に奇妙な状態の中で、人造人間たちは「生きること」を よぎなくされていたのだった。 |
8714 | 不自然な僕ら(1) | 真吹 あずさ E-mail | 2002/7/25 00:27:35 |
記事番号8704へのコメント ここからが本当の物語になります。ややこしくてごめんなさい。 ちゃーんと登場人物も出て来ますので、読んで下さい!お願いします〜vvv ##################################### 冷たい空気が、この広い部屋に流れている。 自然とは遠くかけ離れた、機械の低い唸り声だけが、ただ意味もなく響き続けた。 誰も決して美しいとは思わないであろう。飾り気のないこの部屋のコンクリートの壁は灰色だ。 そして、とても寂しげにこの部屋を包み込んでいる。 「イリキ、起動できた?」 「あぁ、もうすぐ動き出すだろうよ」 機械の無機質な歌声の中に、言葉が混ざりこんだ。二人の男が話をしていた。 「なぁクレイグ。こいつぁ、前の型とどのへんが違うんだ? 見てる限りじゃ、 前のやつより遥かによわそうだがな。」 さっきの声のかたわれが、呟くように言う。 「あぁ、それはね、今の状態じゃあ確かにわからないけど。 この子、飛ぶことができるんだよ。 飛行機と同じ原理で、燃料を利用して飛ぶんだ。」 透き通った歯切れの良い声で、もう一人が返事をする。 「へぇ。 そりゃ結構なこったな。一体いつから世の中こんなにもハイテクになったんだ? 俺ぁ最近ついていけやしねぇ。」 ガラガラに掠れた声で、男が言う。 「人造人間の起動をするのが仕事のくせに、よく言うよ。」 もう一人の男が苦笑いをしながら言った。 ―――――――一体、誰の声? 無意識に光を求め、暗がりから抜け出そうとしていた。 重たく圧し掛かる瞼を押し上げようと、ただただ懸命になった。 「あっ!この子、目が開き始めてるよ。イリキ、早く名前を呼んで。」 焼け付く様に強い光が、わずかな隙間から流れ込んで、瞳を焦がす。 「えーっと、名前なんだったけか?」 「ルイだよ。名前くらい覚えててよ。たった二文字なんだから。」 「なんだよ、いちいちうるせぇなぁ。 おい!ルイ。分かるか?起きろコラ、ルイ!」 声が聞こえる。 僕を、呼んでいる? だったらきっと、僕は『ルイ』って言うんだ。 眩しすぎる光の中で、なぜかルイは確信していた。夢中になって目を擦る。 すると、少しずつ和らいでいき、それと同時に、目の前の情景が浮かび上がった。 真っ白な天井から、抜ける様に明るい光の源が垂れ下がっている。 丸くかこむふちの中、大きさ均等な数個の電球が、規則正しく並んでいる。 まだ、それしか理解できなかった。 呆然と瞳を泳がせているルイに、突然さっきの声が話し掛けた。 「ぼうず、起き上がれるか」 ルイはそう問われて初めて、じぶんが横たわっている事に気付く。 そして、今度は起き上がろうと体に力を込めた。 「ん、う・・・ん。」 小さなうめきと共にもがく。しかし、力を込めたはずの体は、何の反応も返してはくれなかった。 その代わりに、鮮明になり始めた意識から受け取る、重たくて熱い感覚がルイを苦しめる。 まるで駄目だった。 「しゃあねぇなぁ。俺が助けてやるのはこれきりだと思えよ。」 掠れた声が聞こえたのと同時に、自分の両肩に柔らかな力が加えられるのを感じた。 「う・・・うあ・・。」 肩を支点として、上半身を引き上げられた。なされるがまま動くと、気だるい体はぎこりなく起き上がったが、起き上がると同時に手を離される。 途端、支えを失った体は大きくぐらついた。 「おっと。危ないでしょ、イリキ。起き上げたのなら最後までささえてあげない と。 起動したばかりの人造人間は壊れやすいんだよ。」 危うく倒れる所だったルイの体を、誰かが支える。 「へいへい。お前はいっつも俺に説教たれやがる。」 掠れた声の男が小さな声をもらした。 「イリキが余計な事するからでしょ。」 もう一人の男は、鼻で笑う。 「余計な事って・・・・おまえなぁっ!!!」 キーン 突然の大声に、ルイの頭はずきずきと反応を示した。ルイは思わず顔をしかめる。 「あっ、ルイ君大丈夫? 誰かが大きな声だすから、頭痛いよね」 「だからっ、、おまえなぁっ!!!」 キーン 再び聴こえる大声が、ルイの頭につきささる。 「うるさいなぁ。誰もイリキだなんて言ってないよ。 本当にルイ君の体に悪いから、ちょっと黙ってて!」 眉間に皺を寄せて歯切れの良い声をした男が言うと、 「くそッ」 もう一人の男は声を押し殺して叫んでいた。 二人の男が言い争っている間に、ルイの意識は大分鮮明になった。 一番最初に、自分が横たわっていた場所を確かめる。 少し高さのある、脚のついた鉄製の寝台だった。何の飾り気もなく、支える為のねじしかついていなかった。寝台と言うよりは、手術台といった方が正しいだろう。 コンクリートの壁が、遠くに見える。おそらくここは部屋の中。 しかし、部屋とは言えども、ベットルームとは訳が違い、たくさんの妙な機材がルイを取り囲むようにして置かれていた。 得体の知れない管が繋がっていたり、モニター画面がついていたりと本当にたくさんの機材があった。 「大分意識がはっきりしてきたのかな? ルイ君、僕が分かる?」 きょろきょろとあたりを見回していたルイに、どこかで聞いたことのある声が問いかけた。ゆっくりと、男に目線を合わせる。 「あ・・・の、僕・・・・。」 ルイは、訳のわからない言葉を口走っていた。 思考は鮮明になっているのに、口元が思うようにうごかない。 「あぁ、良かった。分かってるみたいだね。」 「よぉ、ぼうず。」 ルイはただ、コクリと頷く事しかできなかったが、それでも、二人の男はにこりと笑顔を見せた。 2人共、長い白衣を着ている。 少し乱暴な言葉遣いの男は、四十代前半くらいにみえた。 ひげを生やし、目つきが悪く、額を露出した短い黒髪はボサボサだった。 一方もう一人の男はもう少し若く見えた。 垂れ目で、普通にしていても笑っているようだ。綺麗な白髪を、襟足まで伸ばしている。 そうして、ルイが垂れ目の男を観察していた時、唐突に本人がルイに向けて言う。 「それにしても、君は本当に可愛い顔をしてるね。」 男は言葉と同時に、ルイの顔へ自分の顔面を近付ける。 「わっ」 予測のつかない出来事は、ルイの顔を赤くする。ルイは恥ずかしさから、素早く顔を逸らした。 男同士とはいえ、顔を突然ちかづけられては、気が動転してしまう。 「おいクレイグ、妙な冗談はやめとけ。ぼうずが困ってるだろうが。」 ひげの男がそういって助けてくれる。 「あぁ、ごめんねー。」 「悪ぃなぼうず。こいつそう言う趣味してんだ。あー・・・・つまり、ゲイって奴 だが・・・。お前、ねらわれてんぞ。気ぃつけろよ」 ひげの男は冗談っぽくいったが、ルイは正直気色が悪かった。 「ルイ君可愛いから、つい・・・ね。でも、本当に女のこみたいな顔だね。 目が大きくて口が小さくて。僕の好きなタイプだよ」 「え・・・?」 クレイグと言うらしい男の何気ない一言で、ルイは悟った。 自分の顔が、どんなものだったか、思い浮かばないのだ。 おかしい。どうして自分の顔が、自分でおもいだせないのだろうか。 ルイは条件反射で下を向き、鉄製の寝台に自分の顔を映した。 鏡代わりになった銀色に鉄に、ぼやけて映る顔。大きな目と高めの鼻と小さな口。 ――――――これが、僕? 映し出されたその表情は全く覚えがないものだった。 自分の顔を忘れるなんて、有り得ないはずなのに。 自分の顔が他人に見えてしょうがない。 これは、どういうことだ? 寝台にぼやけて映しだされた顔が、歪んでいくのがわかった。 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 はい、いかがなもんだったでしょうか・・・。へぼ。 でも、どんなことでもいいんで、感じたことをコメントしてくれたら嬉しいです。 続きは一週間以内に必ず打ちますので、また暇があったら読んで下さい。 真吹 あずさでした〜vvv |
8717 | 不自然な僕ら(2) | 真吹 あずさ E-mail | 2002/7/25 18:05:02 |
記事番号8704へのコメント 続きです。これからばしばし投稿しますんで、読んで下さいvvv にしても、初投稿のくせに続きものだなんて、図々しいってば(笑) これからもよろしければよろしくお願いしま〜す!!! ##################################### ルイはそっと、銀色の寝台の中で浮かない表情をしている顔へと、指先で触れた。 「どう、して?」 思わず嘆いていた。 「クレイグ」 ひげの男が、決まりが悪そうにそう言いながら、クレイグに目で合図をする。 クレイグはそれを見ると、深い溜め息をはき、小柄で細いルイの肩へさり気なく手を廻した。 「落ち着いて、ルイ君。君の言いたい事は分かってるから。きちんと説明する よ。」 その言葉にルイは顔を上げると、黙ってクレイグの顔を見つめる。 「俺はちょっと服とって来るぜ。その格好じゃあ、風邪引いちまう。 クレイグ、俺はこういうのは得意じゃねぇ。俺のいない間に話しつけといてくれ や。」 ひげの男はそう言うと、そそくさとこの部屋の出入り口へ歩みを進める。 「はいはい。分かってるよ。」 クレイグは返事をした。 乱暴な音で部屋の扉が閉まると、部屋の中は機材の単調な音がさっきにも増してよく聴こえるようになった。 手術台の中のもう一人の自分を穴が開くほど見詰めたまま、ルイはただ黙りこむ。 鉄の冷たくて硬い感触を味わうかのように、くすんで映った自分の顔の輪郭をなぞる。 頭が痛かった。 「裸のままじゃあ寒いでしょ? とりあえず、今はこれでも羽織っていてくれるか な?」 クレイグは身に纏っていた丈の長い白衣をルイの体に被せた。 ルイは、裸と言う言葉にはっとして、ようやく手術台から目を離す。 そういえば、先程から肌寒さを感じていた。 そうして、不意に自分の体を見た瞬間、ルイは目を丸くした。 何も着ていない。つまり、素っ裸の状態である。 クレイグとは男同士とはいえ、さすがにこの状況には我慢ならない。 クレイグに借りた白衣をがむしゃらに引っ張り、必死で素肌を隠した。 「あ、ありがとうございます。」 とりあえずそれだけ口にすると、膝を抱いて体を丸めた。 クレイグはその様子を目にすると、少しだけ笑顔を見せた。 とにかく、今のルイには分からない事が多すぎる。 自分は何者なのか、なせこんな場所に居るのか、そしてここはどこなのか。 どうしてこんなにも多くの事が思い出せないのだろう。 頭の中で余りにも多くの問題が渦巻き、収拾がつかなくなっていた。 そんなルイに、クレイグはおもいがけない一言を口にする。 「自分が誰なのか、僕が何者なのか・・・知りたいんでしょ?」 「えっ、あっ!」 余りに核心を突いた問いに、ルイは動揺を隠す事が出来なかった。 「やっぱり図星みたいだね。まぁ、普通の神経を持ち合わせていたら、そう思うの が当然なんだろうけど。 僕も慣れてしまったよ。何しろルイ君で五人目。 いや、5体目と言うべきかな。」 焦らすように意味深な言い方をするクレイグに、ルイは首を傾げた。 「あの、どういうことですか?」 しかし、すぐには返事は返ってこなかった。 大切そうに一つ息を吐き出すクレイグを、ルイはしばらく黙って見つめた。 なんとなく、ルイにはクレイグのその行為がとても重たく感じられたからだ。 『怖い』 なぜかそう思っている自分がいた。 事実を知ってしまったら,自分はどうなるのだろうか。 本能的にそう思ったが、クレイグがルイのそんな不安に気付くはずはなかった。 徐に、クレイグの口元は動く。 「はっきり、簡潔に言うよ」 ルイはごくりと喉を鳴らした。 「ルイ君、君は人造人間なんだ。だから、本物の人間じゃない。 ・・・・・・機械だ。」 「え・・・?」 頭の中が真っ白になった。一体、今何を告げられたのだろうか。 「変な冗談はやめてください。そんな事、ある訳ないじゃないですか。」 ルイはそう言った。しかし、言葉とは裏腹に、ルイの口元は震えていた。 そんなルイに、クレイグは冷静な返事を返す。 「信じられないのは分かるよ。でも事実、君は今生まれたばかりなんだ。 僕やイリキに電源を入れられて。 今僕がこのスイッチを押せば、君はすぐに動けなくなるよ。」 クレイグはそう言うと、ルイが纏う白衣を脱ぎ去り、強い力でルイの足を開いた。 裸の股間が明らかになる姿勢に、ルイは顔を赤くして叫ぶ。 「やっ、やめ・・・」 「ほら。」 クレイグは叫ぶルイを無視して、ルイの右太腿の付根を指差した。 「ここだけ、金属で出来てる。この奥にある赤いボタン、見えるかな。 これを押せば,君は動けなくなるんだ。まるで・・・人形みたいに。」 クレイグが自分の指先で示した場所を、ルイに見せつけた。 そこはとても不自然で、刳り貫かれたように、丸くへこんだ小さな窪みがあった。 窪みの奥には、赤い色をした何かがある。 ルイは、クレイグに股間を見られる恥ずかしさも忘れ、夢中になってそこに手を伸ばした。 硬くて冷たい、金属の感触だった。その感触は、くぼみの周りを長方形に囲んでいて、その四角の四隅はくぎで打ち付けられていた。 しかし、その部分を除いて、他の部分は体温があり、柔らかく、人間そのものだった。 否応なく、クレイグの言葉が事実であると、確信させられた。 「どうしてこんな、人造人間だなんて。 だってまるで今まで眠っていたような気がするのに。 ずっと眠っていて、今目が覚めたような、そんな気がするのに。」 しかし、自分の体が紛れもなく作り物であるという事は、十分に確認した。 この指先から伝わった、あの冷たい感触。 何者にも変えようがない。 ルイは静かになって、手術台の上で体を丸めた。 クレイグはそんなルイの体を再びあの白衣で覆うと、言った。 「それはきっと、君の体がもとは死体だったからだと思うよ。」 クレイグの言葉に、ルイは弾かれたように顔を上げて聞く。 「死体?」 「君の体の大部分は、人間の体そのもので造ってある。 病死した十六歳の少年の体でね。 『ルイ』っていうのも、生前のその子の名前だよ。 その子の死体を改造して出来たのが、今の君なんだ。」 淡々とクレイグが喋るのを、ルイはただ聞いている事しか出来なかった。 「眠っていたような気がするのは、脳の方へ余り手を加えていないから。 ある程度、生前の記憶が残されてあるんだ。 でも、生前の家族とか、友達とか、そういうのは覚えていないんじゃない?」 不意にそう問われて、ルイは思い出そうと頭を抱えた。 しかし、思い出そうとしても、何一つ頭の中に浮かんではこない。 確かにいたような気はするのに、どうしても見えてこないのだ。 「思い出せないでしょ?」 再び問われ、ルイは黙って頷いた。 「そういう、生前の家族だとか友達、恋人の記憶は、何かと面倒だからっていう理 由で、人造人間にされる時に切り取られてしまっているんだ。 でも、覚えていても辛いだけだろうし、忘れていた方がいいんだよ」 「・・・面倒、だか、ら。」 ルイは思わずつぶやいていた。 クレイグは、宥めるようにルイの頭を撫でる。 「僕は、何のために、何の目的で造られたんですか?」 かすかに聞こえるくらいの声で、ルイはうつむいたまま言った。 突然の質問に、クレイグはルイの頭を撫でていた手を止める。 「罪人を捕まえる為だよ。 警察や政府が手を焼くような凶悪犯が、世の中には腐るほどいる。 そいつ等を捕まえる為の、最後の砦として人造人間は作られたんだ。 だからルイ君も、これからは戦わなきゃならなくなる。強制的にね。 これは人造人間に生まれた事ゆえの使命なんだ。」 淡々とした返事が、ルイの胸にひどく突き刺さる。 「もしも僕が、戦いたくないといったら、僕はどうなりますか?」 ルイが問うと、クレイグは気の毒そうに溜め息を付いた。 ルイだってそんなに馬鹿ではない。クレイグが口に出すであろう言葉は、大体見当がついていた。 「絶対、絶対そんな事いわないでね。 そんな事をすれば、ルイ君は間違いなく処分されるよ。 戦わない人造人間なんて、国には何の利益にもならないって・・・。」 やっぱり。 やっぱりそうだ。 人間にとって、自分はただの道具でしかない。 どうして人間は、人造人間に感情を残したのだろうか。 これ以上に残酷な事など、これ以上にむなしい事など、他にないのに。 そう思うと、ルイは下を向いて、もっと強く身体を丸める。 ルイの心の中で、何かにひびが入った。 「僕は、戦いたくありません。」 その言葉に、クレイグは真っ青になっていった。 「ルイ君!今僕が言ったでしょう?拒めば君は処分されてしまうんだ!」 クレイグは怒鳴ると同時に、ルイの両肩を掴み、強く体をゆすった。 「僕だって君を生み出した人間の一人なんだ。 ルイ君・・・君を無駄に死なせたくはない。」 ルイは何も言わなかった。下を向いたまま、クレイグの顔を見ようともしなかった。 「ルイ君!僕を見るんだ! 君の身体は本当に丈夫に造ってある。 人間の犯罪者を捕まえるくらいで、簡単に死んだりしない! それを・・・こんな所で意地を張って、一体何になるんだ!」 クレイグの声がだんだん苦痛に歪む。 「ルイ君・・・・」 クレイグはそっとルイを抱きしめる。 途端――――――――――――――――― ドンッ!! ルイはクレイグを突き飛ばした。 「いやだっ!絶対にいやだ!」 「ルイッ!」 「戦いたくないっ、戦いたくないっ! 僕を壊して!僕を殺してっ!今すぐ殺してっ!!!!」 ルイが奇声を放つ。 そして、寝台を這いずり落ち、寝台の周りの手で持てるようなものを片っ端からクレイグに投げつけだした。 「ルイ、落ち着くんだ!」 クレイグが必死で身をかばいながら言う。 ――――――その時 「どうした!? 大丈夫かクレイグっ!」 不意に部屋の扉が開き、イリキが戻ってきた。 両手に抱えていた服の山を条件反射でどさりと床に落とす。 部屋の中には、叫びながら物を投げつけるルイと、身をかばうクレイグの姿が在った。 すさまじい光景だった。 「イリキ、早くだれか人を呼んできて!ルイ君ショック状態になっちゃってる」 「何っ!」 「いいから、早く!!」 「分かった。すぐ呼んでくるから、待ってろよ!」 イリキはそう言うと、全速力で部屋を出て、廊下を走り出す。 廊下を走りながら、耳に届くルイの奇声に、イリキはひどく顔をしかめた。 「くそっ」 |