タイトル : ドラスレ! 24
投稿者 : とーる
URL : http://blacktail.blog.shinobi.jp/
投稿時間 : 2012年5月19日21時49分37秒
第二十四話
「……ふ」
小さな笑い声。
青い火柱の向こうで、魔王がゆったりとした動作で錫杖を振るえば、
火柱は瞬時にかき消える。
ダブルのラ・ティルトでもムダか――。
「くあっ!?」
「ゼルガディスさん!」
いきなり炎に包まれそうになったゼルガディスを、
アメリアが咄嗟にかばう。
「ゼル、アメリア!」
「なぁに、奴は岩の体。これくらいで死にはせん――最も、
かばった奴は知らないがな」
俺に向かって一歩、魔王が歩みを進める。
と、その時。
目の前に飛んできた何かを、俺は反射的に掴んだ。
剣の柄――光の剣!?
「ガウリイ!」
「――使って、リナ! 剣の力に黒魔術の力を乗せて!」
「愚かな! 光の力に闇の力が上乗せできるものか!」
ガウリイお嬢ちゃんの叫びに、魔王が馬鹿にしたように言う。
その通りだ――けれど。
俺はしっかりと柄を握りしめて、高々と振りかざした。
「剣よ! 我に力を!」
瞬間、光の刃が生み出される。
お嬢ちゃんの時はロング・ソードサイズだった刀身が、
俺の手の中ではバスタード・ソードなみの長さになっている。
――やっぱりな。
俺は呪文の詠唱をはじめる。
形式はドラグ・スレイブとほぼ同じだが、呪文を捧げるのは
この世界の暗黒を統べている“赤眼の魔王”シャブラニグドゥに
対してではない。
その部分を――魔王の中の魔王、天空より堕とされた
“金色の魔王”ロード・オブ・ナイトメアに置き換える。
他の魔王から借りた力でなら、“赤眼の魔王”にダメージを
与えることが出来る。
――闇よりもなお暗きもの 夜よりもなお深きもの
混沌の海にたゆたいし 金色なりし闇の王
「き……貴様っ! 何故、何故お前ごときがあの方の存在を
知っているっ!?」
俺の呪文を聞いた魔王が、動揺の色を浮かべる。
――我ここに 汝に願う 我ここに 汝に誓う
我が前に立ち塞がりし すべての愚かなるものに
我と汝が力もて 等しく滅びを与えんことを!
俺の周りに、夜の闇より深い闇が生まれる。
決して救われることのない、無明の闇。
暴走しようとする呪力を、俺は全神経を集中させて必死に抑える。
これが俺の秘技中の秘技――ギガ・スレイブ!
あまりにも魔力の消耗が激しい上に、失敗するれば生体エネルギーを
吸い尽くされて死ぬという、危険極まりない魔法である。
魔力も体力も万全の状態じゃないからか、知っているとはいえ
制御するだけでもわりときつい。
俺は闇と光が打ち消し合うことを知っていた。
多分、それ以上のことも。
――やってみるっきゃないだろ!
「剣よ! 闇を食らいて刃と成せ!!」
俺の叫びに、ギガ・スレイブによって産み落とされた闇が、
手にした剣に向かって収束していく。
思った通り、『光の剣』は人の意志力を具現化するものなのだ。
意志力は強いが魔力を持たないお嬢ちゃんが手にした時に比べて、
意思のコントロールに慣れた俺が扱っている時の方が
具現率が大きいことが証拠だ。
「こざかしいっ!」
魔王が錫杖を構え、呪文の詠唱をし始める。
まずい――こうなってくると、闇をすべて剣が吸い取るまで
耐えうるかどうか――。
ギガ・スレイブをコントロールしている時なら、強力な攻撃でも
完全に防いでしまうのだが、全力投球となると!
奴を倒すのに、あとひとつ何かが――!
「やめて!!」
声が響く。
アメリアに支えられたゼルガディス。
「もうやめて! ――貴方があんなにも見たがってたこの世界なのに!
それを――どうして壊すって言うのよ! レゾ!」
かなり混乱しているらしく、おそらく何を口走っているのかすら
ゼルガディスは分かっていないだろう。
だが――呪文が止まり、魔王の杖から赤い光が消える。
レゾ=シャブラニグドゥは静かに、ゼルガディスを見つめる。
見つけた――あとひとつ!
その瞬間手にした暗黒の剣が完成する。
俺は大きく振りかぶりながら叫んだ。
「赤法師レゾ!!」
NEXT.
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