◆−思い出と想いでと・・・−かるら (2002/9/7 17:31:32) No.9042
9042 | 思い出と想いでと・・・ | かるら | 2002/9/7 17:31:32 |
こんにちは、かるらです。今回は初の長編に挑戦です。 今までずっと詩でしたから。 というわけで、この話は一応冥王との決戦のあとのゼルガディス一人旅、見たいな感じです。 では、どうぞ。 『思い出と想いでと・・・』 この街を訪れるのは、何年振りだろうか。そう考えて、空を仰ぐ。エルメキアから少し離れた街。そこが俺の故郷。レゾに合成獣にされて以来、この街には訪れていなかった。 「あまり変わらないな・・・。通りの風景も、何もかも・・・」 秋の風が、俺の呟きを溶かしていく。 その風に誘われるようにして、俺は昔遊んだ森の中へ入っていった。 薄暗い森の中で、フェアリー・ソウルが飛んでいる。とても儚い光が、とてもここに合っている。 俺は子供の時の記憶を頼りに歩いて、目的の場所へたどり着いた。何もない、開けた草原。昔はよくここで友達と遊んだり・・・レゾに魔術を教えてもらったりしていた。思い出の場所だ。 そして、もうひとつ――― 『ゼルガディス・・・』 「・・・・・・えっ」 風の音に混じって、アイツの声が聞こえた気がした・・・ 森から出て宿屋へ着いたのは、夜になってからだった。夕食を食べ、酒を飲み、そして、自分の部屋でゆっくりとアイツのことを思い返していた。 子供の時、よく家を抜け出しては森を散策していた。魔物の類はいることはいたが、剣の腕にも、魔術の腕にも自信が合ったから。 ところが満月の晩、俺の前にレッサー・デーモンが現れて、襲い掛かって来たのだ。子供の腕では、敵うはずがない。『殺される』、と思ったその時。 『散れ!』 その声と共に、そのレッサ―・デーモンは消えた。そして、その背後に――― 年のころなら同じころ。黒髪をショートカットにした黒づくめの少女がいた。 『君は・・・?』 『オミ。そっちは・・・?』 『俺は、ゼルガディス。君は・・・このへんの子?見たことないけど・・・』 『私は向こうの城に住んでいる者・・・。外に出たのは、今日が初めて』 『じゃあ、友達は?』 『・・・いない』 『じゃあ俺が、友達になっても・・・構わないかい?』 暫く考え込んだオミという少女は、口の端を少し吊り上げるようにして微笑んで、 『・・・よろしく』 そう言った。 今となってはその少女の消息は判っていない。あれ以来、一度も会っていないのだ。 いつか、会えるだろうか・・・・・・・ そう思って、目を閉じた。 |