◆−Under the sky−中田珂南 (2002/9/11 01:08:18) No.9113


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9113Under the sky中田珂南 URL2002/9/11 01:08:18


御無沙汰しております。(というか「初めまして」の方の方が多いだろうな・汗)
先日パソコンの中を整理してたら、古い書きかけファイルが出てきました。せっかくなんでちょっぴり書き足して、約一年越しで仕上げてみました。
ひじょーーに素っ気無い短文(ガウ×リナ)ですが、暇潰しにでもなれば幸いかと。

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Under the sky



「――で、今日はどうするんだ?」
「そうねぇ、まず魔道士協会に行って挨拶して、それから……」

一日の始まりは、そんな他愛もない会話から。
ここ数年は、それが当たり前のことになっている。

「……それから魔法道具店に行って、こないだ手に入れたお宝を売って、ついでに道具もいくつか買っといて……」
「おいおい、また買い物かよ。今日こそ適当な時間で切り上げてくれよ。でないとまた日が暮れちまう」

ある時は道を歩きながら、ある時は互いに食事を奪い合いながら。
今日一日の行動予定を、二人で一緒に決めていくのも。
当たり前の朝の光景。

「何よ、嫌なら来なきゃいーじゃない。別にいーのよ、無理してついて来なくっても。あたしはちっとも困らないから」
「じゃあ、あの荷物はどーすんだ?  結構重い代物だったし、先にエラい人の所にも行くんだろ?
 やっぱりオレが一緒に行ってないと、いろいろ困るんじゃあないのか?」

出会いはふとした偶然で、共に旅をするのも成り行きだけで。。
本当は一緒に居る理由もなくて、一緒に居ようと約束した訳でもなくて。

「うっ……ガウリイのくせに、なかなか鋭いことを言うわね。でも、そこまで判ってるんなら、今更文句言うんじゃないわよ」
「……はいはい」

いつでもその気にさえなれば、簡単に別れてしまえるような。
そんな、曖昧な関係でしかないはずなのに。

「買い物が済む頃には、ちょうどお昼どきになるだろーし。いちいち戻るのも面倒だから、そのままご飯食べに行きましょ」
「そうだな」

互いの傍に居ることが、いつしか必然になっていて。
また独り旅に戻ることなど、まるで考えられずにいる。

「午後からの予定は、ご飯食べながら考えることにするわ。もしかしたら、協会で仕事受けるかも知んないしね」
「分かった」

相手とめぐり逢う前は、独りで旅していたはずなのに。
ずっと、独りで生きていたはずなのに。

「あ、そーだ。今晩、ちょっと付き合ってくれない? 暫くやってなかったけど、また剣の稽古つけて欲しいんだけど」
「ああ。オレは別に構わんが、どこでやるつもりなんだ? 宿の中庭でも借りるか?」

相手が傍に居ることが、何故だか無性に安心できるから。
相手の傍にいることが、何故だか無性に心地よいから。

「そーねぇ、やっぱ人に見られるのはあまり面白くないし……確か、裏に手頃な雑木林があったから、そっちに行きましょーか」
「そうだな」

傍らに互いの居ない旅など、最早想像すらつかないから。
昨日も、今日も、多分明日も、こうして二人で歩いている。

「……って……どーやら、予定通りに過ごせそうにないわね……。
 ガウリイ、さっきの爆発音、聞いた?」
「ああ。少しだけだけど、煙みたいなモンも見えてる」

行く手にどんな騒動が起きても、どんな戦いに巻き込まれても。
常に危険と隣り合わせで、僅かな安息さえ得られないような。そんな、波乱に満ちた毎日ではあるけれど。

「見えるって……相変わらず非常識な視力してるわねー……。
 って、それはともかく。ガウリイ、行くわよっ!」
「おうっ!」

今日も、二人で進んでゆこう。果てしなく続くこの空の下で、道なき道を切り開きながら。
頼るものが他に何一つ無くても、互いを信じられるなら何処までも行ける筈だから。



いつか命尽きて地に還るその日まで。二人で笑い続けていよう。
ずっと二人で。


the end