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    タイトル : ドラスレ! 16
    投稿者  : とーる
    URL    : http://blacktail.blog.shinobi.jp/
    投稿時間 : 2010年10月27日21時03分50秒

 




第十六話





「あの男、裏でどんなことやってるんだ?」

「知ってるでしょう? あるものを探してる」

「――じゃあ、魔王シャブラニグドゥを復活させようとしてるのは、
 お前の方じゃなくてあいつの方だったのか?」


俺が尋ねると、ゼルガディスはきょとんと目を瞬かせた。


「シャブラニグドゥ……? なんのこと?」

「ん……?」

「あいつが私たちに命じさせて探させていたもの――こうなったら
 言ってしまうけど、実はかの有名な“賢者の石”ってやつよ」

げ。
俺は盛大に顔をしかめて絶句した。


「そ……それじゃあ……?」


アメリアの声に、ゼルガディスは小さく頷いた。


「貴方たちが持っている神像、あの中に“賢者の石”が入ってる」


賢者の石――。

魔道をやっている者なら知らぬ者はいないだろうし、
たとえ魔道方面にそういう知識がなくとも、そこいらの協会や道端の
伝説や御伽話などで聞き知っているものは多いだろう。

古代の超魔道文明の遺産、世界を支える“杖”の欠片……。
まあ色々と説はあるものの、それが魔力の増幅器であることは確か。
それも、すこぶる強力な。
多分話として一番有名なのは、一人の見習い魔道士の手によって
一国が滅んでしまったという史実だろう。

レゾのように、伝説に近くも実在する物質。
まさかこんな風にお目にかかることになろうとは――。


「……だ……だが、あいつはそんなものを手に入れて、一体何を……」


“赤法師レゾ”が流れている噂通りのやつであるならば、
今更そんなものを手にしなくても充分強いだろうに。
俺の否定したがるような言葉に、ゼルガディスはふと目線を落として
ゆるりと首を横に振る。


「レゾが前に言ったことがある。『ただ、世の中が見てみたいだけ』と――」

「……世の中が……?」

「そう。噂通り、レゾは生まれつき盲目だった。あいつは自分の目を
 開かせるためだけに白魔術を習い始めた。目を治療する実験台として、
 諸国の様々な患者を救って。でも、何故だか自分の目だけは
 開かせられなかった。そこで考えたのさ、何かが足りないんだとね。
 レゾは精霊魔術や黒魔術にも手を出し、それらを白魔術と組み合わせて
 高度な魔術をも生み出した。それでも目は開かない。そんな時に、
 あいつが目をつけたのが――」

「伝説級のシロモノ、“賢者の石”ってことですね」


ゼルガディスは頷き溜息をつく。


「――私はあいつを邪魔するのではなく、倒したい。それにはどうしても
 “石”が必要だ。悔しいけれど、今の私にはあいつを倒す力がない……
 だから貴方に襲撃をかけた」


その酷く悔しげな、苦しげな表情からして、話すことを決めた
ゼルガディスは嘘をついてるわけではなさそうだった。
ガウリイお嬢ちゃんにはともかく、俺を上回るほど剣を扱える奴が
『かなわない』と認めている。
評されるレゾは当然、かなりのものに違いない。


「あいつを倒す――って、やっぱり、そんな体にされたからか?」


かなり直球な俺に対して、ゼルガディスは睨むように目を細め、
むきだしの掌をじっと見つめる。
しかし、瞳の奥にあからさまな憎悪をこもらせ、冷たい声色で肯定した。


「――ある日、あいつが言った。私の手伝いをするのならお前に力を
 与えてやろうと。私は……頷いた。それが何を意味するかも知らずに」

「――レゾと知り合ったのは、いつなんですか?」


雰囲気を変えようとしたらしいアメリアの質問に、ゼルガディスは
少し驚いた表情をしでアメリアを見やる。
けれどすぐに気まずそうに視線を外し、自嘲めいた笑みを浮かべつつ
やや間をおいてから答えた。


「――私が生まれた時から――あいつは私の爺さんか、ひい爺さんに
 あたるはずでね……よくは知らないし、知りたいとも思わないけれど」

「……え!?」

「ああ見えても、百年かそこらは生きてるみたいね。とにかく、
 私の中にはレゾの血がいくらか流れてるってこと」

「訊いてはいけないことでしたね……すみません」


きまりが悪そうにアメリアが目を閉じる。
やはり不思議そうな目をしたゼルガディスは、珍しいものを見るかのように
アメリアに視線を戻して、どことなく悲しげに首を振った。

うーむ、やりきれないなあ……。





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