◆−So What?−エモーション (2002/8/29 00:00:18) No.8909 ┗Re:So What?−Dirac (2002/8/29 21:52:36) No.8921 ┗ありがとうございます−エモーション (2002/9/1 22:15:48) No.8960
8909 | So What? | エモーション E-mail | 2002/8/29 00:00:18 |
ごあいさつ この話はタイトルどうりの話です。 なんと言っても、別の話を書いていて、たまってしまった「すとれす解消」 のために書いたものですから……(苦笑) 登場キャラはルナとゼロスです。 何の気なしに書いたのですが、書いてみて、この2人はもう一回、コンビで 書いてみたいと思いました。 楽しんでいただけると良いのですが。 では、はじめます。 ────────────────────────────────── 「So What?」 「やったぁ! 成功!!」 こんがりと、きれいなキツネ色に焼き上がったクッキーを見て、ルナは満足気な声を上げた。最近、ルナはお菓子づくりにハマっているが、何度やっても焼く時間の加減が難しい。母は「慣れよ、慣れ。回数こなせば何となく分かるようになるから」と言うが、ひどい失敗こそしないものの、焼きすぎていたり、逆に焼きが甘かったりと「味は問題ないけどイマイチ」な出来ばかりだったので、初めての満足のいく結果にルナは大喜びしていた。 そうして、だいたいコツが掴めたのか、使った道具を洗って片づけている間に、クッキーは順調に焼き上がっていった。 「さてっと。そろそろ十分さめたわよね♪」 クッキ−を焼きさましている間、父の手伝いをしていたルナは機嫌良くキッチンに戻る。クッキーを菓子器に移し、香茶を入れて蒸らし、暖めたカップを人数分、盆に乗せてテーブルに向かうと……。 「あ、すみません。いただいちゃってます」 まるで当然のようにテーブルにつき、クッキーを食べている、見知らぬ男がそこにいた。 「美味しいですよ、これ。手作りですか? お上手ですね♪」 呆然としているルナに、二十歳前後の、黒髪をきっちりと肩の辺りで切りそろえた、黒い法衣の神官は、にこにこ笑顔でそう言った。 やっぱり知らない、一瞬ルナはそう思ったが、すぐに思い出した。まだ10歳のルナ=インバースではなく、スィーフィード・ナイトの記憶が。 「……何の用? 確か、獣王の部下で……ゼロス、よね?」 カップの乗ったお盆をテーブルに置き、ゼロスを見据えながら訊ねる。今までにも何度か、「子どものうちにお前を倒す!」等と言ってやって来る純魔族がいたが、ゼロスは今までの純魔族とは桁違いの相手だ。普通なら負ける気は全くしないが、自分がまだ子どもの身体である以上、油断はできない。 「ああ、そんなに警戒しないでください。別に何かしに来たわけじゃありませんから」 10歳の子どもとはいえ、ルナに見据えられて平然としていられる者など、両親を除いて滅多にいないのだが、ゼロスは平然と香茶を飲んでいる。さすがは高位魔族、というところだろうか。 ……って、勝手に香茶入れて飲んでるし。 「じゃあ、何しに来たわけ? お茶に呼んだ覚えはないんだけど」 「実は個人的に、あなたの顔を見に来たというところなんですが……。 お会いしたところ、どうやら人違いだったようです」 「……人違い?」 「ええ。昔の友人とよく似たカラーの方がいらっしゃるのに気づきましたので、生まれ変わってきたのかと思いましてね。でも、違いました。 ここまではっきり表に出ている方なら、冥王様にはすぐお判りになるのでしょうけど、僕ごときでは実際にお会いしない限り、あなた方のそれぞれの区別はつきませんから」 確かに、厳密に言えばルナ以外にも、スィーフィードの欠片なんてものを持っている人間が存在する。 だが、ほとんどの者は、その自覚もなく、周囲にも──それこそ、魔族や神族にすら──そうと気づかれずに、よほどのことがない限り、普通の人間として一生を終える。この辺り、状態としては封印されている魔王と同じだろう。 むしろ「スィーフィード・ナイト」のように、はっきりそうと分かる、桁外れの欠片を持つ者の方が珍しく、滅多にいない。「スィーフィ−ド・ナイト」以外で、と言う条件なら現在はいないし、過去にも数えるほどだ。 だから、ゼロスの言う「友人」が誰か、ルナにはすぐに把握できた。まだ生まれ変わっていない事も。もっとも、それを教える気はない。 「まあ、魔王様方と同じで、あなた方も基本は同じ存在ですから、カラーが似ているのも当たり前。仕方ないといえば仕方ないんですけどね」 妙に楽しそうに言うゼロスに構わず、ルナはちょうど反対側にある窓を、大きく開いた。 「おや。心地よくていい風ですねぇ♪」 「そうでしょ?」 そう、ルナはにっこりと極上の微笑みを浮かべ、ゼロスに近寄ると…… ごすっ! めん棒でどついた。 「……った、たた……。なっ、何なさるんですか、いきなり。それに、一体どこからだしたんですか、そのめん棒?!」 確か、ルナは何も持っていなかったはずである。 「勝手に人の家に上がり込んで、勝手にお茶菓子食べて、勝手に香茶飲んでて、『何するんですか』が通用すると思ってんの〜? それと、めん棒の出所は『どこからともなく』に決まってるでしょうが!」 答えながらも、容赦なくルナはゼロスをめん棒でげしげしと小突きまわす。 「いえ、でも、一応、お断りは、しま、したしっ!」 しかし、ゼロスもさすがに高位魔族だけあって、いつまでも大人しくどつかれていない。ルナのめん棒攻撃を、紙一重でかわし始める。 「こっちの許可を取ってないでしょうがっ!」 びしっ! とめん棒を突きつけて言うルナに、ゼロスはこんな状況でも、 「ああ! でもほら、お互い全く知らない仲でもありませんし。 ね? スィーフィード・ナイトさん♪」 嫌味でやっているとしか思えない笑顔で、そう答えた。 ……ぷちっ 「知り合いでも人違いだと分かったんだから、さっさと帰れっ!! ちゃっかりお茶してるんじゃなーーーいっ!!」 ルナに投げ飛ばされ、ゼロスは見事な放物線を描きながら窓から放り出された。 「……ほんと、大きな窓で良かったわ。今度から掃除が面倒なんて思うのやめましょ」 肩で息をしながら、ルナがそう呟くと、不意にゼロスの声が響いた。──アストラルサイドからだ。 「そうそう。このクッキー、獣王様へのお土産にいただいていきました。では」 ふと見ると、テーブルの上から、菓子器にあったクッキーが全てなくなっている。 「……………………」 ルナは無言で、めん棒を力一杯投げた。──アストラルサイドへ。 すぱこぉぉぉぉぉぉぉぉん☆ それは、見事にゼロスの後頭部を直撃したという……。 「So What?」─終─ ────────────────────────────────── 以上です。 ルナを10歳の子ども、ということで、少々感情的になってしまうキャラに してしまいました。ですから、ちょっとイメージと違うかも知れません。 ゼロスは……何か一番書きやすい……(笑)何故でしょう? この話は、最初に思いついたのは「ルナにどつかれるゼロス」でした。 それに原作の「めん棒でどつき回される純魔族」が加わって……(笑) ……ゼロスには災難だったかな。 では、お読みいただいて、ありがとうございました。 |
8921 | Re:So What? | Dirac E-mail URL | 2002/8/29 21:52:36 |
記事番号8909へのコメント どうも、Diracです。こちらでは初めましてですね。 小説、拝見させていただきました。 ゼロスのやられっぷりが面白かったです。 やられ役としてはゼルガディスに次いで似合うと思うのですが、エモーションさんはどう思われますか? > ルナに投げ飛ばされ、ゼロスは見事な放物線を描きながら窓から放り出された。 あまり小説と関係ない話ですが、円錐を何かしらの方法で切断すると、その断面の輪郭が放物線になるとか。 >この話は、最初に思いついたのは「ルナにどつかれるゼロス」でした。 >それに原作の「めん棒でどつき回される純魔族」が加わって……(笑) >……ゼロスには災難だったかな。 ルナが麺棒(綿棒!?)で魔族をどつき回すエピソードをもとにするセンスには恐れ入りました。 ところで、アストラルサイドに投げた麺棒はどうなったのでしょうか? つたない感想で申し訳ありません。 それでは。 |
8960 | ありがとうございます | エモーション E-mail | 2002/9/1 22:15:48 |
記事番号8921へのコメント > どうも、Diracです。こちらでは初めましてですね。 こんばんは。同じく、こちらでは初めまして。 HPではお世話になってます。 > ゼロスのやられっぷりが面白かったです。 楽しんでいただけて嬉しいです。 この話、ルナから見れば「痛み分け」なんです、実は。 「初めて出来た上出来のクッキー」を、全部ゼロスに取られてますから(笑) 下書きでこの話に、仮につけていたタイトルも「痛み分け」でしたし。 > やられ役としてはゼルガディスに次いで似合うと思うのですが、エモーションさんはどう思われますか? 思います!もう、思いっきり!! タイプは違っても、両方ともいぢめがい(笑)のあるキャラですよね。 私個人にとっては、ゼロスはすぐに暴走するので、取り扱い注意が 必要なキャラですが。 ……でも、会話シーンが一番スムーズに行くキャラでもあります。 > あまり小説と関係ない話ですが、円錐を何かしらの方法で切断すると、その断面の輪郭が放物線になるとか。 ああっ!「理工学部(仮設)」出張番!! 円錐で放物線……斜めに切るのでしょうか……?(これが限界) > ところで、アストラルサイドに投げた麺棒はどうなったのでしょうか? 漠然とゼロスがめん棒持って再び来訪、という場面が頭にあります。 内容考えてませんが(笑) > つたない感想で申し訳ありません。 > それでは。 いいえ、そんなことありません。ありがとうございました(^.^) |